beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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2010年 06月 28日 ( 2 )


牧場におけるイノシシと牛の接触 - 口蹄疫の伝染

アメリカ、テキサス州のTexas A&M Universityに面白い修士論文があった。

SPATIO-TEMPORAL RELATIONSHIPS BETWEEN FERAL HOGS AND
CATTLE WITH IMPLICATIONS FOR DISEASE TRANSMISSION
A Thesis by AUBREY LYNN DECK
Submitted to the Office of Graduate Studies of
Texas A&M University
in partial fulfillment of the requirements for the degree of
MASTER OF SCIENCE
May 2006
http://etd.tamu.edu/bitstream/handle/1969.1/5884/DECK-THESIS.pdf?sequence=1

口蹄疫などの伝染が牛の牧場で起こる可能性について実際の牧場における牛と野生豚の行動パターンについて、GPSで位置座標を記録し、地理的情報解析システム(GIS)で評価した研究である。

論文要旨
It is widely recognized that livestock industries are vulnerable to intentional
or accidental introductions of Foreign Animal Diseases (FADs). Combating
disease is difficult because of unknown wildlife-livestock interactions. Feral
hogs (Sus scrofa) could harbor and shed disease in areas used by domestic
livestock such as cattle (Bostaurus). Extent of risk logically depends on spatio-
temporal interactions between species. I used Global Positioning System (GPS)
collars on cattle and hogs in combination with a Geographic Information Systems
(GIS) for detailed analysis on movement patterns of these 2 species on a ranch
in southwestern Texas, USA. Motion-triggered video recorders were also utilized
to determine interspecific activity patterns. I tested hypotheses that spatio-
temporal distributions of domestic cattle and feral hogs on rangeland overlap
and that interspecific contact occurs. If these posits are true, it is possible that
introduced pathogens like foot-and-mouth disease (FMD) could be transmitted
from feral hogs to cattle. Using a rate of 1 GPS fix/15 min (96 fixes/day), I found
that spatial distribution of individual hogs and cattle overlapped on both the 95%
and 50% kernel area use among 4 seasons. Both cows and feral hogs used
Clay Flat, Clay Loam, and Rolling Hardland more so than other range sites. During
Summer 2004, riparian zones were the most used feature, identified at 14%
(2,760/19,365) of cattle and 70% (445/632) of hog fixes. Other than brush strips,
cattle and feral hogs primarily interacted at riparian zones, fencelines, and roads.
There were no direct interspecific contacts evident from GPS data, but 3 cases
were recorded from video data. Indirect interspecific contacts that may be
sufficient for disease transmission occurred much more frequently (GPS = 3.35
indirect contacts/day, video = cows follow hogs: 0.69 indirect contacts/day and
hogs follow cows: 0.54 indirect contacts/day). Research results suggested that
both species often travel along the same roads and fencelines to water and food
sources, especially during extreme heat and low-precipitation conditions. This
research provides basic information needed to improve models for management
of FMD outbreaks in the U.S., based on specific knowledge of landscape usage
and movement patterns of feral hogs and cattle.

この研究結果で牛と野生豚の直接的な接触は見られないが、餌や水を求めて移動する経路(河畔、道筋やフェンス沿い)が共通していること、高温で少雨の時にそれが顕著に見られることを明らかにし、口蹄疫の種間の感染が起こる可能性があることを示唆した。

GIS、地理的情報の解析技法は地図上に様々な情報を示してパターンを解析する、コンピュータの能力が発揮できるシステムである。

口蹄疫の発症例を地図上で示し、それを時系列で見ることはウイルスの伝染のパターンを知ることにつながる。家畜ごとに畜産農家の位置情報があれば、どこが発生していてどこが近接していて感染の危険度が高いか、などの情報を即座に知ることができる。気象災害では洪水予測などで行政によってすでに実用化されているが、家畜伝染病の場合は何もなされていない。口蹄疫は一旦発症すると、移動制限や相互訪問の禁止などの強い規制がかかるので、それぞれの農家が自分達の置かれている状況を把握できないでパニックとなる。これを助けるための情報の収集と伝達に使えるGISを県や市町村単位で導入するべきであろう。
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by beachmollusc | 2010-06-28 22:09 | 口蹄疫

口蹄疫とイノシシの生態

唐津市がイノシシ駆除へ、口蹄疫感染防止で(2010年6月12日 読売新聞)

 宮崎県で感染が拡大している口蹄疫問題に絡み、イノシシが媒介する恐れについて、11日の唐津市議会一般質問で取り上げられ、市は19日~8月末に集中的に駆除する方針を示した。
 宮崎卓議員が「もしも唐津に口蹄疫が入れば、経済も停滞する懸念がある。畜産農家が恐れているのが野放しになっているイノシシ。口蹄疫に感染する豚と同じ偶蹄類で、でんぱしていけば大変なことになる」と対策をただした。
 これに対し、岩本秀行農林水産部長は、5月24日に開いた臨時の唐津地域有害鳥獣広域駆除対策協議会で、「畜舎に侵入して口蹄疫を媒介する恐れのあるイノシシを重点駆除することを決めた」と説明。畜産農家の多い市西部の上場地区で、イノシシの出没する場所、畜舎周辺を対象に捕獲オリ、ワナなどで駆除することを明らかにした。


口蹄疫に感染すると問題を複雑化させるかもしれないイノシシの情報も調べておこう。

九州における鹿やイノシシについての全体像を論じた論文が公開されていたので、その「さわり」の所を部分的にピックアップして下に引用:

九州における狩猟鳥獣の変化に関する研究
九州森林研究: Kyushu J. For. Res. No. 57, 34-38 (2004)
飯田繁 (九州大学大学院)
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/jfs-q/kyushu_forest_research/57/57po009.PDF

先に成立した森林・林業基本法,そしてそれに伴う森林法の改
正によって,新たに森林・林業基本計画を樹立することになった。
その基本計画の一つの柱が「森林と人との共生林」であり,野生
鳥獣と共存する森林を作ることである。それは日本の林業政策に
動物学を再び取り込もうとする点で注目されるところである。ま
た,そのことは,林学・森林科学を標榜する大学に動物学の導入
を迫るものである。しかし,法律(計画制度)の基本的な精神は
人間社会と動物の関係を棚に上げ,野生鳥獣だけの社会(英語で
Wilderness の世界)を前提にしたもののようで,日本の実情と
かけ離れている。
(中略)

 まず初めに狩猟による九州における動物の捕獲数の変化につい
て述べる。全国的な傾向と同じように九州でも1970年代に捕獲数
が増加する。しかも,70年代にはウサギの捕獲数(約12万頭)が
もっとも多く,頭数で動物全体の7割程度を占めていた。次いで
イノシシ(約2万頭),タヌキ(1~2万頭)の順で捕獲された。
しかし,80年代以降様相が変わり,ウサギの捕獲数が減少し始め
る。代わってイノシシ,シカの比率が増大するようになる。そし
て2000年の今日では,イノシシの捕獲数(3.4万頭)が最も多く,
4割を占め,シカ(1.6万頭)も約2割を占める。かつて第1位
であったウサギ(2.7万頭)は3割に減少する。なお,その他の
動物は合計で10%にも満たない(表-1参照)。
(中略)

 他方,第2グループの特徴は,シカ,イノシシ,サルといった
比較的大型の動物であり,オオカミなどの捕食者がいないため,
増加を食い止める自然の仕組みがないという点である。マングー
スも事実上奄美大島などで動物の頂点に君臨する動物である。し
たがって,狩猟による捕獲がなければ生息数を抑制することはで
きない。しかし,現状では狩猟による捕獲数の増加があるものの,
それ以上に生息数が増加しているため,農作物に対する被害も増
加し,有害鳥獣による捕獲数も増加するという連鎖が起こってい
るのである。

(引用おわり)

上の論文の著者は山間部における人間の生産活動に野生鳥獣が強く依存していて、営農の変化が餌の変化とリンクしての動物集団の個体数増減が起こっていることを強調している。つまり、自然の中の「野生」動物ではなくて「人獣の共生関係」にある人への鳥獣の従属関係を認識し、山村における「森林の野生鳥獣との共生関係」の管理のありかたを考えるように主張している。ただし、そのための具体的な提言は出されていない。

生物科学という学術啓蒙雑誌が(社団法人)農山漁村文化協会から出版されている。その昨年の2号に「イノシシ」特集があった。

特集 野生動物との共生 イノシシ被害を考える 
生物科学 60(2), 66-104, 2009-02

イノシシ被害とは何か 江口 和洋, 66-68

イノシシ被害対策の歴史(シシ垣)とGPSテレメトリーからみた近年の被害地におけるイノシシの動向 高橋春成, 69-77

中山間地域における集落の実態とイノシシ被害 作野広和, 78-88

中山間地域における農林業構造の変容と資源管理--九州の森林問題を中心として 
佐藤宣子, 89-93

イノシシSus scrofaによる農作物被害への対策とその課題 小寺祐二, 94-98

獣害対策の現状と今後の研究の方向性 仲谷淳, 99-104

上の雑誌のバックナンバーはオンラインで購入できるので早速注文した。猪による農作物の被害は全国的に増大していて、それについての行政関係の報告は多数あるが、基本的な生態、個体群動態などに切り込んだ論文はとても少ない。

冬期の寒地型牧草地はイノシシ(Sus scrofa L.)の餌場となる
上田弘則, 高橋佳孝, 井上雅央  日本草地学会誌 54(3), 244-248, 2008-10-15

… 冬季の牧草地がニホンジカの餌場になることが指摘されているがイノシシについては不明である。 … そこでイタリアンライグラスを播種した寒地型牧草地のイノシシの利用実態を明らかにした。 … 10月から3月までの5ヶ月間の牧草地におけるイノシシの糞塊数は1904個/haであり,1月と3月に回収した糞の内容物は単子葉草本の占有率が高かった。

鹿と猪の餌場となってしまっている牧場で、もし牛が口蹄疫ウイルスを出すと、きわめて濃厚な接触、つまり感染の危険があることが良くわかる。

イノシシ : 生態と感染症から見た安全な付き合い方(<シリーズ>森の危険な生物たち13)
仲谷淳、宇仁茂彦 森林科学: 日本林学会会報 (57), 27-30, 2009-10-01
この雑誌は提供学協会の意向により、刊行後2年の間はご利用いただけません。情報を出すことに存在意義があるはずなのに、ケチな学会ですね。

野生のイノシシからE型肝炎に感染する事例が出ているらしく、医学と農学の両方の分野で研究報告が出ている。しかし、上に引用した論文(有料閲覧もできない)をはじめとして、オンラインで公開され無料閲覧できるものはほとんどない。


鳥獣関係統計の説明・資料 (インターネット自然研究所)
http://www.sizenken.biodic.go.jp/wildbird/flash/toukei/07toukei.html
鳥獣関係統計は、鳥獣保護及び狩猟行政に資する基礎資料として、毎年度の狩猟や鳥獣の捕獲許可の状況、鳥獣保護区の設定状況等の情報をまとめた唯一の資料です。

上のサイトにアクセスしたが、非常にわかりにくい。内部資料としているのは分かるが、グラフなどにして明快に示さないと市民レベルでは全く役に立たない。

新富町農業振興課
課からのお知らせ2010年04月27日 有害鳥獣駆除許可について
現在、町内全域において、有害鳥獣による農作物等への被害が発生しており、駆除班による駆除を下記のとおり許可しております。町民の皆様のご理解と注意をお願いします。
駆除許可鳥獣及び数量
イノシシ 10頭
サル   20頭
カラス  200羽
ドバト  200羽
駆除許可期間平成22年4月23日(金曜日)から平成22年6月21日(月曜日)まで
駆除許可区域町内一円
駆除方法銃器使用・捕獲用罠使用

新富町で口蹄疫の発生中にイノシシを捕獲したかもしれませんが、どうなったのでしょう。他の市や町では?

<おまけ>

■[メモ]狩場の悲劇 (リストから宮崎県での狩猟事故を抽出)
都道府県 発生年月日 年齢*1 狩猟経験*2 概要

宮崎県 1998/12/19 67 22 ワナにかかった猪に向って発砲したところ発砲と同時に足が滑って銃内の残弾が暴発。真横に立っていた被害者の下腹部に命中。
宮崎県 1999/1/2 71 30 待場の手前300mの所で倒れていた。脳内出血
宮崎県 2001/7/25 62 27 有害鳥獣駆除に出猟し、脱包をせずに猟銃を車の助手席に置いて走行中、振動若しくは側溝への脱輪により、助手席に置いてあった猟銃が暴発、散弾が左胸部を貫通し死亡。
宮崎県 2001/11/28 62 4 急斜面から猟銃を発砲した際、バランスを崩し転倒した。その際に弾が残っていた猟銃が暴発、散弾が胸部を貫通し死亡。
宮崎県 2002/4/28 50 7 有害鳥獣駆除に出猟し、シカに向かって(上方に向かって)発砲したところ、シカの後方にいた被害者に流れ弾が命中し死亡した。
宮崎県 2003/11/26 51 10 ミカン園を渉猟中、枯葉を猟銃で払ったため、自動装填式の銃が暴発し、左胸部を3号弾が貫通し死亡。
宮崎県 2004/12/27 72 33 左下方で音がして黒いものが見えたため、シカだと思い発砲した
宮崎県 2005/12/25 66 26 シカ猟中、共猟中の仲間をシカと間違えて誤射
http://d.hatena.ne.jp/trivial/20081128/1227875546
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by beachmollusc | 2010-06-28 14:12 | 口蹄疫