beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:評論( 62 )


はまぐりの講演会


日向の至宝、碁石ハマグリ(チョウセンハマグリ)の復活のために

終戦直前の1944―45年に日向のチョウセンハマグリ資源・生態を調べた宮崎一老(著書:二枚貝とその養殖、いさな書房、1957年刊)は63頁に以下のように記している:

「宮崎県下で、単にハマグリといえば本種を指すのであって、河口付近に、極少量生息している普通のハマグリはこれをカワハマグリと称して、一部の業者が認識している。県内における主産地は、図示の通りで、外洋に面した比較的高い鹹度(: 塩分)の海区である。年産額1-2万貫内外が採取されているようである。しかし、この内でも、県中部の富島(: 現在の日向市)沖合のものが特に成長良く、老成すると、殻長13センチ、空殻の重量400グラム程度になる。貝殻は重厚、雄大という感じで、厚さ3分以上の高級碁石の原料として業者から賞用されている。食用としても優秀で、肉質柔軟、甘味に富み、鮮食、調理共に適している。この地区に、県下の碁石製造業者が集まり、その原料として生貝のみならず、地下数メートルに埋没している死殻の採取も行っている。(後略)」

下図は日向灘における1966-2013年の間のチョウセンハマグリの漁獲量を示す。
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 漁獲量は、漁協データ(1969-2012年)、そして金丸(1980:日向灘のチョウセンハマグリについて、栽培技研、9: 1-11)に記録されたデータ(1966-1968年)による。


上に引用した文章にある、年産1~2万貫程度は50トン前後である。

日向灘のチョウセンハマグリの漁獲量は変動が激しく、約10年周期で大きな変動が見られ、1996年に約40トンを記録したが、1999年は13キロであった。その後は低迷を続け、2007年の8トン半と2008年の5トン弱を除けば2トン以下であり、2011年は240キロ、2012年度はゼロとなった。昨年2013年の数量はまだ出ていないが、ほとんど漁獲が無い。

2009年7月に塩見川の河口周辺でチョウセンハマグリ成貝の大量死が起こり、続けて2010年10月にかけて、小倉ヶ浜の南部で稚貝の異常な打ち上げ死が繰り返し見られた。

日向のハマグリ資源の復活のために何が求められるか

1. 稚貝のゆりかご:潮間帯(干満で水没、露出を繰り返す場所)の環境を守る

チョウセンハマグリは夏(7月頃が盛期)に繁殖し、2週間ほど幼生が浮遊分散し、0.2mmの大きさで砂底に定着する。浅瀬で3年余、5-6センチの親貝に育ってから沖に移動する。

稚貝が生育する「潮間帯」では、砂の中で繁殖する微細な藻類が重要な餌となっている。その藻類を養うのは川から海に、そして地下水が砂浜にもたらす無機の栄養分であって、川の流域全体の環境が良好に保たれることが望ましい。具体的には:
川の上流部で、杉の人工林ではなく、落葉樹を含む照葉樹林を維持すること
山間部の産業廃棄物施設と畜産施設が渓流に汚染物質を流さないこと
中・下流域で、農地から除草剤など農薬の流失を防止すること
下流域で、都市排水に流れ出る合成洗剤などを徹底的に削減すること
栄養分を含む(浜辺の湧水となる)地下水をコンクリートの壁で遮断しないこと
稚貝の集中する浅瀬付近のゴルフ場や松林で殺虫剤など毒物を噴霧しないこと

2  よそから貝の移植放流をしない

漁獲量が減ったことに対し「移植放流」を行うのは大きな間違いである。その理由は:
環境が悪化しているため資源が減っている場合、本来なすべき環境改善を放置する 口実とされてしまう。
悪化した生育環境に種苗を放流しても育たない。
別な場所からの移植放流には、天敵、寄生生物、そして病原体が一緒にやってくる危険がある(アサリやシジミの移植が盛んな海域で深刻な問題が起こっている)。
移植に環境汚染が伴うと、ウイルス性の疫病(新興感染症)が勃発する怖れもある。
過去の移植放流では追跡調査で放流効果の検証が行われていない。効果が認められない放流事業の費用として使われる税金や組合費が無駄になっている。

3   資源管理の情報収集と解析を漁業者と地元行政が主体的に行う

漁業者が資源の動きを知り、漁業活動を自律的に管理することが先進国では当たり前になっている。日向灘のハマグリ資源については漁業者がもっとも良く知っているが、資源量の変動予測のため、稚貝の発生状況など、科学的な情報収集を継続的に行うべきである。漁獲が減ったら県水試に丸投げして、やっつけ調査を実施しても何の役にもたたない。
         
2014年3月11日 はまぐりの講演会  (文責、山口正士)

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by beachmollusc | 2014-03-13 04:25 | 評論

日本列島の上下地殻変動

日本の砂浜海岸の防災と環境保全について「地殻変動」が全く考慮されずにいることに気がついたのは最近になってからである。

潮汐や気圧変動など局所的で短時間の変化を除くと、ある地点の平均海水面の上下変化には、海水量の変化、つまり南極大陸などの陸上に固体(氷)として存在する水の量の変動(気候変動による)、そして大地が上下に動くことが重なっている。このような上下変化は長い年数を経過してからその影響が認識される。ただし、大地震に伴って一瞬の間に大きな変化が起こることが今回の東日本の大地震で誰の目にもわかるようになった。

日本全国で明治時代から国土地理院による測地観測が行われている。さらに、海岸では潮汐観測も続けられていて、その平均海水面変動から地殻の変動を読み取ることができる。最近では精度が高いGPSを利用したデータが得られるようになり、短期間の地殻変動をモニタリングできるようになった。

吉井敏尅 (2005) GPS観測による日本列島の最近の上下地殻変動
日本大学文理学部自然科学研究所 研究紀要 No. 40, 67-72.

http://www.chs.nihon-u.ac.jp/institute/nature/kiyou/2005/pdf/2_2.pdf
この論文は国土地理院による過去100年間の観測に基づいた変化と最近の変化を比較している。

地理院ホーム > 基準点・測地観測データ > 地殻変動情報
過去10年、100年の地殻変動
http://www.gsi.go.jp/CRUST-index.html

大地震の時には瞬時に大きな上下変動が起こるが、それだけでなく、ゆっくりとした変化(スロースリップ)が起こっていることも明らかにされている。こうした地盤の上下変動は、砂浜における海岸線の水平方向の移動に対して大きな影響を及ぼす。

熊木洋太: 日本列島の地震と地殻変動
http://www.gsi.go.jp/common/000024557.pdf

上の一般向けの論説に書かれている、わかりやすい具体例を紹介したい。

室戸岬付近の海岸の岩には,ヤッコカンザシという名のゴカイの一種が平均海面の高さに密集して棲み着いている。この生物は殻を作り,殻はヤッコカンザシが死んでもそのまま岩に付着して残っている。殻の密集帯は,現在の平均海面付近だけでなく,もっと高いところにもある。つまり,もともと平均海面の高さだったところが,隆起して現在はそれよりも高くなっているということを示している。最近,地形学者がその高さと形成年代を詳しく分析した。それによると,ヤッコカンザシの殻の高さは,南海地震とその間で室戸岬が1 ~ 2mの隆起・沈降を繰り返していることを反映して1 ~ 2m 程度上がったり下がったりしている。しかし,今から1000 年前頃に4 m程度,また今から2800 年前頃に2 ~ 3m 程度の急激な隆起があったことも判明した。つまり,南海地震はごくまれに室戸岬を大きく隆起させる地震となる,ということであり,上記の解釈2と合う。

室戸岬の地殻が上昇を続けてきた結果、海岸段丘が形成されているが、大地震で一気に隆起してからゆっくり沈降することを繰り返している。

砂浜海岸における防災のために全国的に防潮提や防潮林が造られれている。その工事の実態は必ずしもそれぞれの地域の気象や地球科学的な情報を元にしていない。今回の津波による被害が想定外だったように、我々は地球の営みをいまだによく理解していない。

科学的・合理的な海岸利用と防災のありかたを見直すべき時がやってきている。コンクリートで砂浜を固めることは愚の骨頂であり、砂浜に港湾などを建設すると砂の堆積の変動に苦しめられるだけでなく、時間の問題で破壊的な力が働く時がやってくるだろう。
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by beachmollusc | 2011-03-21 17:03 | 評論

集団疎開の受け入れ準備を進めるべき

宮崎県は太平洋戦当時に沖縄から疎開してきた大勢の児童を収容したと聞いています。

中山間地でもインフラとしての道路整備が進んでいて、ほとんどの場所から車で市街地まで1時間程度で行けます。働き手が市街部に移住し、あるいは大都会に移住して地域から児童生徒がいなくなり、多くの小学校が閉校においこまれてきました。

宮崎県に限らず、地方都市の近郊には近年閉校したばかりの学校が多数あります。

転用された、または閉校したばかりの学校施設が十分使えるだろうし、ホームステイで児童生徒を受け入れ可能な地域は多いはずです。また、家族で疎開して、住居と休耕農地を借りることができれば、少なくとも食料については自給的な生活が可能な場所がいくらでもあります。

日向市周辺では、田舎暮らしを求めて移住してきた家族もかなり見受けます。 それほど遠くない昔に開拓のために入植した人たちの集落も県内にあります。バブル時代に破綻した国営パイロット事業で整備された農地と道路網を復活させることも可能でしょう。

今回の震災・津波の避難民の中で、この際、長期間の疎開、あるいは移住して、適応できる人たちは多いかもしれません。その希望者の実態を把握し、受け入れ可能な場所を見つけ出し、その情報発信を準備することを地域のNPOなどが率先して進めるとよいと思います。移住者のケアや情報提供が重要になるはずです。

原発が危機状態にある福島県の難民の長期的な受け入れ先のことも考えておかねばなりません。

市町村レベルの地方行政には財政的な余裕がありませんから、受け入れの手を上げるのをためらうかもしれません。そこで、国のプログラムとして法を整備し、疎開・移住の態勢を早急に整えるべきでしょう。

国として遊休農地の借り上げ、一定期間無償で貸し付けるようにし、閉校された学校を復活させ、それを核にした疎開集落を設計するとよいかと思います。単独でバラバラに移住するよりも、被災集落の中で気心が知れている仲間を集めて集団疎開すると、助け合いながら生活しやすいかもしれません。

宮崎県では早期耕作の水稲のため、水田の準備がすでに始まっています。

学校は春休みに入るし、疎開、移住が実行しやすい時期であることが救いです。
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by beachmollusc | 2011-03-19 20:22 | 評論

環境破壊的な林業

日本の林業には構造的な問題がいろいろあるが、環境を維持することよりも、目先の収益を優先した林業経営を財政支援し、行政が本来やるべき環境保全が「置き去り」にされていることが最大の問題と思われる。

複雑怪奇な補助金とインフラ整備と称する土建中心の場当たり行政が、林業だけでなく農林水産業全体の衰退をまねいていることは、行政の担当者や現場関係者にはよくわかっていることであろう。しかし、一般市民の眼に触れない山中で行われている林業がどうなっているのか、それが豪雨の際の土砂災害とどのように関係しているのか、たとえば高千穂鉄道を廃業に追い込む「とどめ」を刺したのは天災ではなくて「官災」だったこと、などは林野行政の失敗の尻拭いである「森林税」まで払わされている納税者には周知されていない。

林業経営の問題をカバーアップするために林野庁の天下り法人は「水源林造成」や「緑のオーナー制度」などと称する「詐欺」行為を重ねてきている。自然がつくってくれた天然の水源林を伐採、しかも植林作業のために山腹を丸裸に造成する行為が水源林の破壊であることは言うまでもないことであろう。それを水源ダム(宮崎県では発電用の複合利用が主体)の周辺で堂々とやっているのを見ると、あきれるしかない。

新緑の中で野生サルナシ類の開花・結実調査で林道をドライブするのは気持ちがよいことであるが、良い気分をぶち壊すのがデタラメに植林され、乱雑に伐採された山林の姿である。昨日、5月1日の快晴の山中ドライブで北方から日之影、諸塚の山林を見て、高規格林道と大型機械の組み合わせで急速に裸にされつつある人工林の姿をスナップしてきた。

杉畠の伐採中の現場には「架線作業中」の看板が立てられている。急斜面で切り倒された杉を林道の上に引き上げるウインチとワイヤーが設置されているから、その危険を知らせるためである。場所によっては作業中は林道の通行ができなくなる。
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切り倒された杉は枝打ちされ、大型の林業トラックで運び出す長さに切りそろえられるが、そのために丸太を扱う大型の機械が勢ぞろいしている。
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日本の大型林業機械は数の上では林業先進国よりも勝っているらしいが、植林されている場所が急斜面で林分所有が細切れで伐採のサイクルも何も計画されずに「経営」されてきているため、効率的・持続的な林業が営めないのは当然である。
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急斜面の杉はチェーンソーであっと言う間に切り倒されるが、それは極めて危険な作業であろうと思われる。日本では林業現場の人身事故が頻発することが本に書いてあったが、このような危険な現場作業に低賃金で従事する人たちの高齢化(つまり後継者がいない)が進むのは当然であろう。
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伐採された後の斜面は綺麗な裸になっているが、周囲には切り落とされた枝や材木として不良な(金にならない)ものはうち捨てられている。後片付けをする余裕がない(環境負荷を気にしていられない)のだろう。

林業残渣、ゴミの山が谷間から川を流れくだり大雨洪水で海まで運ばれ、途中のダム湖の水面を覆い、海岸に大量に打上げられたり、漁港をふさいでしまう。大きな流木は架橋を破壊し、その復旧事業が国からの手厚い支援で行われて地元の土建業は潤う(県北では災害復旧事業が基幹産業化)が、公的な財政出動が認められない私鉄の鉄橋は壊れたままで放置されてしまった。

製材された杉の丸太の価格は太さや材質でかなり差がつくらしい。適材を適所で育てて自然の営みを効率的に活かす持続的な林業経営は誰も考えていないのだろうか。カナダやニュージーランドの人工林で生産されて輸入される丸太よりも値が高くなるような木材を日本で生産しているのが現状のようであるが、林野庁は輸入される材木が廉いことが日本の林業を圧迫していると「言い逃れ」をしている(過去には廉い南洋材が入っていたがそれは用途が異なる)。
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大規模に丸裸にされた場所は国有林であろうか。マダラ模様に植林と伐採の場所が入り混じっているのは民有林と思われるが、国有林で林業をやっているとしたら、根本的におかしいことだろう。それも山頂や尾根筋、渓流の河畔まで植林・伐採をやっている。

丸裸の山林からは斜面の土砂が流出する。それとどのような論理でつながるのか分からないが、治山という名目で谷間を塞ぐ大きなダムが次々と建設されている。林野行政がつくるのが治山ダムとよばれていて、真っ白な出来立てがあちこちに出現する。これらの建設コストは相当なものであろう。
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コンクリートのダムで岩石・土砂を溜め込むことは、いずれ老朽化したダムの崩壊で土石流の危険度を増大させるのではないだろうか。実際、すでに各地で治山ダムそのものが土石流で崩壊して人身被害を出している。

別枠予算で建設されている砂防ダムの方が圧倒的に数は多く、県内の美しい渓流にはほとんどどこでも数多くのダムが並んでいる。調査に同行したKさんは渓流釣りのベテランであり、谷間を走っている間中、流れのスポットでお魚の様子をうかがっていた。連休中でよい天気であるにもかかわらず、日之影の谷間を流れている渓流に釣り人が全く見られなかったのは、真新しい砂防ダムが上流にあったからだろう。
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by beachmollusc | 2010-05-02 07:49 | 評論

宮崎サファリパークの教訓

日向市の某NPOから講演依頼があったので何の話題がよいか考えていた。

そのNPOの総則3条:二酸化炭素削減やエコ、エネルギーやクリーンエネルギー、食の安全問題などお互いに学びあい、協力しながら地球環境を守るためさらに人権擁護、平和の推進を図る運動をしていくことを目的とします。

この前段の2項目(環境と食)と後段の2項目(人権と平和)がどのようにつながるのか理解できないので、何を話したらよいか悩みます。とりあえず、自然環境の保全ということが関心事項なので、講演のテーマとして、日本では認知度が低いジオパークについて紹介してみようかと考えた。自然環境とは生き物だけでないことを理解してもらえることを期待して、日向市民の認識を改めてもらうために取り上げてみたい。

ジオという言葉はエコという言葉と並んで重要であるが、一般市民の間でエコは良く使われているのに対して、ジオは破綻した英語学校と混同されるくらいだろう。

「ジオパークとは何か」(岩松 暉、月刊地球, Vol.31, No.2, 108-113.)という評論がオンラインにある。http://www.geocities.jp/f_iwamatsu/retire/what_is_geopark.html
岩松さんは鹿児島大学の応用地質の教授を退職された後も活発な文筆活動を続けていて、上の記事以外にもジオパークについて色々な角度から詳しく述べているので、以下にそれぞれの記事のハイライトとなっている部分を取り出して紹介する。

「今なぜジオパークか」(岩松 暉『地質ニュース』No.635, 1-7, 2007)
http://www.geocities.jp/f_iwamatsu/retire/geopark_now.html
4.ユネスコのジオパーク
 このガイドラインを要約すると,ユネスコのジオパークは次のようなものである.
①地質学的重要性だけでなく,考古学的・生態学的もしくは文化的な価値もある1ないしそれ以上のサイトを含む地域である.
②持続可能な社会・経済発展を促進するための経営計画を有する(例えばジオツーリズム).
③地質遺産を保存・改善する方法を示し,地質科学や環境問題の教育に資する.
④公共団体・地域社会ならびに民間による共同行動計画を持つ.
⑤地球遺産の保存に関する最善の実践例を示し,持続可能な開発戦略へ融合していく国際ネットワークの一翼を担う.


「地質遺産と応用地質」(岩松 暉 日本応用地質学会中国四国支部創立15周年記念総会シンポジウム講演概要集, 2-15)  6.地質遺産とジオパーク
http://www.geocities.jp/f_iwamatsu/retire/heritage.html
かつて私が応用地質学会九州支部長だった時代に、支部が創立20周年を迎えた。そこで、『応用地質』誌に「明日の応用地質学会九州支部」という駄文を書いたことがある。その中で、次のようなキーワードを列挙した。すなわち、地方の時代、国際化、環境デザイン、防災、海洋、メンテナンス、情報、技術革新、実力主義である。もっとも、これらを九州支部が実行したかどうかということになると若干問題もあるが…。また、記念論文集など自己満足的な内輪の出版物の代わりに、『九州の大地とともに』という易しい普及書を刊行し、子供たちに応用地質学の有用性をアピールした。

「自然回帰とジオパーク」(岩松暉 東京新聞サンデー大図解ボツ原稿)
http://www.geocities.jp/f_iwamatsu/retire/tokyo0.html
子供たちだけでなく、高齢者にとってもジオパークは魅力があるのではないでしょうか。団塊の世代は高学歴で知的好奇心に富んでいますし、地学が必修だった世代です。地方出身者が多く、自然回帰傾向も強いのです。ジオツーリズムは受け入れられると思います。手つかずに残っている自然をうまく活用して地域の活性化につなげたいものです。

最初にあげた「ジオパークとは何か」の記事を見ていたら「宮崎サファリパーク」という言葉が出てきた。そのような動物公園が宮崎県にあったこと、それが日本で最初に設立されたサファリパークで、わずか10年余りで廃業されて跡地はゴルフ場になっている。岩松さんはこれを取り上げてジオパークの事業推進に当たっての他山の石としている。

③サステイナブル Sustainable
 今年(2009年)中にユネスコ認定の世界ジオパークが出現するであろう.その時は世間の耳目を集めるに違いない.しかし,一時のブームに終わらせてはならない.かつてわが国最初のサファリとして宮崎サファリパークができ,年間入園者100万人を記録したが,10年で閉園した.今は,野良猫ならぬ野良クジャクがはびこっているとか.ジオパークは教育と結びついているのだから,細く長く続ける必要がある.ロングテール・モデルである.
<注> 野良クジャクの件は又聞きなので真偽のほどは分からない.もしも違っていたらお詫びする.


野良孔雀については何も分からなかったが、宮崎サファリパークのその後や動物達の行方などについてネット上に色々な情報が見られる。しかし、どのような理由でこの施設の運営が行き詰まって廃業に追い込まれたのか、詳細を論じた情報は見つからない。

1975年 11月1日 東急 宮崎サファリパーク開園
1986年 11月30日 宮崎サファリパーク閉園(→ゴルフ場に転換)

文献検索で出てきた宮崎サファリパークに関する情報があった。それを見たら公園内の植栽の維持管理に大きな問題があったことが伺い知れる。

小野 佐和子・清水 裕常(1977):自然動物公園の植栽について : 宮崎サファリパークを例として. 造園雑誌 40(3), 59-63
http://ci.nii.ac.jp/els/110004660153.pdf?id=ART0007387194&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1272370284&cp=

これを見たら、動物達が公園内の樹木をひどく荒らしていて、植栽の維持管理が難題となっていたらしい。(現在大分県にあるサファリパークはどうやって存続しているのか分からないが、宮崎では未経験だった人工環境の公園内で動物と植物の共存・調和が取れなかったのではなかったのだろうか)。

現在の宮崎県の山間部などでは、猿、鹿、そして猪などが闊歩する[サファリパーク]となってしまっている。下のブログは県外からの移住者を迎えるための情報サイトにあった。

西米良村の来んね、住まんね情報:2009年08月25日(火)  サファリパーク???
http://ha-tom.org/konsuma/index.php?e=1015

小川地区から村所地区に行く時にとおる『殿様街道』
久々に通ってみました・・・

すると目の前に現れたのは・・・鹿
無視して通り抜けると、数百メートル先に
鹿・・・また鹿・・・また鹿・・・
結局、村所につくまでに4頭の鹿に遭遇しました

改めて鹿の多さを感じた1日でした

鹿さんとっても可愛らしいけど、農作物を荒らしたり、山の木や花を片っ端から食べるのはやめてね


農作物などを荒らす動物の集団を育て、餌付けをしているのは人間であるが、それを敵視して駆除事業を続けるのも人間であり、生態的に調和させて動物たちと共存できない人間はエコを語る資格がないのではないか。

宮崎サファリパークの破綻がどのような経過で進み、何が原因・理由で起こったかが詳しくわかれば、その教訓をその後に活かすことができたかもしれない。失敗を隠蔽することはさらなる失敗を続けるだけになる。

シーガイアのオーシャンドームとか、廃墟となるのが近いと思われるETOランドなどのユニークで意欲的な大型の大衆娯楽施設が宮崎県内で破綻し続けるのは何が問題であるのか、じっくり考えるべきであろう。
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by beachmollusc | 2010-04-28 08:23 | 評論

和名ブラザースの往復書簡

ネット上を徘徊すると、時々思いがけなくも面白い巷の情報が転がっています。

日本海と太平洋などで集団遺伝的に分化しているキヌバリとチャガラ(ハゼの仲間の和名)について、AKIHITO天皇ほか著の地理系統についての論文が最近出版されたことを受けて、魚に詳しいダイバーでナチュラリストのねよしさんが、「富戸の波」サイトで詳しい、学術的に上質な突っ込みを入れていました。
http://www.onsenmaru.com/log/log-2009/log-090404.htm

また、同じサイトで、「和名ブラザースの往復書簡」というやり取りが公開されています。
http://www.onsenmaru.com/database/newtopics.php
この中には(主に魚の)和名の付け方についての対立意見が、それぞれについて面白い実例を元にして、しっかりと論理的にかみ合わされて討議されています。

この対話は、単純化すれば、(魚の?)和名の命名は外観・生態を重視するべきか、地名や人名を付けるのがよろしいかどうか、が論点となっています。まだ最終の締めくくり「議論を終えて」が書かれていませんが、個人的には地名や人名を海産生物の和名につけることは極力避けるべきだと考えているので「ねよし」さんの意見を支持します。

「それに最初に深く関わる人(研究者や第一発見者など)が好きな名前を思い入れを込めてつければいいと思います。」という「しげる」さんの意見は、広く現実に実行されてきていることでしょう。しかし、その「思い入れ」というのが曲者です。

貝類の和名では、突っ込みを入れたくなるもの、変更を強く主張したいもの、などがあります。しかし、図鑑などで使われて「標準」和名として定着してしまっているものでは、変更による混乱と不利益が生じるので、涙を呑んで使わざるをえません。ところが、1970年代以後の図鑑の中で行われた貝類の全体的な和名の変更、すなわち従来の和名の後に「カイ」や「ガイ」をつけて、貝類であることを「明らか」にしたことは、多くの貝類の和名をグチャグチャにしました。研究者が思い入れなどを暴走させたら、その結果がトンデモないことになります。

チョウセンハマグリが朝鮮半島に分布しているかどうか、まだ最終的な確認ができていませんが、チョウセンフデやチョウセンサザエなどの熱帯産の貝類が朝鮮半島の沿岸に分布していないことは確かでしょう。

チョウセンハマグリの和名は江戸時代の「目八譜」で使われていて、その命名のいわれを突き止めるに至っていませんが、漢字で「朝鮮」蛤と記載されています。シナハマグリとタイワンハマグリもそれぞれ困ったネーミングですが、チョウセンハマグリは特に困ります。

チョウセンハマグリの学名はMeretrix lamarckii です。これはDeshayesというフランスの貝類学者がラマルク大先生に献名したようですが、その学名の意味を考えると敬意を表したのかどうか疑わしくなります。つまり、直訳すると「ラマルク・娼婦」となります。ところがMeretrixという属名はラマルクが設定したものでした。Deshayesがこの学名をチョウセンハマグリに付けた時に何を考えていたのか、もしかしたら敬意を装っただけかもしれない、というのは考えすぎでしょうか。

チョウセンハマグリのラマルクという種名ですが、それが付けられた以前の学名はCytherea morphinaです。Cythereaという属名もラマルクが提唱したもので、これもMeretrixと同様に怪しい意味のラテン語です。これらの言葉でネット検索すると、日本人の大多数は意味がわからないでしょうが、良い子には見せられないような情報がわんさか出てきます。

リンネが付けたVenusまでは二枚貝の学名として許容できますが、放送禁止用語に相当するような学名を遠慮なく使ったラマルクという人はどのような人格の持ち主だったのでしょうか。
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by beachmollusc | 2010-04-22 22:19 | 評論

学術情報の普及

世界的に自然史関連の学術論文・情報のオンライン・アーカイブが急速に充実しているおかげで、日向市という科学・学術の世界から遠く離れている日本の片隅、情報格差の底辺にいても、ほとんど困らない状態になっている。

特に欧米ではBiodiversity Heritage Libraryサイト (http://www.biodiversitylibrary.org/Default.aspx)が強い助っ人となっていて、自然史の黎明期の超レア本を「無料で」ダウンロードできるのがありがたい。日本国内では数少なく、海外の図書室でも館外帯出禁止となっているような貴重・希少図書(古典的な図鑑・図譜など)を自分のPCの画面で見て、必要であればプリントもできる。つまり、古書店のカタログの価格を見てため息が出た書籍が身近になってしまった。

日本海のハマグリ類について情報を集めていて、各地の自然史博物館サイトで収蔵標本のカタログや報告書などをオンライン閲覧できたことは、研究を進める上できわめて効果的であった。たとえば、福井市自然史博物館サイトでは開設された初期の報告書や研究論文、そして収蔵標本のカタログなどが、ほぼ全てpdfファイルとして公開されている。いずれはどの学術研究施設でも同様な情報公開が進むだろうと期待しているが、大学関係、特に国立のものがもっとも遅れるのではないかと思われる。それは、利用者本意の運営ではなく、管理者の都合を優先している文部科学省の会計ルールが強い障壁となっているからである。

図書館とか図書室に収蔵されている図書・文献・資料などは、参照する利用者があって学術情報が有効に利用されるから存在意義がある。そのために、組織的にきちんと管理・運営することは司書の大切な役割であろう。しかし、管理することが目的化されるためか利用者の便宜は管理・運営者の視野に入っていないようである。今回、某有名大学の出先の研究所にある古い文献のコピーを入手しようとして、あきれてしまった。

1945年という出版年と、ローカルな研究施設から一時的に出版された雑誌に掲載されていたので、これまで調べて見た範囲の文献・報告ではまったく参照も引用もされていなかった、レアな報告がたまたま某古書店のカタログに掲載されていた。本文が数十頁の別刷りで、写真図版が10枚付いているものが4200円という値段にビビッて、出版元の研究所の図書室でコピーして送ってもらえないか、と考えた。

問題の研究所は機構再編で名称も研究分野も今では昔とは大きく違っている。しかし、図書室は存続していることが研究所サイトで見つかったので、問い合わせメールを出してみた。その返事がびっくり:大学本部の図書館の相互利用担当に申し込んでください、という。

さらに本部の担当者から来たメール案内で、申請書をファックスあるいは郵送で出せば、コピー代金は前払いで通知し、その確認の後で発送する。面白いことに、送付だけでなく通知のための郵便料金も加算されるのである。これは20年以上も前の情報化時代以前のシステムが今も持続していることを意味している。唯一、文献複写依頼の申請書がダウンロードできることが「シンポ」している。

大学では研究連絡などの通信文書を郵送する場合、1通ごとに会計書類を作成させられたので、あきれて郵便は全部自己負担にしていた。たとえば論文別刷りを多数送り出す場合など、送付書類を作るだけで何時間もかかってしまう。(同じことが今ではpdfファイルでメール添付して、あっと言う間に片付く)

大学に在職中は、大学図書館に欲しい文献がない場合、図書館の係りに必要書類を出しておけば他大学や研究所から取り寄せてくれたので特に面倒はなかった。しかし、その陰で、事務職員が多大な時間の浪費をやっていたわけであった。(本人達は職務を規則どおりやって給料をもらっているだけ)

<以下に大学図書館の係りから来たメールを紹介します(実名は伏せています)>

 複写申込についてご案内いたします。

 複写のお申込は,お手数ですがお近くの公共図書館を通じ、FAXまたは郵送でお願いいたします。お近くに図書館がない場合は、添付ファイルで送らせていただきました文献複写申込書にご記入の上,FAX(xxx-xxx-xxxx)または郵送でお送りください。

 お申込みいただきましたら○○○研究センター図書室に複写依頼をいたします。文献をお送りできる用意ができましたら料金をお知らせしますので、現金書留で下記住所まで料金をお送りください。料金が到着しましたら、複写物を送らせていただきます。

 以下に文献複写お申込の流れと料金についてご案内させていただきました。どうかよろしくお願いいたします。またご不明な点がございましたら、相互利用掛までお問合わせください。

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<文献複写の流れ>
文献複写申込  別紙の用紙に記入して郵送またはFAXでお申込みください。

↓料金通知到着  複写物の用意ができましたらハガキで料金をお知らせします。

↓ * FAXでの料金通知をご希望の場合は申込時に書き添えてください。

料金の支払い  複写料金を現金書留でお送りください。料金が到着しましたら、複写物を発送します。

<文献複写申込みについてのお願い>
・ 申込書は1件につき1通作成してください。
・ 書名、雑誌名は省略せずにフルタイトルで記入してください。
・ 欧文の場合はできるだけタイプ打ち、和文は楷書でわかりやすく記入してください。
・ 所蔵典拠を記入してください。
【例】NACSIS-Webcatで確認の場合 書誌ID ○○大学OPACで確認の場合 所蔵場所/請求記号参考調査済の場合はその旨と回答をあわせて記入してください。
 
*料金通知後1ヶ月を経過しても、送金、ご連絡がない場合はお申込を取り消しさせていただきますので、ご了解ください。  

複写料金  モノクロ 1枚40円   カラー 1枚100円
送料 実費
通信費(料金通知はがき又はFAX)  50円

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4200円(送料300円プラス)が安く感じられたので、オンラインでクレジット決済のできる古書店に注文してしまいました。

現金書留で送金するように指示があったが、これは会計法上の問題はないだろうか。
受益者負担であっても、通信費を相手方に請求することは正当だろうか。
複写料金は機械の原価償却と消耗品の代金を合わせても高すぎないか。
そもそも、前払い制度というのは研究者を信用しないということであるが、貧乏で払えないことを想定しているのだろうか。(古書店でも学術的な図書は後払いが普通)

学術研究のための情報収集のコストを個人に負担させるシステムを維持するのは学術後進国ニッポンの貧しさだろう。同様なことを欧米の大学図書館に依頼したら、即無料でコピーを送ってくれる。

上の研究所のスタッフで研究分野・興味を共有している人がいたらコピーをお願いしたはずですが、残念ながら知人も同業者もいませんでした。
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by beachmollusc | 2010-04-21 09:17 | 評論

日豊海岸をユネスコのジオパークに

ユネスコの世界遺産構想と似た、地球科学にウエイトを置いた「世界ジオパークプログラム」があります。1998年に世界ジオパーク・ネットワーク構想が始まり、世界で500箇所の認定を目指してプログラムが進められているそうです。日本にはその候補地となる日本ジオパークの認定が現在までに25箇所あります。
http://www.geopark.jp/

日本で最初の「世界ジオパーク」が正式に認定されました。
 2009年8月22日に中国泰安市で開催された世界ジオパークネットワーク事務局会議において審議が行われ、以下の 3つのジオパークが世界ジオパークネットワーク加盟ジオパークとして正式に認定されました。
洞爺湖有珠山ジオパーク
糸魚川ジオパーク
島原半島ジオパーク
 

ユネスコの支援するジオパークは次のことを行います:
1.次世代のために地質遺産を守る(保全)
2.地質景観や環境問題について広く大衆を教育し、地質科学に研究の場を提供する(教育)
3.持続可能な開発を保証する(旅行:ジオツーリズム)


下のURLにはこのプログラムについてのQandAがあります。
http://web.mac.com/japan_geoparks/JGN/q&a1.html
世界遺産と異なり、観光資源としての地質構造を重要視しています。

宮崎県の北部から大分県南部にかけての自然は、特に海岸部で、国内有数の景観美と地質的多様性を誇っています。しかし、観光面での認知度は国際的には問題外で、国内的にも極めて低いでしょう。日向市が観光振興計画を進めるための委員会が行った、観光業者などの関係者にアンケートをとった結果を見ましたが、日向市には見るべきものが無い、という答が出ていたのは苦笑するしかありません。

日向市の市役所サイトには、実に立派ですが、よく見ると、うたい文句だけの観光振興計画があります。
http://www.city.hyuga.miyazaki.jp/office/keikaku/kankou/keikaku.pdf
http://www.city.hyuga.miyazaki.jp/office/keikaku/kankou/gaiyo.pdf

日向市の馬ヶ背をはじめとする柱状節理の岩礁海岸は日本一と言ってよいだろうし、礫岩が集積した大御神社の「サザレ石」は外に見られない特異的な存在であり、小倉ヶ浜の砂浜海岸とその北に続く日豊のリアス海岸の見事なコントラストは、都市部からすぐ前にあって、アクセスのよい観光資源です。これらの存在を、地球科学的に掘り下げた情報を出してアピールし、教育と観光に活かす努力がまったくなされてこなかったのはなぜでしょうか。

日本国内では地球科学教育の軽視が自然災害に対する防災思想をゆがめ、繰り返し発生する自然の脅威にコンクリート構造物で対処し、山から海まで柔軟な防災の仕組みを取り入れることを忘れ去ったような現状をもたらしました。

日本は地球科学的な多様性と美しい景観を誇るべき国土を持っていますが、住民は見慣れた景色として慣れ親しんでいても、その価値をきれいに忘れています。それどころか、自然を損ねる景観破壊事業は極めて熱心に行われているのが現状です。このようなコンクリートで固められた奇天烈な箱物文化の状況はすでに世界的に知れ渡っていますから、このままでは日本の自然景観にあこがれて観光旅行に来る外国からの旅行者は期待できません。

宮崎県の北部、日向市を中心にして、工夫と努力と情報発信を続ければ、国際的なジオパーク、観光拠点として認知されることは夢ではないでしょう。そして、国際的な認識が深まれば国内でも見直されるかもしれません。
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by beachmollusc | 2009-12-13 11:31 | 評論

郷土の地名雑録

小倉ヶ浜と金ヶ浜の地名の由来を追って、「ようこそ宮崎」サイトの管理人さんに教えてもらった本「郷土の地名雑録」 佐藤 忠郎/著(地域文化研究所、1985年発行)を日向市立図書館から借り出して読んでいたが、次々と驚くこと、面白いことが出てきた。

同じ著者が出した以下の本も図書館の郷土資料室にあるので、持ち出し禁止本を見に出かけなければならなくなった。「甦えった砂浜」は美々津海岸について書かれたもので、前から参照したかった本である。

甦えった砂浜 佐藤 忠郎/編著 地域文化研究所 1985
平兵衛物語 佐藤 忠郎/著 地域文化研究会 1989

著者の経歴を見たら、1930年西米良生まれ、旧制宮崎農林専門学校(現宮崎大学農学部)出身、高校教諭や新聞記者を経て、フリーのライターとして活躍、執筆当時は「日向みどりの会」の事務局長)。
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「郷土の地名雑録」の中で、郷土の自然環境の保全のために地名とその関連情報を調べて書き記している。その情報を見ると、四半世紀前の日向市周辺の様子がよくわかり、山林の問題や忘れられている山の幸についても当時の状況がよく理解できる。

図書館の蔵書にはないが、この著者はコンニャク紙やコンニャク栽培法などの本を出版したほか、カワウソの生息調査にも取り組んでいた。残念ながら、これらの本の所在は色々検索して探したがわからない。

コンニャク紙は太平洋戦争末期にアメリカ本土を空爆した風船爆弾の風船の素材となったものである。これの素材としての特性を生かして、何か現代風に利用できたら面白いだろう。

カワウソについては、全国登山者自然保護集会 第7回 おおくえ集会(1989年)で講演している(下のpdfファイルの8頁)。
http://www.jwaf.jp/profile/activity/report/pdf/06-syuuyaku.pdf
カワウソの話(延岡市在住;佐藤忠郎). カワウソのユーモラスな生態の紹介と、絶滅したといわれるカワウソを追っている話。

動物地名の章で、北方の「獺越(ウソゴエ)」という地名に関してカワウソについて述べているので、その部分をスキャンした(クリックすれば読みやすくなります)。
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宮崎県の北部から大分県南部、特に祖母、傾、大崩山の一帯では、オオカミとツキノワグマに加えてカワウソが生き残っている可能性があるとも言われている。カモシカはしっかり残っているらしいが、これらの九州絶滅トリオの一角が残っているとすれば、このあたりしかないだろう。

次に、海岸植生の道路工事による破壊、山地の斜面崩壊と人工林の関係、葛の利用についての提言などが含まれている部分をスキャンした。(クリックすれば読みやすくなります)

(二) 地名と防災、治山治水  221頁の冒頭:
延岡市の南部を流れる沖田川右岸の国道十号線の下流(下の画像に続く)
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門川町の川内、庭谷川は五十鈴川の支流であろうが、2万5千分の1地形図ではどれかわからない。

川内の地域に流れている五十鈴川の支流、三ヶ瀬川流域では自然環境がよく保全され、現在でも季節になれば渓流全域にゲンジボタルが乱舞する。渓流沿いの林道はサルナシやマタタビの宝庫である。

著者は杉の植林が山頂まで行われた異常さに気がついているが、その背景に関しては触れていない。
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乱伐された荒地の斜面を葛が覆って地滑りを防いでいる効果は調査され、検証されているのだろうか。

畜産の自給飼料として、また食品や医薬品としての葛は注目されてしかるべきものと以前から考えていたが、それがこの本の著者によって明確に指摘されていた。野生状態であっても採取する資源として量的に問題はないだろうが、収穫する技術に課題が残っているように思われる。また、休耕地などで支柱を作れば、雑草対策不要の農作物として栽培できるはずである。

放棄農地や休耕地を農地として生かしておくために葛栽培を公共事業化してもよいだろう。マメ科特有の共生根瘤菌による窒素固定で土地を肥やしながら、地面を覆って笹などの農地破壊を招く植物の侵入が抑えられれば、一石二鳥となるかもしれない。公共事業はコンクリート土建から頭脳を使ったソフト産業に移行しなければならないが、そのモデルがつくれないだろうか。

山の恵みとなる資源の見直し、忘れられた資源の復活、そして林業の健全化をうまくリンクさせる方策を探るヒントはいくらでもあるはずである。
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by beachmollusc | 2009-10-01 17:50 | 評論

地すべりと林業

26日に宮崎市で開催される「ひむかの砂浜復元ネットワーク」の勉強会で話題を提供するため、情報収集と分析をしてまとめています。パワポスライド「山幸彦のなげき」の原型が出来上がったばかりですが、最近の林道探索中に気がついた林業の問題、斜面崩壊との関係を広く知ってもらうべきであると考えます。砂浜環境の問題は流域河川の上流の山地で起こっている問題と密接に関係しています。

2005年9月に九州を襲った台風14号は宮崎県の山間部に数多くの大規模斜面崩落をもたらした。これに関する情報は応用地質分野の専門家たちによって多数の論文報告として発表されている。それら参照文献のリストを作っている余裕はないが、読んでいて驚いたことは、地すべりや土石流、斜面崩壊に関する議論では、「斜面の角度」、「地層の特性、特に滑りやすい境界面」、「降雨と地下への浸透、水圧」などの直接的な要因が論じられているが、斜面で土砂と一緒に滑り落ちていた樹木に関する情報が欠けていることであった。

地形・地質、降雨などの自然要因が重要であることは否定できないが、大規模な斜面崩壊や土石流の発生で崩れ落ちた樹木や現地の環境改変(植林や林道建設)状況について興味・関心が全く寄せられない(らしい)ことはとても不思議に思われた。岩石、土砂だけを見ているだけでよいのだろうか。

かだいおうち(鹿児島大学応用地質学)サイトで(2004年に退職された)岩松名誉教授が記された:
「九州山地の大規模崩壊、大規模崩壊の地形的特徴」から引用する。
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~oyo/collapse.html

 これは宮崎県椎葉村大河内の写真です。一見して一番よくわかるのは、山腹にいわゆる「はらみ出し」地形が見られることでしょう。この部分には崖錐堆積物(崩壊土砂)が厚くたまっており、幹曲がり樹木も見られます。常時ずるずる滑っている(クリープしている)証拠です。植物の背地性という言葉を思い出してください。幼木の時地面のすべりによって傾いたため、真っ直ぐ上へ伸びようとして曲がったのです。
 また、山頂部を歩くとクラックや二重山稜(尾根)も観察されます。山腹がクリープしてずり落ちたため、頂部に引張の力が働いたことがわかります。さらに、下部には小規模な崩壊が見られます。山腹のはらみ出しに伴う末端崩壊です。これを単なる小さな山崩れだと見過ごすと大変です。この斜面はまだ大規模な崩壊を起こしていませんが、はらみ出し部分がせり出してきて耐えきれなくなると、いずれ一気に崩壊する恐れが強いと思います。  (後略) 以上、岩松・下川(1986)による
  

上の論説に使われている写真の引用については、まだ著者の了解を得ていないので、画像リンクのURL。
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~oyo/gif/okawauti.gif

同じ著者が退職後に書いた雑文からも引用する。
老眼やぶにらみ地すべり学―次世代に期待する― 
岩松 暉(斜面防災対策技術協会地すべり防止工事士技術講習会)
http://www.geocities.jp/f_iwamatsu/retire/hyperopia.html

1.はじめに―私の懺悔―

 1986年、「片状岩のクリープ性大規模崩壊」という論文を書いたことがある。その中で、宮崎県椎葉村本郷地区の山腹に凸地形(いわゆる胎み出し地形)があり、その下部に末端崩壊がある。この末端崩壊は大規模崩壊の前兆現象であって、やがて崩れるであろうと述べた。その写真を鹿児島大学のホームページ「かだいおうち」にも載せておいた。ところが、2005年9月6日、台風14号により、まさにその場所が大規模崩壊を起こしたと、メールを頂戴した。さて、20年前の予言が当たったとして胸を張って良いのであろうか。過疎地のため、人的被害がなかったからよいものの、もしも人命が失われていたら、恐らく責任を追及されたに違いない。学術雑誌の片隅に書いておいただけで、住民にも行政にも警告しなかったからである。その後、崩壊地頭部に林道が建設されたことも知らなかったが、当然、ルート変更を提案すべきだった。なぜ、積極的に働きかけなかったのか。「やがて崩れる」というだけで時間の目盛が入っていないことが示すように、遠い将来と考えていたからである。活断層の話でも、明日動いても不思議ではないし、1,000年後かも知れないなど言って、地質家はひんしゅくを買っている。われわれの世代の地質学では、人間の寿命のオーダーでの予知予測が出来なかったのである。次の世代の方々にはぜひ土砂災害でも短期予知が可能になるくらい学問を進歩させていただきたいと願っている。  以下略 (2008年7月)


この「大河内における大規模斜面崩壊」の現場を9月14日に自分の目で見てから、これに関する情報を集めてみたが、岩松さんの文章がヒットする前に南九州大学の高谷精二・鈴木恵三の共著の報告を見つけた。

高谷 精二・鈴木 恵三 (2007) 2005年台風14号による宮崎県内に発生した巨大崩壊 
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides 44(2) pp.90-96

一ツ瀬川上流、大河内における斜面崩壊の詳細がこの報告に含まれているが、高谷研究室のホームページには現場で撮影された、崩壊した2005年の12月と2007年8月の写真が掲載されていた。
http://takayalabo.web.fc2.com/index.html
下のURLリンクは2005年12月9日撮影の斜面崩落現場の正面から見た全景写真である。
http://takayalabo.web.fc2.com/sokuhou/hongou/h-shoumen.JPG
これと自分が先週撮影した写真を見比べてみた(クリックすると拡大します)。
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この写真では良く見えないが、崩壊斜面の最上部には林道が修復・建設されている。
下はその林道部分を拡大した写真である。ガードレール、フェンス、そして林道下の斜面の土止めが見える。
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高谷研の2007年8月の写真では、林道補修建設の途上の写真があった(下のURLはそれぞれ全景と林道補修建設現場)。
http://takayalabo.web.fc2.com/sokuhou/hongou/070824-2.JPG
http://takayalabo.web.fc2.com/sokuhou/hongou/070824-7.JPG

そもそも、ここで補修された林道が最初にいつ建設されたのか、また周辺の植林の履歴がどうなっているのか、など知りたいことはどこにも記述がない。

上に引用した岩松が述べた「その後、崩壊地頭部に林道が建設されたことも知らなかったが、当然、ルート変更を提案すべきだった。」というコメントは、斜面崩壊前にすでに林道があったことを示すだろうが、1986年の論文が書かれた時点ではどうであったのだろうか。

念のため、空中写真の閲覧サービスで国土地理院の1976年撮影のカラー写真を見たが、オンラインでは解像度不足で良くわからない(ただし、1976年までに行われた大河内周辺の山中で大規模な森林伐採の痕跡が見える)。

急斜面で尾根まで植林されたスギの高密度に育った大木が斜面を不安定にさせているようにも思えるし、集中豪雨の際に林道が川筋のようになり、谷間に雨水を集中・浸透させるようにはなっていないのだろうか。また、そこに治山ダムや砂防ダムがあれば、その部分では何が起こっているのだろうか。

高谷研究室サイトには、各地で破壊された砂防ダムの写真集があったが、そもそもこれらのダムの機能はどのように考えられ、設計されているのか、さっぱりわからない。斜面を安定化させるという建前で建設されていることは知っているが、実際にそのような構造物が期待された機能を発揮しているかどうか、いくら探してみても実証されたような情報は見当たらない。

林道と地すべりに関する報告はいくつもあるが、林道建設を含む林業の山地斜面の崩壊とのかかわりについて実態を深く調べている報告は少ない。下に参考例をメモしておく。

末峯章 「林道建設と地すべり活動について2」
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/hapyo/05/p17.pdf

松元 正美 (2006) 「台風14号による林道被害状況」  鹿児島大学農学部農場技術調査報告書 14, 28-29

2年前に樫葉オートキャンプ村を訪問した時は、その先に進んで椎葉村の大河内に出る林道が(路面崩壊で)全面通行止めだった。
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また、キャンプ場手前の林道が谷を渡る場所には橋があり、その下に砂防(治山?)堰堤の列が土砂で満杯になっていたが、何時崩れ落ちてもおかしくないように思われた。
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さらに、もう少し前の場所では治山ダムの周囲で山地が崩壊していたが、このダムはどう見ても意味の無い状態になっていた。
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この光景を見てから、県内各地で山地の谷間に建設されているものすごい数の堰堤の姿を注意してみているが、何のためにその場所にあるのか、さっぱりわからないものがほとんどであった。

水を溜めるダムでも決壊したら下流では大変なことになるが、土砂を溜め込むダムは決壊したらもっと危ないのではないか。

以前、砂防ダムによる防災キャンペーンで小中学生にポスターを作らせてコンクールなどをやっていた情報を見たが、「砂防ダムがあるから土石流なんて怖くない」という子どもが書いたキャッチフレーズを見てゾッとしたことがあった。

http://www.pref.shiga.jp/h/sabo/06_hou/files/e-shinbun/boshu/nyusyosakuhin.pdf
上の滋賀県だけでなく、各県で同じコンクールを続けているらしい。宮崎県でも募集案内があった。

幸いなことであるが、宮崎県内の多くの堰堤は崩れても特に人的な被害が出そうにも無い、何も守るべきものが無い場所に建設されているようだ。
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by beachmollusc | 2009-09-22 10:20 | 評論