beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:評論( 62 )


限界オートキャンプ場-樫葉

旧南郷村(現美郷町)がかなり前(開設年不明であるが、1993年より前:引用したブログ情報などから)に建設した「樫葉オートキャンプ場」は市販の道路地図にはっきりと記されている。

南郷村が建設した3つのオートキャンプ場の利用案内情報が、南郷商工会が出した昔のままで残っている(美郷町は何をしているの?)。
http://www.miya-shoko.or.jp/nango-v/no02/kyanp.html

上渡川 樫葉オートキャンプ場
   樫葉自然環境保全地域の大原生林と銀水(しらみず)の滝、樫葉村や西都市を通ずる広域林道で、日本最南端のブナ林を走るダートコース、アウトドアの専門家に焦点を絞ったものです。
 総面積1万平方メートルで、全国的にも主流をなすオートキャンプ場です。テントキャンプも可能で、施設はオートキャンプ15組、テントキャンプ15組の収容能力があり、最大150人が利用できます。


市町村合併で美郷町が誕生した際につくられたらしい、「総合計画(素案)平成19~28年度」というファイルを見つけ、その中でこの施設をどうするつもりかを探してみた。
http://www.town.miyazaki-misato.lg.jp/471.pdf
この資料ファイルの23頁に、南郷区の水清谷オートキャンプ場はリストにあるが、残る樫葉と鬼神野の二つのキャンプ場はない(ただし、景勝地としてある)。実績として誰も利用していないため、存在が(積極的に)無視されたのかもしれない。
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2年前にこのオートキャンプ場を見た時のブログ「無人のオートキャンプ場」
http://beachmollu.exblog.jp/6202802

その時のキャンプ場入り口の看板の写真がこれ:
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今回の訪問では、看板が支持金具から抜け落ちて残骸となっていた。
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管理棟前の自動販売機は残っているが、もちろん動いていないし、配電が外されていた。
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立派なトイレと炊事棟は以前のままの姿をとどめている。
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キャンプサイトはかなり草丈が高くて、誰もテントを張ったりする気は起きないだろう。
前回と同様に、車外に出るとたちまち飢えたアブの群れが襲ってきた。
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このキャンプ場に日向から進むと、上度川の集落を抜けてから県道39号線から分岐する広域基幹林道、「度川・大藪線」で度川の上流の渓流沿いに走る。
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この地域は昔から自然林を保存する山地であったというし、看板にもそのように案内されている。
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自然環境保全地域の「指定根拠」として、宮崎県における自然環境の保護と創出に関する条例、とあるが、自然環境というものは保護や創出ができるのだろうか。
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この林道を走ると周囲はほとんどスギ畠であり、「自然林よお前は何処」の世界である。
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「森林を破壊するような行為は絶対に行わないでください」という看板のメッセージが山でむなしくこだましているような気がする。

また、林道の山頂近くでは壮大な伐採跡、植林跡が展望できる。
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古い情報であるが「宮崎の自然」サイトで、この樫葉の自然についての情報(1998年)がある。
http://miyazaki.4zen.jp/016/14/index.html

植生概観の一部を下に引用する。
みやざきの森林植生(16) 三方岳樫葉斜面の植生 河野 耕三

 三方岳東南部斜面には樹齢150年~500年の巨木を含む自然林が海抜700~1479mにかけて残されている。特に海抜1000m以下の低山地域のモミ・ツガ優占林帯の自然林で、これほどの優れた林分が残されているところは宮崎県内では極めて少ない。三方岳西側は九州大学宮崎地方演習林として保護管理されながらかなりの面積の自然林が残されている。しかし、そこにはブナ林を中心に自然林の優れた林分が残されているものの、モミ・ツガ林帯から以下の林分で優れた林分をほとんど見ることはできない。現在、神山谷源流部の海抜1100m付近から三方岳山頂直下付近まで森林伐採が行われてしまってはいるものの、三方岳一帯の垂直分布を調べるには、神山谷を挟む三方岳樫葉斜面は大変優れている。

オンラインでこの場所を訪れた記録が残っているか検索したら、2009年7月に現地訪問の「軟弱登山家山日記」というブログを発見。

槙鼻峠・樫葉林道
http://blog.livedoor.jp/oukueyama/archives/51384175.html

☆彡☆彡☆彡☆彡【樫葉キャンプ場は廃止されたようです】

《樫葉オートキャンプ場》は槙鼻峠への途中沢本流を最後に渡った左側にありました。看板は朽ちて壊れ、管理棟内には1993円年6月の新聞が、キッチンには賞味期限1993年の桃屋のつゆ未開封がありました。テント2張りや貸し出し用飯盒、冷凍ケース、ペチカ。南郷村時代のパンフレット。入口には旧型自販機・ダイヤル式ピンク電話、裏には昔の「今は無いブランド」のビール瓶が・・・。
たまに草刈りをするのでしょうかテントサイトは草茫々ではありませんでしたがサツキが邪魔なくらい伸び放題にされています。
水道は生きているので調理棟、トイレは使えました。トイレ併設のシャワーは100Vが来ていないので使えないのでは?(引き込み電柱は有りますが電線が無く電力計もメーターボックスの中にありませんでした)
有料のオートキャンプ場としてガイドブックには載っていますが、来るまでの林道は細いし大型キャンピグカーで来てしまった人は苦労しますね。【樫葉オートキャンプ場は閉場したようです】


ブロガーが大型キャンピングカーの心配をしているが、このキャンプ場へのアクセス林道は南郷側では極めて路面が悪くて、4輪駆動のオフロード可能な車向けのコースである。林業用の大型車両が路面をベコベコにしていて、それが補修されていないし、路肩が危ない場所もかなりあるので要注意。

度川・大藪線で峠を抜けて椎葉村に入ると、とたんに道が良くなり、路肩が大きく崩落した部分を最近補修した場所が所々に見られ、2004年からしばらく通行止めになっていた(2年前はこの林道は通行できなかった)理由が良くわかる。また、ツーリングマップルに示されている、九州大学演習林沿いの長いダート道がほとんど舗装されていて、現在は最後の区間で工事中。その工事中の車両3台が道を開けて通してくれた。
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行政当局に(意図的に?)見放され、看板が腐れ落ちた(全国的にも主流をなす)樫葉オートキャンプ場の姿を見ると、山中のいわゆる「限界集落」の行く末が重なって見える。

樫葉から元ダートのピカピカ舗装林道で大河内に向かい、(酷道388経由)上椎葉へ向かう大河内・桑の木原林道を走っていたら、標高800m地点にバスの停留所があって仰天した。
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林道沿線に点在する極小の集落を結ぶ1日1往復のバス・サービスを維持することは何時まで続くのだろう。

「命の道」として林道の建設と補修工事、それに加えて砂防事業などの土建が地域の基幹産業と化した山村に明るい未来が開けるのだろうか。
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by beachmollusc | 2009-09-17 09:36 | 評論

山間僻地のレクリエーション施設の現実

11日は片岡教授のサルナシ類調査で、県内北部のシマサルナシの野生株の生えている場所を辿って車を走らせました。

最初は大分と宮崎の県境を、波当津から直海までの県道122号線を走り、虫こぶのような異常な果実を調べました。次に鏡山林道でも異常な果実の混じったシマサルナシを見ました。何がどうなって異常が起こっているのか、専門家による検討結果が楽しみです。そして、北方に移って、布引林道で見つけた細長い果実のシマサルナシ、最後に六峰街道に上ってETOランドの手前でみつけておいたシマサルナシや天文台の近くの不思議なサルナシ類を見てもらいました。昔記載されていて、今では忘れ去られているヒロハナシカズラの再発見につながるか、または未記載種でも出てくるか、調べる楽しみは尽きません。

ETOランドの入場者がどのくらいあるか興味を持っていますので、前を通過するついでに、入場無料のゲートをくぐって駐車場を見てきました。毎週火曜日が定休日ですが、昨日は金曜日で営業中、その観察結果は、数ヶ月前に立ち寄って見た時と同様に、広大な駐車場に車が1台!ありました。本館には駐車場の端っこに1台だけで、多分従業員(留守番!)がいたのでしょう。

山上の風車がほとんど誰もいない施設で寂しげに回っている姿が哀愁を誘います。
http://www.etoland.jp/

延岡市の公設の観光、レクリエーション施設の利用状況について統計データが公表されています。
http://nobeoka2.miyazaki-nw.or.jp/toukei/toukei-h20pdf/15.pdf
このファイルの5-6頁にETOランドに関する数字があります。

施設案内には休園期間があるとは書いてありません。標高1000m近い山上のことですから、自家用車でしか行けないし、悪天候で遊園地が利用不能となり休園となるでしょう。冬場は林道の路面が凍結しているかもしれません。年間営業日数のデータが示されていませんが、週6日の営業であれば、年間の営業日数はおそらく最大で約300日です。これをベースにしてデータを読んでみました。表示された年度は平成15年から19年、項目は入園者数、宿泊件数(延べ日・人数は不明)、人工芝スキー場利用者数、ゴーカート利用者数を抽出して、300営業日で割って、営業日1日当たりの利用状況としました。
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宿泊客の中で、貸し別荘(全部で6棟)利用が1日あたり約1件です。全体のキャパシティが示されていないので正確にはわかりませんが、館内の客室の利用率から見て、もしホテルであればとっくの昔に破産しているでしょう。施設を運営、営業するという感覚がもともと存在しないために、このようなデータを出しているのか、内情を知られたくないために、表示をぼやかしているのでしょうか。

団体利用者として大学スキー部などの合宿があるようですが、それを除くと、施設が目指していたらしい家族連れの一般的な利用客は微々たるものと思われます。ゴーカートの利用者数がその指標になるでしょう。

データ解析する前に想像していたよりも利用者数は多かったのですが、この巨大な施設を維持する経費と人件費をまかなうようなレベルの客数ではないと思われます。本来は地元の議員さんが気にするべき問題でしょうが、赤字補填のための延岡市の持ち出しはどの程度あるか、そのデータを見たいものです。

この施設を経営している財団法人「早日の峰振興事業団」のHPでは、ポータル頁に広告スペースを設けていますが、お金を出して利用しているものはありません。また、施設の草刈などについて、応援ボランティアを募集しています(施設利用の優待あり)。しかし、このような山中の施設を利用するリピーターが地域にいるのでしょうか。従業員経費の節減のためか、アルバイトを募集していますが、麓の住民であっても往復が大変な場所に時給650円で働く者が見つかっているのかですが、募集案内がずっと続いて出ているので、応募が多分ないのでしょう。

以前、緑資源林道探検で大規模林道の宇目・須木線、須木区間を訪れたのですが、「すきむランド」という須木村(現在は小林市)の公設レジャー施設のすぐ傍まで行きました。時間が無くて現物は見ませんでしたが、宮崎市からでも、とても遠い場所であるし、ここも経営が大変だろうと想像していました。二番煎じの大吊橋で綾町に対抗しても勝負にはなりません。
http://www.gurunet-miyazaki.com/kankouti/sukiland/sukiland.html

西日本新聞サイトのニュースによると、すきむらんどのゴーカート場が切り売りされるそうです。
http://www.47news.jp/localnews/miyazaki/2009/09/post_20090910023409.html

 宮崎県小林市は、公設民営のレジャー施設「すきむらんど」(同市須木)のゴーカート場の土地を、酒造会社「すき酒造」を傘下に持つ同市の食品卸業「コダマ」に売却することを決めた。コダマは一般の見学もできる酒造工場や貯蔵施設、売店の建設を予定。市は「すきむらんどの来場者数増加も期待できる」としている。

 市によると、ゴーカート場の広さは約4900平方メートル。約194万円で売却する予定で、開会中の9月定例市議会にすきむらんどの設置・管理条例の一部改正案などを追加提案した。

 温泉施設や宿泊施設を備えるすきむらんどは1988年、同市と合併した旧須木村が開業した。旧村時代から「すきむらんど振興協会」が運営にあたってきたが、昨年、指定管理料流用などずさんな会計処理が問題となり、今年4月から指定管理者が変わり、経営や運営の改善を進めている。

 現在、すきむらんどの指定管理者となっている「NPK」(宮崎市)によると、ゴーカート場は現在、週末と祝日を中心に営業。営業日一日当たりの利用客が「5、6組」程度にとどまっていることもあり、NPKは「新施設と連係して観光振興を図りたい」としている。

=2009/09/10付 西日本新聞朝刊=

整地済みの土地が1平方m当たり約400円、坪1300円あまり、の叩き売りですね。この会計処理は問題とならないのでしょうか。役所に責任があるはずですが、誰も責めを負わないシステムになっているのでしょう。

これらのほかに公設のレジャー施設は諸塚村や美郷町などの山中にいくつもあって、どこも利用されているような気配が感じられません。存在すること自体が忘れられているらしい施設もあります。どこでも同じですが、最初から、営業利益を出し、施設の維持経費をまかない、施設建設の原価償却をするつもりもないまま計画され、出来た後も利用者にアピールすることも無く、時間が経過して崩れ落ちるまで「そのまんま」にされてしまうでしょう。「持続性」というキーワードがどこにも見当たらないのが、箱物行政の特徴です。都市部にあるシーガイアが破綻する時代ですから、僻地の山中でほとんど誰も来ない、どうにもならないレジャー施設の建設に公金をぶち込んだことは狂気の沙汰と思われます。
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by beachmollusc | 2009-09-12 17:01 | 評論

地域再生計画とは何か

門川防災ダムの謎の道路が気になって、広域農道との関連を探っていたら、延岡における土建事業計画のファイルが出てきた。

地域再生計画
http://202.232.190.90/jp/singi/tiikisaisei/080331/plan/143a.pdf

何を「再生」するのかと内容を吟味してみたら、この再生事業とは市道、広域農道、そして林道を建設することが骨子となっていて、そのための理由付けがあれこれと記述されている。

市道 540m → 建設費 1億2千万円     (1m当たり単価 約22万円)
広域農道 1,625m  → 35億1750万円  (1m当たり単価 約210万円)
林道 3,829m → 1億8千万円         (1m当たり単価 約4.7万円)

広域農道沿海北部地区は昭和53年に策定. された広域営農団地整備計画に位置付けられた基幹的農道で(昭和58年事業計画確定)、 全延長30kmを整備するものである。

事業費に関して、道整備交付金とやらが半分であるが、それは国の予算から来るものであろう。なんだかなんだと色々な「事業」が列記されているが、それらに関する予算措置はゼロであって、お題目のみ。結局、予算を再生するのであろう。

広域農道の建設単価が突出しているので何だろうかと思ったら、トンネル建設が入っているらしい。

夕刊デイリーWeb ヘッドラインニュース 2009.8.25
広域農道 桜ヶ丘ー大峡が開通
http://www.yukan-daily.co.jp/news.php?id=9016
県が整備を進めている、広域農道沿海北部地区(日向市塩見-延岡市大峡町、延長約30キロ、愛称・日豊グリーンライン)のうち、延岡市桜ケ丘と大峡町を結ぶ約2・5キロの区間が完成し、きょう午前9時から通行可能となった。 (以下、略)

この広域農道の全長30kmがどうなっているのか、地名だけでは良くわからない。しかし、上の夕刊デイリーの記事によると、門川町の中村(防災ダムのある場所)と延岡市小野町の間の区間がいまだに事業化されていないそうである。おそらく門川町の中でなにやらうごめいているのであろう。ちなみに、防災ダムの謎の道路の東側の山中で広い区域を造成しているような状況がヤフー地図の空中写真から読み取れる。

地形図で見ると、広域農道の建設が予定されている経路は、国道10号線、そしてそれに平行している建設中の東九州自動車道よりも内陸側で山地を走るようである。おそらく尾鈴サンロードと似たような道を、山腹を切り刻んで建設するのであろう。

地域の再生とは道路建設と見つけたり、である。広域農道は農産物などの輸送に役に立つそうであるが、尾鈴サンロードを走って見ていると、要するに国道のバイパス程度の存在であって、時間短縮に関しては国道が渋滞している時には信号停止の無い農道の方が早いかもしれない、という程度である。

広域農道建設の予算を自動車道に振り向けていれば、とっくの昔に宮崎県内の自動車道は完成していたような気がするが、どうであろうか。もしそれだけでは足りなければ、緑資源大規模林道の予算があればお釣りがきたであろうか。

門川防災ダムの謎の道路には分断された2区間にそれぞれ二つ、合計4つの行き止まりがある。
5月20日にシマサルナシを調べた時撮影したそれぞれの行き止まりと立派な橋の写真です。
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路面に泥の跡がついているのは、ダンプトラックが道路の向こうの造成地から出入りしていたため。
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舗装された道路の終点から急な降り坂で下の人家に出る細い道がある。

谷間に向かって真っ直ぐの終点であるが、左側に削り取られた斜面に登って、そこでも終点となる。
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橋は南側の両側行き止まりの道の中央にあり、枝道で一般道に結ばれている。
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by beachmollusc | 2009-09-05 21:28 | 評論

漁船の無い漁港 延岡市神戸町

日本の海岸線総延長は約3万4千キロとされていますが、これに対して全国にある漁港は「指定漁港」として第1種から4種までランク付けがされ、総計約3千の漁港があるという統計があります。そのほとんどが海岸にあり、全国的に平均すると、海岸線10数キロごとに漁港があるという勘定です。
漁港港勢の概要(平成16年) - 水産庁ホームページ
http://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/kousei/gaiyou.html##zu1-1

宮崎県には県が管理していない第1種と第3種がそれぞれ1港でその他が23港、合計25港があるようです。
都道府県別漁港管理者別漁港数一覧 都道府県別 (平成21年1月1日現在)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/pdf/07_188.pdf

宮崎県のホームページでデータを見ると県が管理する23の漁港が地図上で示されています。
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000080266.jpg
この図を見ると、日向市の美々津、平岩や細島の漁港が示されていません。また、門川漁港は一つだけですので、庵川漁協の漁港がわかりません。どうやら指定漁港ではない、つまり漁港と呼ばれていない漁港の数の方が多いようです。平岩港などは日向市が管理しているようです。

漁獲物の水揚げが行われていないけれども、漁船が係留されている実質上の漁港の数がいくつあるのか、全国規模で見たら恐ろしいことになりそうです。多分、日本が世界一漁港が多い国でしょう。漁港あたりの漁業従事者数や水揚げの統計がありますが、統計数字がなんだか無意味に思えてきました。

昨日の田舎道探索中に、もっと恐ろしいことを発見しました。漁船が一隻も見当たらない漁港?がありました。もちろん、管理上は漁港扱いではないでしょうが、場所柄といい、見た目は漁港にしか見えません。

延岡市北浦には浦城港があって沖合いの島浦島とフェリーおよび高速船で連絡しています。浦城は昔、海賊の拠点となっていたようですが、リアス海岸が天然の良港となっていて、湾内には真珠養殖いかだが見られます。もちろん漁港がありますが、これは漁港とは呼ばれていないものの一つでしょう。(延岡市漁業協同組合があります)

浦城と日向市の往復にはいつも国道388号線で山の峠越えをしていましたが、今回初めて海岸線沿いの県道212号線を浦城から延岡市東海に向けて走りました。浦城の南側湾口に近い場所で、漁協が経営するらしい真新しいマリーナが出現して驚きました。

その記事が「水産宮崎」というサイトに出ています。ヨットは見当たりませんが、釣り用の小型ボートが少しだけ広大な係留場にありました。

水産宮崎 No.597 [漁連情報] 2009.07.01発行
http://www.jf-net.ne.jp/mzgyoren/magazine/200907/category04/index02.html

去る6月13日、延岡市漁協の運営による浦城マリーナ係留施設竣工式典が、江藤代議士をはじめ多数の来賓出席のもと開催された。
主催者を代表し、日野組合長の挨拶があり、その後多数の祝辞が送られた。
県内漁協では初めての試みとして、延岡市漁協が、国・県・市の支援を受け「強い水産業づくり交付金事業」を活用し、プレジャーボート係留のための施設として整備され、漁業・漁村の持つ多面的機能の大きな柱の一つとして期待される。


専業の漁民と遊漁者との間でお魚の分捕り合戦による軋轢がアメリカなどでは厳しいのですが、延岡の沿岸では問題がなさそうです。しかし、これが「強い水産業づくり」事業ですから大きく開いた口がカパっとなったままです。地元の漁港関連の土木建設業者の懐は少しだけ潤ったかもしれません。土建化行政の典型例です。

国道388号線から県道212号線に枝分かれする場所がわかりにくく、通過してから気がつきました。
道路標識は実に見事な状態でした。
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212号線が岬の海岸線に出る場所には安井町に漁港でない漁港がありました。写真は撮影しませんでしたが、典型的な田舎町の漁港です。ここには漁協の支部もあるようです。

さらに崖の上で海岸線を南下すると、次に神戸町の海岸に出ました。ここに無人の「漁港でない」漁港がありました。小舟も全く無いし、漁業を営むような道具や設備など、漁港にあるはずのアイテムもゼロでした。
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この神戸町について延岡市のHPでチェックしてみたら、住民数がわかりました。総計17世帯36名です。http://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/toukei/machibetsu.pdf
労働人口の区分別統計はわかりませんが15から64歳までが13名です。もし漁業従事者がいても数名でしょう。
この場所の空中写真を国土変遷アーカイブサイトで見ましたが、1978年に撮影された写真には砂浜海岸に小船が数艘見られます。この時点で南側に防波堤がありますが、港は建設されていません。
http://archive.gsi.go.jp/airphoto/ViewPhotoServlet?workname=KU781&courseno=C5&photono=20

1993年に撮影された海上保安庁の空中写真を見ると、港は建設されていて、港内に小さな船が6隻見られます。
http://www4.kaiho.mlit.go.jp:8082/Air_code/ASP/ps_kou_gazou.ASP?img=../../Photo_gallery/Heavy/1993/199320239.jpg
同じ写真に隣の安井町の漁港が見えますが、これには26隻数えられました。

港が建設される前の砂浜はかなり広くて周囲は美しい海岸です。延岡市の中心街から近い場所であるし、自然環境を保全していれば海水浴やレジャーには絶好の良い浜だったと思います。港の建設で村落外の土建業者を養っただけで、地元には何も益がなかったと思われます。

日本中で海岸の集落すべてに漁港が建設されているような気がしますが、一体全体どのくらいの公共投資が行われたのでしょうか。漁港建設として表向きにされている事業予算だけでも莫大でしょうが、神戸町で見られるような、漁業にも他の目的にもほとんど機能していない構造物の建設にどれだけ税金が消耗させられて国力を削いできたのか、是非、新しい政権にしっかり検証してもらいたいものです。
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by beachmollusc | 2009-09-02 16:35 | 評論

宮崎県の自動車林道建設

一昨日の北郷区内での林道探検は、造次郎山から下山した後に、未踏査だった国道388号線の東側で327号線の北側にある上八峡(カミヤカエ)を訪れました。388号線の和田越バイパス、山口トンネルと和田越トンネルの東側の山中です。

上八峡へ向かう道の途中で、まさに開設中の自動車林道に遭遇しました。カイノキ谷線です。
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ジャリが敷かれたばかりの道で、まだ路面が締まっていない、とても走りにくい道でしたが、全線開通していて、現場では重機で最後の仕上げをやっていたようですが、始発から終点まで走ってきました。
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細切れの区間ごとに各年度(少なくとも18年度から20年度)の建設標識がありました。
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終点のところで別の舗装自動車林道に出ました。
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そこで、この道を左折して山を下ると、和田越トンネル付近に出る道となっていました。林道標識では和田越・五郎太線とありますから、最初のところで右折していれば東の山之口・五郎太線に接続する道だったかもしれません。
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とにかく、県内の山中では相変わらず誰も通らない林道建設が続いています。

宮崎県のHPの林業の情報で民有林内の自動車林道の総延長距離のデータが見つかったので、グラフにしてみました。これは緑資源林道などの国が開設している大規模林道は含まれていないと思います。
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データの元は:林内路網統計
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kankyo/seibi/zourin-hojyo/page00166.html
<当該調査は、県内の民有林における林道、作業道(路)の整備状況を把握し、林内路網密度などの基礎資料を得るため、毎年度、実施しています。>

サイト内に今回走った和田越・南川線の写真がありました:
(写真:九州山地の尾根伝いに伸びる和田越・南川線)
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000086153.jpg

データとして平成18年度(2006年)までの調査結果が示されています。上のグラフでわかりますが、1980年から2000年までは約800km、年ごとに40kmくらいのペースで自動車林道が延長されています。今世紀に入ってからはペースが半分程度に落ちていますが、目標の路網密度を達成するまでは今後も建設を続ける計画があるようです。

こういった、社会インフラ投資に見合った林業生産が将来的に見込めるのか、また林道建設が林業の振興に寄与できているのか、しっかり検証するべきでしょう。県の林業公社の取り扱いについての情報もありますが、莫大な借入金を積み上げていて行政のお荷物となっていることは林野庁と同様です。

社団法人宮崎県林業公社の今後の経営形態について
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kankyo/seibi/ringyo_kousha/keieikeitai.html
自分勝手なダイアグラムで公社の存続が適切であると都合よく主張していますが、経営破綻に関してはその責任から逃げています。経営が全くだめな破綻した組織が存続できるのはお役所ならではのことでしょう。

{追記}

林道カイノキ谷線について調べてみたら美郷町の事業計画書が見つかりました。

頑張る地方応援プロジェクト
http://www.town.miyazaki-misato.lg.jp/736.pdf

上のファイルの11頁の美里町林道網整備プロジェクトに掲載されていましたが、道整備交付金事業というカテゴリーの中で、カイノキ谷線、開設410m、事業費95,877,000円ですから、未舗装で1mあたり23万円強です。この道筋に集落や農地は無いようですので、つくるためにつくったように見えます。

緑資源の大規模林道、つまり7m幅で片側1車線の完全舗装、ガードレール付き、の建設単価が1mあたり約20万円です。ジャリ道で幅4m程度の低規格道路の建設単価が大規模林道と同等というのはなかなかのミステリーです。

ヤフーの地図と空中写真でこの林道周辺の様子がわかります。地図には見られない林道だらけですが、それが枝分かれを続けて急速に増殖しています。ツーリング用の地図が全く当てにならないことはライダーさんたちの走行レポートを見ると良くわかります。
http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=32.464663904127484&lon=131.45890419912857&z=16&mode=aero&pointer=on&datum=wgs&fa=ks&home=on&hlat=32.498150674512&hlon=131.49516766501&layout=&ei=utf-8&p=
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by beachmollusc | 2009-08-28 08:41 | 評論

林野庁の原野商法とリフォーム詐欺

「森林の崩壊」 (副題: 国土をめぐる負の連鎖) 
白井裕子 著、 新潮選書296 (2009年1月) 187頁
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昨日配達されたこの本を一気に読みました。日本の森林と林業の深刻かつ構造的な問題について生産現場から木材のエンド・ユーザーである伝統的木造建築の現場を探訪し、データを集めて客観的に分析した結果を論じています。一般市民の多くの人に読んでもらいたい本の一つです。

この本で具体的にかつ詳細に説明されているが、山林から建築まで整合性の無い行政ルールによってガンジガラメ状態であることを理解しないと、いくら小手先だけの対策を施しても状況は変らない。また、従来の補助金をばら撒く行政手法が(まともな)当事者の意欲を削ぐだけであり、産業育成につながらないことを理解することが重要である。土建構造物のみが繁栄し、国土と産業が荒廃する構造的な疾病の根本を治療しなければならない。

この本の103頁には以下のような文章がある。

日本に合った日本人らしい仕組みを

 何事でもそうだが、自分の思い通りにビジョンを描き、そのマニュアルに従ってもらい、一から十までコントロールするより、それぞれの個性を尊重しその力をいかんなく発揮し、自発的に伸びる方がよく成長し、持続性が高い。そして後者の仕組みを考える方がはるかに難しい。国から地方にお金が配布されるほど、個性や発意自立性が薄れ、競争力が衰え、地域社会が衰弱していく理由の断片がここにも見えてくる。片田舎には不釣合いな地元民も驚くような箱物が出現するのも、このような仕組みのお陰であろう。どこも似たような施設が建ち、立派な道路が延び、どこへ行っても同じような風景が広がり、そしてそこから人がいなくなる。  (後略)

林野庁のとってきた行政手法が国土、環境に大きな負の遺産を残しているだけでなく、それがますます増大し続けている厳しい現状は一般市民の視野から巧妙に隠蔽され続けているようである。もちろん、その大きな歪が表面化して隠れ蓑となっていた「緑資源機構」が破綻したが、尻尾が切り落とされただけで本体は健在である。補助金支給のマニュアルつくりしか頭にない、山林を荒廃させるだけで森林を守らない役所は国にとって必要な存在であるかどうか、客観的に検証されるべきであろう。少なくとも失政の責任の所在を明白にして、複雑骨折した患者にバンソーコーを貼るようなことで治療していると勘違いしている役人達の意識を根本から変えないと日本の森林とその環境はお先真っ暗であろう。

「緑のオーナー制度」:http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2513
分収林制度の一形態で、国有林野事業における分収育林制度を指す言葉。分収育林制度とは、20~30年生の育成途上の樹木について、土地所有者、育林者、育林費負担者の3者、または2者が契約を結び、数十年後の伐採時に得られる収入を契約時に定めた割合で分配する制度(根拠法:分収林特別措置法。国有林については、国有林野法)。
この分収育林契約における育林費負担者を緑のオーナーと呼んでいる。本制度は、国民参加による森林整備を進める方策のひとつとして1984年から開始されたが、国有林野事業が公益的機能を重視した管理方針に転換した結果、対象となる森林が大幅に縮小してしまったこともあり、1999年度から公募を休止している。


上の国有林野事業では、その経費を一般市民から集め、環境保全されるべき国有林を舞台に天然林を伐採して人工林の過剰生産を促した。(国有林以外でも分収林として同様なことが税金の投入で続けられている。)緑のオーナー制度は結果的に出資者の期待を裏切り、訴訟中である。林野庁は莫大な借入金を返済する目的で国有林内での林業を拡大させるために行ったつもりであろうが、借金が膨らんだ理由がわかっていたはずであると考えれば、あえて「原野商法」に似た手法をとったとしか思えない。裁判の判決がどのようになるかわからないが、行政的に失敗しても担当責任を問われないような仕組みが出来ている役所であるから、教訓を生かすフィードバックで改善されることは期待できそうにない。

「国有林野事業が公益的機能を重視した管理方針に転換した」ということであるが、このリフォームは本物であろうか。金儲けが失敗したため、分収林方式の国有林での林業から撤退しただけではないだろうか。実際に行われている山林の皆伐、再植林の様子を見ると、本質は何も変らないとしか思えない。

「対象となる森林が大幅に縮小してしまったこと」ということは、役所の管理方針の匙加減一つで、全く同じものがコロコロと変ってしまうということである。財政上の都合を優先させて林業の拡大を図ったが、それに失敗したので、つじつまあわせに「公益機能」などという「事業を進める上で都合が悪かったので隠しておいたこと」を持ち出すのは「詐欺」である。

「森林の崩壊」の本で指摘されている林野行政、補助金支給のリフォームの積み重ね(マニュアルの改訂)の実態を知ると、誰でもあきれ果ててしまうだろう。また、非現実的、画一的なマニュアル通りに事業が行われて補助金が執行されていなければ、「怖い監査」が待ち受けているというのは(現場の当事者には気の毒であるが)コミックとしか思えない。切り倒された木の倒れた方向がマニュアルと違うと、その向きを「正しく直す」ように指導している役人の姿を山林の中でぜひ見てみたいものである。

「日本では補助金をもらうためには行政のマニュアル通りにしなければならない。つまり、新しい方法を考えたり、工夫したりする余地が少ないのである。日本の林業が変らない、変われない理由がここにもある。」という「森林の崩壊」の著者の言葉に日本の森林問題が集約されている。
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by beachmollusc | 2009-08-23 09:33 | 評論

土石流と山地の道路

「記録的な」豪雨が未曾有(みぞゆう)な「自然災害」となって、深い傷跡(しょうせき)を残す、というパターンが何度も繰り返されている。未曾有とは、いまだかつて無い、滅多に無い、つまり想定外の意味であろうが、それが「頻繁(はんざつ)に」起こっているということは、いったい何がどのように想定されていたのであろうか。それは言葉の読み違いではなく、意味を取り違えて使っているのではないだろうか。

日本列島には南から台風がやってきて、梅雨前線や秋雨前線と重なると局地的な豪雨となり、山地では土砂災害がもたらされる。このことは周知であっても、実際に生命と財産が脅かされるような、土砂災害が発生する時と場所はあらかじめわかっていない。しかし、その確率が高い、つまり危険な場所はわかっていることが多い。

土石流災害については必ず原因調査が行われているので、その情報を元にして防災を考えるべきであるが、実際には、コンクリート構造物の建設を柱にした災害復旧事業に注意が集中されているようである。同じような災害が起こる可能性が高い場所は多くあるから、原因の分析を元に被害を未然に防ぐことも重要である。

下に示した設計事務所は実際に起こった土石流について詳しい調査報告をホームページで公開している。

株式会社 米北測量設計事務所 http://www.yonekita.co.jp/

平成10年10月17日台風10号による土石流災害の検討 2003/3/31
http://www.yonekita.co.jp/pdf/topics01.pdf

この報告を見ると、2002年の台風10号によって愛媛県で発生した土石流災害は、調査報告の3件すべてが山地の道路(町道)の造成場所の「盛り土」部分が引き金となっていた。まとめの部分で述べられた一部を引用する。

{ 以上土石流災害が発生した3箇所について、調査を行ったが、地形上の共通点としてあげられることは、崩壊頭部に全て道路があり、凹型の収水地形をなし、流域形状比が0.15~0.4と小さいことである。また、流域面積0.07~0.1 km2と非常に小さい流域で土石流が発生しているのが特徴的である。
 台風10号の降雨が全降雨期間中の後部にピークが集中している降雨特性により、前期降雨で飽和状態となった表土が、上記のような地形特性により、源頭部面積が小さいにもかかわらず、瞬時に降雨が集水され、予想以上の洪水となり、土石流となったと考えられる。 (後略)}


平成15年7月九州中南部豪雨による土砂災害調査報告 2004/2/20
http://www.yonekita.co.jp/pdf/topics03.pdf

この報告では熊本県宝川内地区で起こった大規模な土石流(死者15名、全壊家屋13棟)の調査報告がある。その要点について下に部分的に引用する。

{宝川内地区は、宝川内川の谷筋の最も下流部にある集落で、標高は90~100mであり、集川が横切って宝川内川に合流している。集地区は扇状地となっており、約1.1 km上流、標高440 mの斜面の崩壊に伴う土石流が合流地点付近の民家を巻き込み、途中3基の治山ダムを崩壊して、V字谷の両岸を削りながら雪だるま式に拡大し、土石流となって一気に集落を襲った。}

{崩壊源は、2度に渡り崩壊したと考えられているが、まず最初の崩壊の段階で、ある程度ダムにより流速が低下し、水通しが閉塞し袖の高さまで埋まり、相当な河床の上昇があったと考えられる。この段階ではダムの破損はなかったと思われる。
 2度目の崩壊は、かなり大規模と考えられ、1~3mの巨礫を多量に含み、1度目の崩壊により堆積した土砂は、水により泥流化しているため、後続石礫が運搬されやすい状態となっており、その流下エネルギーでダムを破壊し、ダムに堆積した土砂と共に、渓床や渓岸を浸食しながら最終的には現時点の河床まで浸食したと考えられる。}


以上の情報が正しければ、宝川内地区の土石流では、古くからあった、土砂を溜め込んでいた3つの治山ダムは一時的には土砂の流下を足止めしたが、溜め込んだ土砂と一緒に崩落したようである。

{崩壊過程として、最初に下部の表層すべりが考えられる。もともと集川の流水による洗掘や、林道施工時点で緩んでいた法面の基礎部が、集中豪雨によりさらに洗掘され、基礎部が開放されたことにより、水を含んだ凝灰角礫岩由来の崩積土(粘性土)が、浅い表層すべりを起こしたと考えられる。
 2度目に下部崩壊により不安定となった上部法面の大崩壊が発生したと考えられる。 (後略)}


崩壊が始まった場所の現場写真を見ると、林道がその中央部を横切っているが、最初にこの林道部分の表層の地すべりが起こり、それに続いて上部の人工林の斜面が、そこに植えられていた(大きく成長していた)スギごと崩落して、土石流が起こったようである。引用した報告ではあからさまに指摘していないが、林道の存在が重要な引き金となったことは容易に想像できる。

現地の地質的、地形的な「特性」が集中豪雨のもとで地すべりを起こしやすいという、専門家による指摘は正しいものであろう。しかし、実際に引き金を引く役割を演じているもの、そして事態を悪化させているものについてはなぜか触れられないままである。上の調査報告以外にも、行政(大学や研究所などの専門家による)の報告もオンラインで見ることが出来るが、斜面にある山林の崩落について注目していないようである。
たとえば、土木工学関係団体の調査報告:
http://www.jsce.or.jp/committee/jiban/slope/hp030728/report030728-2.pdf

2003年7月九州豪雨土砂災害
http://www.disaster-i.net/disaster/20030720/

当該地区の空中写真などは(株)アジア航測のサイトに掲載されている。
http://www.ajiko.co.jp/bousai/kyusyu/kyusyu.htm

土石流災害が起こっている場所では、上の例のように、植林とそれに伴った林道建設、さらに治山ダムの建設が行われていることが多い。最近山口県で発生した土石流災害でも治山ダムが崩壊している。現地の写真を見ると、林道の存在がわかるし、前に斜面が崩壊した跡が近くの山腹の林道沿いに見られる。

宝川内地区の土石流災害は、ハード面での対策の限界を浮き彫りにさせている。その後の経過を見ると、災害復旧事業で再び治山ダムの列を元のように建設し、さらに下流部に砂防ダムを建設している。この地区の集落はこれで当面は守られるであろうが、周辺にある、よく似た状況に置かれた渓流の扇状地にある集落は大丈夫であろうか。気になることは、これらの集落の周囲の山地には杉と檜の人工林が広がっていて、それが伐採時期にかかっていることである。同じような状況は九州山地の宮崎、大分でも広く見られる。

現在の林業は、経済効率重視の掛け声のもと、大型機械を使って人工林を皆伐、つまり山の斜面の樹木を大規模に丸裸にしている。林業機械と丸太を輸送する大型トラックを通すために林道は大規模に改修されて幅が広くなり、周囲の斜面が大きく削り取られている。九州山地では人工林は山頂、稜線まで植えられていて、伐採した樹木をワイヤーで道路まで引き上げてからトラックで運ぶシステムが作られている。そのために、林道は山頂まで縦横無尽に開設されている。

人工林となっている杉は挿木苗によって成長の早いクローンが育てられているが、樹木が大きく育っていても地面の下で浅く根を張っているため、暴風による倒木の問題が起こり、そして斜面ごと一緒に崩れ、河川に流出して海まで流される。そのため、台風豪雨の後で宮崎県の発電ダムの湖面と海岸の漁港には流木が一面に浮かび、さらに海岸で山のように樹木が打ち上げられた。

林業を活性化させることは大切であるが、そのために土砂災害を誘発したり河川の環境破壊を増大させることは許されるだろうか。近年、山頂近くの林道の開設や改修工事が盛んに行われているようであるが、これは土砂災害を誘発する地雷のようなものではないか。集中豪雨が自然現象であるとして、それに伴った土砂災害を天災として、土石流の誘発や被害増大の要因として疑われる林業のありかたをそのまま放置してよいだろうか。

[追記]

ニュースによれば、今回の大雨で大分県竹田市の国道502号線で土砂崩れが起こり、停車中の車8台が巻き込まれたが幸い車に乗っていた人たちは全員無事だった。

大分・竹田市 土砂崩れ 車8台直撃 局地的豪雨 13人全員無事
2009年8月11日 西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/114559

この記事の中で、道路わきの山中にある治山ダムの上に溜まった土砂が流下したことが報じられている。

県などによると、現場の山林の中腹には治山ダムが設けられていたが、高さ約50メートル、幅約30メートルにわたり崩れた。車両8台のうち5台がその場で土砂に埋まるなどし、残り3台が国道脇の大野川に流された。

現場の確認作業再開 竹田土砂崩れ 土砂撤去、川底調査
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/114667

7月23日に竹田市経由で日田まで出かけたが、丁度その時この道路を走り、問題の治山ダムを見たような記憶がある。上の記事で写真で示された斜面崩壊現場には杉の大木が滑り落ちた様子が見える。

ここでは1994年に「治山ダム」が建設されたそうである。

竹田土砂崩れ 治山ダム「過信は禁物」 2009年08月12日
http://www.oita-press.co.jp/localNews/2009_125004047257.html

 県によると、現場は山腹崩壊の恐れがあるため県が指定した「山地災害危険地区」で、県内6756地区のうちの一つ。最も危険度が高くAランクに位置付けられている。1993年の台風被害で斜面が崩れたため、94年度に治山ダム(幅27・5メートル、高さ7メートル)を建設。ダムより上の斜面には、長さ31メートルと21メートルのコンクリート製の土留めを2カ所に埋めている。
 今回、崩れ落ちた土砂は治山ダムと土留めの間の約2千立方メートル。火山灰土は固い地層の上に堆積(たいせき)し、大きな岩を含んでいなかった。当時は1時間雨量が77・5ミリの非常に強い雨を記録。県森林保全課は「火山灰土が一気に水分を含んで重くなった。固い地層との間に水が流れ、滑り落ちやすくなっていた」とみる。


上の記事の続きには、「治山ダムが土砂の勢いを弱めたおかげで被害が軽く済んだ」という県森林保全課のコメントを紹介している。

しかし、被害が軽くて済んだ真相は別の報道にある。
Yomiuri Onlineによると
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090811-OYS1T00286.htm

県災害警戒本部によると、土砂崩れは2度にわたって発生。1度目の土砂崩れでは、土砂の量が多くなかったため、数人は自力で車外へ出て逃げることができたとみられる。2度目は大量で、車が完全に埋まったり、川に押し出されたりし、数人が逃げ遅れたとみられる。

 同本部は「逃げ遅れた人は1回目の土砂崩れで身構えており、2回目が起きた際、素早く車外へ脱出することができたのではないか」としている。


治山ダムの本体は崩壊しなかったようであるが、恐らくダムのすぐ上に溜まっていた火山灰性の土砂が崩れただけで、ダムに激突するような大きい岩石が含まれていなかったからだろう。それにしても、ダムが溜め込んで流れ出た土砂は、ダムが無ければ溜まっていなかった、つまり土石流は起こらなかったのではないだろうか。

不思議でならないのであるが、治山ダムや砂防ダムが満杯になってから土石流に巻き込まれて崩壊し、事態を悪化させることは「想定外」なのだろうか。もし水が満杯のダムが崩壊したら下流では水害となるだろう。土砂を溜め込んだ治山、砂防ダムは永久に崩れずにその場にあるとでも考えられているのだろうか。
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by beachmollusc | 2009-08-12 09:55 | 評論

天災、人災、官災

林道で車を飛ばして転落事故を起こすようなドライバーが実在していることがニュースに出ていました。

交通事故:林道で車が横転、男性1人死亡--南砺 /富山
毎日新聞 2009年7月27日 地方版

 26日午前0時40分ごろ、南砺市才川七の林道で乗用車が横転し、乗っていた同市土生新の会社員、栗山楊平さん(18)が車外に放り出され、全身を強く打ってまもなく死亡した。同乗していた友人のアルバイト男性(19)=大阪市=は頭や手に軽いけが。南砺署によると、現場は市西部の山間にある片側1車線のS字カーブで、同署は運転者や事故原因などを調べている。【野上哲】

上の記事は事故の背景に触れていませんが、別ルートの情報(自動車関係サイト:レスポンス)でその背景が詳しく説明されています。
林道で横転、1人死亡…カーブが多く走り屋に人気の道 2009年7月29日
http://response.jp/issue/2009/0729/article127888_1.html

26日未明、富山県南砺市内の林道を走行していた乗用車が路外に逸脱、横転する事故が起きた。乗っていた2人のうち、1人が車外に投げ出されて死亡。もう1人も軽傷を負った。警察では運転者の特定を進めている。

現場は幅員約3.5mで、カーブの連続する区間。石川県との県境付近に位置しており、カーブの多さから、いわゆる「走り屋」のクルマも多いという。

富山県警・南砺署によると、事故が起きたのは26日の午前0時40分ごろ。南砺市才川七荒山付近の林道を走行していた乗用車が路外に逸脱。弾みで横転した。

クルマには男性2人が乗車していたが、このうち18歳の男性が車外に投げ出され、全身強打でまもなく死亡。同乗していた19歳の男性も頭部打撲などの軽傷を負い、近くの病院に収容されている。

警察では2人のどちらが運転していたのか特定を急ぐとともに、シートベルトの着用状況についても調べを進めている。      《石田真一》


街で粗暴運転をして壁や電柱に激突する事故とほとんど同じレベルであることがわかります。富山の林道で走ったことはありませんが、事故があったのは幅3.5mというから普通林道でしょう。対向車とすれ違うのがやっとの道幅で、路肩はガードされていないかもしれません。(緑資源林道の7m幅の高速自動車道とは異なる世界です:宮崎県の林道を利用する「飛ばしや」はいまだに見かけません)。

自分の林道探検では、絶えず周囲の状況を見ながら土砂崩れの危険に巻き込まれないように注意しています。最近、まとまった降雨があり、弱い地震もあったので、出かけるのを控えています。近所の多くの幹線林道は生活道路でもあり、車の通行はそこそこあって、崩れたらいずれ補修工事が入ります。

路上に落石が多い場所は危険度が高いので、そのような所では特に慎重に走っています。

役所がそこらじゅう、滅多やたらに「落石のおそれあり」という看板を出していますが、落ちている石を見れば状況が明確にわかりますので、「余計なお世話」です。もし不注意な誰かが落石で事故に会った時に、{看板で注意しておいただろうが!}と道路管理上の責任を逃れるための口実でしょう。

どうせ落石注意の看板を出すなら、このようなものが良いと思います。これは酷道388号線にあります。
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看板が面白過ぎると、わき見運転の危険が生じます。

「天災は忘れなくてもやってくる」という諺があるそうですが、九州で高速道路を走行中に土砂崩れに巻き込まれた痛ましい事故がありました。これは天災だったのでしょうか。

高速道路を建設し、管理運営をして(通行料金を取っている)道路公団の成り代わり、西日本高速道路株式会社(九州支社)のホームページに、通行止め(現在も続いている)のお知らせが出ています。
http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h21/0730/

九州自動車道の崩落事故は人災である JC-NET [ 2009年7月30日 ]
http://n-seikei.jp/2009/07/post-920.html

2名が亡くなった九州自動車道の土砂崩落事故、災害対策専門家委員会の委員長九州大学の落合英俊副学長は29日現地調査した結果、土砂崩れが起きた原因として
① 現場の地形は水が集まりやすい谷である。
② 土壌は水を含むと崩れやすい土質
③ 局地的な集中豪雨だった
の3点を指摘した。
また、現地調査の結果、山の斜面には崩れる可能性のある土砂が、まだ2千立法メートル近く残っていることが確認されたとのこと。
 ここで注目されるのは、地形及び土壌である。同じ場所で過去も豪雨により土砂崩れを起こしており、その時地形や土質を詳しく調査して本格的な対策を講じていたら、今回のような事故には至らなかった可能性が高いことである。
2名が亡くなり初めて委員会が設置されメンバーの各専門家による調査があったが、過去の土砂崩れ対策そのものに原因があり、亡くなった2名はまさしく道路公団(NEXCO西日本)の道路管理の杜撰に起因した人災といえる。
自動車道は多くが山間部を走っており、同じような事故が発生しないよう、全国の自動車道道を専門家による調査を実施すべきである。予想を超える豪雨であったとかは理由にならず、異常気象により今後とも多発すると思われる集中豪雨から国民の命を守るためにも実施すべきである。
高速料金や公共投資もこうした安全のための投資に限れば国民も納得もしよう。


九州道の2人死亡事故現場、6年前にも土砂崩れ(2009年7月28日 読売新聞)

 福岡県大野城市の九州自動車道で土砂崩れのため2人が犠牲になった事故で、現場では2003年7月にも雨による小規模な土砂崩れがあり、車が土砂に乗り上げる事故が発生していたことが分かった。

 当時、同自動車道を管理していた日本道路公団は補強工事を行ったが、今回は想定を上回る規模で起きた。

 西日本高速道路九州支社(福岡市)によると、03年に土砂が流れ込んだのは今回と同じ場所と、その約100メートル北側の2か所だった。崩落した量はそれぞれ300立方メートルと200立方メートルで、高速道脇の金網フェンスを突き破り、道路上に流出。下り線を走っていた車1台が土砂に乗り上げた。

 事故後、同公団は金網フェンスをやめ、高さ約3メートルの鉄筋コンクリートの側壁を設けた。同じ規模の土砂崩れの被害を防げる計算だったが、今回は03年の10倍の約3000立方メートルの土砂が崩落した。同支社は「想定を上回る土砂流出で事故を防げなかった。近く設置する第三者委員会で対策を検討したい」としている。

 一方、西日本高速道路の要請を受け、28日に調査した独立行政法人土木研究所(つくば市)の専門家は、03年の土砂崩れによって地滑りが起きやすくなり、今回の豪雨で地滑りが発生した、との見方を示した。

 調査した藤沢和範上席研究員によると、現場上の山では新たな亀裂は見あたらず、崩落が拡大する兆候は少ないという。ただ、崩れる可能性がある土砂が一部残っているとして、当面、土砂の計測器や大型土のうを設置するほか、通行止めを決める基準雨量を5~7割減らすことなどが必要と指摘した。


想定を上回ったら「天災」になってしまうようですが、これでは山岳地帯の高速道路のドライバーは豪雨の中で「ロシアン・ルーレット」をやっているようなものでしょう。

しかし、新聞社によっては「天災」として過去の話にしてしまう所があります。

平成15年にも付近で土砂崩れ、2人死亡の九州自動車道 (産経ニュース) 2009.7.30

 豪雨による土砂崩れにワゴン車が巻き込まれ2人が死亡した福岡県大野城市の九州自動車道で、今回崩壊した斜面とほぼ同じ場所で平成15年にも土砂崩れが起きていたことが29日、分かった。

 西日本高速道路九州支社によると、15年7月19日未明に土砂崩れは発生。直近の降水量は1時間に71.5ミリだった。崩壊した土砂量は今回が推定約7千立方メートル(路上に約3千立方メートルが堆積)で、15年は約300立方メートル(同約200立方メートル)。

 同社は29日、原因究明や復旧のため第三者による災害調査検討委員会を福岡市内で開催。委員会後の記者会見で九州大副学長の落合英俊委員長は「15年の土砂崩れへの同社の対応は十分だった。今回の引き金になったとは考えにくい」との見解を示した。


以上の様に、同じ事故の報道でありながら、人災と決め付けているサイトと、調査検討委員会の結論が出る前に天災であることを示唆したサイトがありました。

こういった事故は、人災か天災かを議論するものではなく「官災」というカテゴリーに属する問題でしょう。薬害エイズや肝炎で見られたのと同様な「官の責任者による不作為」が背景をなしているとも考えられます。道路公団は天から舞い降りた人たちによって運営されているようですから、同質・同根と思われます。日本の中央官庁の役人という種族には「無謬神話」というのがあって、何が何でも「自分達は間違っていない」ということにする習慣・伝統があるようです。

最近の福岡と山口の豪雨災害では数え切れないほど多くの場所で斜面崩壊、崩落が起こっていたようです。被害・被災者が出た所では現場の状況が詳しく報道されますが、災害の背景に切り込んだマスコミ報道は見当たりません。記者達の頭には事故の発生の原因と再発防止に関わる基本情報を追求する意欲が無いのでしょう。

NPO法人、エコシステムの平野虎丸さんはブログで林野庁の暴走を追及しています(本も出版されました)。森林の環境保全をそっちのけにして破壊的な林業を続けている官製自然破壊は、その一部を構成する官製談合よりも罪が深いはずですが、社会的に容認され続けています(問題の存在が社会的に認識されていない、ということが真相)。

平野さんが今回の豪雨災害の現場を見て報告している情報発信によると、過去と同じパターンが見られます。人工林とそれに付随した「治山」と称するコンクリート構造物の崩壊が起こっています。急傾斜の山地斜面で土石流が起こることは豪雨をきっかけにした自然の営力によりますが、それを拡大させて災害を導いているのは人工的に改変された山地の姿でしょう。
http://blog.livedoor.jp/rokuten1/

最近では、オンラインで公開されている空中写真で山地の斜面崩壊現場の様子を見て取れます。

2005年の台風豪雨で九州山地、特に宮崎県の山奥で広範囲・大規模に斜面崩壊が起こりましたが、それも克明に写真で記録されています。関係する行政担当部局はこれらの情報を持っていますが、「災害復旧」、つまり元通りに災害が起こりやすい姿に戻すための事業費の計算しか興味が無いようです。

アジア航測、という民間調査会社のHPに公開されている空中写真は必見です。
http://www.ajiko.co.jp/bousai2/hofu/hofu2.htm
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by beachmollusc | 2009-08-08 13:46 | 評論

土建化せんといかん

緑資源機構は談合事件をきっかけに解体されたが、その時点で大規模林道建設計画の半分以上が建設済みで、計画された残りの大規模林道の後始末は都道府県に任されている。

水流渓人さんのサイトで、前のブログ記事で紹介した緑資源機構の宇目・須木線、須木区間についてのコメントがあります。

水流渓人のページ「登山日記」No.337  2009/03/11 「七熊山」 928.9m
http://www.geocities.jp/tsurukeito/page-teko.html
<山中に、2車線の道・・・林道だそうだ!なんとも砂利道に紙幣を並べた様に見える。>

大規模林道の建設単価は、場所によって、さらにまたトンネルや橋などが加わるとかなり変化するだろうが、当初計画で総延長約2000キロを1兆円かけて建設するプランだったので、平均単価は1kmあたり約5億円となる。

大分県で見つけた宇目・小国線の建設記念碑には19.6kmに99億円かかったとあるので、上の単価とほぼ一致する。
http://pds.exblog.jp/pds/1/200906/15/49/e0094349_93765.jpg
これを1mの単価に換算すれば約50万円で、千円札500枚分となる。

千円札の面積は(15.0×7.6cm=114平方cm)で、500枚で5.7平方mとなり、大規模林道は2車線の自動車道路で道幅の標準は7mだから、その約8割を建設費に相当する千円札で敷き詰めることができる。これはまさに水流渓人さんの目に映ったとおりである。

自動車交通が基軸となっている時代であるから、必要とされる道路をしっかり整備することには誰も異論を出さないだろう。しかし、山中で基幹林道という名称のもと、ほとんど通行する車が無く、しかも頻繁にがけ崩れで通行止めになるようなハイウエイを建設することがまかり通ってきた。その事後評価はどうなっているのだろう。

独立行政法人、森林綜合研究所のサイトでわずか一部だけ情報公開が行われている。

緑資源幹線林道事業

緑資源幹線林道事業の事業評価は、林野公共事業における事業評価の一環として林野庁が実施しています。これまでに実施された評価の結果は次のとおりです。

http://www.green.go.jp/green/koukai/0206rindo.html

四国の大規模林道について完了後の事業評価のファイル(2002年):
延長距離41.9km(97%開設、3%改良)、幅員7.0m、建設費用205億円弱、1973年着工、1997年完了(24年間)、完了後5年間の評価
http://www.green.go.jp/green/koukai/pdf/02/06jigyou/rindo/rindo2002ka.pdf
これを見ると、計画当初に費用対効果の分析は行われず、「本路線により地域へもたらされている効果の一部を試算すると年間約8億円と見込まれる」というあいまいな記述がある。この文書は、計算根拠が示されていない総括表に過ぎないが、それらしき項目を羅列しているだけで事業効果についての量的な情報は皆無である。

「開設前に比べると、木材価格などの低迷で林業の経営環境は悪化している。このため、関係町村の林家数、林業専業従事者数は減少しており森林の管理水準が低下するおそれがある。」という言い訳が書いてあったが、1997年から5年間でどのような変化があったのか、データがないと実情がわからない。

{追記}
この大規模林道が関係する高知県の統計は下にまとめられている。
http://www.pref.kochi.lg.jp/~seisaku/kochiringyo19/genkyo.pdf
平成19年度高知県の森林・林業・木材産業 高知県森林・林業の現況

この資料の中の統計で、高知県の木材生産の粗生産額はこの期間に約170億から78億円に半減した。そして、林業就業者数は2,899から1,844名に大きく減少した。一方、県内の林道の延長距離は2,173から2,390Kmとなって200km(約1割)伸びている。


評価の締めくくりでは「本路線の規模、構造は適切であり、整備は必要かつ有効であったと判断できる。」とされているが、本来の目的であったはずの林業の振興に実際に寄与することがほとんど無いまま、わずかしかない利用者(数量は示されない)の存在を指摘して「役に立っている」という話としか読めない。

「てらまちネット」の2009年6月16日の記事:林道の三態/あの「緑資源」の大規模林道/国道バイパスの林道/岐阜県の森林づくり・トップランナー林道
http://blog.goo.ne.jp/teramachi-t/e/253c7e2f328a29c906ab5ff70f2aafe7
この中で朝日新聞の報道記事が引用されていた。元の記事は発信サイトから消えているので、それをコピーして貼り付けておきたい。

●林野庁、林道造る「根拠」破棄 費用対効果データ
       朝日 2008年02月25日03時02分
 http://www.asahi.com/business/update/0224/TKY200802240167.html
 農林水産省・林野庁が、大規模林道40区間の費用対効果分析の元になった計算データを廃棄していたことが分かった。事業を進めてきた独立行政法人・緑資源機構が今年度内に廃止されるため、大半が工事中のこの区間は、15道県が建設を続けるかどうかなどを判断したうえで引き継ぐ。だが、その判断材料となる計算データが廃棄されたことで自治体側に戸惑いが広がっている。

 費用対効果分析は、ムダな公共事業をなくすのが目的。しかし、道路整備の費用対効果分析には、交通量予測が過大だったなどの批判がある。分析結果が客観的かどうかを点検するのに必要な計算データが廃棄されていたことは、道路を巡る論議に影響しそうだ。

 廃棄されたのは01~05年度に実施された費用対効果分析で用いられた計算式やデータ資料。全国32路線137区間のうち北海道、岩手、岐阜、広島、熊本など15道県にあるのべ27路線40区間だ。
 林道の費用対効果分析は01年度に導入された。「効果」を、事業費や維持管理費などの「費用」で割った「投資効率」が1を超えれば、着工や事業継続が認められる。

 各区間は、原則5年ごとに分析対象となる。
 林野庁は毎年8月までに分析結果を出し、計算データは毎年度末に廃棄してきた。情報公開法は行政文書を一定期間保存するよう義務づけているが、計算データの保存期間は「1年未満」としていた。計算の結果は3年間保存しており、同庁整備課の担当者は「計算経過のデータは不要だと判断した」と話している。

 しかし、計算結果だけでは分析手法は吟味できない。国土交通省は道路の計算データは過去5年分を保存し、ホームページでも公開している。林道についても林野庁内で「再検証できないのは問題だ」との声があがり、06年度から計算データの保存期間を「3年」に改めた。ただ、07年度は緑資源機構の談合事件で分析作業がストップした。

 大分県は宇目・小国線の移管を林野庁と協議する際、計算データを求めたが、同庁から「ない。申し訳ないが、計算は各県でやってほしい」と言われたという。同県担当者は「森林の状況や伐採計画の有無などのデータを集めて費用対効果を概算で出した」という。

 波佐・阿武線などを抱える島根県も「資料を求めたが、ないと言われれば、どうしようもない」(担当者)。一から試算に取り組んでいる。


宮崎県でこの件がどうなっているのか、情報検索ではまだ何も見つかっていない。最後は県庁に問い合わせるしかないかもしれない。

渓流という雑誌に2005年に掲載された大規模林道に関する論評がある。

SOICHIRO URA web site
大規模林道の呆れた費用対効果分析
http://web.mac.com/s.ura/iWeb/9C156D2E-90CC-11DA-BB68-000A95B12BB6/9C3260B0-90CC-11DA-BB68-000A95B12BB6.html

この論評で指摘されたことが事実であれば、緑資源機構の担当者が機構廃止のドサクサに紛れて事業評価マニュアル関連の情報とデータを廃棄した心理が痛いほどわかる。浦さんのレポートの一部を引用する。

<なんでもアリの費用対効果マニュアル>

横沢・荒川区間は降雪が多い地域でもあるため、山岳地帯を通る林道が一年を通じて通行可能なわけはない。奥畑さんが言うように本来なら半年程度が妥当。そのような事情は彼らも承知しているはずだが、確信犯的に365日で計算しているのだという。
 「横沢・荒川区間の1日の交通量は公表していませんが、だいたい大規模林道の交通量というのは1日平均500台を見込んでいるといわれています。ただ、この区間に関しては『500台とは言っていない』と彼らは言うんですが、では何台なのかと問いつめても答えようとはしない。ちなみに、隣に平行して走っている国道でさえ1日平均300台だそうです。仮に500台を想定していたとすればあまりにも過大すぎる。しかもそれを365日で計算する。やっていることが無茶苦茶なんです」


レポートしたように宇目・須木線の須木区間は現在土砂崩れで通行止めであるが、このような林道の通行止めは日常茶飯事だろう。幸か不幸か、この須木区間を走る車は皆無に近いだろうから、通行止めのまま放置されても誰も苦情は言わないだろう。

ところで、大規模林道で実際に通行する車の数はどうなっているのか、実態調査のデータはあるのだろうか。自分が走った経験では、10分走って対向車が1台あれば多いほうである。通常の幹線林道(たとえば六峰街道やひむか神話街道)は1車線しかないので停車場所には神経を使い、通行する(かもしれない)他の車の邪魔にならない様にしている(実際はほとんど誰も来ない)。それに対し、大規模林道は2車線あるので、どこでも止まれて便利である。しかし、路上で停車したままサルナシの撮影やGPSでの位置の記録、枝先のサンプル採取などやっていてもどちらの方向からも誰もやってこない。

大規模林道に比べて同じ区域を走る宮崎県の国道の整備状況は極めて悪く、林道の整備は日本一であるが未整備酷道の延長距離の長さも自動車専用道路(交通量がとても少ない高速道路)の整備の遅れも日本一かもしれない。県知事や地元の国会議員が道路族の大物国会議員や中央の道路建設官僚に媚を売っている姿を見るが、これも過去の林道優先政策のつけであって、仕方が無いことかもしれない。

(県としては)土建化せんといかんのであろうが、これは大変遺憾なことではないだろうか。
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by beachmollusc | 2009-07-12 19:18 | 評論

大規模林道の存在価値

緑資源機構のあとを継いで林道建設に邁進している森林農地整備センターのHPには昔の機構が書き残した情報があります。緑資源幹線林道事業については下のように書かれています。

林道ネットワークの軸となる幹線林道を整備しています
-緑資源幹線林道事業-

 複数県にまたがるような大きなまとまりを持った森林を、健全に手入れしていくためには、森林の隅々に到達するための林道のネットワークが必要です。
 植物の葉の隅々に栄養を届ける葉脈や、体内に血液を循環させるための血管と同じです。
 血管にも大動脈-動脈-毛細血管などの違いがあるように、林道ネットワークにも幹線林道-一般林道-作業道などがあり、それぞれが互いに機能しあい、より大きな役割を果たしています。 緑資源幹線林道事業は、日本の7つの山地に広がる広大な森林地帯(林業圏域)において、幹線となる林道を設置する事業です。 7つの林業圏域には、全国の森林の30%にあたる約750万ヘクタール(東京都の約34倍)の森林があります。
 幹線林道を軸とする林道ネットワークは、水の供給や地球温暖化防止など森林の持つ機能をより多く発揮させるだけでなく、山村地域の生活道路や都市と森林を結ぶパイプラインとしても役立ちます。

 緑資源幹線林道事業は、現在計画されている延長2,025kmのうち、65%に当たる1,312kmが完成しています。完成した幹線林道は、地域振興の基盤として活用されてます。

http://www.green.go.jp/green/gyoumu/rindo/index.html

正しい文章をつないで嘘をつくテクニックは官僚が業務を遂行するための基本技術ですが、上の文中で森林と人工林を上手に摩り替えています。また、都合の悪いことは伏せておくことも基本です。たとえば森林を都市と結ぶ国道や県道など、一般道のネットワークの存在については忘れられているようです。

九州北部の山林は地質時代の激変の傷跡を残していて、稜線がきわめて複雑に入り組んでいます。人工林をつくることは山地の地形に依存していて、水系のまとまりに沿った、すでに出来上がっている一般道を基本に、下流の拠点から山地に放射状に伸ばす作業道が搬出などの林業の基本作業を考えると合理的でしょう。それはすでに出来上がっているようです。

大規模幹線林道を大動脈と考えて、もともと連結する意味が薄いブロックの間に自動車通路を設けても、それを走る、つまり道路が利用される動機が産まれないでしょう。都市と森林を結ぶパイプライン、というのは何を意味したのでしょうか。観光を意識していることは一応考えられますが、一般道路から遠く離れて、走る時間ばかりがかかり、ただ禿山の景観が広がっている北九州の稜線を見に観光客がやってくることは期待できるのでしょうか。

完成した大規模林道を広範囲に走ってみましたが、地域振興に役立っているかどうかについてはきわめて疑わしいと思います。むしろ、一般道の維持と整備の予算だけでもアップップの地方行政に余分な維持コストを強いているのではないでしょうか。ただし、4年前のように大規模災害が起こって、災害復旧予算が国からの別枠で出てくれば、土建に関しては結果的に地域「振興」になっているかもしれません。崩れ易く、特に誰も走らない(崩れても不都合が無いような)林道は予算獲得の仕掛けとして有益な存在でしょう。

森林農地整備センターのHPには、大規模林道建設の(計算根拠が示されていない)コストベネフィットのプラスの計算結果と検討委員会の積極的な評価を元にしたゴーサインの「自己評価」が記載されています。お手盛りの評価であることは素人でも一目でわかりますが、専門家の委員会は何を検討していたのでしょうか。

複数の県をまたがって建設する事業は国からの予算でという、農林水産官僚がひねり出した(予算獲得)構想が大規模林道と広域農道システムであったと思われます。そして、事業を進める公団(機構)もできて天下りポストも生まれ、省益にぴったりでした。建設のための理屈は後からいくらでもついて来ます。一部の受益者と官僚のために自然破壊がビジネスと化し、山奥の河川から海まで自然の恵みを壊しまくりました。

北海道から九州まで、全国でこの建設に異を唱えている個人と団体がありますが、一般市民の関心は低いようです。

北海道の大規模林道問題 
北海道の山奥に理不尽な超大型公共事業の手が伸びている.
http://city.hokkai.or.jp/~kagami/Daikibo/Daikibo_menu.html

細見谷に大規模林道はいらない 
止めよう無駄な公共工事・なくそう無駄な天下り先
http://hosomidani.no-blog.jp/jumintohyo/

大規模林道の呆れた費用対効果分析
(渓流2005夏号掲載)
http://web.mac.com/s.ura/iWeb/9C156D2E-90CC-11DA-BB68-000A95B12BB6/9C3260B0-90CC-11DA-BB68-000A95B12BB6.html
< 結局のところ、大規模林道建設の目的は地球温暖化の防止でも林業の再建でもなく、むろん地域の活性化といったものでもない。むしろ土建業者の活性化と役人の天下り先の確保、この2点が緑資源機構の目的と断言してよいだろう。苦し紛れに災害時の迂回路を持ち出す区間もあるにはあるが、現実は災害時になれば真っ先に通行不能になるのが大規模林道なのである。>

NPOエコシステム 「林野庁の林業暴走」
http://www.ecosys-jp.net/

この林道建設問題について、犬と一緒の登山を楽しんでいる方のエッセイがあります。

第43話 戦後林野行政の罪と罰
http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/heta043.html

(前略)

こうした林野行政のありさまをみてくると、林野庁という役所は林道を造る役所であって、日本の自然環境や生物多様性を守る役所ではないことがよく見えてくる。

 現在の森林政策は、木材生産から生態系や生物多様性の保全をはじめとする森林の公益的機能の維持・拡大の時代に入っている。こうした状況の中で、林野庁、緑資源機構に国有林の管理を任せておいていいのかという声が大きくなるのは当然だろう。

 林野庁と森林開発公団は、巨額の負債を生んで日本の自然を荒廃させるという罪を犯して、いまだに罰を受けることなく、存続を図っている。たとえば02年度には、地球温暖化対策のための森林整備に今後10年で1兆2千億円を費やす必要があると試算し、その半分近い5000億円を林道建設費用に充てようとしている。

 しかし国有林が木材生産事業の対象から公益的機能の維持・拡大の時代に入ったということは、国有林が収益事業の対象から環境管理の対象に大きく転換したということにほかならない。ならば、一般会計から今後長期にわたって資金を繰り入れる、すなわち国民の税金で林野行政の失敗の穴埋めをする代わりに、国有林管理の環境省への移行、大規模林業圏構想の見直しなどを今からでも行なうべきではないだろうか。現在のままの林野庁には、森林の公益的機能の推進などはとても任せられない。

 日本の森をより豊かにして子孫に残すという環境重視の森林政策を実現するためには、林野庁を解体して必要な機能を環境省に移し、森林行政の一元化を実現することが必要ではないだろうか。

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by beachmollusc | 2009-06-21 07:59 | 評論