beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:環境保全( 40 )


皆伐の斜面

わが家の脇を流れる奥野川の上流では(照葉樹と落葉樹の混合林の)山林伐採が続いていて、先日の雨の後には川水が激しく濁っていました。
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この写真の林道の右手に見えるのはシキミの林園で、その向こう側で、伐採された斜面の下に川が流れています。

上流の地鶏の養鶏場が廃業し、奥野川の自然環境が回復されれば、ホタルの里つくりが順調に進むはずですが、皆伐で山林斜面から土砂が川に流れ出ている状況では前途多難のままです。
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by beachmollusc | 2015-01-17 08:36 | 環境保全

田中法生著「水草を科学する」を読んで

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本日(9月25日)午後3時から読み始め、6時に読了しました。

新しい研究情報にあふれていて、中身が濃くて、とても面白かったので、300頁あまりを3時間で一気に読んでしまったのです。

水辺(河川、湖沼、沿岸)の環境保全を目指す人には必読書です。

184頁に日本海の対馬海流を黒潮と間違えて書いてあったことが唯一のエラーでした。

どのような場所で水草を見るかのガイドに「ワンド」が抜けていたこと、モノクロ写真が(構図的に難しい被写体であるため)鮮明でなかったものが多かったのが少し残念でした。

琉球列島の熱帯性「海草も場」の調査とか、海草も場の食用貝類(特にリュウキュウサルボウなどの二枚貝)の調査研究を手がけた経験で、海産の水草の面白さはよく知っています。しかし、アマモなどの集団遺伝子解析による最新情報をしることができました。特にコアマモの集団遺伝地理から、日本列島の沿岸で、紀伊半島を境にした南北に分化した集団が分布しているというのはとても興味深いことです。
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by beachmollusc | 2013-09-25 18:31 | 環境保全

樫葉自然環境保全林

宮崎県美郷町から椎葉村大河内に抜ける林道沿いに樫葉の自然林があります。
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林道の標高は1000mあまり、自然林の新緑は素晴らしいものです。
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案内看板にあるように、このような自然林は九州で希少で、九州大学の演習林が立地しています。
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ところが、自然林の周囲は人工林に取り囲まれて、それが次々と伐採されています。

下の写真、林道から遠くに見える伐採済みの斜面は、丸裸のままで6年前からあまり変化しておらず、サルナシの実が収穫できる秋には、斜面を覆うススキの穂が「とても綺麗な」景観となります。
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昨日、久しぶりに樫葉を訪れたら、休日にもかかわらず、林道沿いの斜面で伐採作業中でした。
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斜面で伐採されたスギは張り巡らされたワイヤーで林道まで吊り上げられて、集積されます。
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作業の様子を、わずかながら動画でも記録しておきました。
http://youtu.be/SdR8553YbLc
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by beachmollusc | 2013-05-07 09:45 | 環境保全

ウナギの受難

ナショナル・ジオグラフィック日本版の最新記事
「ウナギが食べられなくなる日」
井田徹治(共同通信社、編集委員)

第1回 乱獲で資源は危機的に、生息地破壊も一因 2012年7月12日
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120710/315512/

第2回 背景に日本の消費爆発、定着した薄利多売のビジネスモデル 2012年7月19日
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120717/316178/

最終回 外来種輸入には多くの問題、資源管理に漁獲規制が急務 2012年7月26日
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120724/317095/

日本人が皆読んでおくべきよい記事です。

利根川の河口堰や霞ヶ浦の逆水門が、ヤマトシジミだけでなく、日本一だったウナギ資源を激減させたことにも言及しています(第1回)。

下に引用したのは利根川河口堰の写真です。
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下に引用した画像のグラフを見れば、水産庁が得意の詭弁「ウナギ資源が特に減少しているとはいえない」という国内向けの説明がインチキであることが明白です。

日本の親ウナギの漁獲量の経年変化 (水産庁による)
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日本のシラスウナギの採捕量の経年変化 (水産庁による)
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温帯域の3種類のシラスウナギの資源量の変化 (立川賢一による)
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上のグラフでニホンウナギの減少が1990年代に鈍ったのは、ヨーロッパウナギとアメリカウナギが盾となって、時間稼ぎをしてくれたのかもしれません。

中国のウナギ養殖で大西洋産のシラスが使えなくなり、ニホンウナギのシラスを狙うようになってから、ウナギの再生産サイクルの10年くらいで、最終的なクラッシュになるかもしれません。

<参考> みやざきの自然サイト
http://miyazaki.4zen.jp/011/15/index.html

赤崎 正人 宮崎県の河川の魚(5)

図2 宮崎県のウナギの河川漁獲量と養殖生産量の経年変動
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<両者は反比例の関係にあり、養殖生産量が年を経るごとに急激に増加するのに比べ、残念ながら河川のウナギ漁獲量は徐々に減少の一途を辿っています。平成4年には養殖生産量は3,500トンで、河川漁獲量35トンの丁度100倍の量になっています。>

上の記事は20年前の話で、現在はどうなっているのでしょうか。

この前のシーズンのシラスウナギの漁獲量は宮崎県で約180キロあまりでした。

平成17年の宮崎県の内水面でのウナギの漁獲量は10トンとされています。
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000100730.pdf
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by beachmollusc | 2012-07-27 13:31 | 環境保全

ウナギの絶滅と河口堰

4年前、シラスウナギの極端な不漁だった時に、ウナギの絶滅を記事にしました。

2008年2月19日のブログ:うなぎが絶滅する日 
http://beachmollu.exblog.jp/7300845/
同上20日:うなぎが絶滅する日(その2)
http://beachmollu.exblog.jp/7309452/

この冬の漁期も3年続いて不漁となって、水産庁が浮き足立っています。

ウナギ稚魚 過去最低量 今季シラス漁終了
2012年3月10日 西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/291062
<ウナギの稚魚、シラスウナギの今季の漁期が5日、宮崎県では終わった。水揚げは過去最低の計251キログラム、平均価格は過去最高の1キログラム182万円だった。品薄感から小売店などに出荷するウナギ価格も既に上がり始め、九州では2月末現在で同3900円と、前年同期の1・6倍に急騰している。>

「さらば、ウナ丼」シラスウナギの大不漁 完全養殖のコストは1尾1万円以上
日経ビジネスオンライン 2012年2月15日
http://news.goo.ne.jp/article/nbonline/business/nbonline-227090-01.html
昨年から高騰をつづけてきた養殖用のウナギの稚魚(シラスウナギ)の取引価格が、さらに値上がりして過去最高を更新した。原因は稚魚の深刻な不漁にある。乱獲による資源の枯渇も懸念されている。ヨーロッパ産のウナギはついに国際条約で絶滅危惧種に指定された。ニホンウナギもそのリスト入りするのは時間の問題だろう。かば焼きも値上がりして、ウナ丼はいよいよ食卓から遠のいている。

今後、シラス漁のジリ貧が続き、さらなる乱獲が追い討ちをかければ、次の繁殖サイクル(多分10年後までに)ニホンウナギの経済的絶滅が予想されます。養殖したくても池に入れるべきシラスが全国的に採れない状況となるでしょう。

ウナギの専門家筋では、量が減っているが、いまだにシラスが漁獲できていること自体が奇跡的なことであると受け止められているようです。

ニホンウナギの産卵場所をピンポイントで突き止めた東大海洋研の塚本教授(現在は宮崎県内の大手ウナギ養殖会社の研究所の面倒をみているらしい)の仮説(又聞きですが)によると、産卵回遊に日本の沿岸から出るオヤウナギとしては(河川に上らず)汽水域で親まで育つ個体によって維持されているのではないか、だそうです。

汽水域のウナギについては調査・研究情報がきわめて乏しいので、この仮説を支持するような具体的なデータは存在しないでしょう。しかし、河川域での天然ウナギ資源が壊滅状態となってから久しいのに、まだシラスの河川への遡上が見られることを説明できる仮説として検証されるべきテーマだと思われます。

利根川では河口堰建設の後ヤマトシジミの漁獲が壊滅的になっているようです。そして同じく天然ウナギの漁獲は消滅に近いようです。

シジミ漁業再生戦略研究 (霞ヶ浦漁業研究会)
http://www.takarashuzo.co.jp/environment/fund/pdfs/h22report_01.pdf

二平章(2006) 利根川および霞ヶ浦におけるウナギ漁獲量の変動
茨城内水試研究報告, 40: 55-68.
(残念ながら本文ファイルは公開されていない)

立川 賢一 (2005) ウナギ漁獲量減少傾向と河川湖沼改変との関係
日本陸水学会第70回大会講演要旨集, Vol. 70
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jslim/70/0/48/_pdf/-char/ja/

高度成長期以来、関東の利根川に続いて九州では筑後川、中部では長良川、そして中国地方では芦田川で、それぞれ可動式河口堰が建設されて汽水域の環境が激変しました。これらの国による一級河川での大規模な事業以外に、日本全国各地で河川改修や環境改変の嵐が続いています。

日本は(世界的にまれに見る)国の官僚主導で自然・環境を粗末に扱ってきた「土建主義国家」です。それによって、莫大な借金(国の借金:http://www.takarabe-hrj.co.jp/clockabout.html )と持続的な利用ができなくなった環境と生物資源(負の遺産)を後の世代に残しています。

鰻丼が食べられなくなったら脳衰官僚の巣窟、霞ヶ関を焼き討ちにしましょう。
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by beachmollusc | 2012-03-22 23:29 | 環境保全

アメリカのイノシシとトキソプラズマ症

トップ > ニュース > 動物 > 米で急増するイノシシ、感染症を拡大か
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110504003&expand#title
Christine Dell'Amore for National Geographic News
May 4, 2011

 アメリカではイノシシが急増し、危険な寄生虫が人間に感染する可能性が出てきているという。

 イノシシ(学名:Sus scrofa)は16世紀にヨーロッパからアメリカに家畜として持ち込まれた。しかし時と共に多くの個体が畜舎から逃げ出していった。野生化したイノシシは、現在ではアメリカの39の州に計約400万頭が生息すると見られ、特にカリフォルニア州、テキサス州とアメリカ南東部に多いという。


<中略>

 男性、女性、子供を含め、アメリカでは既に6000万人以上がトキソプラズマに寄生されているが、発症する人はきわめて少ない。通常、健康な人の免疫系ならば病気を抑え込むからだ。

 それでも、米国疾病予防管理センター(CDC)によると、アメリカではトキソプラズマ症は食物が媒介する病気による死因の第1位だ。特に妊娠中の女性や免疫系が弱っている人にとって、トキソプラズマの害は大きい。


このナショジオの記事は、紹介した問題の背景について説明が不十分です。イノシシやイノブタ由来の寄生虫感染症の危険を周知させることは重要ですがイノシシに特異的なものではありません。

トキソプラズマはネコの排泄物を介して人と野生動物の間を循環していることがわかっています。アメリカのカリフォルニア沿岸に生息しているラッコの死因としてトキソプラズマ感染が重要であることが報告されています。これは生の下水を通じて海に流れ出ているネコの糞にこの寄生虫が含まれているためと考えられていて、以前からニュースとなっています。

Cat parasite 'is killing otters'
By Paul Rincon   
February 2006
http://news.bbc.co.uk/2/hi/4729810.stm

A parasite carried by cats is killing off sea otters, a veterinary specialist has told a major US science conference.

It is a major cause of mortality in sea otters living off the Californian coast: Toxoplasma caused 17% of deaths in sea otters examined from 1998 to 2001.

日本でもイノシシが急増しているため、それによって様々な感染症が養豚に広がっている可能性についてしっかりした調査を行うべきでしょう。
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by beachmollusc | 2011-05-06 19:21 | 環境保全

赤岩川の異変

赤岩川が小倉ヶ浜の砂浜の上を流れている蛇行部分で大きなボラがまとまって死んでいたこと、そして生き残っていたボラの体表にデキモノのような斑紋が広がっていたのが気になって、さきほど再確認に出かけました。

北風がかなり強く飛砂がありましたが、天気は晴れです。先日ほどのまとまった数はいませんが、10羽くらいのカラスがいました。遠距離からコンデジで撮影しました。
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近寄ると飛んで逃げますが、その前に遠くから撮影した画像をクロップしました。
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なにやらついばんでいる様子が見えたので、えさになっている物を確認しました。
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体長が50センチ余りの大型の魚で、もしかしたらアカメ(日向ではマルカ)かもしれないと思ったものの、顔つきが違うので、多分スズキさんでしょう。先日の骨だけになっていた大きな魚もスズキだったと思います。

頭部、腹部、尾部のアップを撮影して、状態を記録しておきました。カラスったちの攻撃が本格化する前だったようです。
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体表にあやしげな斑紋が広がっている姿は、先日のボラと同じようです。

大きな魚がこのような異様な姿で死んでいることは原因調査が必要でしょう。

日向市の行政でこの問題に対応できるかどうかわかりませんが、とりあえずお知らせしておきます。
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by beachmollusc | 2011-02-15 15:47 | 環境保全

海に異変(つづき)

海の水質汚染と感染症

病原微生物に対する抵抗力を失ってサンゴが発病している背景として水質
の悪化が示唆されているケースが多い。

サンゴのセラチア菌感染症は下水流出による水質汚染の直接的な影響が
疑われている。アスペルギルス症や昔から知られているサンゴの黒帯病
(シアノバクテリアを中心にした微生物複合体が病原)などでは、陸上から
流出している窒素の増加が発病を促す可能性が疑われ、海水中の窒素分
を増加させたらこれらの病気の感染率が高まったという実験結果が得られ
ている。

サンゴの白化・死滅現象では、動物であるサンゴの本体と、それと共生して
いる微細藻類との間で共生関係が壊れる。実際にその死滅への引き金を
引くのは高水温が持続するストレスである。しかし、サンゴの種類の違いや、
同じ種でも世代と年齢の違い、また生育している場所の環境で、死滅したり
耐えて生き残ったりする差がとても大きい。

実際に白化現象を見ていると、温度上昇が始まった後で、かなりの
潜伏期間を置いてから影響が表面化する。また、白化が繰り返し
起こった後に現れ育った新世代のサンゴは白化に耐性を獲得して
いるようでもある。これらの特徴は表面的にはウイルスによる感染症に
よく似ている。

サンゴ礁の海だけでなく、最近数十年間に海洋生物の大規模な感染症が
世界的に頻発している。日本では知られていないが、オーストラリア南部
のイワシの仲間のヘルペスウイルスによる大量斃死(1995年と1998年)は
特に際立っている。

最近日本でも鯉のヘルペスウイルス病が蔓延して大騒ぎとなったが、
養殖されてもいない魚が海の中でウイルス感染症で大量死していることは
まさに衝撃的である。南オーストラリアのイワシ漁業は主に日本で消費されて
いるミナミマグロの養殖産業(蓄養)のために、餌の供給を目的として
1991年に始められたものであるが、この大量死で一時的にイワシ資源量が
6割以上減少して餌の確保に困ったほどであった。

四国の宇和海では真珠養殖のアコヤガイでウイルス感染症による
大量斃死が続いている。この問題では病原体が判明する以前に、
貝の養殖場近辺でのフグ養殖の寄生虫防除のためのホルマリン
廃液が海中投棄されていたことが斃死の原因ではないかとも
疑われた。結果的には病死であろうが、ウイルス感染症が起こり
やすくなった背景に何らかの環境悪化の影響があったかもしれない。

有明海では地域特産の二枚貝のアゲマキやタイラギがほとんど消えて
騒がれたことが記憶に新しい。貝類の赤ちゃん、すなわち波間に数週間
漂う浮遊幼生にヘルペスウイルスの仲間が感染して死滅させることが
養殖施設内で起こっている。この問題は栄養不良や温度上昇などの
環境悪化、つまりストレスが引き金となっている。これから類推すれば、
もともと普通にいるバクテリアやウイルスなどによる海産動物の日和見
感染症が様々な環境悪化の進んだ海の中で広がっている可能性も
十分考えられる。

アサリは水質汚濁にとても強く、特に有機質汚染を浄化する高い能力を
買われて干潟の環境再生に用されようとしている。ところが、1990年代
以降、全国的にアサリ集団が急激に減少し漁獲量が急落している。全国で
1980年代半ばまで年間15万トン前後だった漁獲量が、最近は4万トンを
切っている。1990年代以降は輸入アサリが増え2001年の総輸入量は
7万5千トンとなり、それが日本国内の消費量の7割を占めている。

日本各地で水質汚濁や埋立てが激しかった時代をなんとか生き延び、
場所によってはその間漁獲量はむしろ増加していたアサリが、近年に
なって全国的に減少しているミステリーの背景には何があるだろうか。

海の哺乳類でも異変が続いている。1988年に北欧からイギリスに
かけてウイルスによるアザラシの大量斃死が起こったが、最近では
地中海などでもイルカやアザラシの病死が広がっていて、ウイルス
感染症が疑われている。哺乳動物の場合では、体内に蓄積された
まま残っている旧来型の環境汚染物質が免疫系を損ね、ウイルス
感染症を誘発している可能性が指摘されている。

カリフォルニア南部沿岸で下水中に含まれていた猫の糞由来の
原生生物、トキソプラズマが海に流れ出てラッコに感染し、死亡率が
高くなって問題となっているらしい。この病原体は人獣共通感染するが、
人間に感染した場合、妊婦経由で胎児に影響したり、免疫が低下した
人では深刻な日和見感染症が見られるという。

海洋汚染は過去の問題か

有名なレイチェル・カーソンの「沈黙の春」が1962年に出版された後、
環境保全の意識が高まった。日本では1971年に環境庁が設置され、
DDT など残留性・生物濃縮性の高い農薬の使用が禁止された。
水俣病やイタイイタイ病なども大きな教訓を残し、人間に直接影響する
水質汚染対策は急速に進んだ。その結果、最近では公害の時代はすでに
過去のものとなったとさえ感じている行政関係者は多いだろう。

工場廃水は規制され、都市部では下水処理もかなり普及していることは
事実である。ところが、陸上から海に流れ出る汚染物質は多様化しながら
増大している。

殺虫剤、殺菌剤、除草剤などがターゲットとしている駆除対象の昆虫、
雑草や微生物には薬剤耐性が急速に生じることが多いため、新しい
薬品が次々に開発されている。その間、過去の教訓から、人間に対して
毒性の低い化学物質が選ばれて登場し、毒性の強いものの多くは
退場している。そして1980年代以降は、生物濃縮が起こらないが
その反面「水に溶けて流れ出やすい」タイプの農薬への切り替えが
進んでいる。

農薬が短期間に分解して環境中に長く残らないことはよいことであろう。
ところが、新しいタイプの農薬について、非ターゲット生物、特に海産
生物に対する生態的な影響評価はほとんどなされていない。例えば
農薬検査所のホームページを見ても、水産生物に対する影響について
調べる対象として海の生物がなぜか見当たらない。

農業だけでなく、松枯れ対策やゴルフ場、公園緑地などの害虫駆除
でも広く使われている代表的な有機リン系殺虫剤、フェニトロチオンを
例にとってその実態を説明したい。

これは人間やイヌ、ネコなどに対する毒性は弱いが、水中生物全般に
対する毒性は強い。特にターゲットとなる昆虫とは類縁関係が近い
エビやカニの仲間に対する毒性は強烈である。エビ類で致死濃度
レベルは1リットル中に1マイクログラム、つまり10億分の1の濃度
である。DDTは水に対して事実上溶けない(1リットル中0.1ミリグラム
以下とされる)が、これは30ミリグラム程度まで溶ける。その飽和濃度
ではエビの致死濃度の1万倍くらいにもなる。

国立環境研究所の報告によれば、ある河川での連続的な調査期間中、
流域で農薬散布が行われたすぐ後で農薬各種の水中濃度が急上昇し、
水生昆虫などが強い影響を受けていた。その川の流水中で川エビの
飼育実験を続けた結果でも、農薬流出に伴ってその死亡が観察されて
いる。すなわち、単発的、短期的ではあるが、多くの水生生物に対して
致死濃度の農薬流出が断続的に起こっているものと思われる。

河川中で影響を及ぼした後で農薬はそのまま海に流れ出ているはず
であるが、その結末についての調査報告は見つからない。また、
松枯れ対策として海岸で松林に薬剤散布した場合にも沿岸生物に
影響を与えているだろうが、それについて調べた報告も見つからない。
一過性の影響で生物の死滅などの被害が起こっていても、被害者も
含めて証拠物件が現場に何も残留しないので、犯人がわからない
ひき逃げ事件のようになっているのだろう。

農薬散布というのは害虫や雑草の繁殖を抑える目的で行われるが、
それはまさに水中動植物でも繁殖活動が盛んな時期に行われている。
生理的に敏感な卵や子供時代、特に水中動物の発生中の卵は周囲
の水に直接さらされていて、より直接的に影響を受けているはずである。

生命機能に影響する物質が特定のターゲットを破壊する仕組みは
様々であるが、そのような化合物は生命維持のために働く各種の
酵素の働きを選択的に阻害し、細胞分裂で急速に繰り返される
DNAの複製や蛋白質の合成などを妨げる場合も多いだろう。
しかし、この観点から一般的な海の生物が新しいタイプの化学物質
から受ける影響についてはほとんど調べられていない。

近年の機械化、大規模化された農業では肥料を多く使っているので
その流出が顕著となり、地下水の窒素汚染などが表面化して問題と
なっている。また、都市部では一般家庭から下水に流されている
界面活性剤やその他の薬品類の種類と量の増加も著しい。

下水処理では有機物や細菌の部分的な除去に止まり、冬場に
生カキの食中毒を起こしているノロウイルスなどは処理されずに
通過しているし、大雨の時には未処理の汚染水が海に直接流れ
出ている。

海の見かけの汚さは1960年代にピークを迎えていたはずである。
自分自身の経験でも、40年前に東京湾の羽田沖で水面から手を
入れてみて指先が見えなかったほどの赤潮状態だったのが強く
印象に残っている。その後の状況は改善されてきたようであった
のだが、不思議なことに公害のピークが通り過ぎた後、1980年代に
至ってから全国的に河口干潟から様々な生物が消滅した。その中
で目立っていたのはハマグリ、シロウオ、アオギス、アサクサノリ
などである。埋立てなどの海岸工事ラッシュもこれに大きな影響を
及ぼしたに違いないが、河口干潟そのものが形は残っている場所
でもこれらが消滅している。

陸上起源の細菌類や菌類などが世界的に海で暴れているらしい
のはどうしてなのだろうか。これを考えていると沿岸部では海水中の
微生物を攻撃するウイルスが働かないような状態になっているの
だろうか、と疑いたくなる。70年以上前の話であるが、都市沿岸の
海水中に病原バクテリアがどのように分布しているのかを調べた
研究者がいた。その結果海の中に流れ出ているはずのバクテリアが
全く見つからないので、それは何故だろうと追求していてバクテリオ
ファージ(バクテリアを攻撃するウイルス、ファージと略される)の
存在がクローズアップされた。そこで、特定の病原菌を攻撃する
ファージを使って病気を直す方法が検討されたが、当時の実験
ではものにならなかった。ファージ療法は、その後の抗生物質の
発見と実用化が進んだおかげでほとんど見捨てられてしまった。

最近になって海水中のウイルスの存在が再びクローズアップされ、
その生態的な役割、つまりファージが海中のバクテリア集団を
制御する機能の重要性が再認識されている。バクテリアや
ウイルスはすべてが「人類の敵」といったようなイメージが
社会的に作り上げられているようだが、生態的な見方をすれば
人類の生存は微生物の世界と密接にリンクしていて、陸でも
海でも自然界には強い味方が満ちている。ところが我々は、
敵味方の区別なしに、化学物質を使ってすべてを「浄化」しようと
しているかのようである。

ワクチンや抗生物質の利用で、人類が感染症を制圧したという
重大な感違いが広がった直後の1980年代から新たに人の
免疫細胞を攻撃する厄介なウイルスが現れ、抗生物質の
効かない耐性菌が広がり、さらにSARSのような「新興感染症」が
次々に現れている。それと平行して海中生物に異変が起こって
きたのは単なる偶然であろうか。

これまで述べてきたように、海で様々な「日和見感染症」のような
異変が頻発している事態は、陸上から流出している汚染物質や
環境負荷の影響を強く示唆している。その背景として、例えて
言えば、沿岸生態系が「免疫不全状態」に陥っていて、
ごくありふれた微生物が暴れだし、運の悪い生き物が痛めつけ
られているようにも見える。表面に出ている症状はほんの一部で、
サンゴのようには世間の注目を集めない多くの海産生物にも
影響を受けているものは少なくないに違いない。

海辺の健康管理をこれまで長い間放置してきた「つけ」はかなり
溜まってしまっている。日本では水産と環境の縦割り行政の
狭間で海辺の自然環境と生態系を守る行政上の主体が
事実上不在のままであった。

スキューバ潜水の開祖のクストーが、海中の世界を「沈黙の世界」
というタイトルで紹介したのは五十年前のことであった。実際の海には
動物たちの出す実に様々な音が満ち満ちているが、それが文字通り
「沈黙の世界」になってしまわないようにするために、サンゴたちが
苦しんで出している悲鳴を先触れとして聞きのがしてはならない。

この文では情報源である学術論文などを文中で示していないが、筆者のホーム
ページで「サンゴの病気」についてまとめた頁に情報源を示してあるので、より深く
知りたい読者は参照してください。
(学内サーバーから削除されホームページは閉鎖されました)
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~coral/


(final version 2004.06.06) 
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by beachmollusc | 2010-08-31 09:16 | 環境保全

海に異変-カビがサンゴを食べている (2004年の原稿)

琉球大学で担当した専門講義、サンゴ礁の資源と環境保全、の中で取り上げたテーマの一つとしてサンゴ類の感染症がある。その情報を一般向けに啓蒙するべく「なるべく」わかりやすく砕いて作文し、月刊総合雑誌の編集担当に送ってみたが、どこも相手にしてくれなかった。その結果、原稿は日の目を見ないままである。

6年前の情報整理の成果であって、その後のフォローをきちんとやっていないでいるが、海における新興・日和見感染症問題は続いているようである。最近ヨーロッパで蔓延している牡蠣のヘルペス感染症もその新顔となっているので、現在フランス語の情報と格闘中である。水産でも畜産の口蹄疫と似たような、ウイルスなどによる感染症問題は少なくない。

下に前の没原稿を出しておくことにし、トピックごとに情報を追跡し、その後のフォローも書き加えたい。

元の原稿は雑誌用に縦書きにしたが、ここでは横書きである。
漢字の数字を書き換え、なるべく読みやすいように段落を再構成している。


海に異変、カビがサンゴを食べている (海洋汚染と日和見感染)

                           山口 正士

熱帯の海を彩るサンゴ礁、そのあくまでも澄み切った
コバルトグリーンに輝く海底からまるでサンゴたちの
もだえる声が響いて聞こえてくるような気がしてならない。

サンゴの大量死が近年になって繰り返されている。
沖縄ではサンゴの敵であるオニヒトデの大発生、
そして海水温度の上昇で起こった白化現象による
サンゴ類の死滅はすでに広く報道され、社会的関心
をかなり集めてきた。

しかし、その陰にかくれて日本ではほとんど報道も
されていないが、大西洋のカリブ海を中心に、何種類
ものサンゴの感染症がしだいに広がりをみせている。
そのため、サンゴの感染症問題についての本格的な
調査研究がアメリカ合衆国政府の海洋大気庁を中心に
一昨年から進められている。

「サンゴの病気」は太平洋のサンゴ礁ではそれほど
目だっているわけではない。しかし、これは大西洋の
サンゴ礁だけの「対岸の火事」ではなさそうである。
これから紹介する海外でのサンゴの異変、そして身近
な海で起こっている様々な異変を眺めわたすと、以前
とは質的に違った環境汚染問題が海の中で起こって
いるようにさえ思われる。

大西洋で起こっているサンゴの病気の病原体の由来
と感染の起こる詳しい背景などが、最近の調査研究で
ようやく明らかになってきているので、まずここでは
もっとも詳細に調べられている二つの代表的な病例を
中心にして話を進めたい。

アスペルギルス症 (ゴルゴニアン・サンゴのコウジカビ感染症) 

アスペルギルス症によるゴルゴニアンの大量死がカリブ海
一帯で十年くらい前から目立っている。これについてはコウ
ジカビの一種がサンゴ群体に付着して病原体となっている
ことが1996年に突き止められた。

ゴルゴニアンの仲間は宝石サンゴと同じ八方サンゴ類に
含まれている。その網目状で、波に揺られている大きな
団扇のような姿は、大西洋のサンゴ礁の水中景観の象徴
となっている。

コウジカビに取り付かれたゴルゴニアンサンゴの群体は
表面が紫色に変色し、組織がボロボロになって崩れ、
ついには全体が死滅することもある。カビの仲間である
水虫菌に取り付かれた人がそのために死んでしまうこと
はまずないだろうが、このケースではサンゴが生きたまま
カビの餌食となってしまっている。

コウジカビの仲間は昔から醤油や日本酒の醸造に
使われている重要なカビであって、鹿児島の焼酎や
沖縄の泡盛ではクロコウジカビが使われている。
この仲間は世界中の土壌中や分解中の植物体に185
種以上見られ、その内約20種が人間に対するいわゆる
「日和見感染症」を引き起こすといわれている。アレルギー
や急性中毒の健康被害を引き起こしている種類もある。

日和見感染症とは、人間の場合、通常の健康体であれば
感染しても発病しないが、免疫力が低下していると様々な
症状を引き起こすことであって、抵抗力の衰えている患者
などに感染した場合に重大な結果を招いている。

カビの胞子を大量に吸い込むと,さまざまなアレルギー病
を起こす恐れがあるが、その症状の重さは、吸い込んだ
側の「免疫反応」、つまり抗体の出来具合による。そのために
コウジカビは杜氏などの職業アレルギー病の原因ともなる。

人間だけでなく、抵抗力が衰えた鳥たちもコウジカビの仲間に
犯されて苦しむことが多い。動物園や水族館で飼育されている
ペンギンたちやワシ、タカなどの猛禽類が特にアスペルギルス
症を発病しやすく、飼育係を悩ませ続けている。

堆肥工場のコンポスト周辺で調べてみると、堆肥の熟成中に
周辺の空気中にコウジカビの胞子が大量に現れ、熟成が
終わると減少する。これからわかるように、コウジカビの仲間
は枯葉などの有機物を分解しながら大気中に大量の胞子を
出し続けている。

最強の発がん性自然毒、アフラトキシン

カビ毒の一種であるアフラトキシンB1を生産するのはコウジ
カビの仲間では数種だけである。しかし、この毒はラットにわずか
15 ppb(10億分の15の濃度)の投与で肝臓ガンを生じさせる。
それはDNAの働きを狂わせるもので、自然界で生物が生産する
ものでは最強の発ガン性物質とも言われている。

肝がんは高温多湿の地域である東南アジアとアフリカに多い。
幸い、日本産のコウジカビ類には深刻な毒素を生成するものは
発見されていない。輸入食品のナッツやトウモロコシなどの汚染
チェックを徹底すれば健康被害を未然に防ぐことができるはず
である。なお日本では食品中のアフラトキシンの許容量は10ppb
以下とされている。

サンゴに付着したカビの何が病気を引き起こしているのか、その
仕組みはまだ詳しくはわかっていない。同種のカビでも遺伝的な
型が異なっている特定の系統だけが病気を起こすことがわかって
いるが、その背景には、そのような系統のものだけが生産する毒性
物質があるらしい。

砂塵と一緒に運ばれているコウジカビ

ゴルゴニアンにアスペルギルス症を引き起こすコウジカビの由来に
ついては、アフリカの砂漠地帯から飛来した砂塵起源説が最近
提唱されている。

サハラ砂漠から強風で上空に巻き上げられた細かい砂塵がカリブ海
に大量に飛来していることが注目され、実際にその中から感染力の
ある生きた菌が見つかっている。

近年のアフリカ大陸の砂漠化の進行に伴って、飛来している砂塵量の
増加傾向がアスペルギルス症の増加と一致している。また、この説は
陸から離れている広い範囲のサンゴ礁でこの病気が起こっていることを
説明できる。

この砂塵説ではカビ以外にも様々な病原体や汚染物質が飛来し、
相乗効果での発病や他のサンゴの病気を起こしている可能性も疑われ
ている。それを検証するためにアメリカの研究者グループは、飛来して
いる砂塵の詳しい観測調査を精力的に続けている。

日本には季節的に中国大陸から大量の黄砂の飛来があるため、沖縄
沿岸のサンゴ礁でもカリブ海と似たような現象が起こっているかもしれ
ない。これについての調査・研究にはまだおそらく何も手がつけられて
いない。黄砂の影響については酸性雨関連の調査は行われているが、
一緒に飛来しているかもしれない潜在的な病原体、微生物やウイルス
の調査はなされていないようである。

沖縄や奄美のサンゴ礁ではオニヒトデの食害が過去三十年間も続いて
いる上に、1980年に初めて見られ、その後1983、1998、2001年と
いう具合に合計四回も繰り返された白化現象によるサンゴ類の斃死が
著しく、たとえ病気の影響があったとしても目立つはずがない。しかし、
最近では沖縄本島周辺にわずかに残っているサンゴに「腫瘍」らしき
病変が頻繁に見つかっている。

ヘラジカサンゴのセラチア感染症、別名(白痘)

ヘラジカの角に似た形の群体を作るミドリイシ属のサンゴの群体上で
白い斑紋ができ、それが広がりながらサンゴが死ぬ病気が1996年に
フロリダ南部のキーウエスト沖で最初に見つかった。これは「白痘」と
名づけられ、その後フロリダ半島沿岸部で蔓延している。追跡調査に
よって、1998年には調査地周辺でサンゴ群集が壊滅的となっていた
ことが明らかになった。

このサンゴはカリブ海の浅瀬で繁栄している種類であり、大西洋の
サンゴ礁では水中景観の中心となっているため、その死滅がもたらす
影響はとても大きい。

アメリカのジョージア大学の研究チームによって、この病原体の正体が
腸内細菌の一種、セラチア菌であることが一昨年に確認された。水質
汚染の影響が強いと思われる沿岸部でその被害が激しいことと、病原体
の遺伝子解析で陸上のものと一致したので、人間社会から出ている
排水中のセラチア菌による感染が疑われている。

セラチア菌は大腸菌と同様に人間を含む陸上動物の腸内などに普通に
住んでいるバクテリアである。水や土壌中にも広く分布しているが、一般
家庭で洗面台などの湿った場所ではびこると、それが色素を作るために
赤い膜が見えることがある。このバクテリアには塩分耐性があり、
海水中で生存できる。

セラチア菌は一般の健常者に対しては無害であるが、抵抗力が低下して
いる患者には様々な感染症を起こし、時に死因となることもある。

2002年1月、東京都内の病院でセラチア菌による院内感染患者の
集団発生による死亡(12名中7名)事故が発生した。それ以前にも
1999年に墨田区内の病院で発症者10名の内5名が死亡し、2000年に
大阪府の医療機関で15名の内8名が死亡した。

日和見感染症では、もともと身の回りのどこにでもあるようなバクテリア
(細菌)、カビ(菌類)、そして原生生物などが病原体に化け、抵抗力が
衰えている病人や弱者に襲いかかる。健常者は気にする必要は無い
とはいえ、健常者がいつどのように弱者の仲間入りするかはわからない。
また、環境の変化で一般人が事実上の弱者と化す可能性もある。
例えば日本人が熱帯地に旅行するとウイルス性や細菌性の下痢症に
かかりやすい。しかし、現地人の間ではそのような病原体に対する
抵抗力ができていることが普通である。

セラチア感染症でもアスペルギルス症でも、その正体はどこにでも
見られるありふれた微生物であった。ところで、ありふれた微生物と
いってもその遺伝的な系統によっては特定の毒素を生産するか
どうかの差異が見られることがある。

食中毒で有名になった大腸菌の中の一つの系統、O157は赤痢菌が
作るものと同じ毒素を作って激しい症状をもたらすが、それは毒素を
作る遺伝子が微生物間で、いわゆる遺伝子組み換えが起こって水平
伝播した結果ではないかと疑われている。サンゴのセラチア感染症では
何か特別な系統のものが働いているかどうかは不明である。

海水中の微生物集団

海水一リットル中に含まれている微生物の生息密度の値をおおまか
に見ると、菌類が10の6乗、バクテリアが9乗、ウイルスが10乗程度
あると見積もられている。つまり、ごく普通のきれいに見える海水でも、
コップ一杯の中には1億以上のバクテリアと10億ものウイルスが
含まれているものと見込まれる。人間が海水浴を楽しんでいる時に、
それと知らずに微小なプランクトンを多数飲み込んでいるはずだが、
実はそれだけでなく、無数のバクテリアやウイルスも一緒に入っている
はずである。

海の生態系でバクテリアやウイルスなどが非常に高い密度で存在して
いることはごく最近になって判明したことである。ただし、そのウイルスの
多くはバクテリアなどに寄生、共生しているものであり、状況に応じて
宿主の微生物を殺して増えるものでもある。

海水中には多種多様な数多くの微生物がいて、海産動植物は自分を
攻撃する可能性があるもの、つまり潜在的な病原体に常にさらされて
いるはずである。養殖されている海苔などの海藻には海水中の栄養素が
不足したりすると様々な病気が発生しやすい。

自然環境では、病原微生物に対抗する免疫細胞を持っていない海藻が
病気になるような事例は乏しい。その理由を調べた研究で、海藻が
化学的な防御物質を生産し、菌類の感染から身を守っている仕組みが
最近になって解明されている。

大小を問わず、あらゆる生物の間で化学物質を使う攻防、すなわち
「化学戦争」が海の中で絶えず行われているのである。我々人間が
利用している抗生物質とは、もともとカビがバクテリアの繁殖を阻害する
武器であった。

海の中で繰り広げられている微生物たちの間の化学戦争において、
人間が環境に垂れ流している多種多様な化学物質は、いったいどの
ような影響を及ぼしているものだろうか。

バクテリアとウイルスが共生しているところへ汚染化学物質を加えた実験
では、共生関係が崩れ、バクテリアを殺しながら増えたウイルスが海水中
に出てくることが観察されている。海水中に出たウイルス集団は「生存」し
続けるための次なる宿を探して色々な生物に取り付こうとするだろうが、
その間に何が起こっているのかはまだわかっていない。

(つづく)
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by beachmollusc | 2010-08-31 09:14 | 環境保全

タカハヤの病変

日本海方面に出かける前、留守の間飢えないように、ペットのナマズに食べさせる生き餌のハヤを釣りました。ところが釣り上げたタカハヤの体表には黒いブツブツのおできのようなものが一面に出来ていて、おまけに黄色い斑点がちりばめられていました。魚達は元気でしたが、透けて見える尾びれに近い体内の一部ではうっ血しているような状態も見られました。
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この病変の原因追及については日向市に戻ってからはじめたばかりです。

まず淡水魚の病気や寄生虫に詳しいと思われる広島大学の専門家に問い合わせたところ、粘液胞子虫類の寄生かもしれないということで、その専門家である東京大学の魚病学の横山教授を紹介してもらいました。

送付したサンプルを見た横山さんの鑑定では、粘液胞子虫類ではなく、吸虫類であろうということで、今度はその専門家に改めてサンプルを送って鑑定してもらう段取りができました。その正体の解明はあと一歩です。

7日に釣り上げて飼育していて、今朝死んでいたタカハヤを接写した写真です。

体の表面、特に背中がブクブクになっています。また、白い腹部では黒い斑点模様が目立ちます。
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この(寄生虫による)重症の病変が起きているタカハヤは奥野河川プールで釣りました。釣り上げたほとんど全部の個体に感染しているようで、重症のものの割合が高いようです。
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by beachmollusc | 2009-11-13 09:51 | 環境保全