beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:Meretrix ハマグリ( 172 )


2002年に青島海岸で見つけたチョウセンハマグリの稚貝


Published by デジブック
砂浜の貝類、特にナミノコガイ類を採集調査していた時に混ざってとれる色彩が変化に富む不思議な貝がチョウセンハマグリの稚貝であることを確認したのは、この青島の稚貝を実験室で育てて大きくした時でした。

九十九里浜で「ゼンナ」という別名をもらっているほど、稚貝は親の貝と違っています。
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by beachmollusc | 2012-01-24 21:05 | Meretrix ハマグリ

昔飼育したハマグリの稚貝の写真が出てきました。


Published by デジブック

10年前に飼育したハマグリの稚貝の写真をデジブックのブラウザで発見したので使ってみました。

写真の質があまりよくありませんが、デジタル顕微鏡が普及する前、初期のデジカメを顕微鏡に取り付けて撮影していて照明に苦労したと思います。オリンパスのCamedia3040の時代でした。
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by beachmollusc | 2012-01-23 20:21 | Meretrix ハマグリ

五島福江島、白良ヶ浜のカラフルなハマグリの殻


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by beachmollusc | 2012-01-22 10:55 | Meretrix ハマグリ

ハマグリの稚貝の色違い


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by beachmollusc | 2012-01-20 20:10 | Meretrix ハマグリ

台湾で日本のハマグリは侵略的外来種?

シジミの話ばかりで飽きた読者のためのサービスですが、やはりシジミが絡んでいます。

台湾におけるタイワンシジミの情報を探していて出くわしたオドロキのブログサイトです。

Taiwan Environmental Information Center
入侵台灣駭客:水域外來種
作者:廖運志(中央研究院生物多樣性研究中心博士後研究員)
http://e-info.org.tw/node/33830

外來種駭客?沒錯,這些外來的物種往往來者不善!它們藉由人為刻意或非刻意的引入,前者包含引入後為養殖、觀賞或食用等目的,後者則可能是隨著船舶運輸之壓艙水、船底附著之生物,或隨運河開通後所引入。這些水域外來種將與當地物種產生競爭、捕食或帶來疾病,因此會對當地物種組成、棲息地及生態系造成深遠且恐無法恢復的影響,也成為水域生物多樣性消失的重要原因之一(其他原因尚包含過度捕撈、棲地破壞、污染及環境變遷等)。 (以下略)

GOOGLE ホンニャク(そのママ)

<外来種のハッカー?はい、これらの外来種は、しばしば悪意です!後者は底の生物に接続されている、または導入後の管の開口部にバラスト水の出荷、となるかもしれないが、彼らは意図的または意図的に人間の導入により、前者の後、農業、装飾用や食品の目的での導入が含まれています。これらの水域、外来種、在来種と競合捕食、または病気を持って来たので、地元の種組成、生息地および生態系の復元が広範囲に及び生物多様性の水の損失の影響の恐れになることができないだろうが主な理由となっている(他の理由はまだ乱獲、生息地の破壊、汚染と環境の変化、等を含む)。>

何を言っているのか、だいたいわかります(皆さん同じことを言っているから)。

台湾では日本のハマグリが侵略的外来種の仲間入りです。

そのお仲間とは:

似殼菜蛤(Mytilopis sallei) 
和名:イシガイダマシ
日本語サイトでの説明: http://www.marineco.co.jp/alien/M_sallei.html

綠殼菜蛤(Perna viridis)
和名:ミドリイガイ
日本語サイトでの説明: http://www.marineco.co.jp/alien/P_viridis.html

眼斑擬石首魚(Sciaenops ocellatus)
レッド・ドラム
日本語サイトでの説明: http://fishing-forum.org/zukan/mashtml/M004273_1.htm

福壽螺(Pomacea canaliculata)
皆さん、良くご存知のジャンボ君(スクミリンゴガイ)です。

牛蛙(Rana catesbiana)
これも良く知られたウシガエル君。

美國螯蝦(Procambarus clarkii)
子ども達の良い遊び相手だったアメリカザリガニ(日本では今や希少種)

鱷龜(Macroclemys temminckii)
日本の外来生物法 動物愛護管理法の特定危険動物、外来生物法の要注意外来生物
http://www.pref.kyoto.jp/gairai/data/d03_04.html

リストの2番目にありましたが、最後に紹介します。

文蛤
目前淡水河口所產的文蛤(Meretrix lusoria )並非台灣原生種,為早期日治時代所投放的日本文蛤,隨後散播至台灣各地,也是目前台灣的文蛤養殖種類。引進後已經造成淡水河口原生的花蜆(Corbicula formosana)的滅絕。

GOOGLE ホンニャク
<二枚貝
淡水河生産ハマグリの現在の口(ハマグリ)は台湾、日本のハマグリの早期立ち上げに日本の植民地時代にもネイティブではありませんし、台湾のすべての部位に拡がって、台湾のアサリは、種を養殖です。淡水の河口後に、ネイティブの花貝(Corbicula formosana)の導入絶滅を引き起こしている。>

上を意訳すると:(台湾北部の)淡水川の河口に見られる「ハマグリ(Meretrix lusoria)」は台湾の在来種ではなく、日本の植民地時代の早期に放流されて台湾各地に広がったもので、台湾で養殖されています。河口域で台湾の在来種であるハナシジミ(Corbicula formosana)の絶滅を引き起こしています。

台湾産の「戦前に日本から移植されて増えた」とされていたハマグリを分子系統遺伝学的に検討した結果、日本のハマグリではなくて、台湾原産のハマグリ類の遺伝子を持っていることがわかっています。
Genetic Relationships among Species of Meretrix (Mollusca: Veneridae)
in the Western Pacific Ocean
Ayako Yashiki Yamakawa, Masashi Yamaguchi, Hideyuki Imai
Pacific Science 62(3):385-394. 2008

在来種を外来種であると誤認して敵視していますが、どこやらのシジミと同じことかもしれません。有明海から台湾に運ばれて放流されたハマグリは、異なる環境に置かれてあえなく消滅したのだろうと考えられます。同様に戦前に沖縄本島に放流された熊本県産ハマグリも残っていません。(いつどこにどのようにして放流したか、報告書は残っていますが、貝は残っていません)

アサリはアメリカやヨーロッパに移植されて、定着・繁殖に成功し、各地で重要な資源となって利用されています。しかし、アメリカ西海岸に放流された日本のハマグリは生き残っていません。その報告書がオンラインで見つかりました(失敗したことでも記録を残すことは大切です)。

ハナシジミという和名をもらった台湾の淡水河産の標本写真が京都大学総合博物館サイトにありました。
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/collection/Shell/Shell00000657.htm
ラベルから見て、平瀬介類館から由来した標本のようです。その写真を見ると:
e0094349_10373164.jpg

とても美しい台湾美人、でなくて美貝です。

原記載はDall (1903年)で、オンライン・アーカイブに同じ著者の論文がありました。

下は標本の画像が原記載論文になかった種の画像を見せています。

Proceedings of the United States National Museum Vol. 66. 1925年

LLUSTRATIONS OF UNFIGURED TYPES OF SHELLS IN THE COLLECTION OF
THE UNITED STATES NATIONAL MUSEUM
By William Healey Dall
http://si-pddr.si.edu/dspace/bitstream/10088/15371/1/USNMP-66_2554_1925.pdf

15頁に本文:CORBICULA (CYRENODONAX) FORMOSANA Dall.  
図版は:Plate 29, fig. 3. です。
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by beachmollusc | 2011-09-16 10:55 | Meretrix ハマグリ

ハマグリの初期稚貝

ハマグリの浮遊幼生が着底して小さな稚貝になったばかりの姿を見るためには飼育するしかありません。

昔のファイルを整理していたら、2002年に佐土原のクルマエビ養殖会社の人と協力して稚貝飼育の試験をやった時の画像が出てきました。

浮遊幼生が変態したばかりの稚貝を沖縄に送ってもらって、1年間、最大数センチまで室内飼育しましたが、最初の頃の写真です。

着底した時の最初の大きさは約0.2ミリです。この写真の仔は殻が濃いチャイロで殻の中が見えにくかったと思います。兄弟、姉妹の約半数がチャイロになりました。(両親はペアでなく、多数が一緒だったので殻色の遺伝情報が不明確となったのが残念です)
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透明な出水管を伸ばしていますが、入水管がまだ伸びていません。

粘液を出しているので殻の上にゴミが付いています。

下の画像は足を出して歩いている姿です。足を殻の前方に伸ばして固定し、それから本体を引き寄せることを繰り返し、匍匐しながら進みます。殻には成長輪がはっきり見えます。
e0094349_3455132.jpg

室内飼育で(運動不足のまま)育てたハマグリは、天然で育ったものと比べて奇妙な形になりました。実物標本がどこかに眠っているので、発掘してから写真を撮りましょう。
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by beachmollusc | 2011-08-07 03:49 | Meretrix ハマグリ

本吉町(宮城県気仙沼市)のチョウセンハマグリ漁

砂浜海岸のチョウセンハマグリ漁は地方によって漁法が異なります。最大規模の漁場である鹿島灘と九十九里浜では貝桁網、つまり動力船で爪がついた金属枠の網を海底に降ろして砂の中の貝を掘り起こす漁具を使います。ただし、九十九里浜では浅瀬でジョレンを使った稚貝漁も行われています。

桁網を使うと資源があっと言う間に消えるような小さい漁場では、資源保全のために、あえて効率が悪い漁法を使わざるを得ないことになります。

日向市の小倉ヶ浜、そして高知県土佐湾西部の入野海岸では素潜りダイバーが目視で探して貝を1つずつ採ります。同じく高知県土佐清水市の大岐の浜では、少数の素潜り漁師のほか、干潮の時に長い柄の熊手で貝を掘りおこす漁をご婦人たちがやっているようです。

島根県益田市では小型漁船から覗き眼鏡で海底を見ながら貝の造った水管の穴を探し、4つ又のヤスに返しがついたような道具を使って貝を刺しはさんで持ち上げます。これと同じような漁法が鹿児島県の吹上浜で過去に行われていたそうです(今は貝が消えているので漁業も消滅)。

今回訪問した宮城県、本吉町の長須賀と大谷海岸では、小型漁船から海底を箱眼鏡で見ながら、尖った金属棒を砂底に落とし、それに反応して潜る貝を見つけて熊手に長い柄を付けたようなものですくい取ります。

本吉の漁港に係留されていた漁船にその漁具がありました。
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現地のチョウセンハマグリ漁の様子などは下のサイトに詳しく出ています。
Sophia Forest
http://www7.ocn.ne.jp/~sophia/sea.htm
同管理人のブログ記事に今回の出前授業が記録されました。
http://chinomori.exblog.jp/13017519/

チョウセンハマグリは稚貝の時に浅瀬で育ち、環境汚染や密漁の影響を受けやすい特性があるので資源保全が難しい貝です。また、繁殖生態、浮遊幼生の分散と初期稚貝の加入、そして稚貝の捕食者の影響と生残率、成体の密度と繁殖(受精)率などの情報が欠けています。

小規模な漁場で乱獲になりにくい漁法が実施されていても、年ごとの資源変動が激しいことが知られています。しかし、どの漁場でも生産規模が小さいこともあって、資源管理のための基礎情報集めができていません。例えば、禁漁期の設定についても産卵期の把握が不十分です。

すでにチョウセンハマグリが資源として利用できないレベルまで減った小規模な漁場(砂浜)が九州沿岸にたくさんあって、そのほとんどで海岸のコンクリート化がなされています。また、長崎県と鹿児島県では海砂の採取が大きな影響を及ぼしていることが考えられます。
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by beachmollusc | 2011-03-10 20:13 | Meretrix ハマグリ

フィラデルフィアの博物館にあるハマグリ標本(2)

フィラデルフィア自然史博物館は歴史が古いだけでなく、日本との交流が古くからあります。さらに、生物多様性の情報センターとして、収蔵標本のオンラインカタログ化に取り組んでいて、世界的に重要な拠点の一つとなっています。
The Academy of Natural Sciences in Philadelphia is America's oldest natural history museum and is a world leader in biodiversity and environmental research.
http://www.ansp.org/

今回は現生の貝ではなく、貝塚出土のハマグリの殻です。

標本の登録番号がANSP-254296でラベルにはOmori Moundと Japanの間にShimane Pref.つまり島根県と書いてあります(書き足したものか?筆跡がこの部分で異なるような気がします)。
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Morseは大森貝塚の研究で有名なEdward Morse,すなわち1877年に東京帝国大学の初代動物学教授となった貝類学者のことです。彼が「発見」した大森貝塚は東京にあるので、なぜ島根県と明記してあるのか、またまた謎が増えました。(おそらくアメリカ人の誰かが間違えて書き込んだのでしょうが、なぜ「島根県」が出てくるのか???)

日本海産のハマグリについて情報を集めた中に島根県の貝塚からハマグリが出たという記録はありません。

このラベルにはex. A. R. Cahn coll'n、つまりCahnの蒐集したものに由来しているとあります。

A. R. Cahnは終戦後にGHQ連合軍総司令部が行った日本の水産資源調査の中で貝類について報告しています。1951年に出版されたCLAM CULTURE IN JAPANについては以前のブログで紹介しました。

beachmollusc ひむかのハマグリ : GHQのチョウセンハマグリ情報 2009年2月9日
http://beachmollu.exblog.jp/9571230/

Cahnによるフィラデルフィア自然史博物館のハマグリ標本としては、これ以外にもいくつかありますが、別途紹介するつもりです。

MorseとCahnは半世紀あまり時代が違いますので、二人の間で何らかの接触があったとは思われません。

博物館の名称が印刷されたラベルには学名が記入されていませんが、白紙のラベルには、手書きで学名が記入されています:
Meretrix meretrix
Omori mound
(Morse)
が記入されています。

Meretrix meretrixはハマグリとチョウセンハマグリが一緒に同じ学名で呼ばれていた大正時代から昭和の太平洋戦争前後までの学名表記です。ちょうどMorseが日本に来た頃にCythereaからMeretrixに属名が変えられましたが、このラベルにはMeretrixが使われています。

大森貝塚は東京湾の奥にあって、出土した貝はハマグリMeretrix lusoriaだけです。写真の貝殻はハマグリですので特に問題はありません。
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by beachmollusc | 2011-02-26 20:06 | Meretrix ハマグリ

フィラデルフィアの博物館にあるハマグリ標本(1)

フィラデルフィア自然史博物館収蔵の日本産ハマグリ属貝類のラベルにある採集者の一人はLoomis, Dr. H. です。この採集地がYokohama(Osakaが一緒に書かれているのが謎)であり、学名の使われ方から明治から大正時代に採集(登録)されたものと思われます。

ANSP 43464 Cytherea meretrix Rve. Yokohama, Japan
    49612 Meretrix lamarckii Desh Yokohama, Osaka, Japan
    49613 Meretrix lamarckii Desh Yokohama, Osaka, Japan
フィラデルフィア自然史博物館のオンラインリストにあった以上の3点の写真は撮影されていませんが、下の3点の写真をシェリルさんから送ってもらいました。

ANSP 119908 Meretrix (Cytherea) lusoria Chem  Osaka, Japan
この登録番号には2枚の古いラベルが付いています。
  Cytherea lusoria Chem 
  M. castanea Lam (Meretrix); Osaka, Japan Dr. H. Loomis #133 

このcastaneaという種名は、ラマルクが茶色のハマグリを別種に分類したものです。
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Cythereaという属名は19世紀後半(明治時代の初期)まで使われていました。

ChemはChemnitzの略です。ChemnitzはSystematisches Conchylien-Cabinet という貝類図譜を出版しました。ハマグリはその6巻(1782年)にあります。下にある図版32の340図です。
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同図譜のハマグリの学名はVenus lusoria Japonicaとされています。
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Die japanische spieltasche, oder auch die chinesische spielmuschel.
ゲームに使われる貝という説明文があるのは、日本の貝合わせに使われていた、つまり貝殻の内側に絵が描かれていた貝だったからです。

ドイツ語の説明では中国と日本が一緒になっています。貝合わせという遊びは日本で独自に生まれたはずですが、なぜ中国が一緒にされたのかわかりません。

17世紀半ばより前、つまり江戸時代初期までに貝合わせの絵が描かれたハマグリの殻はヨーロッパに渡っています。おそらくオランダ人が伝えたのでしょう。当時のオランダ領インドネシアで貝類標本を集めてヨーロッパに送っていたランフィウスが出版した17世紀末の本(E. M. Beekmanにより英語に翻訳されThe Ambonese Curiosity Cabinetというタイトルで、Yale Univ. Press、1992年出版)には日本の貝合わせの内容が詳しく説明されていますが、中国に関して何も言及されていません。

Chemnitzが引用しているランフィウスはハマグリをChama laevisと命名しました(Chamaは丸い二枚貝でlaevisは殻の表面がツルツルの意味でしょう)。

Chemnitzが使った全ての学名は国際規約で採用条件を満たさず、ハマグリの学名にはMeretrix lusoria (Roeding 1798)が現在使われています。

ANSP 119920 Meretrix (Cytherea) morphina Lam Yokohama, Osaka, Japan
     various color patterns M. petechialis Lam; Dr. H. Loomis
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この標本の学名はMeretrix petechialis Lamarckつまりシナハマグリとなっています。しかし、写真からハマグリであることは明白です。そして、殻の後方の伸び方が直線的でよく伸びることは東京湾のハマグリ集団に見られる特徴です。ただし、大阪湾産のハマグリは見たことがなく、地域絶滅しているので比較できません(瀬戸内海西部のハマグリ集団は九州沿岸各地と同様で後端はあまり強く伸びず、輪郭が全体的に丸くなっています)。

博物館で登録された名前がMeretrix (Cytherea) morphinaですが、morphinaは現在無効となっている種名です。(チョウセンハマグリMeretrix lamarckiiとM. morphinaは同種の可能性が考えられます)

ラベルに (with ANSP 49612)と書かれています。49612の写真がないので正体がはっきりしませんが、そのラベル上の学名はMeretrix lamarckii、つまりチョウセンハマグリです。東京湾内にチョウセンハマグリは生息していないので、種の誤認があったかもしれません。Loomis標本のほかにもフィラデルフィアの博物館では種の査定がかなりデタラメになっています。当時のヨーロッパでのハマグリ属の分類の混乱がアメリカにも影響していたと考えられます。

Yokohama, Osaka, Japanというラベルにある産地名になぜOsakaがついているのか、またラベルによってOsakaとYokohamaの順序が反対になっているのは何を意味するのか、さっぱりつかめません。また、標本番号119908はYokohamaがなしでOsakaだけになっていますが、これだけが「例外」なので、おそらくYokohamaの転記での書き忘れでしょう。

ANSP 119930 Cytherea petechialis Lam Yokohama, Osaka, Japan
      M. petechialis Lam; Dr. H. Loomis; #156
e0094349_217646.jpg

この標本の学名はMeretrix petechialisシナハマグリですが、シナハマグリではなくハマグリであって、小型のハマグリの殻の色彩変異が見られます。

H. Loomisという名前について調べてみたら、明治時代1872年に宣教師として来日し、横浜に43年暮していた人物が見つかりました。
http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/3271245.html
貝類とのつながりはわかりませんが、ルーミスシジミという蝶の和名は発見者としてです。

ルーミスシジミは、1877年アメリカの宣教師ヘンリー・ルーミスが現在の千葉県君津市鹿野山で最初に発見したもので、和名は発見者の名前に由来しています。
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/haku/osusume/149ru-misshijimi.htm

ハマグリを採集したDr. H. Loomisとヘンリー・ルーミスが同一人物である可能性は高そうです。

以上、Loomisの標本は、おそらくすべてが東京湾産で、明治時代に採取されたと思われるものです。東京湾では1980年代にハマグリが消滅しましたから、フィラデルフィア自然史博物館に残された(1世紀前の)標本はとても貴重な存在です。
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by beachmollusc | 2011-02-25 21:07 | Meretrix ハマグリ

ハマグリ属の誤査定

わが研究室に外国人留学生として在籍し、立方クラゲ類についてとても面白い研究成果を出したカナダ人のシェリル(ルイス・アメス)さんは現在アメリカの首都ワシントンにあるスミソニアン自然史博物館で働いています。彼女が、フィラデルフィアにある科学アカデミー自然史博物館に出かけて日本で採集されたハマグリ類の標本を写真撮影し、画像を送ってくれました。

フィラデルフィア自然史博物館においては、ほぼ1世紀前に日本の平瀬貝類館(大正時代に京都にあった日本で最初の貝類博物館、現在は西宮市貝類館に受け継がれている)を開設していた平瀬父子から、博物館の当時の貝類学者の ピルスブリー(Henry Augustus Pilsbry)に多数の貝類標本が贈呈され、新種として記載された沢山の貝類のなかにキュウシュウナミノコ(Donax kiusiuensis Pilsbry, 1902)があります。

平瀬貝類館の古い写真を子孫の方がHP(英文のみ)で紹介しています:
http://hirasefamily.com/default.aspx
西宮市貝類館はまだ訪れていませんが、黒田徳米が見ていたハマグリ類標本をチェックする必要がありますので、そのうち立ち寄るつもりです。
http://www.nishi.or.jp/homepage/kairuikan/

話を元に戻します。

シェリルさんが撮影した標本写真で真っ先にチェックしたのは「沖縄産」ハマグリでした。フィラデルフィア自然史博物館サイトで収蔵標本の一覧から見つけて、最重要として写真をお願いしてありました。

標本番号はANSP #325438、ラベルには沖縄本島の(上本部村、124号線近く、具志堅の東)と産地が英語で詳しく書かれていました。オンラインで記載が無かった採集者の氏名(G. M. Davis)と採集年月日(1968年3月24日)もわかりました。
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ところがどっこい、貝殻の写真を見たらハマグリ属の貝ではありません。
e0094349_1844663.jpg

リュウキュウバカガイMactra maculataだろうと思います。

1968年頃のこの博物館には二枚貝が識別できる学芸員がいなかったのでしょう。
Pilsbryは1862生まれ - 1957年(心臓発作で没、その年95歳まで博物館で現役、3000以上の論文を執筆)です。

沖縄を私が最初に訪れたのは1970年3月で、本土復帰前、パスポートのようなものを携行して旅行しました。ドルが通貨で、カリフォルニアオレンジがものすごく廉かったのを憶えています。

沖縄産の現生ハマグリ類の殻標本を期待していたのが見事に肩透かしになりました。しかし、東京湾産の現生ハマグリ標本など、古くて新しい標本が各地から集まっているので、これからゆっくり楽しめます。

バカガイMactra属だけでなく、Pitar属の二枚貝も殻の表面がツルツルしていてハマグリと見かけが似ているため、間違える人が多いようです。和名にも「なんとか」ハマグリとついている種が多いのも混乱を招きます。

2005年にフィリピンの標本貝類のオンライン・販売カタログで見つけたMeretrix meretrixを注文したらPitarがやってきて、出費が無駄になったことがありました。カタログに写真が出ていたけれども肝心な識別ポイントであるちょうつがいの部分が見えなかったので騙されました。
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集団としてまとまった数のサンプルが欲しかったので、メールで特注して、100個以上集めてもらったものです。

オンラインで貝類標本として販売されているハマグリ類には種の誤査定は日常的ですが、属まで違っていたのは、今のところこれだけです。
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by beachmollusc | 2011-02-18 18:31 | Meretrix ハマグリ