beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:Meretrix ハマグリ( 172 )


カラスの餌を横取りする人たち

6日午後の干潮がよく引くタイミングに合わせてGIビーチに出かけました。

引き潮時間のビーチの中央部は海水が取り残された浅い大きなプール状態(地形の名称はラネル)になっていて、その岸辺にチョウセンハマグリ(稚貝)やフジノハナガイが集中しています。カラスたちもその場所で集中的に餌とりをしています。

プールの岸辺で微細藻類が繁殖し、砂の表面が茶色になっているので、貝はそれを餌として食べるように集中しています。天気が良かった3日に撮影した水際の茶色の藻類マットの様子です。
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潮が引いて空気中に露出した部分にも藻類マットが残されています。
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このような藻類は移動能力があって、満ち潮の時は砂の中にもぐりこみ、上下移動を繰り返しています。つまり、沖に洗い流されないように行動します。

このような干満で露出する砂浜では、藻類の栄養源を含む地下水がにじみ出ていて、繁殖を促すようになっています。陸側の海岸林の落ち葉などから栄養分が洗い出されるはずですが、コンクリートで固めるとそれが阻害されることになります。

この場所で、3日前撮影のチョウセンハマグリの稚貝の様子です:
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貝が砂の表面に残している水管の穴の密度が高く、これは藻類マットがある狭いゾーンに集中していました。結果的にこれがカラスの攻撃を誘います。

6日は日曜日で、曇り空でも少し暖かくなったGIビーチにはサーファー以外の一般客が来ていました。

ハマグリの集中するゾーンにて二人連れが二組、怪しげな行動が見られました。6センチ以下のチョウセンハマグリの稚貝は、漁業者を含めて、県の漁業調整規則で採取が禁止されています。カラスはそれに違反しているのですが、お咎めはないようです。昔、「カラスの勝手でショー」というギャグがありました。

同じことを人間がやれば密漁です。
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現場に到着した時残っていた高齢者の夫婦連れのように見えるカップルは、ご婦人がぶら下げていた透明な袋の中にハマグリの稚貝が見たところ100個レベルで入っていました。
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かなり頑張って掘り出していました。カラスの方が綺麗に掘ります。
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念のため、旦那に対してハマグリの稚貝は採取禁止になっていることを伝えてみたところ、「昔は貝はいくらでもいたが、最近は貝に虫がついて減ってしまった」と教えてくれました。おそらく寄生カニ(ピンノ)のことを言ったと思います。会話の後、このカップルは、貝を持って逃げるように去りました。カラスの餌を横取りした悪い人たちです。

カラスはどこかと見渡すと、塩見川の向こう側(南岸)の先に集まっていました。
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これまで昼間に潮が引いていなかった(カラスが潮干狩りしていなかった)場所で貝を採っているようです。

潮溜まりプールの所では男の子3人を連れた家族がいました。日本一すばらしい砂浜で子ども達が遊んでいる姿が見られないことをいつも不思議に思っていたので、とても喜ばしい光景です。
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子どもたちが潮溜まりの中で死んでいる小魚を発見していたのを見せてもらったら、コトヒキの稚魚です。コトヒキは砂浜で貝類など殻のある餌を噛み砕いて食べる魚であって、チョウセンハマグリの稚貝から見たら天敵の一つのはずです。稚貝がこの稚魚に食べられている可能性は高いでしょう。
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群れごと死んでいたのですが、その腐敗分解状態から想像し、少し前の寒波で夜の干潮時の水温が低下し、潮溜まりに閉じ込められていた魚が死んだのではないかと思われました。
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by beachmollusc | 2011-02-07 09:06 | Meretrix ハマグリ

天敵の天敵、カラスの潮干狩り

小倉ヶ浜の北端、GIビーチでチョウセンハマグリの稚貝のモニタリングを続けています。

砂浜の潮が引いた時に露出するゾーンでは、2008年と2009年生まれの稚貝が見られ、現時点でそれぞれ1センチと3センチ前後になっています。2010年生まれの当歳稚貝はまだ小さくて目視ではわかりませんが、多分1ミリ前後でしょう。

干潮は通常1日に2回あって、昼間と夜で低潮面の深さが異なり、冬は昼間より夜の方がよく引きます。春になると昼夜の干潮の引き方が逆転しはじめ、昼間に大きく潮が引くようになります。潮干狩りが春の行事となっているのは、この潮汐パターンの変化が背景になっています。

南半球では季節が北半球と逆転していても、潮汐周期は同じなので、その季節変化は反対になります。オーストラリアの海岸では3月ごろ、南半球の秋が潮干狩りによいシーズンになります。

カラスがチョウセンハマグリの稚貝を潮干狩りで盛んに食べていて、干潮で露出するところはほとんど食べつくしているようです。そして、露出しないところではヒトデ類とツメタガイやホタルガイなどに食われています。潮干狩りは昼間の行動ですから、冬の夜の干潮で露出する広大な潮間帯の下部では食われていないでしょう。

春の潮干狩りシーズンにカラスたちも海岸で活発にチョウセンハマグリの稚貝を食うようなので、その詳細を撮影するためのデジタル1眼レフに超望遠レンズをつけて待機しています。

昨日は飼育用のホタルガイ類を採集するために出かけ、望遠カメラの用意なしだったのが悔やまれますが、カラスが上空から稚貝を岩の上に落とす行動を初めて目撃しました。
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1羽が上の写真の岩の上空から口にくわえていた貝を放り投げました。貝が壊れなかったらしく、このカラスは盛んに貝を突いていたようです。その邪魔をしないように遠くから眺めていました。
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しばらくして、貝が割れなくてあきらめたのか、貝をくわえたまま別の岩に移動しました。
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↓の所に移動したカラスがいますが、上の方に先客が1羽います。遠くに見える別の1羽はスナヒトデのお食事中です。
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スナヒトデはあちこちでカラスにやられてバラバラになっています。
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潮溜まりの砂の中で隠れていたヒトデは無事でした。上の写真は砂に潜っていた奴です。
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スナヒトデは二枚貝の天敵ですが、それをさらにカラスが食べているので「敵の敵は味方」であっても、カラスが強力な天敵であることに変わりありません。

カラスに掘り出されたチョウセンハマグリの稚貝ですが、かなりの割合でそのまま砂の上に放置されています。
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これが何を意味するのかよくわかりません。餌の大きさ(岩の上で割りやすい大きさ、または食べやすい大きさが選別されているのか?)はそれほど関係ないような印象です。

せっかく掘り出した餌を放置して、別のえさを探り続ける奇妙な行動です。カラスは極めて賢い鳥なので、何か意味があるはずです。
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by beachmollusc | 2011-01-23 11:14 | Meretrix ハマグリ

ホンコンのハマグリ類

Dr. Chanがホンコンの水口干潟で自ら採集して提供してくれたハマグリ類の標本は手元に68個あります。

この集団の殻の形態を見ると個体変異が激しく、それに加えて色彩模様の変異もあります。その中の2個だけですが、他の全てと明確に異なる、別種と考えるしかないので頭を抱えています。

近縁種が同じ場所に共存していることは特別なことではありませんが、それらの間で生殖隔離が起こっているのかどうか、交雑の問題を理解することが難題となります。

ホンコン沿岸、潮間帯の生態についてはJohn MortonとBrian Morton(共に貝類が専門、苗字は同じだが親戚ではない)共著The Sea Shore Ecology of Hong Kong, Hong Kong University Press, 1983年出版の詳しい解説があります。その中に出てくるハマグリ類はMeretrix meretrix、つまり和名がタイワンハマグリとされている1種だけです。

ホンコンでは中国大陸の分類と同じで、日本の分類でシナハマグリと認識されている学名がMeretrix petechialisMeretrix meretrixとしています。

タイ国のタイ湾に分布するタイワンハマグリをMeretrix meretrixの基準として、(現在のところ)分類を整理しているわけですが、ホンコンのサンプルはM. petechialisの殻形態の特徴が見られる個体が多く見られます。

ホンコンのシナハマグリにはハマグリの縦長の変異としてもおかしくない個体が少数混ざっていて、見慣れないと識別できません(形態指標を計測しても区別は無理でしょう)。集団内の個体による色彩型の変異については、ホンコンのシナハマグリの大多数は単調なグレーを基調とした模様が顕著でないものです。中国本土のシナハマグリに比べて斑点模様が殻の表面に広がる割合は低いようです。
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さて、2個だけ混ざっていたタイワンハマグリと思われる個体の片割れです。別の個体は真っ白で、色彩・模様が出ていません(タイ産のタイワンハマグリには真っ白型がかなり多い)。
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オレンジ色の独特の色模様が出ていて、殻の後側斜面が角張り、殻の内側に見える套線湾入が深いという特徴がすべてタイワンハマグリと一致していて、ホンコンの海岸で一緒にいたシナハマグリから識別できます。

ホンコン大学の臨海研究所でハマグリ類の研究はほとんどされていません。ホンコン沿岸のナミノコガイ類は詳しい生態研究がイギリスの有名な貝類生態研究者Dr. Ansellによって研究されて論文が出ています。また、ホンコンの貝類についての分類・生物相、生理・生態、その他の分野に関しては、Brian Mortonが中心になって、国際ワークショップ(勉強会)が3回も開催されています。しかし、なぜかハマグリ類は忘れられているようです。

第3回目、1992年開催のワークショップの論文集は1994年に出版され、デジタル版はホンコン大学にアーカイブされています。その目次(各論文のタイトル)は一般公開されていますが、本文は内部閲覧に限られています。
http://library.hku.hk/record=b3487061

TITLE The Malacofauna of Hong Kong and Southern China III [electronic resource] : proceedings of the Third International Workshop on the Malacofauna of Hong Kong
and Southern China, Hong Kong, 13 April - 1 May 1992 / edited by Brian Morton.
IMPRINT Hong Kong : Hong Kong University Press, 1994.
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by beachmollusc | 2011-01-07 12:43 | Meretrix ハマグリ

ミスハマグリのミステリー

ベトナムは中国と並んでハマグリ類の大産地です。その代表種がミスハマグリという一風変わったハマグリであると単純に思っていましたが、実はこれが分類上の難題、特に和名の問題を抱えているようです。

日本で出版された貝類図鑑でミスハマグリMeretrix lyrataは波部・小菅共著の保育社の図鑑に掲載されています。
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これに関連して図鑑の共著者の一人の小菅とは別人の小菅丈治(2006年:ちりぼたん36巻4号、132-135頁)がベトナムのハンボリハマグリの情報を記述し、写真を掲載しています。それによると、上述の図鑑でミスハマグリとされた種はハンボリハマグリと呼ばれるべき別種であり、しかも黒田徳米が1941年に台湾産のミスハマグリとして新和名を提唱した種もlyrataの模式標本とは異なる、という波部の見解についての伝聞を書いています。これでは何がなんだか全くわかりません。

タイ沿岸にミスハマグリは分布していないようですが、似た小型種Meretrix planisulcata (Sowerby 1851) (和名なし)をYoosukh and Matsukuma (2001)がタイのSongklaの打ち上げ貝として記載しています(生きている貝の集団は確認されていない)。一見、ミスハマグリの稚貝のようにも見えますが、planisulcataの原記載のSowerby(1851)にはlyrataも一緒に新種として記載されていますから、19世紀の記載当時から別種として認識されたわけでした。

下はSowerby(1851)からCytherea lyrataの(新種記載)部分を抽出したものです。
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それに対してplanisulcataは:
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Sp. 122. C. planisulcata (pl. clxviii. f. 216), Sowerby, jun.;
Like C. lyra, but with the ribs flatter and larger in
proportion to the size of the shell, which is also less oblique.
Mr. Hanley's collection.

上の記載で、planisulcataはlyra(ta)に似ているが、殻の表面の肋がより平滑で輪郭の傾きがやや違うことで区別されています。この表現形の差異の程度では、個体変異の激しいハマグリ類の種の区別に使えそうにないと思いますが、...。

手元に集まっている各地からの実物標本を紹介しましょう。

シンガポール在住でSeashellHubサイト(http://www.seashellhub.com/)を公開している貝類コレクターの Ben Booさんが集めたハマグリ類の写真と採集の様子の記事を見て、メールで標本の貸し出しをお願いしたところ、こころよく提供してもらいました。貝類を地元のシンガポールを拠点にベトナムからマレーシア、タイ、インドネシアまで標本採集の手が伸びていて、採集記録もしっかりしています。標本数が少ないので集団内変異は読めませんが、主な種が網羅されています。
ハマグリ類はコレクションの一部の画像が公開されています。
http://www.seashellhub.com/Veneridae.html
タイのタイワンハマグリを日本のハマグリと同種にしていますが、ご本人は図鑑を見てヤマカンで名前をつけたそうです。ハンボリハマグリをタイワンハマグリとしているのは、貝の表面にはっきり出ている肋の存在を見落としていました。(近いうちに全部整理してから返却し、各標本につけるべき学名を提案します)。

Ben Booコレクションには、マレーシア産の見事なミスハマグリの標本がありました。
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そしてベトナム産のハンボリハマグリ(学名は不詳)の標本です。
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次にホンコン大学の海洋生物研究所の研究員であるDr. Benny Chanから提供してもらった標本です。

ベトナム産のミスハマグリかハンボリハマグリかよくわからないものですが、ホンコンのマーケットで販売されていたのを見つけて送ってくれました。
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フィリピンからのサンプルを、ネット上で貝類標本を販売している大手サイトから購入しました。
Guido T. Poppe & Philippe Poppe - Conchology, Inc.
http://www.conchology.be/?t=27&family=VENERIDAE&species=Meretrix lusoria
千葉県産のチョウセンハマグリと長崎県産のハマグリの殻標本が現在の販売リストにあります。
(東シナ海のオキアサリの標本が何でハマグリと同じ学名となっているのか理解できません。)
ここからはフィリピン産の大型のハマグリ類(サイトではM. meretrixとしているが種名がわからないので困っているもの)とフィリピン産のミスハマグリ?を買いました。

小さい個体から大きいものまで1ダース売っていたもの全部を購入していますが、最小個体と最大個体の写真です。その大きい方の個体は殻の後端が伸びだしているので、おそらく大きくならない種と思われます。
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この貝は稚貝の最初の部分で肋を形成せず、普通の殻表面が平滑なハマグリ類の姿をしています。その稚貝部分の殻の模様はどこかで見たようなパターンです。本種は殻がとても薄い特徴があって、他の熱帯性ハマグリ類と大きな違いが見られました。ミスハマグリではないことが明らかですが、ハンボリでもないし、タイの小型の似たものとも明確に違います。

熱帯産のハマグリ類をまじめに追求すると底なしの泥沼にはまりそうですが、沖縄産のハマグリの正体を見極めるためには仕方がありません。幸いにも、ミスハマグリ類は該当していないので、今回の連中は特に気にしなくてもすみそうです。

最後におまけの標本です:
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鹿児島の頴娃町でハマグリの陸上蓄養をしている方が中国で入手し、「これはなんでしょう」と持ってきて置き土産になった貝殻です。アサリに近いものかもしれませんが、全然わかりません。面白いことに殻の表面の肋はミスハマグリにそっくりです。

貝殻の表面が平滑になるか肋を刻むか、どちらが生き残りに有利であるのかですが、どちらにも利点と欠点があるのでしょう。ハマグリ類の小さい時代の活発な行動生態と殻の形態は深く関係しているはずです。その意味で、ミスハマグリのように殻の表面に肋ができると、粘液糸流動とか砂に潜るときの抵抗になってしまうかもしれません。
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by beachmollusc | 2011-01-01 15:44 | Meretrix ハマグリ

インドハマグリとタマゴハマグリ

現在の見解として、すでに紹介したモザンビークとインド、そしてタイのアンダマン海沿岸、つまりインド洋の端から端まで広く分布するハマグリ類はMeretrix castaと認識しています。和名は(地名を使うのはちょっと、ですが)慣習に従ってインドハマグリとしておきましょう。

タイ産のcastaの1例としてプーケットの臨海研究所から提供してもらった標本です。
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産地はプーケットの南に位置するKantang, Trangで、アンダマン海沿岸です。グーグルアースでその地域の様子を見ると、産地はおそらく内湾が深く陸地に切れ込んだ場所の干潟でしょう。

タイからのcasta標本としては、プーケットの北に位置する同じくアンダマン海沿岸のパンガーという所のマーケットで購入された標本があります。これは大小のシリーズで色彩変異が揃っている合計74個のサンプルですので、集団内の変異の様子が読み取れます(いずれ書く論文にデータを出す予定)。

タイから得られたハマグリ類3種(meretrix, casta, ovum)のそれぞれの種の判別は前に紹介したYoosukh and Matsukuma (2001)の報告に従っています。残るovumはインドから東南アジア各国で大きい集団として分布し、漁獲されている水産種です。

Meretrix ovumは学名の種名に「タマゴ」が当てられています。そこで、和名は安易にタマゴハマグリとしておきます。本種は横から見た殻の形が卵形に近い特徴がありますので、他のオムスビ型の連中と識別しやすい種です。

タイの各地からだけでなく、東南アジア各地(ミャンマー、インドネシア、マレーシア、シンガポール)の標本が手元に集まっています。

タイからJintanaさんが送ってくれたSamut Songkhram(タイ湾沿岸)産のovumです(送り主はcastaとしていました)。色彩変異が激しく、殻表面の全体がチョコレート色の個体も含まれています。
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殻の内側で套線湾入を見るとcastaと同じく極めて浅くなっています。
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ovumを最初に記載した文献はHanley (1845)ですが、これはオンラインで見つかりません。しかし、同時代に出版された貝類図譜 Sowerby (1851)と Reeve (1864)に貝殻の図と記載があります。オンラインで見ることが出来るこれらの文献にはcastaも掲載されているので2種を一緒に引用します。

まずはSowerbyですが、当時のハマグリ属はMeretrixではなくてCythereaというラマルクが提唱した属名でした。(MeretrixもCythereaも放送禁止用語に近い言葉です:ラマルクの人格が想像される?)
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上の図の43,44,46がcastaで、45がovumです。説明文を見ると、ovumはcastaよりも(輪郭が)横長で丸いとしか書いてありません。

次にReeveの図譜から当該2種をくりぬいた部分です。同じくCythereaでした。
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Reeve, L. A. 1864: CONCHOLOGIA ICONICA: OR,
ILLUSTRATIONS OF THE SHELLS OF MOLLUSCOUS ANIMALS

Species 19. (Fig. a, b, c, Mus. Cuming.)
Cytherea ovum.
The egg Cvtherea. Shell ovate, very solid, gibbous, anteriorly heart-shaped,
posteriorly a little produced, whitish, covered with a grey or reddish-orange
epidermis, posterior side stained within and without with violet.
Hanley, Pro. Zool. Soc. 1845, p. 21.
Meretrix ovum, Deshayes.
Hab. Madras.
A solid, gibbous shell, varying in form, as in the specimens figured, from
subglobose to oval, of a grey or redilish-orange colour, deeply stained
with violet, chiefly in the interior, at the posterior extremity.

Species 25. (Mus. Cuming.)
Cytherea casta.
The chaste Cytherea. Shell ovate, scarcely heart-shaped, somewhat depressed,
rather solid, glaucous-grey, very faintly rayed, smooth, shining.
Venus casta, Chemnitz, Conch. C.b. vol. vi. p. 349. pi. 33. f. 346.
Cytherea casta, Lamarck.
Meretrix casta, Deshayes.
Hab. Ceylon.
The shining glaucous-grey colour, indistinctly rayed, is a characteristic feature
of this species.
......................................
(ラテンの記述部分を省略)

英語のchasteというのはvirginということで、このcastaの学名は不思議な矛盾をはらんでいるようです。
(virgin whore?)

上の極めて簡単な記述でそれぞれの種を識別しろというのは無理な相談でしょう。とにかく、輪郭が丸くて縦に短い方がovumです。2種のどちらもインド洋で採取された標本が原記載に使われました。色彩について原記載では変異の一端に触れています。

上の2つの貝類図譜と同じ頃、大英自然史博物館に収蔵されたハマグリ類のモノグラフを書いたDeshayes (1853)はMeretrixを属名に採用し、M. ovumM. castaをその1番目と2番目に記載しています。この文献に図はありません。おそらく、この著者にとって、これらの2種の丸い輪郭の特徴が他のハマグリ類と比べて明確に識別しやすかったのでしょう。ずっと後(1941-42年)にフランスの貝類学者がモノグラフを書いているのですが、その著者たちはこれらの2種を同じように明確に区別しています。

各地からのovumとcastaをじっくり見比べて、ようやく見慣れてそれぞれの識別ができるようになりました。ただし、集団としてみた場合には明確ですが、殻の形態変異の激しい特異的な個体の場合、単独ではすぐには判別できません。つまり、ovumの縦に長い(殻高が大きい)個体とcastaの縦方向につぶれた(殻高が小さい)個体はそっくりで、殻の形態について指標数値で見比べると重なっていて識別できません。全体の輪郭が微妙に違うので「やっと」わかりますが、それはハマグリとシナハマグリを見分けることと同様です。
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by beachmollusc | 2010-12-29 11:03 | Meretrix ハマグリ

タイ国産のハマグリ類

タイ国はインド洋側(サンゴ礁が見られるアンダマン海)と、マレー半島の東側のタイ湾
(Gulf of Thailand)との東西で環境が大きく異なるため、海洋生物相にも大きな差異が見られるようです。

タイのインド洋側にあるプーケットにはデンマークの援助で1968年に建設された海洋生物研究所Phuket Marine Biological Center (PMBC) があります。

この研究施設を本拠地としたTMMP(熱帯海産貝類研究計画)が1990年からデンマーク政府の資金援助、University of AarhusのDr J. Hylleberg のリーダーシップで続けられていました。(現状は不明)

Tropical Marine Mollusc Programme, TMMP
Funded by: Danida (in total DKK 14 million) covering the Southeast Asian Region.

Initiated by: Dr Jørgen Hylleberg and imlemented by Dr J. Hylleberg and staff
from Marine Ecology, Department of Biological Sciencens, University of Aarhus.

http://biology.au.dk/internationalprogrammes/internationalprojectscompleted2htm/internationalprojectscompletedpcasia2htm/

この研究計画では毎年ワークショップが開催され、その報告集がプーケットセンターから出版されてきました。その2001年の報告にタイ産ハマグリ類についての分類研究の結果が報告されています。

Yoosukh, W. and A. Matsukuma (2001) : Taxonomic study on Meretrix (Mollusca:
Bivalvia) from Thailand. Phuket Marine Biological Center Special Publication 25(2),
451-460.

この研究報告ではタイ産の4種類のハマグリ属の貝をリストアップしました(比較参考のためベトナム産のミスハマグリ、1種を加えている)。下のように、それぞれのサンプルの産地が記載されています。

meretrix: Rayong (Gulf of Thailand); Chon Buri (ditto)
casta: Surat Thani (Andaman Sea); PhangNga (ditto); Ranong (ditto)
ovum: Samut Songkhram (river mouth of Maeklong River, Gulf of Thailand)
planisulcata: Phuket (Andaman Sea)

タイのMeretrix meretrix、(タイワンハマグリの和名があてられている)はタイ湾だけで、インド洋側、アンダマン海とマラッカ海峡沿岸からは記録されていないようです。(台湾ではなく、まさにタイ湾ハマグリ!)

琉球大学とタイ国のチュラロンコーン、カセットサート大学は研究者の交流や学生の交換が行われ、さらに東大海洋研究所の東南アジア各国との研究者交流事業もありましたので、タイ国の貝類(水産)研究者が私の研究室に短期客員として滞在したこともあります。

その客員だった一人、Jintanaさんは、タイ湾に面したプラチュアップ・キリ・カーンの水産研究所に勤務していてmeretrixの種苗生産を試みたこともあります。

Jintanaさんが送ってくれたタイのハマグリ類は3種(meretrix, casta, ovum)ありましたが、その中のプラチュアップ・キリ・カーン産のmeretrixの集合写真です。
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殻の色彩変異が激しくて、真っ白なものから派手な模様のものまで個体ごとに様々です。

代表として一番大きいものの表面と内側の写真です。
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これを見ると套線湾入が深い種であることは明白です。

2007年にJintanaさんや他のタイ国の研究者から琉球大学の土屋教授経由で入手されたサンプルには、タイ湾沿岸のラヨーン産のmeretrixがありました。地元のマーケットで購入されたものの集合写真です。
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Jintanaさんは色彩変異の代表をそれぞれ1個ずつ提供してくれましたが、このラヨーンのサンプルは集団内の変異の相対的な頻度分布を示唆しているようです。

昔の分類で、ハマグリ類は色彩・模様が異なると別種にされたこともあって、特にラマルクがその主犯でした。変異が明確な集団サンプルではなく、標本が少数の場合には異なる色を別種としたがる向きが今でも見られます。台湾沿岸で最近発表された「新種」のハマグリ類もその一例となるでしょう。

厄介なことに、例えば、殻の表面がチョコレート色になる色彩型はハマグリ類の各種に広く見られ、それらの別種が色をもとにして一緒くたに同じ種にされるということまであったようです。同じ種を色で別種に分けることよりも、別種を一緒にする混乱状態は、分類整理をより難しくします。

<追記>

タイ湾のタイワンハマグリと同じものはタイ湾の周辺海域、南シナ海南部(借り物ですが手元にマレーシアのジョホールとサラワクのクーチン産の同種があります)に広く分布しているようです。しかし、インド洋側では記録がありません。フィリピン産のもの(科博のサンプル)が同種かどうか、これからじっくり見ますが、違うものかもしれません。

一方、アンダマン海沿岸のcasta(和名がないのでインドハマグリと仮称)はタイ湾ではovum(これも和名がないのでタマゴハマグリと仮称)に置き換わっているようです。ハマハマやシナハマ、チョウハマに習ってインハマとタマハマです。インハマはアフリカからタイまでインド洋全域に広く分布する種と思われます。

タイハマはタイと台湾とが紛らわしくていけませんが、台湾にいるものでタイワンハマグリとされたものは学名Meretrix meretrix(ここで紹介したタイワンハマグリ)ではなさそうなのでOKでしょう。とにかく広域分布種に地名をつけて和名にしてはいけません。とりわけキュウシュウナミノコが最悪で、北海道からベトナムまで記録されてしまいました(ただし、おそらく複数の種が混ざっているようです:ナミノコ類の混乱を片付けるのは今後の課題)。

インハマとタマハマは極めてよく似ていますが、集団として変異の幅を理解できるようになったので、何とか識別できそうです。ただし、インドのタマハマと想定しているもの(インドでの学名でインハマと呼ばれている)は別種かもしれません。

タイハマとタマハマはほぼ同じ海域で砂浜と泥干潟の互いに異なる環境にすみ分けている並存状態で、日本のチョウハマ(外海の砂浜)とハマハマ(河口や内湾の泥干潟)の関係と似ているようです。

インハマとタマハマはどちらも泥干潟の住民で、分布海域が異なっている似たもの同士で、ハマハマとシナハマの関係によく似ていると思われます。

ハマグリ類の分類はインドネシアのサンプルが乏しいのが宿題となっていますが、東南アジアまでは整理がほぼできたみたいです。しかし、中国・台湾の種を触ると再びカオス状態になるかもしれません。
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by beachmollusc | 2010-12-22 10:04 | Meretrix ハマグリ

インド産ハマグリ類(その2)

パタソンさんが提供してくれた、インドの南部沿岸で採取された2種のハマグリ類の第2弾、現地でcastaと呼ばれている種についてまとめておきます。

ハマグリ類の古典分類について時代を遡って見ると、リンネの1758年Systema Naturaeでは2種類、すなわちVenus meretrix とV. Chioneが記載されています。

Gmelin(1790)は3番目のcastaという種を記載していますが、リンネと同様に貝殻の画像はChemnitzによっています。

原記載はBiodiversity Heritage Library(BHL)サイトからダウンロードできます。
Gmelinのcasta及び他の2種、meretrix とChinoeの記載のところをくりぬきました。
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ラテンで簡単に書かれている文を読み取るのは難儀なことですが、これは欧米人でも面倒らしく、親切な学者が英語で書き直してくれています(それもBHLにありました)。

この論文では、下にあるようにGmelin以後にRoedingなどがChioneからlusoria、つまり日本産ハマグリを分離して記載した理由が解説されています。(これ、日本産ハマグリの学名については後で、別稿で詳しく説明したいと考えています)

A descriptive catalogue of recent shells:
arranged according to the Linnæan method;
with particular attention to the synonymy / by Lewis Weston Dillwyn ...
Publication info: London: Printed for J. and A. Arch,1817.
Contributed By: Smithsonian Institution Libraries
http://www.biodiversitylibrary.org/bibliography/10437

スミソニアン自然史博物館収蔵の文献(古くて希少・貴重なもの)がオンラインで公開されていることはすばらしいことです。

上の3種のハマグリ類の部分をダウンロードしてからpdfファイルの変換ミスを訂正しましたので、それを下に貼り付けます。<VENUSのセクションのみ>

A DESCRIPTIVE CATALOGUE OF RECENT SHELLS,
ARRANGED ACCORDING TO THE LINNAEAN METHOD;
PARTICULAR ATTENTION TO THE SYNONYMY BY
LEWIS WESTON DILLWYN, VOL. I. 1817.

ATTEMPT TO ELUCIDATE THE SPECIES OF SHELLS DESCRIBED
IN GMELIN's EDITION OF THE SYSTEMA NATURAE, AND TO PAVE
THE WAY FOR A BETTER ARRANGEMENT


177‐78頁  LUSORIA

Lusoria. 44. Shell somewhat heart-shaped, ponderous, glabrous,
with the anterior slope truncated, and the margin very entire,

Variety A. White, with two obsolete brown longitudinal rays.
Venus lusoria Japonica. Chemnitz, vi. p. 337. t. 32. f. 340.
Venus Chione Var. β. Gmelin, p. 3272.
Venus, No. 18. Schroeter Einl. iii. p. 161.
Rumphius. t. 43. f. G.
Petiver Amb. t. 18. f. 20.

Variety B. White, with scattered brown angular streaks and spots.
Venus lusoria variegata. Chemnitz, vi. p. 347. t. 33. f. 344.
Venus Chione Var. γ. Gmelin, p. 3272.
Venus, No. 19. Schroeter Einl. iii. p. 161.

Inhabits the coasts of Amboyna. Rumphins. Japan, and China. Chemnitz.

Shell about two inches and a quarter long, and two inches and three
quarters broad, and I have followed Chemnitz, Kaemmerer, and Schroeter,
in placing it separate from V. Chione, on account of the more truncated
appearance of its cartilage slope; the anterior tooth of the hinge is long
and crenulated, and the margin on the inside is violet.

178頁    CHIONE

Chione. 45. Shell somewhat heart-shaped, glossy, with the posterior
depression oblong and acute; margin very entire.

Venus Chione. Linnaeus Syst. Nat. p. 1131.
Born Mus. p. 63.
Chemnitz, vi. p. 344. t. 32. f. 343.
Schroeter Einl. iii. p. 124.
Gmelin, p. 3272.
Donovan, i. 1. 17.
Montagu Test. p. 115.
Maton and Racket, in Lin. Trans, viii. p. 84.
Dorset Cat. p. 35. t. 6. f. 7.
Pectunculus glaber.
Da Costa Brit. Conch, p. 1S4. 1. 14. f. 7.
Lister Conch, t. 269. f. 105.
Gualter, t. 86. f. A.
Knorr, vi. t. 4. f. 1.
Regenfuss, i. t. S. f. 17.
Favanne, t. 47. f. E.
Enc. Meth.t.266. f. 1.

Inhabits the Asiatic Ocean. Linnaeus. Mediterranean. D'Avila.
Adriatic. Chemnitz. Coasts of Britain. Lister, etc. Naples. Ulysses.

Shell about two inches and a quarter long, and three inches broad; of a
pale chestnut colour, with darker longitudinal rays, and the inside white;
margin obtuse, and very entire; the cartilage cleft is broad, and extends
about half way down the anterior slope.

179頁    CASTA

Casta. 47. Shell somewhat heart-shaped, compressed at the posterior end;
anterior slope rounded, and the posterior depression ovate; margin very entire.

Venus casta. Chemnitz, vi. p. 349. t. 33. f. 346.
Gmelin, p. 3278.
Venus, No. 20. Schroeter Einl. iii. p. 162.

Inhabits the East Indian Seas. Chemnitz.

Shell about an inch and a quarter long, and an inch and a half broad; very
white, tinged with violet both inside and out at the anterior end, and the
posterior depression is violet; the cartilage slope is rounded, and has a
large oblong cleft; the anterior tooth of the hinge is crenulated in both valves.

179-180頁  MERETRIX
Meretrix. 48. Shell triangular-heart-shaped, shining, compressed at the
posterior end; cartilage slope rather protruded, and the posterior
depression obsolete; margin very entire.

Venus Meretrix.
Linnaeus Syst. Nat. p. 1132.
Born Mus. p. 65.
Chemnitz, vi. p. 350. t. 33. f. 347 to S52.
Schroeter Einl. iii. p. 126.
Gmelin, p. 3273.
Brooks's Introd. p. 66. t. 3. f. 26.
Meretrix labiosa.
Lamarck Syst. des Anim. p. 122.
Gualter, t. 76. f. C.
Argenville, t. 2 1. f. F.
Knorr, vi. t. 6. f. 3.
Enc. Meth. p. 268. f. 6.

Inhabits the Indian Seas. Linnaeus. Coasts of Ceylon, the Molucca and
Nicobar Islands, chiefly about the mouths of rivers. Chemnitz.
China. Humphreys.

Shell generally about an inch and a quarter long, and an inch and a half
broad, thick, and more glossy on the out than in the inside; the colour is
white, or pale greenish, yellowish, or yellowish brown, and variously
marked with darker obsolete rays, transverse rows of dots, or small
angular streaks; the cartilage slope becomes abruptly flattened, and is
protruded in the middle; the hinge has a distant tooth under the posterior
depression in one valve, and a hollow for its reception in the other; the
inside is white, and tinged with purple on the anterior slope. Chemnitz,
in Vol. xi. p. 228., under the name of V. brunnea, has described what
appears to be only a variety of this species, of an uniform chestnut colour.

以上、引用した文から見て殻の表面に光沢があるという点がパタソンさんがインド南部から採取して持ってきたcastaと呼ばれているものと異なります。 castaの原記載、模式標本はインド産のようです。

パタソン標本で最大の殻は殻長51mmでした。内側の写真で見ると套線湾入が極めて浅いことが明白です。
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色彩変異として殻の表面全体が茶色のものが数%含まれています。
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ほとんどの個体は白い殻で表面に薄いベージュ色の剥げやすい殻被を被っています。その殻被が赤茶色に変色している個体が大きい個体に多く見られました。
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内側に薄いピンク色が出る傾向があることは、タイ国などのovumと(思われるものと)同様です。また、殻の水管が出る部分(潜った状態で上になる、殻としては後端)の周囲が濃い紫色になる個体が多いようです。

ごく小さい個体が標本に含まれていませんが、(大きい個体に見られる)若い頃の殻の表面にはハマグリ類によく見られる斑紋、二本筋模様などが刻まれています。
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このcastaと呼ばれている種は輪郭から見るとタイのovumそっくりです。Hornellはovumとcastaを同種の地域変異と見ていたようです。

この種の確定についてはまだ確信が持てないので保留しておきます。しかし、インド南部産の2種:meretrixがcastaでcastaが暫定的にovumに玉突きで変更せざるを得ないかもしれません。インドにM. meretrixはいないのかもしれません。
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by beachmollusc | 2010-12-21 09:20 | Meretrix ハマグリ

インド産のハマグリ類

今朝の冷え込みで、これまで落葉をこらえていた植物が一斉に葉を落としています。育ち盛りのシマサルナシなどは、痛んだ芽を残して若い葉をまとめて落としました。無駄な抵抗をせず、おとなしく茎だけになって越冬する覚悟のようです。私もおとなしく冬将軍の軍門に降ります。

簡易温室の中は最低温度を10度に設定していますので、パッションフルーツはすこぶる元気です。

本題ですが、アフリカに続いて、今度はインドのハマグリ類標本を整理しています。

2004年12月クリスマスのインド洋大津波があった時に被害を受けたインド南部、タミール・ナド州の海洋研究所の所長さん、パタソンさんを2005年秋に(東大海洋研究所の客員として)日本に招聘してもらい、日本の海岸防災と海岸生物の調査のガイドをつとめました。彼との縁はTMMPという熱帯産貝類資源の国際協力研究で知り合い、沖縄で私の研究室の客員として短期間の共同研究の実績があります。

2005年10月のブログで彼が八重山、白保海岸の津波石の前に立っています。
beachmollusc ひむかのハマグリ : 白保の津浪石
http://beachmollu.exblog.jp/1398639

この調査結果の報告はオンライン・アーカイブで閲覧できます。

EDWARD J. K. Patterson, TERAZAKI Makoto, and YAMAGUCHI Masashi (2006)
The impact of tsunami in coastal areas : Coastal protection and disaster prevention measures-Experiences from Japanese coasts.
Coastal Marine Science 30(2), 414-424
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004782886

この調査旅行に先立って、パタソンさんがインド産ハマグリ類の標本を自ら採集して持ってきてくれました。

2種類のハマグリ類(インドではMeretrix meretrix M. castaと呼ばれているもの、同じエスチュアリー、浅い泥干潟の異なるゾーンで別々の集団を形成していた)それぞれ合計200個前後あり、大小のシリーズ・サンプルです。一部を身がついた液浸固定標本として持ってきてくれました。

殻の乾燥標本の全員集合写真です。
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2種類のうちM. meretrixと呼ばれているものは、アフリカ、モザンビークのものと同種でしょう。

アフリカのインド洋沿岸でハマグリ類が記録されているのはモザンビークだけです。ケニヤとかタンザニア、マダガスカルなどからの記録は見つけていません。また、紅海とペルシャ湾の貝類文献にも出ていません。つまり、アフリカ南部からインドまでの間の広い海域に分布の空白域があります。

<追記>
南アフリカの貝類図鑑にMeretrix meretrixとしてモザンビークのと同種と思われるハマグリ類が掲載されていました。大きい集団は形成していないようです(rare)。
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インドでM. meretrixと呼ばれている種の標本で、パタソンが提供してくれた最大の殻です。
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その内側の様子を見ると、套線湾入が浅い種であることは明らかです(そのままの写真ではみずらい)。
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つまり、湾入が深いはずのM. meretrixとするには問題があります。

最大個体は殻の後端が伸び出ていて輪郭のイメージが多少ずれていますが、普通の中ぐらいの大きさの殻で典型的な輪郭を見ると:
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極めて殻高が高くて、真横から見た姿は円に近い(楕円率が低い)のが特徴です。

とりあえず種名を当てるとすればM. castaになるのですが、インドのもう一つの種にこの名前が当てられているので、玉突き問題が発生しました。ovumと言う種も含めて、後で再検討が必要です。

まずはVenus meretrixというリンネ種を確定させないと残りの種の名前を割り振ることができません。しかし、19世紀にイギリスで(大英自然史博物館収蔵)ハマグリ類全種の分類を整理したDeshayesがMeretrix meretrixの存在を完全に無視して様々な種に分割してくれた影響と、その後にフランスの研究者がラマルクの伝統を受けて唯我独尊・ユニークな分類を楽しんでやっているので、結果はメチャクチャになっています。

現在のところのとりあえずの結論ですが、M. meretrixという種をタイ国産標本で研究した報告(タイ産ハマグリ類についてはシリーズで各国の続編を書きます)とか、ウプサラにあるリンネの準模式標本(アフリカ産のところで写真があります)や、日本の科博標本(前のブログ参照、多分、黒田徳米が鑑定)、さらにアメリカの貝類の大家であったアボットの見解がすべて一致しています。当面、これらに従っておきます。

東南アジアの貝類図鑑として出版されたアボットの本からこのM. meretrixの部分を抽出しました。
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図鑑の写真が鮮明で、特徴をよく捉えているので、この種を特定することができそうです。ただし、リンネの記載では本種はインド洋産です。

インド産のハマグリ類については分類の詳細を1917年にHornellが出版しています。

この著者は1951年にインド産貝類について一般向けの解説記事つきの図鑑を出版していて、その本をヨーロッパの古書店から入手しました。(66頁の脚注に1917年の論文のタイトルが引用されています)
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この本の66-69頁にインド産ハマグリ類について生態を述べた詳しい記載があります。
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後でこの文の基になった1917年論文の全文と図版を付録としておきますが、その前に現代のインド産貝類の図鑑(1998年出版)でどうなっているかを紹介しておきます。
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この図鑑の記載を見ると、昔のHornellの研究結果は伝承されていません。

Hornellはインド産のハマグリ類について全種の分類の改訂を行ったのですが、M. meretrixについての認識が表面的だったようです。

下にBiodiversity Heritage Library サイトで見つけた1917年の論文を付録としておきます。(パタソンのサンプルのもう一つの種については改めて論じます)
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by beachmollusc | 2010-12-17 12:50 | Meretrix ハマグリ

モザンビーク(アフリカ)のハマグリ類

この先、冬ごもりの間に激しく混乱しているハマグリ属の分類をやっつけるべく、手元に集めたハマグリ類の標本を整理している最中です。

ハマグリ属のように、表面的に「何の変哲もない」典型的な姿の二枚貝類は種を識別するための「手がかり」が極めて乏しいこと、生きている貝の分布がインド洋(アフリカ南東部沿岸とインドなど)と西太平洋(東南アジアと東アジア)に限定されている属であること、そして古典的な「鑑別分類」が主にヨーロッパの貝殻学者conchiologist、つまり生きている貝を見ないで論文を書いてしまう「貝殻の専門家」たちによって行われたこと、などが原因となっていて、分類上の混乱が続出しています。

日本と同様に海外でもハマグリ属はもっとも普通にいて食用にされる種がほとんどですが、普通種というものは分類学者の興味をそそらないらしく、深く突っ込んだ研究はわずかです。

さらに困ったことに、ハマグリ類は同じ集団内で形態と色彩・模様の個体変異が激しく、おまけに同一種のものが成長にともなって極端な形態変化を見せることがあります。博物館に収蔵された、大きさの範囲も狭く、個体数が少ない標本を元にした分類で混乱することは当然かもしれません。

ハマグリ属に含まれる種が全部でいくつあるかというと、今のところ、10種プラスアルファです。つまり、種数は少ないし、同じ海域では3-4種が見られるだけなので、それぞれの場所での識別は難しくありません。しかし、分類が混乱しているというのは国境を越えた場合です。

日本の沿岸では沖縄の絶滅種を含めた3種と本土(本州・四国・九州)の2種、そして移入種が1種で、合計6種が見られます。韓国で2または3種、タイ国では全部で5種、インドは4種が知られています。ベトナム、フィリピン、インドネシア・マレーシアにはもっと多いかもしれませんが、調査が行き届いていないのでよくわかりません。中国では日本と全く異なる見解の分類がなされていて、さっぱりわかりませんが多分2-3種類でしょう。

台湾産ハマグリ類が曲者で、見かけは日本のハマグリと同じで遺伝的に見ると異なる「別種」がいるようです。戦前に日本から移植されたハマグリが現在の台湾産養殖ハマグリの元といわれていましたが、生き残っていないだろうと思われます。台湾の野生集団のサンプルを見ると困惑するしかありませんが、これについては後で改めて紹介します。

さて、本日のお題はアフリカの南東部の国、モザンビークのインド洋沿岸のハマグリ類です。日本がハマグリ類の分布海域で北東の端になりますが、その対極で南西の端にある集団です。ちなみに、オーストラリアの沿岸からハマグリ類は全く記録されていません。

2005年1月、お願いしてあった標本が研究室に届きました。

モザンビークに赴任した青年海外協力隊の隊員が、そのブログで現地のハマグリを食べていることを記事にしたことから、メールでサンプル送付をお願いしました。そのご本人がレストランで食べた後の貝殻を日本に帰国する同僚の人に託してくれました。
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特にお願いしたとおり、大小さまざまのミックスなので成長に伴う形態変化をある程度知ることができます。

その後、同じ年に、別途で現地の水産技術協力関係者から生のサンプルを空輸してもらっています。それを基にしたアロザイム分析でタイ国産の同種と思われるものと遺伝的に極めて近縁であることがわかりました。(Yamakawa et al. 2008 Genetic relationships among species of Meretrix (Mollusca: Veneridae) in the western Pacific Ocean.
Pacific Science, vol. 62, 385-394. に詳細が報告されている。この報告で使われた種名はMeretrix ovum

モザンビークの首都マプトの沖にインハカという島があります。この島にはリゾートホテルと1947年に開設されたエデゥアルド・モンドレイン大学の臨海実験所があるそうです。

インハカ島の潮が引いた干潟の写真
http://www.flickr.com/photos/sergiospereira/1591098095/sizes/m/in/photostream/

干潟では現地の女性がグループで潮干狩りをやっていて、このハマグリの一種を採取しています。

下に引用した文はこの島の実験所について書かれた部分

Maputo's secret hideaway 
Author: Justin Fox Date: 01 November 05
http://www.getaway.co.za/article/maputos-secret-hideaway-2005-11-01

Inhaca's Biological Station

Reminiscent of the laboratory in HG Wells' The Island of Doctor Moreau,
the marine biological research station on Inhaca Island is run by Eduardo
Mondlane University (Maputo). It has been a training ground for many of
Southern Africa's foremost ichthyologists and biologists. The station is a
treasure trove of specimens and is stacked with formaldehyde-preserved
creatures in jars: fish, sea cucumbers, octopuses, sea horses. There are
cabinets of corals, sand anemones, crabs and stuffed birds, as well as a
skeleton of that illusive island visitor, the dugong.

The island was chosen as a research station in 1947 because of its location
on the fringe of the tropics, its large tidal range, various degrees of salinity
and shelter harbouring very diverse communities. The scientists have easily
accessible coral reefs, sea meadows and mangrove swamps, as well as rocks
and sand flats. The museum is open daily. Enquire at the lodge about transport,
or walk there (it takes about 50 minutes).


亜熱帯に位置し、サンゴ礁、海草帯、マングローブ、砂浜などの様々な環境が揃っているので、このインハカ島に実験所を開設する場所となったそうです。

この島の沿岸に見られる二枚貝類について詳しい報告書が1965年に出版されているのを見つけました。

Boshoff, P. H. (1965) Pelecypoda of Inhaca Island, Moçambique.
Memórias do Instituto de Investigaçāo Cientifica de Moçambique Vol. 7, 65-206.

報告の161-162頁にハマグリ類の一種について記載しています。
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Boshoffはこの種をVenus (Meretrix) meretrix Linn.と査定しています。3個の標本について図版Ⅲの1図で写真を掲載していますが、肝心な部分、特に套線湾入がよく見えません。もしかしたら別種がいるかも知れませんが、この報告で記載された貝はマプト付近の海岸で採取され、日本に送られてきた貝と同じものでしょう。
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さて、この報告で使われた学名が問題となります。

リンネが1758年に記載したVenus meretrixの実物標本は残っていませんが、同種とされる標本が存在します。
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リンネの記載は極めて簡略であって、原文ではハマグリ類を見分ける鍵の一つ、套線湾入のことが書かれていません。しかし、模式標本とされるものは深く湾入している特徴があります。この特徴は水管の大きさとリンクしていて、砂の中により深く潜る種で湾入が深くなる傾向が見られます。つまり、成育する場所・生息環境による差異があり、生態的に異なることを湾入の程度が示しています。

上に示したBoshoffの記載には湾入が浅くて、小さい個体ではほとんど見られないとあります。これはVenus meretrixつまり後でMeretrix meretrixと属名が改名された種の特徴と一致しません。とにかくM. meretrixは各国でそれぞれ異なる種につけられている厄介な種名です。

それではどの種に相当するのかですが、これもかなり悩ましいものです。

アロザイムを使った分子系統の論文ではMeretrix ovumという名前にしていますが、これはM. castaという種としたほうがよいかも知れません。

インド洋産のハマグリ類では、インドの沿岸と、タイ国のインド洋沿岸の種について詳しい報告がありますが、それぞれの研究者の見解が一致していないため、すっきりしません。とにかく、インド、そしてインドネシアなど東南アジア各国のものと詳しく比較し、精査しないと結論は出せません。

最後にモザンビークのハマグリ類の形態的特徴について述べておきましょう。殻の長さ、高さ、幅の計測値を基にして横から見た縦横比(楕円率)と長さに対する膨らみ具合の組み合わせで比較すると、日本産の一般的なハマグリ(これにも大きな地域差が見られます)よりもずっと膨らみが強く、楕円率が低い(横から見た姿は円に近い)のが明らかです。言い換えれば、殻が丸くてコロコロしている感じです。
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ごく小さい個体の標本数が少ないので、成長に伴う形態変化は良くわかりませんが、大きいほど丸く膨らむ傾向がありそうです。

横から見た輪郭の変化は乏しいのですが、個体間のバラツキが大きいため、互いによく似ているが楕円率が異なるとされるM. ovum M. castaの両種を明確に識別するのが難しいことが悩みです。

<おまけ>
国立科学博物館に収蔵されている標本のなかにMeretrix meretrixというラベルが付いているものがあります。フィリピンという殻の内側に書き込みがあります。
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殻の内側に(やっと)見える套線湾入は深いようですし、殻の全体の輪郭も卵型ではありません。これはMeretrix meretrixの準模式標本が再発見される前に査定されたもののようで、日本産ハマグリとは明確に異なります。

保育社から出版された「原色世界貝類図鑑 II 熱帯太平洋編」 波部忠重・小菅貞男(共著、1965年初版)に「タイワンハマグリ」の和名でMeretrix meretrix が、第64図版の3番で出ています。図版の貝は上の科博標本と模様の細部までそっくりです。図鑑を編集する時に図版の基になった標本がおそらくこれでしょう。
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この説明文の中で、不可解なことは、図鑑の写真は殻の内側を見せてくれていませんのでわかりませんが、タイワンハマグリの「套線湾入が浅い」とされたことです。もしこの科博標本が図鑑に使われていたものなら、記載が合っていません。(ハマグリの湾入が浅いことを踏まえると、文脈として論理そのものがおかしい。)

中国の貝類学専門家はMeretrix meretrixを、どちらも湾入が浅いシナハマグリとハマグリを含む同一種の複合種と見ています。日本でも戦前にチョウセンハマグリとハマグリを一緒にしてこの学名を当てていた時代があったように、ハマグリ類の分類は混迷を続けています。
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by beachmollusc | 2010-12-13 16:55 | Meretrix ハマグリ

鹿島灘産のチョウセンハマグリの最大個体

鹿島灘の電脳漁師、作田丸のsakuさんとはネット上で長い付き合いです。

チョウセンハマグリの日本最大の生産海域で実際に操業しながら、現場の様子をいつもブログで紹介されているので眼が離せません。

ブログ:漁師ってやつは・・・
電脳漁師の日々の出来事を写真で

http://sakuta.qee.jp/blog/

11月28日のブログで、ずっと前からお願いしていた件:「鹿島灘で最大のチョウセンハマグリの入手」についての記事があり、DMでも連絡をもらって、とりあえずの最大個体を送っていただきました。

<なかなかギネスには届かない>
http://sakuta.qee.jp/blog/?p=2890

その個体の写真です。
e0094349_10384116.jpg


鹿島灘のチョウセンハマグリは、老成すると殻の後端が伸びる特徴がありますが、この写真の個体は伸びていません(写真の右側が殻の後ろ側)ので、もっと大きくなれた個体だったのかもしれません。

日向灘産の最大個体は、文献の記録で殻長128mmですが、実物として手元に集めたものでは、いまだに120mm超がありません。11センチを超える大物は日本のどこでも滅多に見つかりません。

111ミリの鹿島灘産の個体は暫定的に王様の標本として出前講義や講演で実物提示に使うつもりです。
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by beachmollusc | 2010-12-02 10:44 | Meretrix ハマグリ