beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:ウミガメ( 34 )


足跡

15日、小潮で満潮の真夜中にかなり大きいウミガメがGIビーチに上陸して、産卵せずに海に戻った足跡が残されていました。撮影は午前6時頃で、干潮の時間でした。
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以前上陸したウミガメとほぼ同じ場所で岩礁にぶつかって、産卵適地(ぶつかった岩のすぐ脇にありますが、陸では視界が利かないカメにはわからない)にうまく出会えなかった結果です。このカメは別の場所で再上陸するでしょう。
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by beachmollusc | 2013-08-15 08:37 | ウミガメ

小潮の夜の上陸

GIビーチに着いたのが6時少し前、浜に下りたらウミガメの上陸した足跡が眼に入りました。
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上陸してからほぼ一直線に砂浜を登り、運悪く岩場のポケットにぶつかって産卵できず、すぐに海に引き返したようでした。その10メートル南側であれば、砂地に草が生えている好適なゾーンだったはずです。
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左右の足跡の幅から見て、かなり小型の、たぶん経験が浅い亀です。以前、上陸して産卵できずに引き返した奴と同じだったかもしれません。
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今日は小潮で、細島港では朝6時45分が最干潮でした。

真夜中が満潮でしたが、満潮線より下から足跡が始まっているので、潮が引き出してから上陸したものと考えられます。たぶん夜明け前でしょう。
http://www.the-miyanichi.co.jp/tide/index.php?location=hososhima
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上陸したポイント(手前)と海に戻ったポイント(向こう側)の潮位差が小さいことから上陸時間が短かったことがわかります。
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by beachmollusc | 2012-08-11 07:51 | ウミガメ

今シーズンはGIビーチでは産卵できない

今朝のGIビーチは時化が収まって、砂浜の上に、昨夜ウミガメの上陸した跡が見られました。手前のミッキーがいる足跡は海に戻ったところ、向こうに見えるのが上陸した跡です。
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前回の足跡よりも幅が広く、大型の個体だったと思われます。
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昨年の侵食で岩盤の周辺がえぐれたままとなっていて、水溜りとなっています(その海側ではビーチサイクルで砂が押し上げられていてバームとなっています)。
このウミガメは運悪く、産卵に適した表面が乾いた砂の場所に出会えず、岩盤のところで2回ターンして、産卵をあきらめて、プールを横切ってから海に戻ったようです。
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GIビーチの内陸側に砂が堆積するためには、南東の強風で陸に向けた飛砂が必要です。

岩盤の下側が白っぽくなっているのは砂に覆われていたところが侵食で露出したためですが、以前の砂の高さは岩盤付近で今より1m程度高かったはずです。

今年のGIビーチはアカウミガメの産卵に適した状況ではありません。
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by beachmollusc | 2012-06-09 10:03 | ウミガメ

初上陸で産卵せず

昨日GIビーチでウミガメの上陸した足跡を見つけました。今年初めてです。
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足跡の幅から判断して、小さめの母ガメです。
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上陸した場所の砂は岩場まで表面が湿っていたので、産卵をあきらめたようです。
(表面に乾いた砂の層がなかったので、おそらく脚の温度センサーがNOを出したのでしょう)
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産卵巣を作らず、方向転換して海に戻ったようです。

ウミガメは(卵が順調に発育する)産卵する場所を選び出す仕組みができています。その野生の感覚を乱しているのが砂浜海岸の環境を改変する人々であり、さらに、産み落とされた卵を移植する「野生動物保護」の原則を無視したおせっかいな人たちがいます。宮崎県日向市は最悪(卵の移植100%を誇る異常な海岸地帯)でしょう。

ウミガメの保全について「世界最悪の国」で繁殖するウミガメたちの受難の季節が今年もめぐってきました。
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by beachmollusc | 2012-05-11 07:22 | ウミガメ

ウミガメの死骸

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今朝、GIビーチで見つけました。

以前、死んで打上げられ、(市役所の担当が?)浜に埋めたモノが砂の侵食で出てきたようです。頭骨は白骨になっていて、脚の骨などはバラバラに散っています。
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by beachmollusc | 2011-08-18 06:40 | ウミガメ

海に戻るアカウミガメ

小倉ヶ浜海水浴場のサーファーが多い場所に産卵し、海に戻る途中のアカウミガメに出会いました。

動画をようつべにアップしておきました。
http://www.youtube.com/watch?v=94AhVYwXj9U
http://www.youtube.com/watch?v=Mf4tDJG5pT8

海岸に降りたとたん、ウミガメの足跡があり、はるか彼方の砂の上に海ガメの姿が見えます。
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満潮線より少し海側までやって来て、サーファーが多い時間になったらしく、海へ向かって真っ直ぐ進行できないで混乱していました。
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ミッキーはロープで足止めですが、自由なハートが挨拶に出向いてワンワン言ったら、カメサンがゆっくり動き出しました。その後、30分ほどで波間に消えました。
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産み終えて帰る時間には干潮となって、傾斜がゆるい小倉ヶ浜の砂浜では長い道のりです。
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上陸してから真っ直ぐの道筋を辿りましたが、帰り道は大きくジグザグです。多分、人が通りかかって何度も邪魔が入ったのでしょう。
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足跡から、上陸したのは昨夜の満潮が過ぎたばかりの頃だったとわかります。
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海浜植生が砂丘のふもとで砂を安定化させている場所まで長い道のりでした。
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草の生えている間の砂場に産卵巣を造っていました。理想的な場所を選んでいます。
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産んだ後の砂かけ(カモフラージュ)を済ませています。

母ガメが砂を払った位置を想定すれば、どこに巣穴があるかピンポイントでわかります。

この場所を保全するべくマークしておいて、2ヶ月余りの孵化後の調査で孵化率を確認すればよいのですが、日向市の地元には卵を掘り出して移設する依存症にかかっている人たちがいるので困ったものです。じっと見守ればよいのに、余計な手を出す「動物愛誤」の病気です。
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亀の足跡に交差した重機のキャタピラー跡がありました。
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平岩港の航路浚渫の砂を運搬しているようです。毎度のことですが、台風の波で砂が動き、トラップとなった航路がふさがっていると思われます。

<追加>

上のアカウミガメの産卵場所で撮影した8月7日朝の写真です。

スリバチ状態になっているのは卵を掘り出して移設した証拠です。
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台風9号の波はここまで届いていませんでした。

移設した皆さんは台風の波で卵がさらわれないようにしているつもりでしょうが、そのような場所は温度環境が異なるでしょう。移設で発生障害をおこすだけでなく、孵化まで進んでも仔ガメの性比が偏ってしまう恐れがあります。
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by beachmollusc | 2011-07-26 08:45 | ウミガメ

GIビーチに産卵上陸

小倉ヶ浜の赤岩川河口を見に出かけている間にGIビーチでアカウミガメの産卵上陸がありました。

砂浜のもっとも北で、ボウズ山のすぐ下で上陸していました。砂の上に突き出た岩の間を通って、湧き水が流れ出す澪筋を横切り、相当苦労して産卵できる場所にたどり着いたようです。
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旗印の位置に産卵したところを地元の「ご親切な」皆さんが卵を掘り出し、どこか別の場所に移設したそうです。今朝、現場で話を聞いた通報者によると卵が145個あったということと、足跡の幅の大きさから見て、かなり大型の個体だったと思われます。

産卵場所を探し回り、海浜植物が生育していて環境が安定したゾーンに近く、砂の温度と湿度が卵の発生に適した場所を見つけ出した母親亀の苦労がしのばれます。

その卵を他の場所に移設する「大きなお世話」が自然保護であると勘違いしている人たちがいるのは残念なことです。
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by beachmollusc | 2011-06-29 20:32 | ウミガメ

日向市の天然記念物の残骸

今年、産卵期前頃にGIビーチに大きなウミガメの死骸が打ち上げられていたことはブログで紹介していません。死後時間が経過したもので腐っていたため、いわゆる腐乱状態でした。近寄りたくない相手だったので写真も撮っておらず、地元のウミガメ愛護団体メンバーである天敵さんに通報し、市役所と一緒に「善処」するようにお願いしました。

アカウミガメの産卵地は日向灘全域の砂浜にあり、宮崎県はそのほとんどの場所について「天然記念物」に指定しています。ところが日向市は独自路線を突っ走っていて、別途、わざわざ、なぜか、市の指定天然記念物にしています。日向の謎には色々ありますが、これもその一つです。天敵さんに聞いても理由は不明です。

日向市認定のウミガメ愛護団体は毎年「すべての」アカウミガメの卵を掘り出して数を数えて、嵐でも海水が届かない陸に近い場所に移動させて埋めています。

卵の上下を変えると肺発生に悪影響が出たり、砂の湿度が低いと呼吸に影響し、砂中温度が変わると性別に影響が出ることなど、全くお構いなしです。5年や10年に一度の大嵐の波で卵が海水をかぶると大変だから、それから守るつもりの「保護」のようです。もちろん、活動成果として移動させた卵の数を堂々と発表しています。それを見た宮崎市のHさんは「100%移動させていますよ!」と感激していました。

産卵場所の邪魔となっているコンクリート護岸の撤去運動の先頭に立って活動するなら「野生動物保護」といえますが、卵をいじくりまわすことが「保護」と勘違いした「愛誤」にすぎません。

市役所の担当、多分「教育委員会、文化財」の係は市の天然記念物であるウミガメに興味を示さないようで、産卵期に愛護団体の「保護」活動現場の監督に一度も足を運んでいないそうです。なにしろ早朝ですので時間外手当が出ない仕事には出かけない、という話かもしれません。2-3年で担当は交代だし、愛護団体に丸投げしておくだけ、わずかな補助金を出して、年度末に報告書を受け取るだけの簡単な仕事です。テゲテゲ!

ところが天然記念物の死骸が出ると大変です。今年の担当は不運にもドデカイ腐乱死体と格闘する運命が待ち受けていました。ウミガメの死骸は埋設することになっているそうです。埋めたら仕事はおしまいか?

穴を掘って埋める作業の立会い見学はしませんでしたが、掘って埋めた場所はすぐわかります。死骸を移動させるのが嫌だったらしく、波打ち際の満潮線のところ、すなわち打上げられていた場所のすぐ脇でした。深い穴を掘った形跡もないし、大きな波で一発だな、と予想していたところ、9月の時化で出てきました、バラバラの甲羅の残骸が!

ミッキーはカメの甲羅の残骸にとても強く興味を示します。広く散乱した破片を見つけると口にくわえてうれしそうにします。牛の蹄をおもちゃに与えているのですが、それと感触が似ているからでしょう。

破片はすでに綺麗になっているので特に問題はありませんが、なにしろ天然記念物の成れの果てですから、粗末にしたら罰則!があるはずです。砂をかけて隠してもあまり効果がないようです。
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はてさて、どうしたらよいでしょう。テゲテゲ担当に通報して「善処」してもらいましょうか。
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by beachmollusc | 2010-10-19 15:42 | ウミガメ

'head-starting' 仔ウミガメ放流の経済効果

Sea Turtles: A Complete Guide to Their Biology, Behavior, and Conservation

James R. Spotila著 Johns Hopkins University Press 2004年出版
この本はウミガメ類7種すべてについて、一般向けにわかりやすく解説した好著です。

体裁としては、いわゆるcoffee table bookですが、大きく印刷された美しい写真と
ショッキングな写真を対比させて、読者にインパクトを与えるように工夫されています。
世界的にまとめられたウミガメの情報と数値データがわかりやすく図と表で示されて
いるのもすばらしい点です。ウミガメ保全の国別ランキングのマップがその一つでした。

ウミガメ類の保全研究と活動を献身的に行ってきた各国の主要な人物のプロフィール
が紹介されています(日本人は紹介されていません)。筆者は海外のウミガメ研究者と
接触したことがほとんどない(例外としてハワイのPolovinaとは、南太平洋委員会の
会議でニューカレドニアで一緒になったことがある)ので、著書・論文だけで知っていた
人物に関する生い立ちやウミガメと関わった経緯、その他のエピソードが特に興味深い
ものでした。

故人ですが、ウミガメ類研究の開拓者であるArchie Carrの紹介もありました。海外の
主要なウミガメ研究者はこの人の弟子、孫弟子、ひ孫弟子ばかりです。

Carrが一般読者向けに書いた、本人の研究調査紀行がThe Windward Road:
Adventures of a Naturalist on Remote Caribbean Shores 1956年初版
という本です。筆者は20年くらい前に読んで感銘を受けました。アメリカで数多くのウミ
ガメ研究者が誕生したのは、この本の影響が大きかったと思われます。(もう一冊、
ウミガメ類に関する著書もあるようですが、見落としていたので読んでいません。)

この本の中でKemp's Ridleyというウミガメの産卵場所がわからなくて、それを捜し
求めて旅をするというエピソードがありました。大西洋のアメリカ東海岸に見られる
小型のウミガメですが、1960年代に入るまで上陸する砂浜の産卵場所が不明で、
幻のウミガメだったわけです。

メキシコ湾の産卵場所がわかった頃には、そのごく限られた産卵場所での卵の乱獲で、
このウミガメ集団は壊滅的な状態に陥っていました。その後のメキシコとアメリカ政府に
よる保全活動の経過がSpotilaの本に克明に記されています。産卵場所の保全に関して
メキシコ側、そして餌場であるアメリカ側が密接に協力して、絶滅の縁からギリギリの所
で食い止めたようです。以下に、本の中で書かれた概要を紹介します。

このKemp's Ridleyは、近縁のヒメウミガメと同様に「集団産卵上陸:アリバダ」を行い、
しかも産卵場所が事実上Rancho Nuevoという1箇所だけだったので、人間による卵
の採取の圧力には極めてもろかったようです。地元の住民が獲って食べるだけであれば
問題はないでしょうが、商品として流通するようになった時にはひとたまりもありません。
保全活動が始まった1960年代の年間2000頭から上陸数の減少が続き、1980年代
には300頭未満となり、1990年には成体のメスの総数が約550頭と推定されました。
1990年にアメリカで底引き網からカメが脱出する仕掛けが義務付けられた背景には
この危機状態があったわけです。メキシコでも1995年にそれが義務付けられました。

絶滅が目前と考えたアメリカの関係者は保全のための最後の手段に打って出ました。
生まれた海岸の記憶(刷り込み)があって、親になったウミガメが産卵場所に戻って
次の世代を繋ぐことが推定されていたことを根拠に、アメリカ側にも新しい産卵地を
造っておこう、という計画でした。つまり、メキシコで産卵された卵をアメリカに運んで
孵化させた仔ガメをアメリカ(テキサス)海岸で放流する、というものでした。しかも、
孵化した直後の「初期減耗」を防ぐために、捕食者に食われにくい大きさまで育てて
放流しました。そのために飼育施設を造り、専門の人員を配置したわけです。これは
1978年から1992年まで15年間継続され、全部で22,263頭の仔ガメが放流され、
その総経費(税金の支出)は2,782,875ドルだったそうです。157頁のコラムにその
経過と結果が詳しく紹介されています。

このような稚仔の放流は、日本では水産資源を増やして漁獲量を増大させる目的で
多くの水産動物で実施されていて、全国的に国と各地方自治体の栽培漁業センター
が大量の種苗を生産して、放流事業をやっています。組織的にこれが行われたのは
日本の海の場合は1970年代から、クルマエビを振り出しに行われました。しかし、
日本で行われている多くの水産動物のhead-starting、初期減耗を減らすように
種苗を育てて放流する事業では、その結果が経済的に分析されたことはほとんど
ありません。費用対効果を見積もることが難しい事業であることは確かですが、事業
計画として、何をどのくらいの数量放流するか、そして、その成果は目標数を達成した
かどうか、でしか報告されていません。つまり、本来の目的だった水産資源の増大と
漁獲の増加にどれだけ貢献したか、それは投資した費用に見合っているかどうか、
などの点は一瞥もされないというのが普通です。海外の水産研究者と情報交換する
際に、これについて質問されたことが何度もありましたが、放流効果の検証データが
ないために説明が出来るわけがなく、かなり困りました。

アメリカはさすがです。税金を使って行った事業がどのような結果になり、効果が出た
かどうか検証します。これは当然なことなのですが、日本ではありえない、あっても
お手盛りで都合のよい評価しかしない、失敗や都合の悪いことは表に出しません。
水産庁がオンラインで出した事業報告の自己評価を見るとそれが良くわかります。
失敗を隠すことは後の教訓にならず、同じ間違いが繰り返されることになります。

Kemp's Ridleyのhead-starting事業に話を戻すと、2万頭以上の仔ガメを育てて
放流した結果、全部で15頭(テキサスで13頭、メキシコで2頭)が親になって産卵
したことがわかりました。見逃しもあるかもしれませんが、産卵親1頭を作るための
コストが約2000万円ということがわかれば、これ以上事業を継続する意味が薄れて
しまいます。人為的に新しい集団産卵地を造ることは、結局棚上げされました。
それよりもトロール、延縄や刺網で巻き添えになって死ぬことを防ぎ、メキシコの産卵
場所をしっかりガードする方が効果的であることがわかったのです。実験は当初の
目的を果たせなかったのでしたが、この事業は多くの教訓を残し、社会的に強い啓蒙
効果があったそうです。つまり、対症療法的な手段で野生動物の保全活動を行うこと
の無意味さを浮き彫りにしたことでした。

沖縄では中城湾に生息する希少種、トカゲハゼが埋立て事業で生息場所を失うこと
になって、その養殖と種苗放流、新たな生息場所を造るための人工干潟の造成など、
大きな予算(総額はいくらか?)をもらっています。野生動物の保全としてこれが意味
のあることか、疑問に思っている人が多いはずです。放流しても無駄なトカゲハゼを
ペットにして売ったとしたら1尾いくらで採算レベルか聞いたら、たしか、数十万円か
それ以上と言っていました(設備費、人件費、運営コストのデータを見たいものです)。

埋立て予定地の海草を移植するという同じくアリバイ用環境保全対策費用とあわせれば、
おそらくアメリカの Kemp's Ridley の head-starting 事業以上のお金が宙に消えて
しまったでしょう。
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by beachmollusc | 2008-08-20 09:16 | ウミガメ

日本がウミガメ保護における世界の最悪国と評価された理由(補遺)

注文したSpotilaの著書Sea Turtles: A Complete Guide to Their Biology,
Behavior, and Conservation、が来たので、早速ウミガメ保護における「世界の最悪国」と評価された理由を探ってみた。jomonjinさんのコメントにあったとおり、この本では具体的に説明しないで最悪の評価が決め付けられてしまっている。

この本のウミガメ保全の章を見たら、jomonjinさんが紹介された5つのポイント:
(1)卵の盗掘の有無、
(2)成体の捕獲の有無、
(3)産卵場所の保全状態、
(4)ウミガメ保全に対する国全体としての取り組み、
(5)トロールや延縄漁獲でのウミガメ捕獲規制状況、
は原文をまとめなおしていたものであった。

原文では以下の9項目が立てられていた:

(1) degree of egg harvest (= 卵の採取の程度)
(2) quantity of adult harvest (=成体の捕獲量)
(3) extinction rate for populations occurring within the country
(4) quality of nesting habitat (=産卵場所の保全状態)
(5) quality of foraging habitat
(6) management of unique habitats
(7) presence of endemic sea turtle species and how well the country address that issue
(8) controls placed on fisheries including TED requirements and longline fisheries management
(=トロールや延縄の捕獲規制状況, TEDはトロール網からウミガメが脱出できるしかけ)
(9) impact of fisheries on sea turtle populations

上の(6と7)の項目がウミガメ保全に対する国全体としての取り組み、に相当するかもしれないが、(7)は固有種がいない日本には該当しない項目である。(6)特異的な生息場所の管理とは何を意味しているか明確ではない(特別保護区の設定かもしれないので、日本での産卵場所の天然記念物指定と、そこでの保護管理がこれに該当するかもしれない)。

(3)は国内集団の絶滅率であるが、集団の定義を極めて狭くとって、同じ種であっても産卵場所のまとまりがある地域ごと、たとえばアカウミガメであれば屋久島集団とか日向灘集団のようなユニットであろう。アカウミガメは日本では全体として減少しているだろう(上陸産卵するメスの数は年ごとに変動していて、今年は多かったがそれによって減少傾向が解消されたと考えるのは時期尚早)が、幸い地域的に絶滅してしまった集団はなさそうである。その他のウミガメ類については情報がよくわからないが、小笠原でアオウミガメの上陸数は増加傾向になっているし、沖縄でタイマイは漁獲されていることから、それぞれの地域集団として絶滅はしていない。

本の著者は、前に想像したとおり、ウミガメ類に対する漁業および全体的な環境悪化の影響を重点的に評価したようである。前の投稿ですでに指摘したことはさておき、(5)索餌場所の環境保全、そして(9)漁業による悪影響、に関して本の中で詳しく述べられていた問題点について補足説明する。

{索餌場所の環境保全}
アカウミガメなどの仔ガメは外洋で海流に身を任せて漂流しながら餌を食べる。日本の海岸で誕生した仔ガメたちは黒潮続流に乗って東太平洋に向かっている。ところがその海域には東アジアから流れ出た大量の浮遊ゴミが一緒に流れている。日本だけの責任ではないだろうが、アカウミガメは浮遊しているプラスチックゴミやオイルボールなどの異物を摂取して腸閉塞で死ぬものが多いかもしれない(具体的な程度については調査がないのでわからない)。これはアメリカの海岸近くに到達する仔ガメがそれで死んでいる様子から類推されているので、日本ウミガメ協会の会長がプラスチックゴミの影響を相対的に軽く評価した講演会での発言は軽率だったと思われる。

東太平洋から回遊して日本の沿岸に戻ってきたアカウミガメの餌場やその周囲の環境はかなり厳しいだろうが、これに関する情報は乏しい。日本のウミガメ保全では、産卵上陸だけ注目しているありかたが問題である。

{漁業による悪影響}
産卵上陸する附近を含む沿岸部の餌場の周辺での漁業活動、すなわち刺網や定置網での混獲死亡について、情報が開示されていないが、断片的な報告を見るだけでも影響の重大さは想像できる。そして東シナ海の大陸棚のアカウミガメの餌場ではトロールや延縄漁が盛んである。
国として、環境省はこのような問題にノータッチであり、水産庁が後ろ向きであって、むしろアオウミガメやタイマイなどを水産資源として漁獲対象にすることを認めている。

日本では産卵していないオサガメは延縄漁業でアカウミガメと同様あるいはそれ以上に大きな影響を受けているようである。日本の遠洋と沖合い漁業、特に延縄漁業が世界中でどのくらいウミガメを混獲しているのか、それに対して対策を講じているかは情報が不明確(隠されているとしか思われない)である。通達で漁業者に注意を促しているが、ただそれだけのことである。漁業セクターにおいて水産庁がウミガメを保護しますよ、というメッセージだけ出しているが、何もやっていないと見られても仕方がないだろう。

最悪の日本に続いているワーストテンは、台湾、スペイン、韓国、フィリピン、インドネシア、タイ、モロッコ、キューバ、赤道ギニア、とされている。これらの上位の各国でも漁業の影響が大きな比重を占めているように思われる。

余談であるが、モロッコでは沿海域のタコ資源を無法な底引き漁業で壊滅状態にした実績がある。その過程でウミガメの混獲死亡と餌場の環境破壊はすさまじかっただろう。そのタコはほとんどが日本で消費されていたはずである。日本人が廉いタコヤキや回転すしネタを楽しんでいた陰で大西洋の各地のタコが獲りつくされ、ウミガメがその巻き添えになっていたわけである。
これに関する面白いブログ。
レッドデータ新規登録:タコ焼き
http://hfh01452.cocolog-nifty.com/notebook/2005/04/post_1.html
このブログで紹介された新聞記事でコメントした水産庁の偉い人は「他人事」、つまりモロッコの漁業者に問題があるといった風であった。しかし、日本人の胃袋を満たすために、水産物の輸入業者が大活躍し、水産庁や外務省がそれを後押しして相手国に様々な経済・技術支援をしている。資源管理の技術支援ではなくて、漁獲技術支援など結果的に乱獲を促すような仕組みになっている。
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以上、日本漁業の全世界での圧力の強さを考えると、それが海の野生動物であるウミガメ類を巻き添えにしている現実に対し、世界的に合意されている希少動物の保全について(先進)国にふさわしい行動をとっていないことが著者の強い反感の元になっているのだろう。

国内の砂浜で産卵に上陸したウミガメの保全に関する取り組みをいくら熱心にやっても、この評価は変わらないだろう。希少種の存続を大きく脅かす、最大の影響をおよぼしているのが日本という国だというメッセージが我々に突きつけられている。国としてそれに反論できるだろうか。
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by beachmollusc | 2008-08-17 13:38 | ウミガメ