beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:ウミガメ( 34 )


アカウミガメの孵化・脱出 - ライブ中継 - 明石

兵庫県明石市の人工ビーチで産卵されたアカウミガメの孵化・脱出の様子を
モニターしてライブ中継しています。下のURLから:
http://www.city.akashi.hyogo.jp/seisaku/news/umigame.html
予想では今日が「その予定日」(ただし、誤差あり)だそうです。

ここでは産卵から孵化までの保全体制がしっかりしているという印象です。
放流イベントでお金を徴収するような「保護活動」もあるようですが、雲泥の差ですね。
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by beachmollusc | 2008-08-09 19:36 | ウミガメ

ウミガメ保護についての静岡事情

ウミガメ大図鑑サイト 静岡県遠州灘・中田島砂丘 うみがめ
http://umigamezukann.seesaa.net/article/73582123.html
子亀の放流の動画がYouTubeでアップされていました。

同じ場所の詳しい様子が動画と共に記録されています。
エクステリア明日香:スタッフルーム
中田島砂丘でのウミガメ放流会 投稿:2007.09.17 
http://exasuka.blog.ocn.ne.jp/staff_room/2007/09/post_b78d.html
これのフォローアップとしてコメントのやり取りがあります。
ウミガメ放流会についてのご指摘【追記あり】 投稿:2008.03.05
http://exasuka.blog.ocn.ne.jp/staff_room/2008/03/post_9bc0.html

やり取りの中で指摘された重要なポイントですが、このブロガーの素朴な疑問:

<ここから引用>
やめよう 子ガメの放流会(2007年7月11日)
ウミガメ講座ー2 「なぜ子ガメの放流会は保護にならないのか」(2002年4月)
なんと、6年も前から問題点が明らかになっていた様です。

しかし、疑問に思うのは、これ、今まで関係団体の間で合意が取れなかったのでしょうか?以前調べた時は、各地のウミガメ保護団体が協議会のようなものを開いて連携していたように思ったのですが。まだ完全に各団体間が情報共有を果たしているわけではないのでしょうか?意見が分かれているのなら、各団体が早急に意思統一を図った方が良いのではないでしょうか?それがウミガメの住まう環境保護のためにもっとも望ましい事ですよね?
<ここまで引用>

地元団体の一つから、この疑問に対する回答のコメントがありました。

<ここから引用>
いつも参考にさせて頂いています。NPO表浜ネットワークです。問題を真剣に取り上げて頂き、ありがとうございます。
少し、現状をお伝えできればと思いコメントさせていただきます。
活動団体の連携等、ウミガメの保護活動の状態はまったくもってご指摘の通り、残念ながらとれていないのが現状です。実は放流会・孵化場の問題はかなり以前から、ウミガメ協議会から浜松団体さんにも長年に渡って直接指摘されていました。思うに活動組織が大きくなるにつれて、方針を変えられなくなった事も察することができるかと思います。
隣接する私どもに色々と、地元浜松からも疑念の声(多少感情的と判断しても)が多々伝えられて来ています。これが疑念払拭のため、直接的に意見交換が出来れば良いのですが、代表の資質もあるかと思いますが、他の意見を一向に取り入れない点も壁になっています。
(以下略)
<ここまで引用>

宮崎県でも連携や意見・情報交換が乏しいと聞いているので、日本中で似たような姿でのウミガメ保護が行われている現状は、協議会のリーダーシップと啓蒙活動が働いていない証拠と思われる。協議会の理事の顔ぶれを見たら、主だった人物が顔を揃えているが、全員が地域別のトノサマなのだろうか。
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by beachmollusc | 2008-08-09 15:13 | ウミガメ

アカウミガメ卵の移設と放流の見直し(三重県)

新聞記事なので、掲載期間が切れたら内容が無いようになる恐れがあるので、
コピペしておきます。

中日新聞 [ 地域のニュース ] 三重
ウミガメの保護方法見直し 紀宝町の飼育員が問題点指摘 2008年7月18日
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20080718/CK2008071802000039.html

紀宝町のウミガメ保護活動で、見つけた卵をふ化場に移して保護する方法を見直す動きが出ている。流失などに備え、卵を移動させるのは必要かを判断する調査に専門家が乗り出した。

 ウミガメ保護条例を制定している同町は海岸近くの住民らに保護監視員を委嘱、保護活動をしてもらっている。監視員らは産卵を確認すると盗掘や高波で流されるのを防ぐため、同町井田の七里御浜にあるふ化場に卵を移して保護してきた。

 今年初めて日本ウミガメ協議会から派遣され、同町のウミガメ公園で飼育員として働いている谷口真理さん(25)が先月、保護監視員らの勉強会で問題点を指摘。

 卵を産卵場所から移動させるとふ化率が下がる傾向があることや、ふ化してから子ガメが海に帰る時間が長いと泳ぐ速度が遅くなるなどの研究報告などを解説した。

 谷口さんは「今は盗掘はないと考えられる。卵が流されるかを調べたい」として御浜町、紀宝町の浜辺で調査にも着手。今季産卵、上陸があった場所にマーカーを埋め、流失するかを調べる。10月初旬まで続け、結果を基に来年から保護活動の方法を検討していく。

 谷口さんは、ふ化場の管理には毎年、砂の入れ替えなどの手間が必要だとも指摘。産卵場所でのふ化を薦めている。

 (桜井祐二)
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by beachmollusc | 2008-08-09 11:20 | ウミガメ

アカウミガメの里帰りとその悲劇

終わりにしようと思っていたら、ニュース検索で出てきた下の話題は無視できません。日本ではマスコミがニュースにし(たく)ないだろうと思いますので、紹介しておきます。
http://www.telegraph.co.uk/arts/main.jhtml?xml=/arts/2008/08/08/nosplit/bvtv08critic.xml

Critic's choice - A Turtle’s Guide to the Pacific (BBC2)
Last Updated: 12:01am BST 08/08/2008
By Serena Davies

Loggerhead turtles make the world’s longest land or sea migration, 9,000 miles across the Pacific, from Mexico to Japan, to return to where they were born to breed.

This adorable Natural World film was inspired by the tale of a single female turtle whose journey scientists tracked across the ocean, only for her to be caught up in a trawler’s net and killed when she got to Japan.

メキシコ沿岸で発信機つきで放流された1個体のアカウミガメ
(愛称Adelita) http://www.turtles.org/adelita.htm
が、人工衛星で受信された追跡情報の解析によると、約1年かけて12000キロの太平洋横断旅行の末、産まれ故郷の日本の沿岸に到着した直後に(おそらく漁獲事故で)消えてしまった話が元になっています。イギリスのBBC放送がこれを主題にして映像番組を流したようです。
http://www.bbc.co.uk/iplayer/episode/b00cych9
BBCサイトiPlayerで見ることが出来るかとチェックしたら、「お待ちください」のサイン。

その後、ハワイのPolovinaそしてDuke大学などが中心になって、メキシコ、アメリカ側から日本へ向かったアカウミガメの回遊の衛星追跡が行われました。
http://seamap.env.duke.edu/prod/services/datasets/show_xml_metadata.php?datasetid=105
http://seamap.env.duke.edu/datasets/detail/317

関連した研究報告がいろいろありますが、その代表例:
Forage and migration habitat of loggerhead (Caretta caretta) and olive ridley (Lepidochelys olivacea) sea turtles in the central North Pacific Ocean
Jeffrey J. Polovina 外
Fisheries Oceanography Volume 13 Issue 1, Pages 36 - 51
Published Online: 12 Dec 2003

YouTube映像でAdelitaの回遊航跡がCGで説明されています。
http://www.truveo.com/Adelitas-Journey/id/1464718046
また、メキシコ沿岸でアカウミガメが漁業の混獲事故で死んでいる問題の動画映像もあります。
http://www.truveo.com/Pacific-loggerhead-turtles-in-whose-hands/id/2913546892
スペイン語のナレーションですが、英語の字幕がありました。

2006年12月にAdelitaの旅の10周年記念行事が催されていました。
Mexican, Japanese and U.S. Fishermen Celebrate Sea Turtle's Epic Journey and Commit to Conservation
http://www.ewire.com/display.cfm/Wire_ID/3548

One sea turtle’s incredible journey and the revolution that followed
Ocean Conservancy Magazine, Spring 2007
Story by Andrew Myers
http://www.oceanconservancy.org/site/News2?abbr=bpm_&page=NewsArticle&id=9530&JServSessionIdr006=qiqtcj33m2.app1b
アカウミガメが太平洋を横断した航路がAdelitaの衛星追跡で具体的に証明されましたが、日本ではウミガメ関係者の間でこの情報が周知されているのでしょうか。
jomonjinさんのウミガメエッセイで紹介されていますが、ウミガメ協議会サイトでは?
http://www.ne.jp/asahi/inlet/jomonjin/kameessay_08.html
衛星追跡は電池切れで終わったという話になっていますが、実は最後の日本沿岸で異常な動き(カメが泳ぐ速さでは説明できない移動)が記録されたそうです。
http://www.turtles.org/adelita.htm#japan
この追跡調査を行ったアメリカの研究者が日本に来て、追跡記録で最後となった宮城県南部の磯浜漁港で聞き込み調査をやったときのエピソードがあります。日本語が全くわからないこの人物をサポートする日本の研究者はいなかったようで、現地で苦労しています。

太平洋の向こう側では、これを契機にしてメキシコ沿岸などでの(日本生まれの)未成熟なアカウミガメを漁業被害から守る意識が高まっているようですが、日本に帰って来て産卵準備に入ったアカウミガメの沿岸部での混獲事故問題はその後どうなっているのでしょう。
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by beachmollusc | 2008-08-08 09:02 | ウミガメ

アカウミガメは絶滅の危機に瀕しているか

これまでネットサーフィンで遊びながら、適当に都合よく情報を拾い集めて、勝手な話をバラバラの文体で書きなぐってきました。この中での八つ当たりで不快感を感じた人がいたかもしれません。全部まとめなおし、真っ当な評論に仕上げて広く読んで貰えるような形に昇華させることもありでしょう。しかし、ハマグリの論文カキを中断しているので、そっちにエネルギーを向けなければなりません。ということで、そろそろ、そもそも論で締めくくりましょう。

ウミガメの保全について、情緒にふたをして、学術的にデータを分析して議論することは難しいようです。カメや野生動物に対して特に関心・興味を持っていない、そして「環境保全」が野生生物の持続的な存在を守る基礎であることを認識できていない人々が世の中の大多数を占めている、つまり政治・行政的に環境保全の優先順位が低いのが日本の現状です。この状況の中で個人的に出来る範囲の「保護」活動、そのほとんどが卵をいじること、を善意でやっている人々の団体が各地にあり、その行動が一部では「自己目的化」しているようです。

さて、アカウミガメは本当に絶滅の危機に瀕しているのでしょうか。種としては南北の大西洋と太平洋の両方に分布していて、アメリカやオーストラリア沿岸では日本と比べ物にならない桁違いで多く生息していると思われます。両国ではウミガメ類の保全に関する研究調査、啓蒙活動を続け、行政的にもしっかりしています。それに比べて、日本では行政が税金を投じて一生懸命砂浜の環境破壊を続けています。いまだにかなりの数のウミガメが産卵上陸できているのが奇跡ではないかとさえ思われます。

保全生物学の現在の標準的な考え方では、種だけでなく、それを構成する地域個体群(地域的に独立した繁殖のまとまりがある構成単位で、水産学では資源管理の単位として同様な概念を系群と呼ぶ)を考察の対象にします。そこで、これからは海外のことは一時棚上げして、日本沿岸で産卵上陸するアカウミガメに的を絞りましょう。最近の分子遺伝の研究情報では太平洋の南北両半球で遺伝交流の存在が示唆されている、つまりオーストラリア産まれのアカウミガメが回遊の結果日本に流れ着くことがそれほど珍しくないかもしれませんが、それをとりあえず無視しておきましょう。(日本の個体群規模が小さいので、その逆向き回遊拡散、移動はほぼ無視してよいでしょう)。

大西洋と太平洋の個体群が分断されたのはパナマ地峡が形成された数百万年前だったと想像されます。それ以来、両海洋間ではおそらく遺伝的な交流をやっていないでしょう。ただし、南アフリカの南を回ってインド洋経由でわずかにつながっているかもしれません。(そういえば、インド洋でアカウミガメがどのようになっているのか情報があったかしら。)

北太平洋で日本の領土以外に(温帯性である)アカウミガメが産卵上陸する場所は少ないとして、日本全体の産卵上陸数が成熟したメスの何割となるでしょうか。毎年上陸するわけではないので、沿岸で待機している個体があり、(性比が1:1ならば)同数の成熟オスがいて、さらに未成熟の個体が東太平洋から回遊して戻っているはずです。

アカウミガメの保全を考察するためには、日本沿岸の個体数、その年令構成と自然死亡率、そして漁獲や事故などによる死亡率を推定することが必須です。年度ごと産卵上陸数と産卵数はデータがありますが、これだけでは不十分です。産卵上陸した個体の年令構成のデータは見当たりません(年令形質が確認されていません)。個体群動態解析に必要な基礎研究にエネルギーが投入されていないのがウミガメ保全では明白です。アカウミガメは水産的にお金になりませんので、水産庁はその資源解析と保全のための研究には税金の投入を控えています(捕鯨と違って、天下りに無関係)。石垣島の水産研究所では(名目的に)ちょっとだけ手をつけていますが、資源管理目的ではありません。

漁業に関連する事故死について、最近になって多少注目されているのは下の論文が出版されたからでしょう。Duke University Marine Laboratoryの研究者達の報告です。

Ecology Letters Volume 7 Issue 3, Pages 221 - 231
Published Online: 24 Feb 2004

REPORT
Quantifying the effects of fisheries on threatened species: the impact of pelagic longlines on loggerhead and leatherback sea turtles

Rebecca L. Lewison*, Sloan A. Freeman and Larry B. Crowder

この論文のアブストラクトはダウンロード無料ですが、全文を見るためには数千円を出版元に支払うことが要求されているので、年金受給者には負担が大きすぎますので、まだ読んでいません。要旨のコピペにクレームが出るかもしれないので、そのエッセンスだけ紹介します。

外洋における延縄漁業で絶滅危惧種、アカウミガメとオサガメがこうむる影響の定量化、が題目です。(これになぜアオウミガメが入っていないのか:おそらく食性の関係で釣り餌に興味を示さないのでしょうか)
...................................................
40カ国以上の漁獲データと13の国際漁業監視計画のデータから全世界の2000年度の混獲状況を推定した結果、20万個体以上のアカウミガメと5万個体以上のオサガメが混獲されたらしい。

この分析から、太平洋だけでも万の桁でウミガメ類が延縄漁獲の巻き添えで死んでいることが示唆された。過去20年間で太平洋のこれらのウミガメは 80–95% 減少したと言われているので、このような事故死の影響が続くことはウミガメ類の持続的な存在を脅かすだろう。
....................................................
要旨だけでは、北太平洋の日本沿岸のデータをどこまで使っているのかわかりません。
延縄以外の日本沿岸での底引きや刺網漁業などの影響はわからないままです。

80–95% 減少の数字の根拠がどこにあるかは、引用文献などを追跡すればわかると思いますが、これがオーストラリアを含むとすれば、恐ろしいことです。

毎年、日本のアカウミガメが漁業などの巻き添えで万単位で事故死していると仮に想定すると、日本全体で千単位で産卵上陸する数とどのように比較できるだろうか。若い回遊中の個体が事故死の中心であるとすればつじつまが合うかもしれません。親になったカメは長寿で自然死亡は本来少ない(かもしれない)でしょう。古い者が溜まっている、超高齢化社会は日本人だけではなさそうです。この点をもっと明確にするためには、産卵上陸する個体の年齢構成を明らかにする必要があります。栄養条件が成長や成熟、繁殖に強く影響するウミガメだから、大きさだけでは年令は決まらないでしょう。年令形質の研究も少しは行われているようですが、ここに注目して調査を進めて欲しいものです。そうすれば、表題の疑問に間接的に答が出るかもしれません。
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by beachmollusc | 2008-08-06 10:31 | ウミガメ

日本がウミガメ保護における世界の最悪国と評価された理由(3)

(4)ウミガメ保全に対する国全体としての取り組み

国レベルでのウミガメ類の保全について調べてみると、環境省サイトの情報ではhttp://www.env.go.jp/press/press.php?serial=2813
報道発表資料  平成13年8月30日 

<海域自然環境保全基礎調査 海棲動物調査(ウミガメ生息調査)中間とりまとめについて
 環境省自然環境局生物多様性センター(山梨県富士吉田市)は、海域自然環境保全基礎調査の一環として実施してきた海棲動物調査(ウミガメ生息調査)の中間とりまとめを行った。
 この調査は、国内のウミガメの繁殖状況を把握し、沿岸域の自然環境保全のための基礎資料を得るために平成10,11年度に30都府県に委託して実施したもの。
 調査の結果、調査年度を含む過去5年間にウミガメの上陸が確認された砂浜は、アカウミガメで365箇所、アオウミガメで86箇所、タイマイで9箇所、種不明で93箇所あった(これらの一部では産卵も確認)。これらのうち、ウミガメの上陸が新たに確認された砂浜は25箇所であった。また、ウミガメの上陸頭数に減少傾向が見られた砂浜は47箇所であった。> (引用終わり)

以上は日本ウミガメ協議会がすでに資料として出している情報をなぞったくらいのものである。この中間取りまとめの後で本格的な報告は出されたのであろうか。(誰か見ましたか。)

2007-06-14 地球環境報告・それから ~石 弘之からの報告~
ウミガメの危機
http://ameblo.jp/ishihiroyuki/entry-10036646362.html
石さんのブログで日本を取り巻く国際条約関連ウミガメ情報が取りまとめられていた。

< 世界25カ国が参加する「インド洋・東南アジア地域ウミガメ協定」(IOSEA)は、2006年3月1日からの1年間を「国際ウミガメ年」として、ウミガメの保護の国際キャンペーンを展開すると発表した。この協定はウミガメの保護とその個体数の回復、インド洋と東南アジア地域の生息地の保全を目的としている。日本は加盟していない。

環境省はこのような野生動物保全の国際組織に加わることが出来ないし、水産庁はそっぽを向いていることが明白に出ています。東南アジアと日本の間でウミガメ類の回遊がどのくらいあるのかわからないままで、国別・地域的な保全活動だけではどうにもならない状況であろう。日本の漁船が世界各地で漁業を営んでいるときに、ウミガメ類にどのくらいのインパクトをおよぼしているのか、関係各国は知りたいはずである。

引用を続ける。

<とくに、魚を捕るために仕掛けた漁網や釣り針にかかって混獲の犠牲になるウミガメの数は、世界で毎年数万頭にもなると推定される。
 このため、国連食糧農業機関(FAO)の水産委員会は今年3月、「混獲」を減らすために各国が取るべき対策を定めた初の国際指針案を採択した。そのなかで、えさの種類や針の形、針を投入する深さなどを工夫して混獲を減らす手法や漁網の改良といった技術的対策を示して、各国政府に取り組みを強化するよう求めている。日本政府もマグロはえ縄漁船に混獲の少ない釣り針を使うよう指導するとともに、東南アジアや中南米の各国に対する技術支援と資金協力を強化する方針だ。>

一応、水産庁としても自分達の領域でやるべき仕事はやる姿勢を見せたようである。しかし、自国でのby-catch すなわち混獲、事故死の状況把握とその対策をやっているような情報は見当たらない。お金は出せるだろうが、どうやって技術支援を(強化?)するつもりだろうか。また延縄がウミガメ類の混獲でどのくらいの割合を占めているのだろうか。外の漁業、底引き網や刺網がウミガメには特に危ないように思われるが、いかがなものか。何も調べたりせず、FAOの指針をもらってから一部の漁業セクターに通達を流しただけに終わっていませんか。

< 昨年5月から9月にかけて、神奈川県の鎌倉から茅ヶ崎を中心に、60頭ちかくの死んだウミガメが漂着した。腐敗していて死因の判らないものがほとんどだった。なかには、はえ縄の針が食道に刺さったものもあった。>

以上で石さんの文からの部分的な引用を終えるが、国としての取り組みがしっかりしていると国際的に認められるような実績はないと思われる。

(5)トロールや延縄漁獲でのウミガメ捕獲規制状況

規制以前の問題として、前提になる実態調査をやっていないだろう。日本がこれについて何もやっていないと認定されても仕方がないのではないか。

3年前に書かれた水産庁サイトにある海亀類(総説):
http://www.jfa.maff.go.jp/kokushi_hp/H17genkyou/H17syousai/42.pdf
この文書の締めくくりを引用する。

<現在、遠洋漁業による海亀類の偶発的捕獲に焦点が集中しがちだが、海亀資源を保全管理するためには、遠洋漁業のみならず沿岸漁業も含めた産卵場周辺の環境についても、包括的かつ継続的な調査の実施と適切な保全管理体制の構築が必要不可欠である。>

ということは、これらをやっていないのですね。これからぜひやってください、水産庁さん。
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by beachmollusc | 2008-08-04 20:43 | ウミガメ

日本がウミガメ保護における世界の最悪国と評価された理由(2)

(3)産卵場所の保全状態

これについては日本ウミガメ協議会が取りまとめた情報:
「日本のウミガメの現状と各地の取り組み ― 各地の抱える問題」
http://www.umigame.org/J/genjyou_torikumi/kakuchinomondai.htm
の中に簡単に述べられています。
この協議会が出版した報告書「日本のアカウミガメの産卵と砂浜環境の現状」
には各地の生の声が聞こえてきます。

このような報告書はpdfファイルにしてHPで公開し、広く一般市民に見てもらうべきですね(HPでは教育・啓蒙・啓発というカテゴリーの中で紹介されていますが、表紙の写真しか見ることが出来ないので全く啓蒙にならない)。もし報告書の販売収入を当てにしているようであるならば、この協会の先は危ないでしょう。以前、事務局の人が私宛のメールで協議会が絶滅危惧種になっているとこぼしていましたっけ。

私は砂浜の貝類調査(集団遺伝研究)の目的で、これまで南日本各地の砂浜海岸を歩き回っています。まだ自分の足を踏み入れていない所も少し残っていますが、離島(壱岐、五島、下甑島など)を含めて主な砂浜の最近の状況を眼で見て知っています。どこに行ってもピカピカの階段護岸と傾斜護岸、そして古い垂直護岸だらけです。そして、多くの海岸で「ウミガメの保護」を訴える看板が行政によって護岸の脇に立てられています。ウミガメが上陸して産卵するべき場所をなくしておいて、アリバイ用の看板を立てて保護を訴えるという虚しさに悲しくなるばかりです。

護岸の存在は産卵場所を奪うだけでなく、砂浜の砂を失わせてコンクリート岩礁海岸に変貌させるようです。護岸は砂浜の侵食を防ぐ、後背地の生命と財産を守るために建設されていることになっていますが、多くの砂浜海岸で、侵食を防ぐことは予算を取って消化するための単なる口実であって、建設するために建設されているとしか見えません。もし護岸が建設されなければ侵食が進むという「脅し文句」がありますが、それは的外れでしょう。コンクリートでなく、津波、高潮、塩害などに対する防災は海岸林がもっとも効果的であると考えられています。砂浜の侵食を招いているのは海砂の採取をはじめ、河川から海に流れ出る土砂をダムなどがせき止めていること、そして沿岸域で砂の流動を阻害する海岸構造物の建設が主な要因であることが明らかです。日本各地で同じ問題が起こっているようですが、それから考えると、技術的に無能で先例の失敗から学べないのではなく、あえて問題を起こすような(賢い)設計をして、追加の公共工事(浚渫や防波堤の追加など)が発生するようにしているとしか思えません。

宮崎日日新聞サイト
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?itemid=4661&catid=153
県内の特集 自治再生第4部 「東国原県政と民力」  4/費用対効果

<ここから引用>
総事業費294億円。昨年末に示された財務省原案で、海岸侵食が進む宮崎市の住吉海岸などの沖に丁字形突堤を設置するなどの海岸保全整備事業が盛り込まれた。

 同市の宮崎港北側から一ツ瀬川河口までの海岸は過去40年で最大90㍍幅、平均40㍍幅の砂浜が消失。学識経験者や行政などでつくる対策検討委員会は、原因として河川や港湾などの人工構造物建設による流砂の変化などを指摘する。

 同海岸の侵食が進むのとは逆に、北側に2001年建設されたサンマリーナ宮崎周辺には砂が堆積(たいせき)。02年以来、約2億1200万円がしゅんせつに投じられている。

 巨額の公共投資に税金が使われる現実に対し、侵食対策工法の見直しを求める市民グループ「ひむかの砂浜復元ネットワーク」の林裕美子代表(48)は「将来を見通した時に過去の公共工事、海岸整備の在り方が本当に良かったのか、抜本的に検討すべきでは」と疑問を投げかける。

 サンマリーナ宮崎の整備には約170億円が投じられた。「壊すも地獄、維持も地獄」と東国原知事は頭を悩ませる。「だから海岸侵食は本当に無駄にならないような事業にしないと本末転倒になる」
<引用終わり>

海の公共工事では直接的な受益者が費用を負担することもないようです。宮崎のサンマリーナというプレジャーボートの港では出入り口で砂が堆積するように設計されていて、定期的に浚渫しないと使えないようになっているそうです。もしその費用を税金からでなく、港の利用者に負担させるとすれば問題は解決するでしょう。その理由は費用を負担しきれないので、港を利用する人がいなくなるはずだからです。

かなり脱線しているので本題に戻すと、日本の砂浜海岸の環境は世界的に最高レベルの人工改変が行われてきています。その過程でウミガメはもちろん、水産資源生物も含めて沿岸生態系に関して何も考慮されていないのです。このような日本のコンクリート文化は海外ではすでに広く知られています。ウミガメの保護にとって致命的な環境破壊が全域で起こっていることが大きなマイナス評価につながっているのは疑いないでしょう。

(さらにつづく)
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by beachmollusc | 2008-08-04 19:00 | ウミガメ

日本がウミガメ保護における世界の最悪国と評価された理由

注文したSpotilaの著書Sea Turtles: A Complete Guide to Their Biology,
Behavior, and Conservation、が手元に来ていないので、その中で日本がウミガメ保護における「世界の最悪国」と評価された理由の記述をまだ見ていない。しかし、記述内容を見ないでも大体の理由は想像できるので、読む前に考察しておいて後で照合してみたい。この本は、おそらくConserving Sea Turtles (Nicholas Mrosovsky著、1983年)以来のウミガメ類の保全生態学の伝統を受け継いでいるだろう。

孫引きであるが、ウミガメ保全(保護ではない点に注目、jomonjinさんはconservationを正しく翻訳した)の5つのポイント:
(1)卵の盗掘の有無、 (2)成体の捕獲の有無、 (3)産卵場所の保全状態、 (4)ウミガメ保全に対する国全体としての取り組み、 (5)トロールや延縄漁獲でのウミガメ捕獲規制状況、
に沿って、日本の現状を吟味してみたい。

ランキングのためには世界各国の状況と比較する必要があるが、この論評では、日本が抱えている問題がウミガメ保護に関係する日本人の間できちんと認識されていないことを指摘するのが目的である。自虐的に批判することは避けたいが、現場の状況を知れば知るほど嫌になるのが、日本の「自然保護」思想における保全生態学的な知識(情報の普及)と科学合理性の欠如である。

(1)卵の盗掘の有無
ウミガメ類の卵の採取は日本全体で法的に禁止されていると思われる。ウミガメが産卵上陸する各県の漁業調整規則すべてについてチェックしていないが、おそらく卵の採取行為は盗掘となり、全国的に罰則対象となっていると思われる。野生動物保護の総括責任を負っている環境省でこれに関する国レベルでの法整備をやっていないような気がするが、実態としてその必要がなさそうでもある。水産庁は各県にお任せする通達だけで済ませ、そして、文化庁の天然記念物行政でも同様であろう。
  行政的な禁止、制限があるということは、その違反者が存在するのが理由であるが、いまどきの日本の砂浜海岸でウミガメの卵をとって食べる人は皆無となっているに違いない。飽食日本では昔のように採取する動機もないし、獲っても金銭的な利得はないし、産卵期にウミガメの産卵監視パトロールが張り巡らされているから、罰則のある行為をあえて犯す者が極めて少ないと思われる。
  このポイントは、日本は先進国の標準と大差なく、減点事項とはならない(だろうか?、コメント参照)。

(2)成体の捕獲の有無
  意図的な、つまり商業的な捕獲対象となっているかどうかがこのポイントとして、日本は「国際保護動物」が漁業者の収入源となっている唯一の「先進国」ではないだろうか。装飾品にも食用にもならない(金にならない)温帯性のアカウミガメ以外のウミガメ類はほとんどやってこない九州以北でウミガメ漁業は存在しないから、問題となるのは沖縄県と鹿児島県(奄美群島)、そしてアオウミガメを食用にして漁獲する東京(小笠原諸島)である。

まず、小笠原の状況をチェックしてみよう。情報源は:エバーラスティング・ネイチャー
http://www.charity-platform.com/charitynavi/organization/data/elna-activerepo.pdf
<小笠原諸島が日本に返還後、東京都知事の許可の元、伝統的漁業としてウミガメ漁が復活しました。返還後もっとも捕獲数が多かったのが1979年の223頭、最も少なかったのが1975年の43頭です。現在では、東京都漁業調整規則により135頭の捕獲制限が設けられています。
  (略)
 小笠原諸島のように、現在、ウミガメ漁が存在し、なおかつ資源量が増加している地域は稀です。小笠原諸島のウミガメ漁は地域産業として位置づけられており、海洋資源の有効利用の例として、小笠原諸島のウミガメ漁とウミガメ資源管理方法は世界に誇れる実績です。> (引用おわり)

鹿児島は県条例(1988年制定)でウミガメ類の保護をうたって、捕獲を禁止している。
http://reiki.pref.kagoshima.jp/reiki_int/reiki_honbun/aq70104171.html
 しかし、この条例で禁止しているのは下の引用文のように、産卵上陸しているウミガメを捕獲、殺傷することとその卵を採取することであって、海の中で捕獲してはいけないとはどこにも書いていない。
………………………………….
(ウミガメの捕獲等の禁止)
第5条何人も,県内の海岸に上陸しているウミガメの捕獲(殺傷する行為を含む。以下同じ。)をし,又は県内の海岸に産卵されたウミガメの卵の採取(き損する行為を含む。以下同じ。)をしてはならない。
(県の責務)
第2条 
1項 県は,ウミガメの保護を図るための適切な施策を策定し,及びこれを実施するものとする。
2項 県は,教育活動,広報活動等を通じて,ウミガメの保護の必要性について県民等の理解を深めるよう努めるものとする。
…………………………………..

鹿児島県の漁業調整規則(1964年)ではどうなっているだろう。
http://reiki.pref.kagoshima.jp/reiki_int/reiki_honbun/aq70106871.html
ウミガメに関する制限などは何も記載されていないようである。捕獲データはわからない。

沖縄県の漁業調整規則:
http://www.pref.okinawa.jp/suisan/3info/3shinsei/5tyousei/tyouseikisoku.pdf
カメ類(タイマイ、アオウミガメ、アカウミガメ)の採捕禁止期間(6月1日から7月31日まで)、卵の採取禁止、そしてタイマイについては腹甲の長さ25センチ以下のものの採取を禁止している。

漁業者によるウミガメ類の捕獲実績は、石垣島の水産研究所からの報告を見ると、H16年度に、アカウミガメ6、アオウミガメ204、タイマイ29頭の捕獲があった。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/72/3/476/_pdf/-char/ja/
希少種ウミガメ類の産卵,ふ化管理および放流技術の開発
與世田 兼三, 清水 智仁 日本水産学会誌 Vol. 72 (2006) , No. 3 pp.476-479

以上のように、日本の「伝統漁業」の対象となっているウミガメ類は漁業資源として今でも捕獲され続けています。つまり、ウミガメ類は(希少種、保護動物ではなく)水産資源として持続的に利用できる対象であると水産庁は認識しているようです。したがって、海岸で産卵する親とその卵を保護すること、放流・増殖行為は行政的に整合しているでしょう。しかし、漁業活動で巻き添えになっているウミガメ類の実態把握をやらず、その対策をとろうともしないでいることが国民の眼から隠されていると思われます。実態を把握していない(したくない)から対策が取れない、というのが真相でしょうが、実態を知ると(余計な)仕事が増えて困るのでしょう。野生動物保護担当の環境省や文化財(天然記念物)担当の文化庁は共に、たとえそれを知っていても手を出せないでいると思います。このような行政の縦割り(縄張り)のおかげで、日本では、ジュゴンやスナメリなどもウミガメ類と同じく「名ばかり保護動物」になっていて、水質汚染や漁業の巻き添え事故などから守られるように考えられていないのが現実です。

(つづく)
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by beachmollusc | 2008-08-04 08:36 | ウミガメ

doomed eggs どうせダメな卵を移設する意味があるか

<この文章のタイトルを変更しました。また、一部追加して書いています。(8/3)>

IS NEST RELOCATION WORTH PURSUING IN NORTH CAROLINA?
Matthew H. Godfrey and Wendy M. Cluse
http://www.seaturtle.org/ists/PDF/final/2652.pdf

とても良い参考になる報告がありました。

アメリカの北カロライナ州では2002年以後、それまで行われてきた、高波で死滅すると懸念されたアカウミガメの卵の移設を禁止(モラトリウム)しています。そこで、モラトリウム以前と以後の孵化成功率を比較して検討した結果を報告し、移設の努力が報われたかどうかを検証しました。この海岸では産卵期中ハリケーンの高波の影響をしばしば受けていて、環境的には日本の本州南部から四国・九州の太平洋沿岸と似ています。

トータルの孵化率として、移設が行われていた1998-2001年の4年間では41.2%、そして移設が禁止になった2002-2005年の4年間では59.1%でした。

同じ年度内での比較ではありませんので、結果論しかいえません。たまたま2002年の孵化率が極めて高かった(84.6%)、つまりハリケーンは2回来ましたが外の年度よりも海が穏やかだったという要素が影響したのでしょう。しかし、2001年までの移設努力は報われていなかったようです。これも結果的に、ハリケーンで移設した卵も一緒にやられたためだったようです。わざわざ手をかけてもその結果が良くなければ意味がありません。移設に伴うリスクには、胚発生の障害と性比の混乱だけでなく、自然選択に干渉する(ダメなものを保護する)ことも指摘されています。

私は、これらのリスクを議論するだけでなく、日本ではさらに、海岸のコンクリート化に対しての免罪符的な行為として(結果的に)行政のアリバイつくりのために貢献する移設が行われているように見えてなりません。善意の行為であっても、当面の目的だけでなく、本質的に野生動物であるウミガメ類の「保護」についてどのように向かい合うべきか、どのような行動が理に適っているのか考えてから、取り組んで欲しいものです。

余談ですが、今年は日本で全国的にアカウミガメの産卵上陸が多いようです。これまでのところ産卵期を通じて海が例年になく穏やかです(太平洋高気圧の勢力が安定的)。ウミガメたちはこれを体感してせっせと産卵に励んでいるのかもしれません。秋に強い台風が来ておじゃんになるかもしれませんが、最初のサイクルの卵はそろそろ無事に孵化するでしょう。その中で移設された卵はされなかった場合よりも孵化率が低下するかもしれません。その場合には、大きなお世話をやってしまったことになるでしょう。

今年の産卵上陸シーズンは気温が高かったので砂の中の温度も上昇したでしょう。また、降雨量が極めて少なかったため、地下水も減っているでしょう。その結果、移設されたウミガメの卵は「干からびて」しまっていないでしょうか。これから発表される(?)孵化率のデータを見たいものです。ただし、卵を一つ残らず移設しているような場所では移設の気候がらみの影響を評価できません。科学的にデータをとってから客観的に解析し、それを元にして「保護」活動を評価する必要があります。
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by beachmollusc | 2008-08-02 21:37 | ウミガメ

TSD とウミガメの保護

ウミガメ類はすべての種で発生中の温度条件によって生まれる個体の性が決まるという、TSD現象(temperature dependent sex determination) が知られている。これはウミガメ類においては、胚発生中の性決定時期において、性ホルモンの分泌(正確に言うと雄性ホルモンと雌性ホルモンの転換における酵素作用)が温度によって異なるためである。具体的には約29度の発生温度を境界にして高ければメス、低ければオスが生まれるとされている。アカウミガメは他の熱帯海域で繁殖するウミガメ類と異なり、温度の季節変化が激しい温帯の海岸で産卵するので、発生中の温度環境の変動により強い影響を受けているだろう。これは、アカウミガメの保護活動においても重要な意味を持っている。

砂中温度は季節的に変動するだけでなく、局所的に大きく異なる。特に人間の環境に対する干渉で激しく変化する。海岸の砂の色や質はその供給源の地質によって変化するが、色の差異が熱吸収の変化で大きな温度変化をもたらす。また、海岸の海浜植物群落の種類とその有無は砂中温度に極めて強い影響を持っている。さらに、陸上から海岸に染み出る地下水の影響も重要である。これらの変動要因を無視して、アカウミガメの産卵巣の環境(主に温度と湿度)モニタリングをしないまま、安易に卵を移設している現状は憂慮されるべきであろう。

海岸構造物、特にコンクリート護岸の建設のとばっちりを受けたウミガメたちは、かつて産卵巣を掘るために良好だったはずの場所を見つけだすことができないまま、不適当と思われる場所に産卵するケースが増大し、それが高波による流出などの可能性を増大させているらしい。そのために、緊急避難的に卵の移設が頻繁に行われているようである。移設される場所は高波が届かない砂浜の上部に設定されると思われるが、その場所の環境条件が科学的に検討されているのだろうか。移設して生存率が高まる場合もあるだろうが、移設に伴う発生障害のリスクもあるし、孵化した仔ガメたちの性がどうなった検証されているだろうか。

以下に、ウミガメ類に関する最近の論文からTSD関連で面白いものを拾い出して解説しておく。ただし、全文を精読しないで要旨を読んだだけのため解釈のエラーがあるかもしれない。

爬虫類と哺乳類の先祖が系統的に別れたとき、性決定遺伝子(哺乳類のオスのY染色体にあるSRY遺伝子)がどのように進化したかについて研究した論文が見つかった(下)。
James R. Spotila, Loretta D. Spotila, Norbert F. Kaufer 2005
Molecular mechanisms of TSD in reptiles: A search for the magic bullet
Journal of Experimental Zoology Volume 270, Pp. 117 - 127


B. J. Godley et al. 2001
Thermal conditions in nests of loggerhead turtles: further evidence suggesting female skewed sex ratios of hatchling production in the Mediterranean
Journal of Experimental Marine Biology and Ecology Volume 263, pp. 45-63
地中海におけるアカウミガメの産卵場所の砂中温度条件は、生まれ出る仔ガメの性比を1:1にする約29度よりも高くなっていて、結果的にメスの出生率が高いことが推定された。

GRAEME C. HAYS et al. 2003
Climate change and sea turtles: a 150-year reconstruction of incubation temperatures at a major marine turtle rookery
Global Change Biology Volume 9, pp. 642 – 646
アオウミガメが産卵上陸する大西洋の孤島、アセンションにおける砂浜の温度について、経験的な気温と砂中温度の関係を基にして過去150年間の変化を推定した。ビーチ間のアルベド効果(熱吸収・反射率の差異をもたらす)の差異による大きな温度差(3度まで)が認められた:異なるビーチ間で保育中の温度に差異が大きかった。ただし、同じ海岸で同年度の繁殖期間中の温度変化は0.5度以内と小さかった。過去100年間の月平均砂中温度は0.36~0.49度の上昇傾向があったものと見積もられた。

JF WEISHAMPEL, D BAGLEY, LLYNM EHRHART 2004
Earlier nesting by loggerhead sea turtles following sea surface warming
Global Change Biology, 10, 1424-1427
http://www.seaturtle.org/PDF/Weishampel_2004_GlobChangBiol.pdf
フロリダ州大西洋沿岸の主要な繁殖海岸(海岸線延長40.5km)に産卵上陸したアカウミガメの過去15年間(1989-2003)のデータを解析した。年間上陸数は13000 – 25000の間で変動したが、特別な変動傾向は見られなかった。回帰分析によって、上陸日の中央値がこの間に10日早くなっていたことがわかった。この中央値と相関が見られた5月の沿岸表層海水温度がこの間に0.8度上昇していた。

(さらに何か良い論文が見つかったら随時追加する予定)
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by beachmollusc | 2008-08-02 14:32 | ウミガメ