beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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カテゴリ:口蹄疫( 92 )


口蹄疫に感染した鹿の症状

イギリスの鹿と口蹄疫情報を探っていたら、実験的にウイルスを感染させられた各種の鹿の症状を画像と共に解説したファイルを見つけた。イギリスには在来と移入された野生鹿が合計5種いるが、ニホンジカを含めすべてが口蹄疫に感染し、キャリヤーとなることが報告されている。

http://www.thedeerinitiative.co.uk/pdf/fmdguide.pdf

このサイトにメールを出して、すぐに返事が来た。先方(The Deer Initiative)は日本で口蹄疫が勃発していることを良く知っていて、最新の情報を提供してくれた。
policy@thedeerinitiative.co.uk
Ed Dyson, Research and Policy Development Officer
The Deer Initiative

写真の提供をお願いしてあるが、撮影者の許可をとりしだい連絡が来ることになっている。

とりあえず、最新ガイドのパワポファイルから、一般的なまとめを紹介する
(症状の出ている鹿の画像は上のpdfファイルを参照)

作者 Paul Gibbs
College of Veterinary Medicine, University of Florida
Formerly at the Institute for Animal Health, Pirbright, England.

Summary
Five, free-living species of deer found in the British countryside
(red, fallow, roe, sika and muntjac) were found to be susceptible
to infection with foot-and-mouth disease (FMD) virus after exposure
to diseased cattle. Clinical disease was typical and severe in the
roe and muntjac deer, with some animals dying, less severe in
the sika deer, and usually subclinical in the fallow and red deer.
Each species transmitted disease to its own species and to cattle
and sheep. The amounts of virus present in the blood, in
oesophageal/pharyngeal samples and excreted as an aerosol
during the course of the infection in deer were similar to those
recorded for sheep and cattle in the same experiment. The fallow
and sika deer commonly carried virus in the pharynx beyond
28 days after exposure; some red deer also became carriers.     (後略)

Species: Sika deer
Clinical Disease: Mild/sub-clinical
Normal maximum titre of viraemia (log10 TCID50/ml): 6.0
Persistence of virus in pharynx at 28 days
  (Normal titre in brackets: log10 TCID50/sample): Yes (4.0)
Normal maximum levels of virus excreted as aerosols*
  ( log10 TCID50/animal): 4.0 /30 minutes 
* As assessed by large-volume air sampler.

すでに紹介したが、イギリスでは野生の鹿が家畜と接触する機会が乏しいため、口蹄疫の感染の拡大に関してリスクがあるとは特に考えられていない。しかし、実験の結果、鹿が感染した家畜と接触するとキャリヤーとなって(鹿の因頭部にウイルスは4週間以上残り)、集団内で感染を広げ、さらに家畜に感染を広げるに十分な量のウイルスをエアロゾルとして吐き出すことが科学的に確認されている。

家畜と接触し、感染が疑われる鹿が発症していれば、一定期間内に口蹄疫に特有な症状が現れる個体が見つかるはずである。また、治癒した個体でも蹄の周囲に傷跡が残る可能性がある。冬の間に野生鳥獣駆除事業で捕獲された鹿や猪の蹄に異常がなかったかどうか、気になる。

上のサイトで注意事項としていることに、感染が疑われる鹿を駆除することは、かえってウイルスを運ぶ鹿の拡散を招く恐れがあるので慎重に行うべき、とある。従って、野生鹿について疫学的な調査を行う場合はこの問題も考慮しなければならない。とにかく厄介な問題である。
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by beachmollusc | 2010-06-19 07:50 | 口蹄疫

牛舎におけるサシバエ対策

兵庫県の改良普及センターでは酪農の牛舎に侵入するサシバエ問題に熱心に取り組んでいて、牛舎の裾周りを2mmメッシュの防風用の網で囲むことで効果をあげている。その内容を部分的に引用:

普及情報(畜産技術ひょうご95号 発行:2009年9月15日)
題名 :サシバエ対策ネットの普及拡大に取り組む! 
筆者 :加西農業改良普及センター 普及主査 永井 秀樹 
http://hyougo.lin.gr.jp/ghyogo/95/gijutu.htm

サシバエ対策として、薬剤散布技術(脱皮阻害剤の定期散布)なども実証する中で、防虫ネットの技術実証を始めたのは2007年5月からである。実証農家は、48頭の繋ぎ牛舎のA農家(写真1)で、以前からサシバエの被害が問題になっていた。

①ネットは2㍉目合いの防風ネットを使用し、ワイヤーとクリップを使い、カーテン方式で取り付ける。
②ネットの支柱は、繋ぎ牛舎では側壁の柱、フリーストール牛舎では単管パイプ(足場クランプ等で固定)を使用するなどコストをかけない。
③ネットの下部が重要なので、開かないように、マイカー線やパッカー、鎖などで固定する。
④台風時や冬などネットを除去する場合は、ネットを柱に寄せて束ねる。などの工夫をした。

サシバエ対策として、2㍉以下の目合いのネットは大変効果的な方法であることが分かった。牛舎の周辺の状況によっては、2面、3面のみでも効果があることが確認され、設置コストも、取り付け方法の工夫次第で低く抑えることができた。
 県内では、すでに18戸の酪農家で設置(2009年8月現在)され、さらに肥育牛や繁殖和牛農家でも導入され始めた。全国的にも反響は大きく、他府県でも、この兵庫発の技術が普及しつつある。


上の普及情報については業界雑誌に記載されているらしい。

サシバエ対策に有効な2mm目防虫ネット
永井 秀樹
酪農ジャ-ナル 62(5), 21-23, 2009-05

サシバエの攻撃から乳牛を守る
http://www.pref.kyoto.jp/chikken/resources/0906-1.pdf

気象情報に基づく技術対策(畜産)
http://www.pref.ehime.jp/060nourinsuisan/150nogyo-shiken/00006296050408/hukyujoho/taisaku/17-10/chikusan.htm

宮崎県でこの防除方法は普及しているのであろうか。
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by beachmollusc | 2010-06-18 15:56 | 口蹄疫

サシバエの移動と口蹄疫の拡散

川南町では、口蹄疫感染の農場でハエが大量に湧いていて、実際にハエに刺されていることが町議さんのブログにあることから、他のハエ類に混じってサシバエが大量に生まれ出ていると想像される。そして、長期間防疫措置がとられていなかった家畜小屋が多くあったから、これまで複数の地点からウイルス汚染のサシバエが出現しているに違いない。

サシバエが発生した農場で家畜の埋設が終わると、サシバエは新しい吸血相手を探して飛び回るだろう。その飛翔距離について文献を調べてみて改めて認識したが、サシバエは分散能力が極めて高い。そして、家畜が出す臭気を感知して接近する嗅覚をもっているので、孤立した農場があっても見つけ出すだろう。

以上のことから、小丸川を越えて5月下旬に一斉に牛舎で感染が広がったことにサシバエが関与していた可能性は十分考えられるし、ワクチン接種圏の外で発生しているケースでも関係しているかもしれない。

今後、吸血する相手が埋設されて消えたサシバエの大規模な拡散が起こる可能性も心配される。ただし、ワクチン接種済みで、防疫措置を待っている農場が多数残っているため、そこで足止めということもあるだろう。

今後、サシバエ成虫の寿命の3週間程度は、昆虫に無防備な開放的な牛舎でハエ対策が重要課題と考えられる。消毒用消石灰やウイルス対策用の薬剤はハエには効果が無いだろうし、ウジが成育する家畜の糞尿やそれに汚染された敷き藁などからハエが出ないようにすることも同時に必要だろう。

アメリカではサシバエについて、海岸で人を襲うものと、牧場で家畜を襲う問題にからんで成虫の移動・分散を追跡した実験の報告が色々ある。

Origin of Stable Flies (Diptera: Muscidae) on West Florida Beaches: Electrophoretic Analysis of Dispersal
Authors: JONES, CARL J.; HOGSETTE, J. A.; PATTERSON, R. S.; MILNE, D. E.; PROPP, G. D.; MILIO, J. F.; RICKARD, L. G.; RUFF, J. P.
Source: Journal of Medical Entomology, Volume 28, Number 6, November 1991 , pp. 787-795

現地では発生しないフロリダの西海岸に大量に出現したサシバエがどこからやって来たかを集団遺伝的に調査した研究報告である。これも本文の購読が有料(28ドル)で、要約だけ読んだ。

集団の発生地域を特定できるマーカーが見つからず出所ははっきりしなかったが、様々な場所からやってきていることと、ユニークな対立遺伝子から北西から飛んできたものが多いだろう、という推測がなされた。

どのくらい離れた場所から飛んできたのか要約に何も情報がないが、かなり遠くから飛んでくるのだろう。吸血するべき家畜がいないと人間を襲うことがあるのかもしれない。

Stable Fly (Diptera: Muscidae) Migration in Northwest Florida
Authors: HOGSETTE, JEROME A.; RUFF, JOSEPH P.
Source: Environmental Entomology, Volume 14, Number 2, April 1985 , pp. 170-175

Abstract:
Migration of the stable fly, Stomoxys calcitrans (L.), in northwest
Florida and its relationship to weather patterns were investigated. Field
populations of flies were marked with fluorescent dust using Attractant
Self-Marking Devices and captured on Williams traps. A new flight range
of 225 km was established for the species. This was the first migration
study performed with wild stable flies where flies were not handled until
they were captured on Williams traps. By the use of habitat-specific mites
phoretically attached to stable flies, physiological age-grading, and sex
ratios of flies captured on Williams traps, beach populations of stable
flieswere shown to be migratory.

フロリダ北西部では、なんと、放されてから225キロ離れた場所で蛍光粉末で標識されたサシバエが見つかっている。

Studies on the Flight Habits of Some Marked Insects1
Authors: EDDY, GAINES W.; ROTH, A. R.; PLAPP Jr., FREDERICK W.
Source: Journal of Economic Entomology, Volume 55, Number 5, October 1962 , pp. 603-607

上は古い報告であるが、オレゴン州で9月に行われた実験で、サシバエは2時間以内に半マイル(800m)移動したとある。一緒に放たれた他の昆虫に比べて移動・拡散範囲が広い特徴が見られた。

Taylor, D.B., Moon, R., Broce, A., Campbell, J.B., Scholl, P.J., Hogsette Jr, J.A. 2005. Dispersal of stable flies from larval developmental sites.
Entomological Society of America Annual Meeting, December 14-19, 2005

Interpretive Summary: A large scale stable fly mark recapture study was conducted at the Agricultural Research and Development Center, Ithaca, Nebraska. Three developmental sites were marked with fluorescent powder. Flies picked up the powder as they emerged from these sites and were marked. A grid of 87 Broce sticky traps covering approximately 20 square miles was monitored for 12 days to evaluate the dispersal of the flies. Traps were 0-7 km from the marking sites. A total of 56,821 stable flies were collected of which 3,033 were marked. The furthest a fly was collected from the marking site was 6.7 km and the mean was 0.7 km. Mean distance of capture from the marking site differed significantly among the three sites. The "Cow/Calf" marking site was adjacent to a feedlot and had a mean dispersal distance of 0.13 km and the lowest number of marked flies captured. The "Bull Pen" and "Tower" sites were in pastures and had mean dispersal distances of 0.56 and 1.01 km respectively. Dispersal distances for males and females were similar as were the percentages of males and females with blood in their guts. Males with blood were captured further from the marking site than those without blood, 1 vs 1.4 km. Females with and without blood did not differ in the mean distance to recapture (0.9 & 1.0 km), but vitellogenic females were recaptured further from the marking sites than non vitellogenic (1.0 vs 1.8 km). Stable flies emerging in the proximity of cattle appeared to disperse very little where as those more remote from hosts were more mobile. Males and females appeared to have similar dispersal and blood feeding patterns.

吸血対象の家畜の存在と分布パターンによって移動距離が左右されているらしいが、サシバエは、羽化した場所からキロメートル単位で遠距離(最大6.7km)に飛散することがあり、オスとメスで飛距離が違わないこと、が実験的に検証されている。

<追記>

ハエや蚊がウイルスを運んで感染を広げるという仮説に疑問を投げかけている専門家がいる。野生の鹿や猪が家畜の畜舎の周囲を徘徊しているというのは宮崎の複数の場所で見られている事実であるが、それさえ想定外としているのが「専門家」の普通の認識らしい。

ところで、日本脳炎が特定の蚊に刺されることによってヒトが発症する(率は低いが発症すると重症化する)ことは周知であり、ウイルスを体内に保持する豚からヒトに渡すのが蚊であることは常識である(ヒトからヒトには伝染しない)。そして、豚の抗体保持(感染歴)の全国サーベイランスが毎年行われている。

この蚊については系統分子遺伝学で追跡調査が行われていて、アジア大陸南部から日本に飛来する蚊が重要な役割を演じている(飛来説)がある。

日経サイエンス2009年8月号
海を渡る日本脳炎ウイルス
古田彩(編集部)協力:森田公一(長崎大学熱帯医学研究所)
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0908/200908_038.html

長崎大学教授の森田公一らは最近,こうした議論に一石を投じる研究結果を発表した。日本や中国,ベトナムなどで分離されたウイルスの遺伝子情報を解析し,日本の豚や蚊の間で蔓延しているウイルスが,しばしばアジアから渡ってきていることを発見したのだ。アジアで毎年3~5万人の患者を発生しているウイルスが,1年から数年遅れで日本に入ってきている。
 ウイルスはどうやって海を越えるのだろうか。確証はないが,ウイルスに感染した蚊がアジア上空を吹く強い南西風に飛ばされて飛んでくるとの見方が有力だ。稲に付くウンカがこの方法で中国南部から渡ってくることが判明しており,農業・食品産業技術総合研究機構などによる飛来予測は,日本脳炎ウイルスの伝搬状況を矛盾なく説明している。
 日本では,このウイルスは夏に流行して冬にいったん消え,春になると再び現れる。何かの動物の体内に潜んで越冬し,春になると再び出てくるという「越冬説」と,冬の間は日本から消え,春に海外からやってくるという「飛来説」の2つの仮説があり,1960年代から両方の証拠を求めて研究が続いてきた。森田らの研究は「飛来説」を裏付るものだが,同時に日本に土着して越冬しているウイルスもいることを示唆している。飛来したウイルスの一部が日本に定住した可能性がある。
ただ,日本のウイルスの相当部分が,今も患者を出し続けている東南アジアから来ていることは確かだ。病原性が弱くなったとは考えにくい。また,九州や中国,四国の県の多くでは8割以上の豚がウイルスに感染しており,潜在的な脅威は消えていない。


バイキン博士のブログにもこの話題があります。
http://www.microbes.jp/aimai/kurashi/fl237.htm
237.台風でウイルスが飛んでくる.4‐9-2001.
  口蹄疫のウイルスは飛んでくるか.
  細菌兵器としてウイルスを隣国に飛ばすことができるか.
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by beachmollusc | 2010-06-17 23:12 | 口蹄疫

サシバエの嗅覚に関する博士論文

口蹄疫ウイルスの発生源となっていた川南町と高鍋町の感染農場で防疫措置が終盤を迎えようとしている。感染家畜の排泄物がウイルスを含んだまま長期間未処理であって、その間にハエ類、特にサシバエなどが大量に発生していたらしいが、現場で具体的にどうなっていたかは分からない。

今後はハエ類の発生する家畜の糞が長期間放置されることは無く、そこから新たに発生することもないだろう。そこで、今までに発生済みのハエをできるだけ駆除することで、感染の拡大要因かもしれないウイルスの運び屋を制御できるだろう。

サシバエがどのくらいの距離を飛翔して、吸血相手の家畜をどうやって見つけるのか知りたくて、情報検索していたら、フランス人の研究者の博士論文がオンラインに公開されていた。本文が英語で書かれているので、苦手のフランス語を読まないですむ。

下のURLにpdfファイルがあって、サシバエに関する一般情報も簡潔にまとめられているのがあり難い。全体で110頁、2005年に論文提出されたものである。

http://doc.rero.ch/lm.php?url=1000,40,4,20060405131801-SF/1_these_JeanbourquinP.pdf

The Role of Odour Perception in the Sensory Ecology of
the Stable Fly, Stomoxys calcitrans L.
Thèse présentée à la Faculté des Sciences
Institut de Zoologie, Université de Neuchâtel
Pour l’obtention du grade de docteur ès Sciences
Par Philippe Jeanbourquin

一般的な情報で口蹄疫ウイルスの拡散に関係しそうなポイントを抜き出して示す。

The entire life cycle (egg to adult) requires 13-18 days at temperatures of
24°C to 30°C. Adult flies have a life-span of about 20 days.

卵から成虫に育つまで2週間前後かかり、成虫の寿命は約20日間。

Flies depend on blood for successful mating as well as survival,
and repeated blood meals are needed for continued egg production.

サシバエは吸血後に交尾し、繰り返し吸血することで産卵が継続される(雌雄共吸血する)。

Stable flies take two blood meals on warm days and one a day in
cold weather. The biting activity tends to be light to moderate
between 20 °C and 25 °C, it increases between 25 °C and 30 °C
and becomes heavy at higher temperatures.

温暖な日には2回吸血し、冷涼な時は日に1回で、25度以上で温度が高いほど活発に吸血する。

本論文の嗅覚についての要点

Female stable flies are known to oviposit in all kinds of decomposing
organic matter like silage, rotting hay, garden compost and even in
sea grass. Animal faeces especially when mixed with fermenting
vegetal matter are also commonly exploited by Stomoxys females
for oviposition.

メスのサシバエはありとあらゆる分解(腐敗)中の有機物(サイレージやコンポストなど)に産卵する。動物の糞、特に発酵している植物性の物質が混ざった場合に産卵されることが多い。

Stomoxys females were shown to rely on olfactory cues for finding
an oviposition substrate. Dung odour by itself attracted flies for
oviposition. Even without any contact with the substrate gravid
females were able to localise either horse or cow dung.

サシバエのメスは産卵床を見つける時に嗅覚に頼る。糞の臭いだけで産卵を誘引する。馬糞、牛糞に接触しないでも接近する。

Overall, this work shows that S. calcitrans rely on a set of
volatile compounds that are common to the wide range of potential
resources stable flies can exploit. To cite the most important of them,
dimethyl trisulfide, butanoic acid, p-cresol, β-caryophyllene and
oct-1-en-3-ol, occur in both oviposition substrates and in animal odours.

本研究で明らかにされたこと:サシバエは、利用資源(産卵と吸血の対象)から出ている様々な揮発性物質を嗅覚で感知しているが、特に重要な物質として、糞および家畜の体臭に含まれるdimethyl trisulfide, butanoic acid, p-cresol, β-caryophyllene and oct-1-en-3-ol がある。

上に紹介したほかにも有益な情報は多いが、要点としては、温度が高い日中に飛翔して吸血する家畜を嗅覚を頼りに捜すことである。
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by beachmollusc | 2010-06-17 18:15 | 口蹄疫

鹿(ニホンジカ)の口蹄疫感染試験の報告

イギリスで飼育されているニホンジカについて口蹄疫ウイルスの感染試験の結果が学術雑誌に報告されている。1975年に発表された古い文献で、オンラインでは要約が公開され、本文は有料である。

実験の材料や方法、結果の数字を見ていないが、要約を見れば、ニホンジカが口蹄疫に感染し、それが吐き出すウイルスで牛が二次感染するだろうという推論が一応信用できるだろう。

Studies with foot-and-mouth disease virus in British deer (muntjac and sika) :
Clinical disease, recovery of virus and serological response
Journal of Comparative Pathology, Volume 85, Issue 3, July 1975, Pages 361-366
E. P. J. Gibbs, K. A. J. Herniman, M. J. P. Lawman

Abstract

Muntjac (Muntiacus muntjak) and sika deer (Cervus nippon)
developed foot and mouth disease (FMD) after they had been
housed for 2 hours with infected cattle or deer of their own
species. Lesions of FMD occurred in the mouth and on the
feet of both species. The disease was particularly severe in
the muntjac and several of the deer died. The duration and
maximum titre of the viraemia in the deer was similar to that
recorded for sheep in the same experiment. A persistent
pharyngeal infection was detected in the sika, but not in the
muntjac deer. FMD virus was isolated from the air in the loose
boxes housing the infected deer in sufficient amounts to suggest
that cattle coming into contact with the deer would become infected.


viraemia: ウイルス血症
A persistent pharyngeal infection: 持続的な咽頭部の感染症

木城町の町営牧場でワクチン接種された牛が放牧されていて、そこに一緒に鹿が走り回っている映像がテレビの報道で流されていた。また、農場内に猪が侵入してミミズ堀をしていた痕跡も画像で紹介されていた。
(ただし、その報道番組はすでに削除されている。)

鹿の種類によって、ウイルスの変異系統によっては感受性が異なり、結果が違ってくるかもしれないが、ニホンジカが口蹄疫ウイルスに感染し、キャリヤーになってさらに家畜に移す可能性はかなり高いだろう。

また、鹿と家畜が直接接触しなくても、サシバエやアブ、蚊などの昆虫がウイルスを媒介する可能性もあるだろう。

テレビ報道でコメントしていた大本営の参謀と思われる先生は、鹿の群れが牛と仲良くしている映像を見ても特に驚いていなかった様子だったが、これは想定外のようなことをつぶやいていた。さすが、脳衰官僚出身の大学教授である。この道の専門家だから、上の文献は当然読んで知っていることでしょう。
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by beachmollusc | 2010-06-16 20:58 | 口蹄疫

口蹄疫拡大、防疫対策停滞とサシバエ発生の関係

コンタンのブログでは口蹄疫大発生の爆発前からデータをグラフで分かりやすく表示している。

2010年5月16日 (日)
データで見る口蹄疫対策の緒戦敗北(2010年 宮崎) その8
http://konstantin.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/2010-6902.html
タイトルを若干変更しました。(2010/5/20)

5/16 AM1時頃の公表データの数字により、図表を更新しました。

新たに10例の感染確認の発表があり、ついに100例を突破しました。

101例目は、厳重に警戒していたはずの県家畜改良事業団(高鍋町)です。


この5月中旬の時点では野生動物の問題に気を取られていて、サシバエなど昆虫によるウイルス拡散は特に問題視していなかった。後知恵であるが、過去のデータを見直してみると、サシバエが産卵後にウジとして発生し、羽化するまでの期間の長さという重要なポイントが浮かび上がる。

ウジは家畜が排泄した糞の中に産みつけられた卵から孵化して育つが、羽化までは温度により1から2週間かかるらしい。連休から5月の中旬にかけて比較的良い天気で高めの温度であったので、10日くらいで孵化したものとすると、口蹄疫発生農場で糞が埋設されるまで10日以上野積みされていたケースがいつごろから発生していたか、が重要な情報となる。

コンタンのブログ、5月16日のデータでそのグラフが出ているので、ここに引用する。
e0094349_675916.jpg

これから、5月6日に発症が確認された25例目の豚が最初のケースであったこと、7日以後に同様な長期間防疫対策ができなかった農場が急増している。

5月31日のグラフでは発症確認から防疫措置完了までの日数が各事例ごとに示されている。
http://konstantin.cocolog-nifty.com/blog/files/100531_.pdf
これを見れば一目瞭然、10日以上の放置農場が5月末まで多数あって、101例以後には川南より南の高鍋でも同様な農場が出ていた。

このように10日以上の長期間、防疫未処置の農場が出現し、そこで堆積した家畜の糞にサシバエなどが大量発生することは過去に例がないことだろう。そして牛を刺して感染を拡大させるという事が過去にないユニークな現象となったために、過去の文献に報告事例もなく、疫学的な盲点となったのではないか。

シェパード中央家畜診療所 (鹿児島県阿久根市)
http://www.shepherd-clc.com/
の松本大策さんからこのブログ用にサシバエの写真が送られてきた。
e0094349_6285799.jpg
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e0094349_6304952.jpg

牛体付着時間の長いノサシバエではなく、
吸血後すぐに飛翔して周辺の草むらに潜むタイプの
サシバエです。九州はこちらが多いようです。

普通のハエよりお尻が丸く、
吸血用の口吻が前に飛び出しています。


川南から南の高鍋と新富方面の牛の農場に5月下旬に一気に広がったこととサシバエの疫学的な関係を検証するべきであるが、今後にその証拠はすべて防疫対策で封印される。今のうちに糞とハエ類のサンプルを検査することが必要である。

ハエ類は空を飛ぶだけでなく、車の中などに入ってくる。そして、えびの市も都城市も高速道路で西都市とつながっていて、車の中は消毒されない。もし、口蹄疫ウイルスがサシバエの体内にあって道路交通網で拡散しているなら、次の飛び地は熊本、鹿児島、福岡方面だろう。そして、その後は:コンタンさんから紹介のあった全国への拡散パターンが予想通りになるか。

外来昆虫の分布拡大パターンをもとにした口蹄疫の分布拡大予報
http://vege1.kan.ynu.ac.jp/forecast/
(横浜国大、小池研究室)

川南でハエの発生が激しさを増した時期は5月中旬だったらしく、現地の町議さんのブログ記事でわかる。

http://shinchaya2007.seesaa.net/article/149631810.html
明るく住みよい川南町ーあなたとともにー  2010年05月12日
ハエ退治要望
 豚舎にハエが増えている。羽が白い石灰をつけて飛んでくる。口蹄疫はこの「ハエ」で拡がっているのではないか。との不安があるので役場に申入れに行きました。県の担当者に話してくれとのことで話をしました。殺処分前に「殺鼠剤とハエの卵を殺す殺虫剤」をまいてから、殺処分にかかってほしい。そうしないと石灰を畜舎にまいて殺処分ではハエは生き残り空っぽになった畜舎から羽化して飛び回ることになる。現に羽に石灰をつけたハエが飛んで来ている。と担当者に話をしましたが石灰を丁寧にまいているのでとの返事です。今ひとつ話がかみ合いませんでした。口蹄疫の蔓延をどうしたらくい止められるのか。
たかが「ハエ」されど「ハエ」真剣に論議してハエ退治の取組みをお願いしたい。今日も4農場で牛・豚316頭の殺処分が追加されました。
総計では71例となり殺処分対象の家畜は77.168頭(牛5.894頭・豚71.274頭)今のところ弟の所は無事です。弟は口蹄疫の被害者が加害者になって行くのを防ぎたいとの思いでがんばっています。

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by beachmollusc | 2010-06-15 06:31 | 口蹄疫

ハエやダニによる口蹄疫の伝播

サシバエ(英語:stable flies)が口蹄疫ウイルスのvectorとなるかどうかに関して情報検索をした結果を紹介する。

下の論文は有料コンテンツであり、オンラインでは要約だけ無料で読める。

Review
The role of dipterous insects in the mechanical transmission of animal viruses
by V.M. Carna
British Veterinary Journal Volume 152, Issue 4, July 1996, Pages 377-393

Summary
Animal viruses may be transmitted by arthropods in two ways,
either biologically or mechanically. Many different species of
Diptera are implicated in mechanical transmission, but
haematophagous species are the most important. The insects
become contaminated with virus during normal feeding behaviour,
and virus persists on their mouthparts or body until the next feed.
Some viruses are inactivated rapidly on mouthparts, whereas
others survive for many days or weeks, prolonging the potential
period of transmission. Some viruses produce high titres in the
skin of the infected vertebrate host, which facilitates transmission,
whereas other viruses are transmitted even during relatively low
levels of viraemia. Mechanical transmission by arthropods is
important in the epidemiology of many animal diseases, and
may be the major mode of horizontal transmission. In other
instances vector spread is merely incidental.


一般論として吸血昆虫が動物の病原性ウイルスのヴェクターとして重要である。
(日本脳炎やウエストナイル熱ウイルスは蚊が媒介することはよく知られている)
この論文で口蹄疫ウイルスについて何が書かれているか、本文を見ていないのでわからない。

口蹄疫ウイルスに絞った情報は乏しいようであるが、下のサイトで少しだけ記述があった。

Pathogen Information (PathInfo) 
by CyberInfrastructure Group at
Virginia Bioinformatics Institute

Foot and Mouth Disease Virus
http://ci.vbi.vt.edu/pathinfo/pathogens/FMDV.html

B. Transmission Information:
Ontology: UMLS:xxx From: Invertebrates To: Artiodactyla (USDA et al., 1994):

Mechanism: Although the role of flies and ticks in the epizootiology
of FMD is not usually large, it has been demonstrated that ticks and
some species of biting flies can transmit the virus through bite. Tick,
flies, and biting flies were categorized as high hazards, based either
on transmission capability or long carrier status (whether mechanically
or biologically). Houseflies can carry FMDV both externally and internally;
whether they can transmit the virus is unknown. It is unlikely that the
virus multiplies in the cells of invertebrates. However, experimental
transovarial infection of a portion of a population of Dermacentor ticks
has been reported (USDA et al., 1994).

ダニ、ハエ、サシバエなどは口蹄疫ウイルスの感染能力を長期に保持する重要な存在である、と書いてある。その裏づけとなる論文情報はUSDAの1994年の報告を見なければわからない。

<追記>

ウイルスではないが口蹄疫と同じように怖い細菌、炭疽菌をサシバエや蚊が媒介するという論文が見つかった。

Mechanical transmission of Bacillus anthracis by stable flies (Stomoxys calcitrans)
and mosquitoes (Aedes aegypti and Aedes taeniorhynchus).
by MJ Turell, GB Knudson - Infection and Immunity, 1987 55(8): 1859-1861
http://iai.asm.org/cgi/content/abstract/55/8/1859
This study confirms that blood-feeding insects can
mechanically transmit anthrax and supports recent anecdotal
reports of fly-bite-associated cutaneous human anthrax. The
potential for flies to mechanically transmit anthrax suggests
that fly control should be considered as part of a program for
control of epizootic anthrax.


cutaneous: 皮膚の
anthrax: 楽団ではなく炭疽菌のこと。生物兵器としてバイオテロに使われている(米国)
epizootic: 伝染力が強い動物の疫病

炭疽症(たんそしょう)、炭疽(たんそ)とは、炭疽菌による感染症。ヒツジやヤギなどの家畜や野生動物の感染症であるが、ヒトに感染する人獣共通感染症である。ヒトへは、感染動物との接触やその毛皮や肉から感染する。(Wikipedia)

サシバエによる吸血で炭疽症が起こることを実験的に証明した。

類推すれば、口蹄疫ウイルスに汚染されている牛糞の中で発生したサシバエが牛を吸血して口蹄疫を発症させることを想定するべきであり、牛舎においてサシバエの侵入を防ぐことも重要な防疫対策であろう。

おまけ情報
長期間土壌に潜む動物由来感染症(炭疽)
http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_h/h07.html
http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_i/i04-11.html
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by beachmollusc | 2010-06-13 20:09 | 口蹄疫

口蹄疫の大発生、不幸にも予言が的中

北里大学医療衛生学部の教授だった田口文章さん(現名誉教授)は、1990年代後半からインターネット上で病原微生物に関する一般向けの解説、「曖昧模糊の暮らしと微生物」という情報発信を続けておられた。その内容をまとめて出版された本「微生物がいっぱい」(身近な危険から身を守る方法)、ちくま文庫680、2002年を著者から送っていただいて、本棚に大事に飾っている。
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口蹄疫は人間の病気ではないが、極めて重要な家畜の伝染病であることから、37-43頁に「口蹄疫はヒトにうつるか」という章で詳しい解説がある。本棚から久しぶりに引っ張り出してみたら、今まさに進行中の大発生を締めくくりの文で予言されていた。このような予言が的中している原因は政治と行政のの気の緩みとしか思われない。
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本は2002年の出版で上の文章は2001年に書かれている。なぜか2000年の宮崎の口蹄疫について触れられていない。

田口文章さんのブログを見てください。

口蹄疫の怖い話 その1
http://microbes.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-abe9.html

<追記>

「暮らしと微生物曖昧模糊」の過去記事
http://www.microbes.jp/aimai/aimai.html
238.口蹄疫は人にうつりますか 4-20-2001.

上の記事が本に再掲されている。

<2000年、3月25日から4月9日に宮崎県で3戸、5月11日に北海道で1戸の感染が確認、6月9日には終息。日本では約92年ぶりの発生となった。> ウィキより。

2000年の日本での口蹄疫発生事件は自分にも記憶がない。おそらく報道はされたのであろうが、大発生にならなかったので 取り扱いが小さく、気がつかなかったのかもしれない。

309.セラチア菌がサンゴを食いつくす 1-10-2003.

上の記事に関して田口さんと情報交換をしました。

その記事の締めくくりを引用します。

セラチア菌にも種類が多々ありますが、そのうち日和見感染を起す人由来のセラチア菌による海水汚染とは驚きです。環境由来の微生物が人集団に入り込むケースとその逆に人から環境に出る(最後にまた人に戻る)ケース等かあります。生態系を維持するのは容易なことではないのでしょうが、維持できないと最後には大変なことになるのでしょう。


海に流れ出ている汚染物質や微生物、ウイルスなどが生態系を撹乱し、そして人間に戻って来る循環系ができている。ノロウイルスはその典型であるが、ヒトに影響がない撹乱はサンゴ類のような注目を浴びているわずかな生物だけで認識されるに留まっている。上に書かれた予言まで当たってしまったら...
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by beachmollusc | 2010-06-13 08:30 | 口蹄疫

口蹄疫の拡散パターンは牛と豚で異なる

宮崎地方気象台から5月の月報がオンラインに掲載されている。

宮崎県気象月報 2010年(平成22年)5月 [pdf形式:1060キロバイト]
http://www.fukuoka-jma.go.jp/miyazaki/pdf/teiki/kishou/2010_05.pdf

連休後半に良い天気が続いたことは記憶に新しいが、それによって温度が高かった。
サシバエは牛に親和性が高い(吸血する)こと、牛舎は開放的であることを前提とする。
ハエのウジが成育する牛糞の環境は中性に近く、表面を消毒しても中でウイルスが残っていて、ウイルスはウジに取り込まれ、羽化したハエはウイルスを運ぶベクターとなると仮定する(検証が必要)。
ウイルスを運ぶサシバエは好天、微風で広範囲に拡散し、特に風下にはより遠隔地まで到達する。

上のような背景条件を前提として、サシバエによる口蹄疫拡散の仮説モデルを以下のように考える:

4月末、連休前半に川南町で防疫措置が停滞し始めた事例が生じ、ウイルスで汚染された家畜の糞が野積みとなり、それにハエが産卵 → ハエは約2週間で羽化 → 未発症の農場で牛を吸血してウイルス感染が起こる → 約1週間後に感染した牛が発症する (時間がずれながら以上のプロセスが重なって拡大)

グーグルアースで発症が確認された農場の時系列を5月9日以後1週間間隔で見ると、16日から23日までに小丸川の北では豚の発症が急拡大し、南では牛が拡大した。(南側において豚はさらに遅れて発症した)。下の図で比較して見れば、よくわかる。
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青は牛、赤は豚であり、薄い青は未措置の牛で黄色は未措置の豚。

現地では小丸川を防衛ラインと見なして川岸の道路に消毒ポイントを設けていた。
各畜産農家は自主防衛に必死になっていた。

何故、地上の防衛ラインがウイルスの拡散を止めることができなかったのか、その答の一つは空気中の拡散であり、飛翔する生物がベクター(運び手)になっていたと考えれば分かりやすい。もちろん、移動する人間や車などが運んだ可能性を否定するわけではないが、大きなパターンが見える場合は、それをもたらした力学が背景にあるはずである。

防疫態勢の穴としてサシバエに注目し、疫学的な検証、つまりサシバエがウイルスを持っているかどうか、を早急に調べてもらいたい。

豚の場合、牛とは異なるパターンを見せていることは別途分析するべきである。
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by beachmollusc | 2010-06-13 06:38 | 口蹄疫

サシバエの飛翔力と口蹄疫の伝播

川南町で口蹄疫の感染畜舎から大量にハエが出ていて、それが人を刺すというブログ記事があった。
明るく住みよい川南町ーあなたとともにー  早く口蹄疫止めたい  2010年06月12日
http://shinchaya2007.seesaa.net/article/153009865.html

サシバエが放置された家畜の糞から湧き出していることが想像されるので、改めて情報検索をしてみて、重要なことを見逃していたことに気がついた。サシバエは極めて飛翔能力が高く、長距離移動するし、動物を刺して吸血するということはモロにウイルスを注入するということになる。道路沿いに飛ぶか、車内に入ってヒッチハイクすれば、消毒ポイントを無視して都農から日向市くらいなら簡単に広がる可能性があるだろう。

論文検索して下の論文を発見。

家畜飼養とハエ類の発生に関する研究 : (1) 家畜糞便から発生する双翅類について
大塩 行夫 , 池内 まき子 , 前田 昭二
… 次のようなことがわかつた.1) 発生した双翅類は11科, 14種で, とくにイエバエ・オオイエバエ・ヒメイエバエ・サシバエの発生が多かつた.2) イエバエは6月から10月にかけて発生し, 各家畜の糞便から発生したが, ウマ・ブタ, とくにブタの糞便からの発生がいちじるしかつた.3) サシバエはウマの糞便からは発生しなかつたが, ウシ・ヤギの糞便から多数発生した.4) ハエの発生は糞便単独の場合より …

衞生動物 13(4), 253-258, 1962-11-30
http://ci.nii.ac.jp/els/110003820784.pdf?id=ART0004990158&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1276347268&cp=

奥村 隆史
開放牛舎におけるサシバエの発生動態について(一般講演)
日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 (19), 149, 1975

長谷川勉 1979 放牧牛糞からのノサシバエの発生 : I. 季節変動 衞生動物 30(1), 52
長谷川勉 1979 放牧牛糞からのノサシバエの発生 : II 日内変動 衞生動物 30(1), 25

サシバエは高温の日中に羽化して飛翔する。

各地の農事試験場でもサシバエ注意の文書が出ている。

島根県東部農林振興センター出雲家畜衛生部
ポイントを押えた「サシバエ」対策を実践しましょう!http://www.pref.shimane.lg.jp/toubu_norin/kachikueiseibu/izumokatikueiseibu/kachiku_hoho_izumo/h22_kathikueiseiizumo1.data/100518kathikueiseiizumo1.pdf

サシバエの特性を知ろう!
まず敵を知ることが大切です!

特徴:見た目は「小さなハエ」です。
発生:意外と早い6月頃から発生し盆過ぎから11月頃にかけてピークを迎えます。
吸血:雌雄ともに行い、特に牛の血液を好みます。朝牛舎にきて吸血行動し、夕方牛舎から帰っていきます。
行動:一番暖かい時間帯に牛の周りにいます。日当たりの良い場所(明るい場所)を好みます。地上から約1mの範囲にいます。
幼虫の隠れ家:牛床マットの裏側の凹凸の凹部分、湿り気、汚れがある場所に隠れています。糞出しの「お残し部分(柱の際)」などに多くいます。


http://www.pref.nagano.jp/xnousei/inakaho/kouhou/H21-07.pdf
ハエの季節がやってきました。 特に厄介なサシバエを撃退しよう ...

サシバエの生態
サシバエはイエバエと異なり吸血のための尖った口器を持っています。
吸血性のカやアブなどが雌のみ吸血するのと異なり雄も雌も血液を食物としています。雌は吸血後に約800個の卵を産卵します。
主な産卵場所は獣糞などで、卵は気温30℃前後で10~13日間で成虫になり、成虫はふ化した翌日から吸血を開始し約15日生存します。
雑食性のイエバエと異なり、吸血性のサシバエは内蔵構造が単純で体重が軽いため、その飛翔能力は4km と言われています。
サシバエの発生は牛へのダメージのみならず、ヒトをはじめ全てのほ乳類から吸血するため、農場で作業する人や、訪問者、さらに周辺住民にも被害があります。
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by beachmollusc | 2010-06-12 22:10 | 口蹄疫