beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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街中に取り込まれた神社の大木

定額給付金と還付された税金分を将来に投資するべく、家の周囲で栽培するため、様々な苗木をネットで注文しました。実がなるものを優先し、地元のホームセンターや園芸店で見つからないものを探しました。その結果、今回購入したのは:マタタビの雌雄株、ミヤママタタビ、サルナシ各種(赤い実の園芸品種を含む)、巨大な実の「天下一」と称されるボケ、ヤマグワ、雲南のクワ、そしてガマズミ、以上が実を狙うもので、他に樹木として日陰と景観つくりのためにクスノキとタブノキの苗を取り寄せました。おまけに「松枯れ耐性」のアカマツの苗がリストにあったのでおためしの衝動買いをしました。

海岸林の問題について、北の冬の季節風が厳しい地方と同じようなデザインで南日本各地の海岸の植林事業をする愚策について以前のブログでたびたび指摘しています。その根拠として、松の生態的な特性が「パイオニア植生」の一員を構成することで、人間の手が絶えず及んでいる「生態的撹乱」状態の環境に適合した樹木であることです。つまり、温暖・湿潤な安定した環境で自然に任せておくと、他の植物との競争に負けて消え去るべき存在だからです。高知、宮崎、鹿児島などの海岸ではタブノキなどを中心にした照葉樹に負けてしまうので、(予算が無くて)余計な手入れがされていない場所の海岸林ではクロマツは見当たりません。

松枯れについては良い本があります。
マツ枯れは森の感染症―森林微生物相互関係論ノート 二井 一禎 (著)  文一総合出版 (2003年)
短絡的な対症療法(殺虫剤薬剤散布でベクターであるマダラカミキリ類を駆除すること)に走った松枯れ対策事業が松林の保全に成功しなかった理由がこの本から良くわかります。この著者は過去の対策事業の問題点に直接言及していませんが、生態学の基礎が理解できている読者にはわかるはずです。(林野行政の関係者は生態学の基礎ができていないのではないか?と疑いを持ってしまいます)

岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 植物生態研究室(波田研) サイトは植物に関する優れた情報発信を続けています。http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
湿原植物にはとても詳しいのですが、海岸植物に関しては残念ながら詳しくありません。
松枯れに関して生態的な視点からの評論をふた昔前に書かれています。
松枯れ病 (中国新聞コラム,『緑地帯』に1987年掲載)
この論にあるような認識が関係者の間にあったなら、ムダな税金の浪費を何十年も続けている松枯れ対策事業の見直しができたはずです(ただし、日本では中央行政が予算化して進める事業には、利権化して肥大し、その暴走を止めるチェックが働かなくなる極めて根深いやまいがあります:特に林野庁の拡大造林事業がその実績No.1でしょう)。

あちこちのマツボックリを拾い集めて、その中の種から松の苗つくりのための発芽を待つのですが、なかなか出てきません。日向(ひなた)に置かないと発芽しないし、日向(ひゅうが)の日向では苗床が乾燥しやすくて発芽できないようです。日向(ヒムカ)の無精者としては、自動散水装置を使うしか方法は無いのかもしれません。

苗の購入に際して、それぞれの植物の生理的な特性を把握しておくため、ネット情報を見てまわりました。波田研サイトが断然優れていますが、植物とその栽培については結構多くのサイトがあります。ちょっとした驚きはクスノキとタブノキが同じ科の植物だったことでした。どちらも大木になりますが、前者の方が人里では人気があるようで、神社の境内ではクスノキの植栽が定番になっているようです。

塩見川の河畔にある神社には昔ながらのこんもりした鎮守の森が残されています。代表的なものは権現原(ゴンゲンバル)の権現山(通称、茶碗山)の神社でしょう。ここもいずれ住宅地に囲まれそうです。
http://beachmollu.exblog.jp/4646915
これに対して、すでに市街地に飲み込まれている龍宮神社の境内には6、7本の巨木が残されていました。自分ではまだ種の識別が明確にできていませんが、多分クスノキだと思います。その大きさを示すために境内に遊びに来ていた子供さんにお願いして木の下に立ってもらい、撮影しました。
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木の根元にはヒコバエが伸びていました。
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木の幹を下から見上げると、その年季が入った姿に圧倒されます。
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このような木には精霊が住み着いていても良いはずですが、市街地の中では居心地が悪いかも知れません。
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by beachmollusc | 2009-03-31 09:21 | 植物

塩見川の河畔にて

日向市の塩見川は割合小さい河川のくせに氾濫原、沖積平野の面積が大きいことから、昔はもっと大きな川が流れていたのだろうと想像しました。

日向市史、自然編の地学の記述を見ると、耳川が現在の塩見川のところに流路を持っていたことを示す状況証拠がいくつか記されています。しかし、何時の時代にそのような状態になったのかを特定する証拠がわかりません。過去の海水準変動と現在の地形を見れば、完新生の初期にはすでに現在の地盤が固まっていたはずです。つまり、地質的にごく最近起こった流路の変更のようには思えません。

現在の沖積平野の姿が12万年前の再現であるかどうかを判断するために、この地域の過去の地盤変動の実態を知る手がかりが欲しいところです。海岸段丘が明瞭であれば過去の地盤が隆起した証拠がわかりますが、それは美々津以南、宮崎平野に広く見られても、塩見川平野の周辺ではよくわかりません。

塩見川河口から北側にはリアス海岸が続いており、それは地盤の沈降を示唆します。愛媛と大分の間にある豊後水道は地質的には連続していますが地形的にはへこんで海峡を造っています。現在、この海域は地震の巣であるし、先日もちょっと揺れて県北では体感地震となりました。北浦から蒲江の美しい海岸線を形成しているのは、全体的に沈み続けているからでしょう。

塩見川は過去の地質変動の奇跡的な組み合わせのおかげで、とてもユニークな環境をもたらしています。流域面積に比べて河口が大きいいため、下流部でエスチュアリー状態、つまり海水が川の中に上流に向けて大きく差し込むようになっていると思われます。塩水クサビ、と専門的に呼ばれているものですが、真水の下で上流に向かって底に海水が差し込んだ状態です。海の干満のリズムによって、このクサビは上下変動します。

塩見川の河口には塩水クサビを遮る堰が造られていませんので、その流域の平野部では海の干満と連動して川の水位が上下しています。つまり、川底に海水が差し込んでは引くというリズムが水面に現れます。

昨日の午前中に、河口から約5キロ上流の川岸の堤防をワンコと散歩して満開の桜並木をながめてきました。
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桜の花の中でギャーギャー騒ぐ鳥がいましたが、どうやらムクドリが盛りのようです。ペアがいくつも入り混じってホームセンターの壁と桜の間を行き来していました。
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河畔はコンクリート土手ですが、傾斜部は草むらとなって、不思議なことに海岸に成育するハマダイコンと思われるものが花盛りでした。
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この場所のすぐ上で、支流の奥野川と永田川が合流して塩見川となります。塩見川は全体が感潮域、つまり海水が河川水と混じって汽水となり、コアマモ群落(海草藻場)ができ、そこを住処とする様々な生き物が生息します。その中で特記されるべき種としては、環境省カテゴリ: 絶滅危惧ⅠB類(EN) であるアカメの幼魚があります。

ウィキの記載を引用すれば:
<分布が狭く生息数も少ないため各地で保護活動が行われている。しかし希少価値があるために稚魚が密漁される他、環境汚染や海辺の開発などで稚魚の生息地となる藻場も消失している。環境省レッドリストでは1991年版で「希少種」、1999年版では「準絶滅危惧(NT)」だったが、2007年版では2段階上がり「絶滅危惧IB類(EN)」として掲載された。

また2006年には、宮崎県と高知県が相次いで指定希少野生動植物の一種としてアカメを指定し、捕獲などを禁止した。これはニホンカモシカ等と同じ扱いである。>


高知県ではこの指定に異論がでているようですが、肝心なことは、要するに、西日本の南沖のどこかの海で繁殖して、(黒潮に乗って?)漂流し接岸する稚魚が成育する環境として汽水域にできるコアマモの藻場が重要であり、その環境保全が鍵となっていることです。

宮崎県では南部の大きな各河川では軒並みにその環境悪化で成育場所が消滅していて、まとまって残っているのは延岡の五ヶ瀬川流域と塩見川だけになっているようです。塩見川の環境保全がますます重要な課題になっていて、地域住民の意識が保全の鍵ですが、そのための啓蒙・教育が必要でしょう。

日本のレッドデータ検索システム(http://www.jpnrdb.com/index.html)で地図上でアカメのカテゴリの地域分布を見ると面白いことが見えてきます。
画像表示では:http://www.jpnrdb.com/png/05/0502150010218.png
静岡県 要注目種(N)
和歌山県 準絶滅危惧(NT)
徳島県 準絶滅危惧(NT)
愛媛県 情報不足(DD)
高知県 絶滅危惧ⅠA類(CR)
大分県 情報不足(情報不足)
宮崎県 絶滅危惧Ⅱ類(VU-r,g)
鹿児島県 情報不足

以上の各県以外で何も記載されていないのは出現記録が無いからでしょう。
情報不足とか、要注目種とされた県では、時たま出現しているということだと思われます。

アカメの産卵場所は特定されていませんが、鹿児島県の南部から種子島沖あたりが想定されているようです。奄美・沖縄群島に分布していないらしいことから、産卵場所は奄美以北でしょう。黒潮に運ばれて河口に流れ着いた稚魚が感潮域・汽水域の藻場に住み着いて育つ、という構図でしょう。ウナギの雄大な回遊のスケールには及びませんが、産卵の時には大海原を泳ぎわたって「生まれ故郷」に戻るわけです。
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by beachmollusc | 2009-03-30 08:51 | 日記

入浜権の思想と行動 (本間義人 著)

「渚と日本人」(副題 入浜権の背景) 高崎裕士・高桑守史 著 1976年 NHKブックス 254
という本について以前のブログで論じた。http://beachmollu.exblog.jp/8449651

その「続編」ともいうべき「入浜権の思想と行動」 (本間義人 著、御茶ノ水書房、1977年)を古書店から購入し、一気に読んでしまった。その中に日向市における入浜権運動のいきさつが記されている。

自分は1971年から1977年9月まで国外に出ていたため、上の2冊の書籍で記されたことはほとんど記憶・認識していない。海域の汚染と埋立てが激しい日本で水産生物の研究はとてもできそうにないので、暖かくて美しく、未開拓のサンゴ礁生物、熱帯海洋生物の研究を「愉しむ」ことにし、事実上、敵前逃亡していたわけであった。

1977年10月に琉球大学の海洋学科に着任し、沖縄でサンゴ礁生物の教育・研究に従事するようになった。JICAやFAOなどの海外技術協力プロジェクトに乗って、サンゴ礁の貝類資源の増養殖と資源管理問題に取り組んでいた。地元沖縄では、本土復帰後に沿岸部で激しい環境破壊、特に埋立てや護岸工事が行われ、結局、沿岸資源生物の研究の意義も実行する場所も失われた沖縄に見切りをつけて、宮崎県に疎開して現在に至っている。

沖縄においてもっとも残念(遺憾)であったことは、海を守るべき漁業者が埋立ての補償金を受けて漁業権を放棄し(させられ)続けていたことである。着任直後の新石垣空港建設問題から始まり、最終的に沖縄を見捨てる動機ともなった中城湾内の与那原地先の埋立てまで、身の回りで絶えず海辺の環境が失われ続けていた。海を売り渡す権利が漁業者に与えられているわけではないのにも関わらず、そのような構造が構築され、開発行為の主体である行政側に都合よく(合法的に)利用されている姿を嫌というほど見せつけられた。

沖縄で見せつけられていた官製のすさまじい環境破壊を伴った開発事業は、本土復帰でスタートが遅れた分を大急ぎで「本土並み」にしたことであった、という構図がこの本からよくわかる。海辺の自然環境を粗末に扱い、陸上の穢れをすべて海に押し流し続けるヤマトの民に対して竜神の怒りは頂点に達しているはずである。

本の中に、日向市で1970年代に行われた市の行政による竹島売却(1964年の新産業都市指定を受けて、工場用地の確保)に対するささやかな抵抗運動について記述を見つけた。そこで、日向市の住民の記憶から消えてしまわないように、その部分をスキャンして下に貼り付けておくことにした。

富島高校の教諭だった萩野忠行さんらが「ひゅうが公害研究会」を結成し、竹島解放運動をはじめた動機の一つとして、「海岸はコンビナートの向こうへ行ってしまった。なぜ、だれにそんな権利があるのだろうか」という生徒の訴えがあったという。

このような抵抗運動にもかかわらず、臨海工業地帯の埋立ては進み、30年あまり過ぎた現状が地域住民にとってどのような意味を持っているのか、行政と住民が率直に評価するべきであろう。
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by beachmollusc | 2009-03-29 19:08 | 評論

桜の花とレンゲソウの花

某MLでサクラの花弁の異常の発生率で環境汚染を調べる動きがあることを知りました。全国的に分布が広がっているクローンのソメイヨシノを使う、というのは賢い着眼点です。

科学的(統計的)な検証に耐える再現性のあるデータを集めることは難しいだろうと思いますが、身のまわりで顕著な異常が出るようになったらオオゴトです。バックグラウンドのデータとして、都市部から離れた、汚染が少ないと思われる場所のデータが重要でしょう。

散歩道にある(多分)ソメイヨシノの花がほぼ満開ですので、花をクローズアップしてみました。
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家の近くの河川プールの川岸でレンゲソウが満開です。
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今年の花は赤色の発色が強いような気がします。
この場所では毎年少し咲いていたのですが、今年は一面に咲いています。例年と異なるようなことは特に無かったはずですが、結果は大きく違っています。生物の世界は変動が激しいのですが、微妙な環境の変化が大きな影響を及ぼしているような気がします。
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by beachmollusc | 2009-03-28 08:21 | 植物

Olivellaの胃袋の中身

ムシボタルとホタルガイの境界がわからなくなったので、とりあえずオリヴェラの一種にしておきますが、Olivellaで検索すると人名がかぶるので、貝類関係に絞り込むのが難儀です。
特に論文情報で、オリヴェラさんたちが大勢出てきて、関係ない分野の業績の山を築いています。

小倉ヶ浜の最南部と最北部で干潮の時にオリヴェラたちの這い跡が見られますが、中央部ではなぜかみつかりません。脇本海岸でも中央部で見つかりませんでした。

過去の経験では、沖縄をはじめ、わがオリヴェラの生息するゾーンは潮間帯ではなくて、亜潮間帯にあるようです。つまり潮が引いて露出するところには「はみ出しモノ」がいるのかもしれません。エクアドルでは潮間帯で波踊り、サーフィンをしているオリヴェラの大群が見られるというのは驚きでした。

波が立っている砂浜海岸で砕け波のできるバーの周辺で砂の中の貝類をサンプリングするのは至難の業です。サーファーの協力を得ないと無理かもしれません。専用の小型ドレッジをつくってサーフボードからロープで引っ張って海底をさらうようにしたいものです。

砂浜海岸の沿岸部でごく浅い場所の貝類の生態分布調査は極めて少なく、データが乏しいのです。鹿島灘ではチョウセンハマグリの資源管理情報の一環として稚貝の分布調査などがあります。ホタルガイがチョウセンハマグリの稚貝を食べていたことの発見も、その成果の一つです。

大和田ほか(2007)は相模湾の平塚沖でドレッジ採集による貝類の出現状況を報告しました。

大和田 正人、 吉田 奈央、 佐藤 武宏、 金沢 謙一 (2007)
Science Journal of Kanagawa University Vol.18 pp. 77-80
海産無脊椎動物の相互作用と形態・適応の進化、および、人間活動がこれらに与える影響 : 相模湾平塚沖浅海の貝類と海底環境
Morphological and Adaptational Evolution Caused by Interaction between Marine Invertebrates, and the Effect of Human Activity on It : Mollusks and Bottom Environment in the Shallow Water of Sagami Bay off Hiratsuka

この調査の結果で、水深6m~20mの範囲の海底でホタルガイが採集されています。(ただし6mより浅いところは調査されていません)

オリヴェラ集団の分布する中心がサンドバーの沖側にあり、もしそこがチョウセンハマグリの初期稚貝の定着する場所に一致していたら、稚貝のオリヴェラによる捕食が資源変動に大きな影響を及ぼす可能性が考えられます。いずれ、この点を確認する必要を感じていますが、まずは何時繁殖しているか、浮遊幼生から稚貝が定着する時期を特定するのが先決です。

オリヴェラの胃内容物をチェックすることは、通常のドレッジ採集では極めて探しにくい大きさである1mm未満の稚貝の存在を間接的に知ることにもつながるでしょう。

小倉ヶ浜の最南部、潮間帯で3月11日に見つけて冷凍保存していた3個体のオリヴェラの胃袋をチェックしてみたところ、1個体はカラッポでしたが、他の2個体(どちらも殻長約13mm)はチョウセンハマグリとナミノコガイ類のごく小さい稚貝を食べていました。
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食われていた連中は、おそらく昨年の夏時期に繁殖したものでしょうから、最初の冬を越した稚貝の大きさがわかります。写真のチョウセンハマグリの稚貝は2mm前後で、ナミノコガイ類(フジノハナガイと思われる)は1~2mmでした。このサイズは、先だっての脇本海岸で見られたように大量発生していたら砂をメッシュで篩って簡単に探し出せますが、生息密度が低い時や、分布に偏りが強いときは見つけるのが困難でしょう。小倉ヶ浜の昨年生まれのチョウセンハマグリ稚貝の調査に先立って、現在の稚貝の大きさがわかっていることは有益です。

{追記}
Olivella の種の同定に悩んでいるので、昔の画像ファイルを探し出しました。その他サンプルが探しずらい場所に眠っているので、昔のサンプルの整理を行うまで現物を見比べられない状態です。右が沖縄本島(地点不明)と左が鎌倉海岸産のムシボタルと思っていた貝です。大きさは殻長9mm前後。
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微妙な差異が見られるのですが、どちらもかなり個体変異があるので少数の個体を見ても何も言えません。小倉ヶ浜のオリヴェラも、集団として30個体以上並べると「オイオイ」の世界がはじまります。集団遺伝の実態を確認するべきでしょう。

この属の貝は卵を(お互いの?)殻の上に産みつける習性があるようなので、それを楽しみに飼育を始めました。昔、沖縄で卵から孵化した稚貝を見た記憶があります。
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by beachmollusc | 2009-03-27 09:01 | その他の貝類

浦城海岸の春

昨年12月から4週間サイクルで北浦の浦城海岸のナミノコガイ集団をチェックしています。
本日、25日は4回目のサンプリングでした。
大潮の干潮時間の様子、特に低潮線の様子が気になっていました。

この海岸の砂は貝殻起源の白い粒が多く、それが表層に浮き出て、波浪の影響で縞々模様になります。(砂を掘ると、垂直方向にも堆積の履歴を示す縞模様ができています。)
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浜の南の汀線のところにゴロタ石があって、その上にカキが成育しています。種名は不明です。
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そして、イバラノリのような海藻が、千切れたものだけでなく、石に着いたまま打ち上げられたのもありました。
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ワカメ、アオサ、フクロノリ、その他数種の海藻も一緒に打ち上げられていました。浜の北側の亜潮間帯にはゴロタ石が転がっている領域があるようで、空中写真でみるとその部分の海の中が黒く見えます。石の上に海藻が生えているのでしょう。

ナミノコガイは相変わらず潮間帯の中央部のやや上のところで砂の中に潜っていました。

ここでは潮間帯の幅が約20mありますので、浜の斜面の傾斜は1/10くらいです。
下は掘った場所を上から見た写真ですが、今回は大型の(2-3才)個体が密集していて、手掘りでわずか20分で160あまり、必要数が採集できました。前回まで生殖腺は発達しておらず、顕微鏡で見て性別の判定もできませんでした(組織切片をつくって染色して調べれば雌雄はわかりますが、産卵期を特定し、人工交配するのが目的なので、細かく見ていません)。
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浦城海岸への道は国道388号線ですが、桜並木がきれいです。山桜は終わっていましたが、花の様子から見て数品種が混ざっているらしい桜並木のトンネルの中では花吹雪が舞っていました。
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by beachmollusc | 2009-03-25 18:34 | 海岸

変な花、何の花

ミュー6000の内臓LEDは優れもので、以前は難しかった薄暗い場所でスーパーマクロ接写ができます。
今日撮影したいろいろな植物のうちで、小さな変な花が咲いていたものの名前がわかりません。
観葉植物みたいな感じですが、藪の中の薄暗い場所にポツポツ生えているものです。
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検索して名前を見つける道筋がわからないものは誰かに教えてもらうのが近道です。
先日写真を出した赤い新葉の木は「アカメガシワ」であるとアオダモ亭さんに教えてもらって、一つ賢くなりました。

名前がわかれば、それに関する様々な情報が芋ずる的に集まります。そして、
木のメモ帳:http://www.geocities.jp/kinomemocho/index.html
という優れた情報発信サイトに出会うことができました。そのポータル・メッセージです:
<  生活用具の素材としての木,工芸の素材としての木,もちろん「住」の骨格をなす資材としての木。昔からの木の利用に関する知恵の世界には興味が尽きないものがあります。
  これは主として木材や木材の利用に関する情報の備忘録,木のメモ帳です。さらに日本の文化を見つめ直す資料としても意識しました。 >


{追記}
なんとなく憶えていた名前を検索したら、どうやら当たっていたらしい。

「松戸の自然」サイトで、画像と学術情報(出典明記)を含む詳しい解説記事の中から興味深い部分を引用します。
http://www.geocities.jp/e5377158/08zatuki/aoki/aoki.html
<アオキー高さ2mの常緑低木。雄花は萼片4、花弁4、雄しべ4、雌花は萼片4、雌しべ1で円錐花序に着く。花粉は昆虫が媒介する。果実は核果。ヤブツバキクラスの種。庭木として植栽される。葉は民間薬として利用された。
 日本でアオキは遺伝子型によって地域ごとに分布がはっきりしており『葉緑体DNA多型』遺伝子を調べれば自生なのかそうでないかが明らかにできる。そこでアオキの遺伝子を調べた調査によると本来は分布しない遺伝子型を持ったアオキが九州から見つかったり、茨城県つくば市では植栽個体に近い樹林地ほど本来その土地には生育してない遺伝子型(非自生タイプ)を持ったアオキが確認されたり、非自生タイプと自生タイプの交配も示唆されているという『アオキ葉緑体DNA』。

*『葉緑体DNA多型』:葉緑体DNA多型からみた日本列島広域分布種の分布変遷.2004.大井哲雄.小石川植物園後援会ニュースレター26*『アオキ葉緑体DNA』:アオキAcuba japonica 葉緑体DNA多型の解析からみた緑化植物の流通の実態.2006.矢野初美.2006年関東地区生態学関係修士論文発表会要旨>


この「松戸の自然」サイトの中で、重要な問題が指摘されています。鹿児島の国有林内につくられた渓流自然公園を見たときの強い違和感が説明されたような気がします。

千駄堀の水生動物と「21世紀の森と広場事業」の問題点(3) 公園建設は何故自然破壊をともなうのか(目次にもどる)
 朝日新聞の1月16日付論壇に”都民の森計画が森破壊とは”という見出しの投書が掲載されているのを見て千駄堀の「二十一世紀の森と広場」事業と同様ではないかという感想をもった。どちらにしても自然を生かした公園づくりといいながら自然を破壊していく行政の矛盾した姿勢が伺われるからである。ここで特に問題になるのは既に都市化された地域における公園計画や緑化事業ではなく、比較的自然が残されている地域における公園計画の在り方である。このような場合、行政が行う公園計画は何故、自然破壊を伴って進められていくのだろうか。何故、公園設計者や行政は自然が残されているのを見ると彼等の気にいった形に手を加えたがり、そうなることに満足したがるのだろうか。>


ここで指摘された「自然が残されているのを見ると彼等の気にいった形に手を加えたがり、そうなることに満足したがる」病気のおかげで、全国的に莫大な税金が投入されることで、自然破壊が進んでいます。自然や生態に関する無知、無理解から無意識・無邪気に行われている官製自然破壊を止めるのは容易ではありません。
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by beachmollusc | 2009-03-24 18:11 | 植物

ノイチゴの花

野生のイチゴの花が盛りになってきていますが、不幸なことに、一面に白い花が咲いて、実がたくさんとれるものはあまりおいしくありません。
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下の写真は、多分、おいしい黄色い実がなるものの花でしょう。葉っぱに毛虫がついていました。
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庭ではブラックベリーとラズベリーが新しい葉を出し始めました。まずはラズベリーです。
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ブラックベリーにはトゲトゲがありません。
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どちらも昨年実がついた枝が枯れて、別途に新しく伸びる枝に今年の花を咲かせるのでしょう。
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by beachmollusc | 2009-03-24 17:48 | 植物

カラスの食卓のその後

3月9日の記事で、塩見川の河口の北側にある、カラスの食事場所となっている岩の上から貝殻を取り除いたことを記録しておきましたが、その後に新しく現れた貝殻を本日集めて調べてみました。
http://beachmollu.exblog.jp/9796248
今日は北東の強風で、浜では飛砂が海から陸に向かって飛んでいました。
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持ち帰った貝殻は、殻の大きさの計測ができるように、片一方の殻が壊れていないものだけです。
チョウセンハマグリが50個、ハマグリが6個、ワスレガイが2個ありました。
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これらのほかに両側とも破壊されていて、計測が難しいために集めなかったものが少し残っていたはずです。

殻が散乱していた現場の様子です。
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殻の大きさを測定した結果ですが、
チョウセンハマグリ: 平均殻長 28.1mm (18.5 - 46.6)
ハマグリ: 32.6 mm (24.5 - 43.6)
ワスレガイ: 33.0, 37.9 mm
以上、3センチ前後の大きさが多いということがわかりました。これはカラスが嘴でくわえて運びやすいということでしょうか。5センチ近い大きい貝は足で運ぶかもしれませんが、その現場を見ていません。

3センチ前後のチョウセンハマグリ稚貝は潮が引いて空気中に露出する砂の中に潜っています。注意して探すと砂の表面に水管の痕跡が見つかります。カラスはそれを狙って掘り出し、小さい貝はそのまま放置し、選んだ大きさの貝を運んでから、食卓岩の上で割って食べるようです。砂浜ではフジノハナガイが頻繁に掘り出されていますが、食卓上には1個も現れませんでした。

砂の上に見える水管跡は、フジノハナガイは明瞭に2本が分かれて見えますが、チョウセンハマグリでは分かれないで、少しくぼんだように見えることが普通です。カラスは手当たりしだい掘って、出てきたものの中から食べるものを選んでいるように思われます。
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ハマグリは塩見川の河口から上流側にいるはずですが、その分布の様子はチェックしていません。塩見川は河川漁業組合の縄張りになっていて、漁業権がらみでハマグリの移植放流事業が行われてきたことを組合長さんなどから聞いています。もともと在来のハマグリがいたはずですが、有明海あたりから移植されているようなので、識別ができるかどうか調べたいと考えています。しかし、放流された貝はほとんどがすぐ死んでいるような話です。

小倉ヶ浜では鹿島灘産のチョウセンハマグリを放流していましたが、幸か不幸か全く根付かなかったようです。土地の環境になじまない外来集団を放流するのは基本的によろしくないでしょう。

おまけは、ハマエンドウの花です。とてもきれいに咲いています。
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by beachmollusc | 2009-03-23 21:04 | Meretrix ハマグリ

脇本海岸の昨年生まれのチョウセンハマグリ稚貝

実体顕微鏡にデジカメを装着して撮影した稚貝の画像を、モニター上で、画像計測ソフトを使って、殻長測定を終わったところです。連休週末の3日かけた作業で、近眼の度が進んだような気がしますが、昔の測定方法と比べると格段に楽です。

0.7mmメッシュの袋を使って、砂の中から拾い出した稚貝は、殻長5mm以下のが381個体ありました。砂を篩ったときにはキュウシュウナミノコの飼育用の個体を必要数確保するのが目的だったため、砂をすくい取った面積を測っていません。しかし、スコップですくった回数から考えて、おおよそ1平方メートルだったと考えられるので、かなり高密度で成育していた(5x5cmに1個体くらい)ようです。海岸線が2キロあり、潮間帯の幅が120m以上ですから、もしこの密度で海岸全体に分布していれば最大で1億個体くらいの計算です。親貝はメス1個体が1000万のオーダーで産卵するでしょうから、子供が1億いても何も不思議ではありません。生まれた子供が、浮遊幼生が着底して育つ過程での「初期減耗」で減る率が大きいわけです。

計測結果の統計量は
平均殻長: 2.747 mm (標準誤差:0.030) 標準偏差: 0.600
中央値: 2.63 mm, 最頻値 (モード): 2.35 mm
尖度: 0.59, 歪度: 0.88
最小: 1.46, 最大: 4.76 mm (標本数: 381)
以上でした。

ヒストグラムを描くと、対数正規型に近い、典型的なコホート(同時に生まれて育ったものであるが、指数成長期であるため、成長に大きな個体差が生じている:成長が早いものほど加速的に早く育つ)のように見えます。ただし、正規分布の山が二つ近接して重なっていると同様なパターンができます。グラフだけ見て判断すると読み間違いする可能性があるので、成長輪などの情報を慎重に見ることが大切です。グラフでは殻長0.5 mm間隔のクラス分けをしました。エクセルのグラフの欠点はクラスのラベル表示の位置が右端にあるべきところがお仕着せでは中央になってしまうことです。これを解消するテクニックを見つけていたのに、忘れてしまっています。
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計測中に観察した個体の殻に刻まれた成長線は、大きさが異なっていても相対的に同じようなパターンで育っていたようです。脇本では冬の成長停滞輪はあまりシャープではありませんが、それらしきものが多くの個体で認められました。輪が見やすい例として殻長3.03mmの個体を下の画像で示します。
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成長が停滞した後の成長再開の時に、殻の表面に現れる模様がしばらく休止し、後に再び造られる傾向が見られますが、下がその1例として殻長3.15mmの個体です。
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稚貝の殻の上に出る頂紋や色彩パターンの個体変異の様子は見ていて面白いものです。

脇本海岸で少数(1%程度)出てくるパターンで、小倉ヶ浜では(何千個体も調べて見ていますが)いまだに見たことが無い模様を紹介します。殻長は3.06mmです。
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脇本海岸のチョウセンハマグリでは頂紋の出現率が他のどこの集団よりも低いのが明瞭な特徴です。小倉ヶ浜では四分の三くらい出るのに対し、脇本海岸では比率が逆転して四分の一くらいしか出ません。頂紋が遺伝形質であれば、九州の西岸と東岸の間で遺伝交流が弱いか、地域的に極めて強い選択が効いているのでしょう。砂の色が脇本海岸では(貝殻起源の砂粒が表面に多く)かなり白いことが背景となって、影響しているのかもしれません。
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by beachmollusc | 2009-03-22 19:34 | Meretrix ハマグリ