beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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口蹄疫ウイルスの鹿の感染調査

鹿の林業と農作物被害は全国的に広がっていて、有害鳥獣駆除の最重要ターゲットとなっている。

平成16年度の都道府県別ニホンジカ狩猟実績から、島ごとにまとめて表を作り直した(沖縄は除く)北海道はエゾジカ、九州はキュウシュウジカなどと亜種単位で識別されているがここではニホンジカとして一緒にしている。

ニホンジカの狩猟実績 (平成16年度)
       オスジカ  メスジカ     計   面積(平方キロ)当たり
北海道    21,861  23,277   45,138    0.54
本 州    26,694  12,198   38,892    0.17
四 国     2,784     343    3,127    0.17
九 州     13,143   8,828   21,971    0.52
合 計     64,482   44,646  109,128    0.29

四国のイノシシ被害は深刻であるが鹿ではそれほどではなく、メスジカの狩猟を認めない(保護している)県もある。面積あたりに換算すると北海道と九州が同じくらいで断然高い。

九州の森林被害地では1平方キロ当たりの鹿の生息密度がおおよそ10頭以上と推定されている。

日本全体の森林面積は国土の約66%といわれ、その中で人工林が占める割合が約4割といわれている。(森林・林業学習館 http://www.shinrin-ringyou.com/ )

宮崎県は森林面積が約7割で、その内人工林が7割という、県土の半分が人工林という全国屈指の森林・林業県である。山頂、尾根はもちろん、谷津田の畦までびっしりと杉が植えられているし、山間部の渓流沿いの林道は杉の大木の木陰になっていて昼でも暗いところが大部分となっている。河畔林は滅多に残されていない。多くの場所で伐採期になっていて皆伐で山肌が大きく切り開かれた部分がモザイクになっている。再植林された場所もあるが、最近は刈りっぱなしの放置プレーが多い。宮崎県の山林は隣接する熊本や大分などと同じように激しく荒れている。

[2010.07.01]エコツアーカフェTOKYO31
毎月第1木曜日はエコツアーカフェTOKYO
生態系復元の切り札?「オオカミ復活」
——赤ずきんちゃん気をつけて。オオカミなんか怖くない
ゲスト:日本オオカミ協会 朝倉 裕氏
「オオカミの復活こそ日本の自然を守る」と語る日本オオカミ協会の朝倉裕さんをゲストに迎えます。

「シカと森toオオカミ 日本の森が危ない!情報求む!」
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/archive/2010/7/2
日本エコツーリズムセンターでの話 (抜粋)
⑤ シカが増えた原因は何か
・ では、なぜシカは増えたのか。
・ 増やす要因は二つ
1. 温暖化して弱い個体でも越冬できるようになった
2. 森林伐採、人工林化の過程で、シカのエサが増えた
・ 減らせない要因が二つ
1. 狩猟圧力が消えた
2. 捕食者オオカミが絶滅していた
<今の日本の自然は、人間が壊しているのではなく、内部から壊れ始めている。
それを防ぐには、捕食者オオカミの復活によって「自然調節機能」を回復するしかない。>


オオカミ再導入計画を主張しているpondwolfさんのブログで、絶滅したオオカミの復活によって日本の自然(森林)を何とかしたい、という論理にはいささか違和感がある。生態ピラミッドが高次捕食者によって安定を保たれるという「環境原理主義」は、人間が関与しなければ成立するかもしれない。しかし、そのような教科書の中のお話が実際の野外で成立することは極めて珍しいだろう。

日本の森の自然を壊してきたのは林野庁を頂点にした1950年代後半からの全国的な拡大造林政策の結果である。鹿が増えたのは山林を伐採して植林して餌付きの生息場所を拡大したことが主因であって、オオカミの絶滅とは大きなタイムラグがあると考えられる。

さて、九州山地では宮崎県椎葉村の九州大学演習林をフィールドにした鹿の生態調査・研究が熱心に進められていて、多数の報告がオンラインで公開されている。

九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息密度と下層植生の変遷
村田郁恵ほか著者多数、 九州大学農学部演習林報告 90, 13-24, 2009-03
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/17048/4/p013.pdf

<本研究では1980年代以降に天然林の下層植生の変化とニホンジカによる造林地への被害が報告されている宮崎演習林において, これまでに出版, 蓄積された文書データの解析と勤務職員への聞き取り調査からニホンジカの生息密度の変遷とその森林への影響を検証した. ニホンジカは1976年から1984年の間に増え始めた. 生息密度の増加とともに1985年に人工林ではじめて被害が発生し, 1987年より食害対策が継続されてきた. 1986年には天然林の優先的な下層植生であるスズタケの消失が始まり, 2001年にはその9割が消失した. スポットライトセンサスおよび糞粒法による生息密度調査の結果, 宮崎演習林のニホンジカは2000年代に入っても20頭/km^2以上の高い生息密度を維持しており, 造林木の育成と天然林の更新に大きな影響を与え続けていることが明らかになった.>

上の論文要旨からも、鹿の被害が起こり始めたのは最近の出来事であることがわかる。

井上幸子ほか:九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息密度と下層植生の変遷
http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/pdf/workshop13/inoue.doc

樹木年代学的手法による山地流域のニホンジカ生息密度・分布域の時間的変化の再現
櫻木 まゆみ , 丸谷 知己 , 土肥 昭夫
日本林學會誌 81(2), 147-152, 1999-05-16
上の論文では林業で幼令樹を増やして造林地で鹿の繁殖を増大させたことが記録されている。

九州の生息地におけるニホンジカの行動
矢部恒晶・小泉透(2003) 九州の森と林業 65, 1-4.
http://www.ffpri-kys.affrc.go.jp/kysmr/data/mr65.pdf

矢部恒晶・小泉透(2003) 九州中央山地小流域の造林地周辺におけるニホンジカのスポットライトセンサス  九州森林研究56:218-219
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/jfs-q/kyushu_forest_research/56/56pr009.PDF

小泉透・矢部恒晶・椎葉康喜・井上晋(2004) 距離標本法によるニホンジカの密度推定
九州森林研究57:131-134

第3期特定鳥獣保護管理計画 (ニホンジカ)
九州脊梁山地シカ広域一斉捕獲推進会議(平成18年設立).
行政界及び国有林、民有林を越えて分布するニホンジカについて、九州森林管理局、九州地方環境事務所(オブザーバー)及び大分県、宮崎県、鹿児島県、熊本県. で情報交換、連絡調整
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/life/1008967_1015849_misc.pdf

このような事業がまさに継続中!(H24年まで)

口蹄疫と野生鹿の調査・対策にはこれらの調査実績、蓄積がある森林関係の研究グループの協力を得て、環境省・林野庁・九州各県の共同事業とし、矢部恒晶氏あるいは九州大学の専門家をチーフにした箱罠などを使った生け捕りで、宮崎県の口蹄疫発生農場を取り囲んだ地域で鹿を捕獲し、疫学チームに検査サンプルが渡るようにデザインするべきであろう。
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by beachmollusc | 2010-07-12 09:52 | 口蹄疫

猪が人里の周辺で増えたわけ

鉱脈社出版のみやざき文庫38「罠猟師一代 九州日向の森に息づく伝統芸」、飯田辰彦著、2006年、とOXFORD 大学出版のThe Social Badger, Hans Kruuk 著、1989年が相次いで配送されてきたので読書三昧を続けている。
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BADGERというのはアナグマの英名(EXITE翻訳ではムジナ)、ニホンアナグマは亜種とされている。

イギリスから来た本でアナグマの食性が詳しく書かれていたが、雑食性であるが主食がミミズということだったので、かねてから気になっていた猪の食性を調べなおしてみた。イギリスのアナグマは木の実、果実、根茎などの植物性の餌とか昆虫も食べるし、ウサギなど動物の死骸を何でも食べる。

猪とアナグマの食べるものが共通であるとすれば、アナグマが日本国内で増えていてもいいのではないかと想像してみた。しかし、アナグマは縄張りを持って穴居生活をするのでそれに適した地形地質が重要だから、猪のように爆発的に増えることはなさそうである。しかし、夜行性のくせに今年の春に林道で繰り返しアナグマと昼間に遭遇したことから、日向の周辺では個体数が増えているのかもしれない。

罠猟師一代、と言う本は日向市東郷町在住の鉄工所の経営者で、猟期に宮崎県北部で主に猪を狙ってくくり罠で捕獲する林豊さんを取材した猟の現場の見聞記である。
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この著者は締めくくりで、猪や鹿の被害が増えたのは山林で餌が不足したものが里に下りてくるからだという「定番」の説明をしている。本の中では山の猪はドングリなど植物性の餌を食べていて油が乗っているが、里の猪は雑食性で味が落ちるようなことを言っている。しかし、これは眉唾だろう。

ミミズについてはイギリスで行われた戦時中の研究で、栄養価が高く、牛肉に劣らないという分析結果がだされたとbadgerの本に書いてあった。食用ミミズの実用化は行われなかったが、もし食料不足の危機が迫ったらミミズのハンバーガーが食卓にあがるかもしれない。その時は耕作放棄地が活用できるだろう。南氷洋まで行ってクジラを捕獲して食料にするよりも地元で未利用食料資源を確保する方が健全である。(南氷洋で商業捕鯨をやりたい水産会社は日本にない:水産物製品が輸出できなくなる。チョウサホゲーは科学の名をかたる水産庁の利権保持、天下り先確保事業以外の何物でもない)

さて、1970年代以降、日本で猪が急激に増えてきたのは耕作放棄された水田の面積が増えたことと強い相関関係があるそうである。

現代農業 2000年(平成12年)8月号 巻頭特集
鳥獣害から田畑を守る
 
生長する猿害防止柵“猿落君”でサルを山に帰そう
(奈良県大塔村のみなさんと県鳥獣害対策チーム)……編集部
侵入防止の合わせ技でイノシシを防ぐ……江口祐輔
イノシシが知らせてくれていた!?―江戸時代の猪飢渇から何を学ぶか― ……編集部
シカは足元の網が苦手……安岡平夫/足立年一
トンネルに薬液注入、ヤケドさせてモグラ退治……永岡謙治
この頃注目の鳥獣害防除機・製品案内

上の「イノシシが知らせてくれていた!?...」は下のURLで内容を読むことができる。その一部を引用する。
http://www.ruralnet.or.jp/gn/200008/kant.htm
水田放棄地はイノシシの楽園
 イノシシが一気に増えた1970年代とは?

 イノシシの研究を長年やってこられた東京農工大の神崎伸夫先生は、イノシシの個体数のおかしな変化に気づきました。島根県内では1970年代に入って、一気に個体数が増加し、分布を拡大しているのです。

 これはどういうことでしょう?

 そこで、捕まえたイノシシに発信器を取り付けて、イノシシの行動を追うことにしました。

 すると、イノシシは移動と定着を繰り返していたのです。つまり、A地区に10日ほど定着したら、その後移動して800m先のB地区に今度は20日間ほど定着、さらに1.5km離れたC地区に8日間定着する、…こんな具合なのです。この行動は性別や季節に関係ないこともわかりました。

 ではどんなところに定着しているのか、調べてみることにしました。

 すると、谷津田と呼ばれる谷沿いの水田放棄地が定着場所だったのです。そこはイノシシには絶好のすみかだったのです。

 谷沿いだから水は豊富にあります。そこにはイノシシの大好きなミミズやサワガニがいます。そして放棄地にはクズやワラビが生えるのですが、その根っこがまたイノシシの好物なのです。そしてススキも生えてきます。ススキはイノシシの巣材として利用されます。ネヤにも適しています。そして人も来ない。谷沿いの水田放棄地はまさにイノシシの楽園に近い条件を備えていたのです。

 神崎先生の研究によると、イノシシは9月頃に脂肪が少なくなります。その脂肪を補給する上で、一番効率的な食べ物はミミズなのですが、そのミミズは水田放棄地に一番多い。秋、イノシシは、放棄水田でミミズをあさります。そしてイノシシがふと目を上げると、そこにはイネの穂が風に揺らいでいる。お腹の空かしたイノシシに、トタンの柵や電気柵は無力です…。

 水田でのイノシシ被害はこうして起きるのではないか、神崎先生は推測しています。

 さて、これで70年代に入ってイノシシが急増した理由がわかりました。71年から始まった減反政策によって、まず第一に山間の効率の悪い水田が減反されました。そのような水田にはクズやワラビが侵入し、ススキも生えてきます。サワガニやミミズも得られます。水田は減反政策によってイノシシの楽園と化し、イノシシの個体数増加と分布の拡大につながっていったのです。

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イノシシは山間部でクズやヤマイモなどの根茎を掘って食べ、草地で山ミミズ(日向ではカンタロー)を掘り出して食べる。ドングリは季節性があるので、それが多いときはため食いするが、依存しているわけではなさそうである。アナグマがミミズを主食とするのは一年中安定している食料だからである。

山で林業(皆伐地と苗木の植林が餌場をつくったこと)にともなって増えた鹿と一緒に、麓で耕作放棄地の餌を求めてイノシシが里に降りてきている。そして、畜産農家が中山間部の放棄水田が多い地域に多く立地するようになったので、これらの野生動物と家畜の接触状態が急速に増加している。こういった状況の変化を認識した上で、行政が口蹄疫問題で野生動物の感染について当然注意するべきだったのに、しかるべき取り組みをしなかったことは残念なことである。

最後っ屁:鹿は林野庁の乱暴な林業政策で増え、イノシシは農水症の減反政策で増え、それぞれで被害が増えていることは皮肉なことである。その対策は典型的なマッチポンプ事業となっている。
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by beachmollusc | 2010-07-11 19:23 | 口蹄疫

海外のwagyu事情と種牛問題

個人的には脂肪分が多い肉が苦手で、(滅多に食べないが)ビーフステーキは(炭に近くなるまでよく焼いて)脂身は全て取り除いてワンコに食べさせて大喜びの顔を眺めている。マグロのトロや養殖ハマチも避けるし、トンカツなど豚肉は食べない。サンマも脂肪分はワンコ行き。チキンは別の理由で食べないのでご馳走に呼ばれるとお互いに気まずくなるのでなるべく逃げている。宮崎に移住して4年過ぎたが、これまで地元産の牛肉は全く食べず、昔オーストラリア暮らしの時になじみのlean(脂身が少ない)オージービーフしかいただいていない。というわけで、これまで脂肪分がちりばめられた和牛に対して(食欲をもとにした)興味が全くなかった。

口蹄疫勃発をきっかけに和牛について調べていたところ、海外で飼養されているwagyuに関する英文情報がいろいろ見つかったが、日本語でそのような情報はまるでないのが驚きだった。どの畜産分野でも国際化が急速に進んでいるが、和牛でも国際マーケットの拡大を受けて海外の多くの国で大規模な生産体制ができつつある。特にニュージーランドは力を入れているようで、日本語の案内をしている生産者のサイトもある。

ただし、日本は牛肉に高い輸入関税をかけているので、海外の和牛生産者はアメリカや日本以外のアジア諸国を販売先のターゲットとしている。それらの国々でも日本の和牛の輸入は順調に増えているところで口蹄疫が勃発した結果、OIEによる清浄国復帰の認定があるまで日本からの牛肉輸出は原則としてできない。

和牛ブリーダーズ
ニュージーランドのきれいな牧草地で育つ和牛
http://brownrigg.co.nz/jpn/wagyu-breeders/
(ブラウンリッグ農事会社の)全額出資子会社の和牛ブリーダーズLtdは、日本国外で最大規模に当たる和牛育成事業を展開し、高級食肉産業の先頭に立つため良質の血統と繁殖技術へ投資しています。

世界最高の肉とされる和牛を生産する鍵はその血統にあり、その味わいと柔らかさに勝るものはありません。

和牛ブリーダーズLtdは、日本の肥育牛市場へ子牛を統合輸出してきた実績を基に12年前に設立されました。
 (以下略)

牛の畜産ニュースサイトで和牛生産の世界的な広がりが紹介されたのは2年前:
Tuesday, May 13, 2008
Wagyu: A Lesson in Marketing from Japan
JAPAN - Ever since the Japanese wagyu meat hit foreign shores its value
has sky-rocketed. Wagyu, famous for the lavish upbringing of cattle, is
now regarded as one of the highest quality meats in the world, a lesson
that many producers are trying to replicate across the globe.

http://www.thecattlesite.com/news/22827/wagyu-a-lesson-in-marketing-from-japan

ニュージーランドとオーストラリアへ和牛が導入されたのは1990年台であるが、その元を辿ればアメリカである。日本政府は1960年代から和牛の遺伝子(精液も含む?)の輸出禁止を法律で定めている。しかし、1976年にアメリカの大学が研究用に4頭の種雄牛を入手し、その後1993-4年には30頭のオスと200頭のメス和牛が日本人ブリーダーによってアメリカに渡ったという(その後はなし)。オーストラリアには別途に日本から精液と子牛が導入されたという記事もあった。

BRIGGS RANCH
http://www.briggsranchgenetics.com/index.html
Introduction of Wagyu into the U.S.
Wagyu were developed in Japan about 100 years ago from
native cattle, Korean cattle, and some European breeds. They
were bred for many years as draft animals used for cultivation.
Since the Japanese did not consume beef until after W.W.II, the
primary selection process was geared for cattle that had readily
available energy. This quick energy is supplied by small fat cells
within the muscle tissue. The more fat cells, the more energy,
for pulling a plow. These intermuscular fat cells are called marbling,
which also is the component most responsible for taste and tenderness
in beef. In the U.S., marbling is the best measure of quality in meat.
Generally the higher the amount of marbling the higher the grade
of meat.


日本は明治維新の後で、土着の牛と、韓国やヨーロッパから導入された様々な牛との交配で、地域ごとに独自に耕作用に改良されていた系統ができていた。太平洋戦争前の日本では、牛は使役が中心で、力が強い:筋肉中に脂肪分が多い系統ができていたが、その脂肪分が高いことが肉質の味覚と柔らかさを高めた。

(「霜降り」marblingとなった肉が結果的に高級牛肉として世界的に認知され、近年のグルメブームで特にアジア各国で人気が高まったわけである)
(中略)
The use of Japanese Wagyu genetics will dramatically
increase meat quality even in the first cross. Therefore the demand
for Wagyu genetics that will produce high quality beef for domestic
consumption as well as for export has increased during the past 2
or 3 years in North America. Japanese Wagyu cattle are the best
source of genetics in every market where quality is important.


和牛に特有の遺伝形質(脂肪の蓄積)を活かし、他の系統間との交配で肉質を高級化し、アメリカ国内そして輸出で需要が急速に高まっている。そこで、和牛は高品質牛肉マーケット用にもっとも効果的な遺伝子資源である。

上の説明のような歴史的な偶然から世界に名だたる「和牛」が生まれ、英語でもwagyuと呼ばれている。

和牛の遺伝的解析とそれを基にした、交配と品種改良は海外で精力的に行われ、着実に成果を上げているらしい。アメリカ和牛協会のHPでは毎年の協会メンバー会合で発表された研究事例やマーケット情報が掲載されている。今年の総会は10月に予定されているが、昨年までの活動内容やさまざまなテーマで研究発表が公開されている。

American Wagyu Association http://www.wagyu.org/

Dr. Holly Neibergs: Genetic Structure of Wagyu Effects on Breeding Programs
http://www.wagyu.org/2009Talks/NeibergsReno.pdf
ワシントン州立大学の学者による、アメリカに導入された和牛の遺伝子解析情報がパワ-ポイントで説明されている。導入された和牛の起源が少数であり、近親交配が続けられていることが問題となっていて、今後の繁殖をどのように遺伝的に管理するかが説明されている。

上の発表を見ると、かなり高度なレベルであって、聴衆の繁殖農家もおそらくレベルが高いだろう。アメリカの大学では合衆国政府による国家的戦略としての農学研究助成でLAND GRANTというプログラムで高いレベルの基礎研究が行われた。(海洋資源、水産研究に関しては SEA GRANTという同様な研究助成があり、私もグアム大学に勤務していた時にシャコガイ類の養殖についての基礎研究を行った)。アメリカがこのような基礎研究に投資するのは国家の食料安全保障そして経済的な優位を保つためである。日本は農林水産を軽視し研究投資に力をいれず、工業製品輸出で稼いで食糧輸入するという政策をとってきたが、これを今後も続けるのは自滅の道を歩むことになるだろう。

口蹄疫の勃発で、アジアのマーケットで人気が出ていた和牛や中国向けの粉ミルクが日本全体で輸出停止となり、それに乗じてニュージーランドやオーストラリア、そして米国の和牛生産と輸出がさらに伸びるだろう。和牛の品種改良、交配や飼養技術について海外の生産者は共通言語で情報交換を行っていて、急速に進歩していると思われる。日本独自の試行錯誤で非常に長い時間がかかるといわれる「優秀な種雄牛」の作出についても各国で科学的に進められれば大きく時間短縮されるかもしれない。

種牛と後代検定をキーワードにしてCiNiiの学術論文検索をしてみたらヒット数ゼロ。

宮崎県畜産試験場の報告163件の中で下の2編が肉用牛の育種関連テーマのようである。

受精卵移植技術を活用した肉用牛の後代検定成績
井上 和也 , 原 好宏 , 中原 高士 [他]   宮崎県畜産試験場研究報告 (12), 1-5, 1999-12

肉用牛 宮崎県における黒毛和種種牛の育種価評価の現状
原 好宏 , 永田 建一 , 中原 高士  宮崎県畜産試験場研究報告 (16), 1-9, 2003-12

後代検定と牛のキーワードで下の論文が出てきた。

国内情報1 肉用牛広域後代検定の概要:都道府県域を越えた黒毛和種育種資源の交流促進
藤原 信一  畜産技術 (603), 26-28, 2005-08

独立行政法人家畜改良センターにおける肉用牛改良の取組み
谷本 保幸 , 藤原 信一  肉用牛研究会報 87, 2-8, 2009-06-20

独立行政法人 家畜改良センター http://www.nlbc.go.jp/index.asp
社団法人 家畜改良事業団  http://liaj.lin.gr.jp/
社団法人 宮崎県家畜改良事業団  http://www.mwia.or.jp/ (口蹄疫関連情報なし)
以上の連携、情報交流はあるのだろうか。

肉用牛、種牛に関してオンラインで調べてみたが何も見えない。
(上に引用したタイトルはすべて要約も本文もオンラインでは読めない)

少し古い論文であるが興味深いものがあった。オンラインで全文が読める。

石川 巧: 和牛育種改良と「製品差別化」
人間と社会 3, 67-82, 1992-04-01
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004672499

この論文で記述されている、中山間地で見られた事例:種雄牛の人気を支えるための農協による「自作自演」の評価システムによって小規模農家が振り回されている状態は今も続いているのか、国内で和牛の育種改良が科学合理性から乖離しているのは本当だろうか。人工授精と卵子移植技術の進歩で交配・育種による差別化は意味を成さなくなっているということは本当なのだろうか。全国的に牛の零細家畜農家の淘汰が進んでいるらしいが、その背景には「集約化、規模拡大」という危険な綱渡りを推し進めている行政と農協の協働があるのではないだろうか。宮崎県の種牛が(国の?)特別な宝であり、民間で飼育された種牛は違うといわれた後で、事情が変わってお宝の仲間に加えるということになったことは、首を傾げざるを得ない。
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by beachmollusc | 2010-07-10 14:51 | 口蹄疫

野生動物の資源利用と管理

口蹄疫が野生動物に感染しキャリヤー化した可能性があることについて、特に野生の鹿と猪についてどのように調査すればよいかを現行の狩猟および有害鳥獣駆除事業と絡めて考えてみた。それは畜産農家の周辺で感染したかもしれない野生動物の捕獲検査と、もしキャリヤーが見つかった場合に畜産農家で口蹄疫の再感染を防ぐための隔離・捕獲対策が必要になるからである。さらに、野生動物の行動圏に行政の区割りは関係ないので、当面は宮崎県から近隣の各県に移動拡散が起こらないように配慮する、つまり狩猟行為が野生動物の拡散を招かないように銃器使用と狩猟犬に頼らないことも大切であろう。

このような野生動物の対策事業を進める上で、狩猟者やその団体組織に丸投げをしてはならない。しかし、実際に捕獲するためには専門技術を要するので、捕獲道具とその管理をゆだねるエキスパートが実行しなければならない。また、事業コスト(人件費など)をどうするのか、捕獲した「獲物」をどのように取り扱うのか、などの詳細について知恵を絞って「つめ」をしなければならないだろう。

以上のことを踏まえて、くくりワナ猟の経験者が出版した「ぼくは猟師になった」(千松信也 著、リトルモア、2008年)はとても良い参考図書である。もちろん、箱ワナとか鹿の大量捕獲技術とか、現場での色々な工夫についての情報もある。

鹿と猪による林業被害と農作物の被害が増大しているので、公的な補助事業も広く実施されている。オンライン情報を見ると、中央組織から地域行政まで多数の情報があふれている。下に代表的なサイトを紹介する。
 
NOSAI団体の鳥獣害対策(5面・NOSAI)【2010年2月4週号】
http://nosai.or.jp/mt/2010/02/post-816.html

中山間地域を中心に野生鳥獣による農作物被害が深刻化している。NOSAI団体では、侵入防止柵や箱わなの設置など農家が取り組む鳥獣害対策を支援しようと、地域の要望に即したさまざまなリスクマネジメント(RM)支援活動を展開。さらに、行政や農林漁業団体で組織する鳥獣害対策協議会にも参加し、より効果的な損害防止に努めている。
(中略) 
 効果的な鳥獣害対策には地域ぐるみの面的な対策が必要とされる。NOSAIの組合等の「鳥獣被害対策協議会への参加」は106組合(52%)で、「今後参加予定」が23組合(11%)。協議会に参加し、地域の被害防止計画に沿って防護柵の設置などを行う場合、農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策事業」(補助率2分の1以内)を使うことができ、19組合(9%)が同事業の交付金を活用している。
(以上、引用)

大分県野生鳥獣被害対策実施 にあたっての考え方
http://www.pref.oita.jp/16210/hogo/data/honbun2.pdf

第10次鳥獣保護事業計画(熊本県)素案
http://www.pref.kumamoto.jp/invited/opinion/h18/choujyuu_hogo/pdf/gaiyou.pdf

宮崎県は鹿児島県と同様に県としての有害鳥獣対策事業および、それに必要な調査活動を行わず、市町村にゆだねている。

鹿児島県サイトでは有害鳥獣の捕獲について下のように説明している。
【有害鳥獣捕獲手続きの概要】
有害鳥獣捕獲には,法人捕獲及び一般捕獲の二つの方法があります。
法人捕獲
毎年恒常的に被害を及ぼす野生鳥獣について,市町村等がその鳥獣による被害発生予察を行い,市町村長等があらかじめ捕獲申請を行うことによって,捕獲許可を受けて,捕獲を行う方法です。
一般捕獲
野生鳥獣による被害が発生した場合に,被害者等が捕獲申請を行うことによって,捕獲許可を受けて,捕獲を行う方法です。


有害鳥獣駆除以外の一般狩猟は県単位で種目ごとの免許が毎年更新され、猟期の終了時に免許の回収と捕獲実績の報告が求められている。

大分、宮崎、熊本などでの駆除及び狩猟の実績データを見ると、鹿と猪は各地で毎年コンスタントに捕獲されているので、今後もこの傾向は続くと見てよいだろう。そこで、発想を転換し、単なる邪魔者の除去という観点からでなく、これらの動物タンパク資源の利用を積極的・持続的に行い、機械的な防御方法を併用した被害の軽減を図るという図式で、事業そのものの基本設計の変更をするべきであろう。

鹿については蝦夷ジカのソーセージの人気が高まっているそうである。
エゾシカ協会ニューズレターから
http://www.yezodeer.com/topics/newsletter/newsletterindex.html
北海道庁は2006年10月、「エゾシカ有効活用ガイドライン」を策定・公表しました。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/4B511A50-014F-4C67-93FE-7BCB2136077A/929252/HPezosikaguideline.pdf

九州でも、県ごとにバラバラでなく、全域で鹿と猪資源の有効利用から地域産業として育てるべき時期になっているであろう。そのためには、九州農政局を中核にして、野外集団の資源動態の基礎調査と情報集約、加工製品の開発研究と流通システムつくりなどの活動、さらに独立して収益を出せるようになるまでを資金的に支えるべきではないだろうか。効果が出ない駆除事業をダラダラ続けるのは行政の怠慢としか思えない。
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by beachmollusc | 2010-07-09 09:19 | 口蹄疫

処分された家畜の補償

イギリスBBC放送サイトには2001年にイギリスからヨーロッパに広がった口蹄疫情報の詳細がアーカイブされています。

その中に殺処分された家畜の補償金額についての情報がありました。
Tuesday, 7 August, 2001, 09:09 GMT 10:09 UK
How much for that cow?
http://news.bbc.co.uk/olmedia/1475000/images/_1476141_foot_mouth_300.jpg
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この図から、家畜の種類によって、さらに同じ牛でも乳牛と肉牛での差異、血統による差異が大きいことが説明されています。価格査定は政府が認定した専門家が行うことが書かれています。血筋のよい評価が高い種牛は(多分、オスもメスも)極めて高価になるようです。このことは日本の畜産においても同様でしょう。

わが方の口蹄疫で、殺処分がはじまった頃、知事や町長などの要請に対して〇〇大臣が家畜の「全額保証」を打ち出したような報道がありました。そして、牛1頭の一律の価格を漏らし、それに対して地元出身の国会議員などがクレームを出したりし、かなりゴタゴタしたようです。それが結果的に防疫措置の推進の障害の一つになったかもしれません。

畜産の仕組みに疎い人間が批判するのは避けるべきかもしれませんが、客観的に見ていると、腑に落ちないことだらけです。政府は「全額」と言う言葉で法律上の全額を意味したと思いますが、それが共済の仕組みとの整合(未加入問題があったこと)もとれず、しかも種牛などの評価の差異を認識せずに発表したのかもしれません。畜産の現場を知らなかった大臣が、(外遊と言う自己にとって極めて重要な行事に夢中で)ろくに勉強もせず、役人もポイントを抑えたアドバイスをせず、現場に大きな混乱を招いたのではないか、と想像されます。

補償を受けることになる農家は、とにかく早く終息して欲しい、周辺に広げて迷惑をかけたくない、という一心で指示されたとおりの防疫対策に取り組んでいたと思います。家畜の移動制限などのルールを(ほぼ)厳重に守ったことが今のところ宮崎県内で発生が止まっていることに貢献しているのでしょう。

ちなみに、イギリスの2001年の事件は羊や豚などの移動を政府が全く把握していなかったため、抑えることができなかったようです。手順どおり防疫をやっていたと楽観していたイギリス政府は、イギリス全土に爆発炎上(結果的に約2000例が発生)して手がつけられなくなって、当時のイギリス首相は選挙の延期を強いられました。また、軍隊の投入をためらって速やかな制圧ができなかったこと、ワクチネーションもやりそびれてしまったことが強く批判されています。(ネット上ではイギリス政府の対応について間違った情報が流れていますが、2001年のイギリス口蹄疫は今回の日本のケースよりも程度が悪い、後手後手対策とエラーの連発でした。そして2007年の再発ではその学習成果が生きています。)

宮崎県と町の行政と地元政治家は、農家の補償問題を前面に押し出して、あたかも条件闘争をやっているような印象を中央政府に与えたようです。「町長がしつこくごねる」などというメモが露見してしまったのがその証拠です。国と県と町が一体になって防疫に専念し、その障害となっていた埋設場所の確保を早く実現できるようにしなかったことが、結果的に全体の被害を拡大してしまったと思われます。

民間の種雄牛の問題がくすぶっていますが、OIEに対する面子でどうしても処分しなければならないとすれば、最低でも「種牛として貢献できたはずの金額」を計算し、それに加えて種牛として育て上げた努力に報い、やむなく処分という事態に追い込んでしまった慰謝料も十分に加え、知事が土下座して謝罪してお願いするべきでしょう。
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by beachmollusc | 2010-07-08 13:41 | 口蹄疫

海岸の花

今朝も続いて曇り空、GIビーチ一周の散歩でした。

波打ち際に大きなチョウセンハマグリの死殻が2個転がっていました。
その一つです。
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以前コメント書き込みで、貝合せ用ハマグリの殻がご所望だった芦屋の姫様は、日向市伊勢が浜のはまぐり荘から沢山提供してもらったそうなので、追加を送る必要はなくなったみたいです。

大分県臼杵市のヤマコ美術博物館に材料として贈呈したチョウセンハマグリの殻は、お役に立っているというお知らせをいただきました。

この海岸は護岸が自然の岩石や植生の後ろに離れて道路下にあるため、波打ち際からは見えないので、景観を損なっていません。ただし、何のためにつくられた擁壁・護岸かという疑問は残ります。

昨日はハマゴウの花でしたが、今朝はハマオモト、別名ハマユウの花です。
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駐車場所には植栽されたソテツの花が咲いています。
写真は雄と雌ですが、どちらがどっちかわかりますか。
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by beachmollusc | 2010-07-08 09:31 | 海岸

初夏の花

曇り空の中、ミッキーを連れて日課の海岸のお散歩に出かけました。いつものGIビーチ(ウドノセ)です。

駐車場所から浜に出る道が綺麗に草刈されて、浜の打ち上げゴミも片付けられていて快適です。

ハマゴウの花が咲き始めているのに気がつきました。これは色と姿がお気に入りの花です。
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オニユリがいつの間にか、あちらこちらで咲いています。これは特に好みではありません。
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先月までの大雨の繰り返しで、浜に出る水路が3つほどできています。
その一つで、大きな礫岩の浮石の下をえぐりとって流れているところですが、砂に埋もれていた部分が赤っぽく見えます。ミッキーはここでいつも水を飲みますが、梅雨明けすると流れが消えて伏流するはずです。
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by beachmollusc | 2010-07-07 07:32 | 海岸

牛の結核症とアナグマの不幸な関係

イギリスのDEFRAサイトで、現在、家畜の伝染病問題として最重要な課題は牛の結核が蔓延していることのようです。イギリスBBCのニュースでも大きく取り扱われているのが「アナグマ問題」、つまりDEFRAによる野生のアナグマ集団に対するワクチン接種での防疫対策事業をどうするの、ということです。対策事業として認められた後で、野生動物関連の団体や学者と政治家などから異論がいろいろ出て、予算執行前にゴタゴタが起こっているようです。

BBCのニュースによれば、今年の夏に実施予定だったアナグマに対する牛結核ワクチン接種は「事業仕分け」されています。
Badger vaccination projects across England axed
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/10405932.stm
Thursday, 24 June 2010 14:46 UK
The government has cut a project to vaccinate badgers against bovine TB
that was planned for parts of England this summer.

(中略)
The project is due to start in an area near Stroud in July and continue
for five years, over which time the Department for Environment, Food
and Rural Affairs (Defra) said an estimated £6m will be saved.


DEFRAが5年計画で実施するはずだった防疫対策事業の6百万ポンド削減ということです。イギリスでは一部でアナグマの駆除事業が行われ、それに反対する自然保護団体の動きがあり、そしてアナグマが駆除されても牛結核が減っていないという調査結果も出ています。多発発生場所でアナグマを駆除すると、逃げ出したものが周辺で感染を広げることが調査で分かってしまいました。

アナグマを殺さずにワクチン接種で保菌率を低下させて牛への感染を減らすという作戦ですが、野生動物であるアナグマの取り扱いが難しく、効果的に事業を実施できるかどうか危ぶまれているようです。そこで、パイロット事業として試験的に一部の地域で試行されることが決まりました。なお、イギリスでアナグマは保護動物(1992年の法律)です。実際にはアナグマから牛よりも、牛から牛への感染が多いのでアナグマを敵視するのは的外れという意見もあるようです。

Badger culling: Questions and answers
4 June 2010 14:11 UK
By Richard Black, Environment correspondent, BBC News
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science_and_environment/10227556.stm
上にアナグマ駆除事業問題の詳しい説明がありますが、内容は略します。

野生の保護動物であっても農業や人の健康に重大な悪影響などがある場合は、野生動物を政府として駆除できるという法律もイギリスにはあります。ただし、対象動物を絶滅に追い込むようなことはしない、という条件付きです。

Badgers and bovine TB
David Gregory (BBC Science Correspondent for the West Midlands)
Thursday, 24 June 2010
http://www.bbc.co.uk/blogs/davidgregory/2010/06/badgers_and_bovine_tb.html
BBCサイト内に上のような「科学」通信員のブログがありました。

So now we are left with science that says two conflicting things.
Either culling spreads TB or it helps control it, but which is it?
The scientists say they need to monitor the impact of this cull
for much longer to see which of these two apparently conflicting
ideas is correct.


一部の地域で試験的なアナグマ駆除の結果、その地域の周辺部で牛の結核が増えたという報告があるため、駆除からワクチン対策にシフトしたという話です。

このイギリスでの家畜と野生動物との感染問題は、日本の牧畜、特に酪農に多少は関係するかもしれませんが、特に大きな懸念材料ではなさそうです。しかし、宮崎県の口蹄疫で家畜と野生動物の関係を考える上で、重要な参考となるかもしれません。

結核は人の重要な伝染病ですが、牛にも結核があり、同属の病原菌があって、牛と人がお互いにクロスして感染する可能性がある「人獣共通感染症」の一つです。これについて詳しい説明は下のURLで見てください。

動衛研> 家畜伝染病 > 結核病(tuberculosis)  対象家畜:牛、水牛、しか、山羊
原因菌はウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)またはヒト型結核菌(M. tuberculosis)。
http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/fact/11.html

下のサイトで見るかぎり、牛結核は日本では重要問題となっていません。

最近の家畜衛生をめぐる情勢について平成20年3月 消費・安全局動物衛生課
http://www.maff.go.jp/syohi_anzen/katiku.pdf

山内一也(東京大学名誉教授)による人獣共通感染症についての連続講座では、10年以上前にアナグマの問題が紹介されています。

第89回 英国で野生アナグマからの結核が問題
霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第89回)11/14/99
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/prion/pf89-3.html

 結核は代表的再興感染症として日本を含めて世界各国で対策が進められています。 CDCでは1989年に新しいレベル4実験室が完成したのを契機に、それまで使用していたレベル4実験室を薬剤耐性結核菌の研究用に転用しました。
 ところで、私は9月末に英国家畜衛生研究所Institute for Animal Health (IAH)を訪れた際に、英国でウシの結核が広がっていて、しかもその原因は野生アナグマであるという話を聞かされました。IAHの免疫研究部は部長のアイヴァン・モリソンIvan Morrisonのもと、ウシの免疫学では世界のトップとみなされています。ここでウシの結核が最重要の研究課題になり、とくにウシに対する結核ワクチン開発をめざした研究が進められていることを今度初めて知りました。細菌は私の専門ではありませんが、野生動物からの再興感染症の典型的な例として、IAHの資料をもとに英国でのウシの結核の現状についてご紹介します。

(後略)

このように、イギリスでは牛結核を抑えるために、野生動物と家畜との間の共通感染症の取り扱いに長年苦労を続けています。イギリス政府は牛結核の殺処分対策農家に対して年間1億ポンドの補償金を支出しているそうです。理由は人間にも感染するし、ワクチンを牛に使うとヨーロッパ向けに牛が輸出できなくなるからです(口蹄疫の場合と同じ理由)

口蹄疫が野生の鹿集団内で常在するような事態になれば、野生鹿から家畜への感染防止が極めて厄介な問題になるだろうと思われます。鹿と猪はほぼ同所生活ですから、両者が関係してきて、家畜の野生動物からの厳重な隔離が必要となるはずです。たしかに、日本では畜舎での高密度飼養が中心ですが、牛では放牧の牧畜もあり、また人気がある観光農場としての経営が極めて難しくなるでしょう。

発生の最初の段階で野生動物の感染防止が重要であることについて、口蹄疫の対策本部が知っていても知らん振りだったのかどうかわかりませんが、単に知識があるだけでは役に立ちません。そして無知はもっといけません。

"Knowledge is of two kinds. We know a subject ourselves, or we know where we can find information upon it." - Samuel Johnson

...................................................................................................
日本のアナグマはヨーロッパのアナグマの亜種としてニホンアナグマと言う「和名」です。

獲ったどー! 「狩猟民族の館」ブログ  2010-02-26 | 狩猟
http://huntingfactory.blog112.fc2.com/blog-entry-541.html
猪用の箱ワナで獲れたアナグマ君の良い写真と面白いコメントがあります。

「gakuの今日のヒトコマ」 2008-04-17 Thu  [ 哺乳類・野生動物 ]
珍品アナグマの死体
http://gaku-blog.net/index.php?e=506

熊谷さとしのフィールドニュース 2005年11月14日
アナグマのセット(巣穴) 
http://blog.livedoor.jp/kumagai_satoshi219/archives/50247374.html

「同じ穴のムジナ」という言葉がありますが、アナグマは大きな巣穴を家族みんなで掘り広げて住処を作るそうです。
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by beachmollusc | 2010-07-06 14:44 | 口蹄疫

台風なしの砂浜

小倉ヶ浜では昨年に続いて台風の接近がないまま、砂浜ではバーム形成が進んでいます。また、河口の砂浜上での湾曲が激しくなっています。大時化が一回でも来れば、そのような海岸地形は解消されて平坦な前浜と直線的な河口となるはずです。

塩見川河口の北の砂浜で見られる現在のバームは小さい崖になっています。
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浜には今朝は珍しく釣り人が2名いましたが、獲物は全くなしのようでした。

1週間前に見つけた波打ち際のアカウミガメの死体は、市役所によって砂の下に埋設されました。日向灘では今年も昨年に続いてアカウミガメの産卵上陸の数が多いようです。

ベンケイガニの活動も活発になっていて、産卵も近いでしょう。
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このカニさんは海岸に近い町の中でも道路を渡っていて車に轢かれています。
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by beachmollusc | 2010-07-06 10:10 | 海岸

野生の猪と鹿をどう調査するか

最初に口蹄疫が発生した都農町の農場付近では、自分のサルナシ類の調査で山道を走り回っていて、周辺の実情をよく知っていました。そこで、発生当初から野生動物と接触する感染リスクについてブログで情報発信を続け、県にもメールでアドバイスしたつもりですが、全く手ごたえがなかったので驚きました。

今後、野生動物が再感染に関係するリスクですが、このまま野生の鹿と猪の疫学調査なしで、感染を確かめないままの児湯地区の畜産業の再開は危険だと思っています。もしも、すでに感染しているとすれば、野生の鹿と猪は畜舎の周辺に慣れている、言い換えれば共生関係になっている個体が多いはずです。

そこで、疫学調査をやってもらいたいのですが、役所にやらせるとトンでもない間違いをしてくれるかもしれません。

イギリスの鹿のサイトで見つけた口蹄疫に感染したニホンジカの写真の使用はまだ許可が来ませんが、pdfの写真付きの説明が利用できますので、感染して治癒し、ウイルスキャリヤーになっている鹿の確認は容易にできるでしょう。猪の方は豚と同様ですから、それも同じく口や足の状態でチェックできるはずです。そして怪しい個体の血液を採取してウイルス抗体ができているかどうか、確認検査ができるはずです。野外で見つかった動物の死体から、いい加減なサンプルを採ってPCR検査してもほとんど無意味ですが、そのようなアリバイ作戦を国の本部がやっているようです。

イギリスからのアドバイスですが、狩猟で鹿や猪を捕獲して検査しようとすれば、かえってウイルスを保持したキャリヤーを遠くまで移動させる危険が考えられるので、疫学調査は口蹄疫の発生現場周辺に居座っている動物をワナで捕獲することが基本となるでしょう。

このような事態になって、野生動物と対峙する際に、役人の役立たずぶりは専門的な知識、経験そして想像力の欠如からくるものであって、数年で職責の持ち場が変わるようなデスクワークを続けているために救いようがありません。有害鳥獣対策の担当者となっても、にわか研修で表面的な知識を詰め込むだけ、それも対処療法だけでしょう。

「狩猟民族の館」ブログに有害鳥獣対策セミナーに参加した猟師さんの参加レポートと、それに対するコメントが実情を語っていると思われます。それを部分的に引用しておきます。

鳥獣害防止対策セミナー 2010-06-25
http://huntingfactory.blog112.fc2.com/?no=613

参加者は、農業者、猟友会、市町村、県民局ですが、主には、役人のようでした。

このセミナーは、毎年この時期に開催されていますが、昨年は気がつくのが遅くて参加できませんでしたので、私は2年ぶりとなりました。

内容的には、前回と比べて目を見張るようなものはなかったので、このセミナーの対象者は、初めて鳥獣害の対策に関わる部署に移動になった役人のように思います。


(中略)

これは、獣類を捕獲する箱罠です。
(写真、略)
これらは、特に目新しいものはありません。

臭いや光で追い払うものも各種ありますが、本日の講演をした研究者が実際に使ってみた結果では、すぐに慣れてしまい効果はないということのようです。

それと、狼の尿が効くとの噂があったので、動物園で狼の尿がついた稲藁をもらってきて、飼っているイノシシの小屋に入れたところ、まったく怖がる様子もなく、最後には体をその藁に擦り付ける行動をとりました。

このことについては、セミナーでその様子を撮ったビデオを私も見ました。

要するに、イノシシに対する決定的な防護方法は、物理的な方法しか無いようです。


<以下はコメントから>

セミナー

数年前に、O市内で同じ様なセミナーがあった時出席した時も近県の市町村の

有害駆除の担当者の方が多かった様な記憶があります。そのときは滋賀県の大学

教授の方と農政局の方が講師だったと記憶していますが、その時は箱オリの流行る

前だったと思います。其の時は、いかに田畑にイノシシが入らないかとかトタン板の

張りかたとかメッシュの張りかたとかが主な議題だったと思います。

それと箱オリの業者も来ていたと思います。(商売熱心な人)

しかし、イノシシの生態に付いてはまったくといっていいほど知らなくてたんなる

たんに田畑に侵入し難い方法メッシュやトタン板の張り片ばかりに話がいくので

もっとイノシシの生態お調査していかにイノシシが田畑周りに出て来難くなるか

とかイノシシの寝屋が何処の辺りとか基本的なことおもっと調査するよう穏やかに(嘘)

提言した所生態については基本的にあまりしてなかった様です。役人とか教授は

補助金だけ貰って適当にセミナーしてますと報告だけして自己満足しているものと

思った次第です。ちなみに当日猟師はただ一人でした。


| 2010-06-27 | 琥蛇把璃

琥蛇把璃さん
どこでもハッキリと意見を言われところは見習いたいです(笑)
箱罠の製造をしている業者が、研究者は実際に獲ったことがないので、ほんとうの生態なんて知らない。と言っていました。その研究者が、獲らない役人に対して講義をして、それをもとに対策を考える図式には問題があるような気がしますね。でも、猟師が間に入るとぐちゃぐちゃになるでしょうからね(笑)

| 2010-06-28 | 川ガニ

以上が痴呆行政の典型的な姿でしょうが、場所によっては中には熱心な役人さんがいらっしゃることも事実のようです。

口蹄疫の推移と野生動物問題の取り組みを見守っていた限り、宮崎県はhopelessです。国は「県のやる仕事」という態度のようで農水省は環境省の応援を頭の片隅にも置いていないようです。環境省は「我感染せず」ではなくて関係ねー、ということでしょう。有害鳥獣対策事業は両省の「協働」のようですが、互いに相手に下駄を預けたままのような印象です。全国的にほとんど事業効果が見られず、事業だけはズルズル拡大で被害はドンドン拡大、という実績がそれを物語っていると思います。
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by beachmollusc | 2010-07-05 12:40 | 口蹄疫