beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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海に異変(つづき)

海の水質汚染と感染症

病原微生物に対する抵抗力を失ってサンゴが発病している背景として水質
の悪化が示唆されているケースが多い。

サンゴのセラチア菌感染症は下水流出による水質汚染の直接的な影響が
疑われている。アスペルギルス症や昔から知られているサンゴの黒帯病
(シアノバクテリアを中心にした微生物複合体が病原)などでは、陸上から
流出している窒素の増加が発病を促す可能性が疑われ、海水中の窒素分
を増加させたらこれらの病気の感染率が高まったという実験結果が得られ
ている。

サンゴの白化・死滅現象では、動物であるサンゴの本体と、それと共生して
いる微細藻類との間で共生関係が壊れる。実際にその死滅への引き金を
引くのは高水温が持続するストレスである。しかし、サンゴの種類の違いや、
同じ種でも世代と年齢の違い、また生育している場所の環境で、死滅したり
耐えて生き残ったりする差がとても大きい。

実際に白化現象を見ていると、温度上昇が始まった後で、かなりの
潜伏期間を置いてから影響が表面化する。また、白化が繰り返し
起こった後に現れ育った新世代のサンゴは白化に耐性を獲得して
いるようでもある。これらの特徴は表面的にはウイルスによる感染症に
よく似ている。

サンゴ礁の海だけでなく、最近数十年間に海洋生物の大規模な感染症が
世界的に頻発している。日本では知られていないが、オーストラリア南部
のイワシの仲間のヘルペスウイルスによる大量斃死(1995年と1998年)は
特に際立っている。

最近日本でも鯉のヘルペスウイルス病が蔓延して大騒ぎとなったが、
養殖されてもいない魚が海の中でウイルス感染症で大量死していることは
まさに衝撃的である。南オーストラリアのイワシ漁業は主に日本で消費されて
いるミナミマグロの養殖産業(蓄養)のために、餌の供給を目的として
1991年に始められたものであるが、この大量死で一時的にイワシ資源量が
6割以上減少して餌の確保に困ったほどであった。

四国の宇和海では真珠養殖のアコヤガイでウイルス感染症による
大量斃死が続いている。この問題では病原体が判明する以前に、
貝の養殖場近辺でのフグ養殖の寄生虫防除のためのホルマリン
廃液が海中投棄されていたことが斃死の原因ではないかとも
疑われた。結果的には病死であろうが、ウイルス感染症が起こり
やすくなった背景に何らかの環境悪化の影響があったかもしれない。

有明海では地域特産の二枚貝のアゲマキやタイラギがほとんど消えて
騒がれたことが記憶に新しい。貝類の赤ちゃん、すなわち波間に数週間
漂う浮遊幼生にヘルペスウイルスの仲間が感染して死滅させることが
養殖施設内で起こっている。この問題は栄養不良や温度上昇などの
環境悪化、つまりストレスが引き金となっている。これから類推すれば、
もともと普通にいるバクテリアやウイルスなどによる海産動物の日和見
感染症が様々な環境悪化の進んだ海の中で広がっている可能性も
十分考えられる。

アサリは水質汚濁にとても強く、特に有機質汚染を浄化する高い能力を
買われて干潟の環境再生に用されようとしている。ところが、1990年代
以降、全国的にアサリ集団が急激に減少し漁獲量が急落している。全国で
1980年代半ばまで年間15万トン前後だった漁獲量が、最近は4万トンを
切っている。1990年代以降は輸入アサリが増え2001年の総輸入量は
7万5千トンとなり、それが日本国内の消費量の7割を占めている。

日本各地で水質汚濁や埋立てが激しかった時代をなんとか生き延び、
場所によってはその間漁獲量はむしろ増加していたアサリが、近年に
なって全国的に減少しているミステリーの背景には何があるだろうか。

海の哺乳類でも異変が続いている。1988年に北欧からイギリスに
かけてウイルスによるアザラシの大量斃死が起こったが、最近では
地中海などでもイルカやアザラシの病死が広がっていて、ウイルス
感染症が疑われている。哺乳動物の場合では、体内に蓄積された
まま残っている旧来型の環境汚染物質が免疫系を損ね、ウイルス
感染症を誘発している可能性が指摘されている。

カリフォルニア南部沿岸で下水中に含まれていた猫の糞由来の
原生生物、トキソプラズマが海に流れ出てラッコに感染し、死亡率が
高くなって問題となっているらしい。この病原体は人獣共通感染するが、
人間に感染した場合、妊婦経由で胎児に影響したり、免疫が低下した
人では深刻な日和見感染症が見られるという。

海洋汚染は過去の問題か

有名なレイチェル・カーソンの「沈黙の春」が1962年に出版された後、
環境保全の意識が高まった。日本では1971年に環境庁が設置され、
DDT など残留性・生物濃縮性の高い農薬の使用が禁止された。
水俣病やイタイイタイ病なども大きな教訓を残し、人間に直接影響する
水質汚染対策は急速に進んだ。その結果、最近では公害の時代はすでに
過去のものとなったとさえ感じている行政関係者は多いだろう。

工場廃水は規制され、都市部では下水処理もかなり普及していることは
事実である。ところが、陸上から海に流れ出る汚染物質は多様化しながら
増大している。

殺虫剤、殺菌剤、除草剤などがターゲットとしている駆除対象の昆虫、
雑草や微生物には薬剤耐性が急速に生じることが多いため、新しい
薬品が次々に開発されている。その間、過去の教訓から、人間に対して
毒性の低い化学物質が選ばれて登場し、毒性の強いものの多くは
退場している。そして1980年代以降は、生物濃縮が起こらないが
その反面「水に溶けて流れ出やすい」タイプの農薬への切り替えが
進んでいる。

農薬が短期間に分解して環境中に長く残らないことはよいことであろう。
ところが、新しいタイプの農薬について、非ターゲット生物、特に海産
生物に対する生態的な影響評価はほとんどなされていない。例えば
農薬検査所のホームページを見ても、水産生物に対する影響について
調べる対象として海の生物がなぜか見当たらない。

農業だけでなく、松枯れ対策やゴルフ場、公園緑地などの害虫駆除
でも広く使われている代表的な有機リン系殺虫剤、フェニトロチオンを
例にとってその実態を説明したい。

これは人間やイヌ、ネコなどに対する毒性は弱いが、水中生物全般に
対する毒性は強い。特にターゲットとなる昆虫とは類縁関係が近い
エビやカニの仲間に対する毒性は強烈である。エビ類で致死濃度
レベルは1リットル中に1マイクログラム、つまり10億分の1の濃度
である。DDTは水に対して事実上溶けない(1リットル中0.1ミリグラム
以下とされる)が、これは30ミリグラム程度まで溶ける。その飽和濃度
ではエビの致死濃度の1万倍くらいにもなる。

国立環境研究所の報告によれば、ある河川での連続的な調査期間中、
流域で農薬散布が行われたすぐ後で農薬各種の水中濃度が急上昇し、
水生昆虫などが強い影響を受けていた。その川の流水中で川エビの
飼育実験を続けた結果でも、農薬流出に伴ってその死亡が観察されて
いる。すなわち、単発的、短期的ではあるが、多くの水生生物に対して
致死濃度の農薬流出が断続的に起こっているものと思われる。

河川中で影響を及ぼした後で農薬はそのまま海に流れ出ているはず
であるが、その結末についての調査報告は見つからない。また、
松枯れ対策として海岸で松林に薬剤散布した場合にも沿岸生物に
影響を与えているだろうが、それについて調べた報告も見つからない。
一過性の影響で生物の死滅などの被害が起こっていても、被害者も
含めて証拠物件が現場に何も残留しないので、犯人がわからない
ひき逃げ事件のようになっているのだろう。

農薬散布というのは害虫や雑草の繁殖を抑える目的で行われるが、
それはまさに水中動植物でも繁殖活動が盛んな時期に行われている。
生理的に敏感な卵や子供時代、特に水中動物の発生中の卵は周囲
の水に直接さらされていて、より直接的に影響を受けているはずである。

生命機能に影響する物質が特定のターゲットを破壊する仕組みは
様々であるが、そのような化合物は生命維持のために働く各種の
酵素の働きを選択的に阻害し、細胞分裂で急速に繰り返される
DNAの複製や蛋白質の合成などを妨げる場合も多いだろう。
しかし、この観点から一般的な海の生物が新しいタイプの化学物質
から受ける影響についてはほとんど調べられていない。

近年の機械化、大規模化された農業では肥料を多く使っているので
その流出が顕著となり、地下水の窒素汚染などが表面化して問題と
なっている。また、都市部では一般家庭から下水に流されている
界面活性剤やその他の薬品類の種類と量の増加も著しい。

下水処理では有機物や細菌の部分的な除去に止まり、冬場に
生カキの食中毒を起こしているノロウイルスなどは処理されずに
通過しているし、大雨の時には未処理の汚染水が海に直接流れ
出ている。

海の見かけの汚さは1960年代にピークを迎えていたはずである。
自分自身の経験でも、40年前に東京湾の羽田沖で水面から手を
入れてみて指先が見えなかったほどの赤潮状態だったのが強く
印象に残っている。その後の状況は改善されてきたようであった
のだが、不思議なことに公害のピークが通り過ぎた後、1980年代に
至ってから全国的に河口干潟から様々な生物が消滅した。その中
で目立っていたのはハマグリ、シロウオ、アオギス、アサクサノリ
などである。埋立てなどの海岸工事ラッシュもこれに大きな影響を
及ぼしたに違いないが、河口干潟そのものが形は残っている場所
でもこれらが消滅している。

陸上起源の細菌類や菌類などが世界的に海で暴れているらしい
のはどうしてなのだろうか。これを考えていると沿岸部では海水中の
微生物を攻撃するウイルスが働かないような状態になっているの
だろうか、と疑いたくなる。70年以上前の話であるが、都市沿岸の
海水中に病原バクテリアがどのように分布しているのかを調べた
研究者がいた。その結果海の中に流れ出ているはずのバクテリアが
全く見つからないので、それは何故だろうと追求していてバクテリオ
ファージ(バクテリアを攻撃するウイルス、ファージと略される)の
存在がクローズアップされた。そこで、特定の病原菌を攻撃する
ファージを使って病気を直す方法が検討されたが、当時の実験
ではものにならなかった。ファージ療法は、その後の抗生物質の
発見と実用化が進んだおかげでほとんど見捨てられてしまった。

最近になって海水中のウイルスの存在が再びクローズアップされ、
その生態的な役割、つまりファージが海中のバクテリア集団を
制御する機能の重要性が再認識されている。バクテリアや
ウイルスはすべてが「人類の敵」といったようなイメージが
社会的に作り上げられているようだが、生態的な見方をすれば
人類の生存は微生物の世界と密接にリンクしていて、陸でも
海でも自然界には強い味方が満ちている。ところが我々は、
敵味方の区別なしに、化学物質を使ってすべてを「浄化」しようと
しているかのようである。

ワクチンや抗生物質の利用で、人類が感染症を制圧したという
重大な感違いが広がった直後の1980年代から新たに人の
免疫細胞を攻撃する厄介なウイルスが現れ、抗生物質の
効かない耐性菌が広がり、さらにSARSのような「新興感染症」が
次々に現れている。それと平行して海中生物に異変が起こって
きたのは単なる偶然であろうか。

これまで述べてきたように、海で様々な「日和見感染症」のような
異変が頻発している事態は、陸上から流出している汚染物質や
環境負荷の影響を強く示唆している。その背景として、例えて
言えば、沿岸生態系が「免疫不全状態」に陥っていて、
ごくありふれた微生物が暴れだし、運の悪い生き物が痛めつけ
られているようにも見える。表面に出ている症状はほんの一部で、
サンゴのようには世間の注目を集めない多くの海産生物にも
影響を受けているものは少なくないに違いない。

海辺の健康管理をこれまで長い間放置してきた「つけ」はかなり
溜まってしまっている。日本では水産と環境の縦割り行政の
狭間で海辺の自然環境と生態系を守る行政上の主体が
事実上不在のままであった。

スキューバ潜水の開祖のクストーが、海中の世界を「沈黙の世界」
というタイトルで紹介したのは五十年前のことであった。実際の海には
動物たちの出す実に様々な音が満ち満ちているが、それが文字通り
「沈黙の世界」になってしまわないようにするために、サンゴたちが
苦しんで出している悲鳴を先触れとして聞きのがしてはならない。

この文では情報源である学術論文などを文中で示していないが、筆者のホーム
ページで「サンゴの病気」についてまとめた頁に情報源を示してあるので、より深く
知りたい読者は参照してください。
(学内サーバーから削除されホームページは閉鎖されました)
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~coral/


(final version 2004.06.06) 
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by beachmollusc | 2010-08-31 09:16 | 環境保全

海に異変-カビがサンゴを食べている (2004年の原稿)

琉球大学で担当した専門講義、サンゴ礁の資源と環境保全、の中で取り上げたテーマの一つとしてサンゴ類の感染症がある。その情報を一般向けに啓蒙するべく「なるべく」わかりやすく砕いて作文し、月刊総合雑誌の編集担当に送ってみたが、どこも相手にしてくれなかった。その結果、原稿は日の目を見ないままである。

6年前の情報整理の成果であって、その後のフォローをきちんとやっていないでいるが、海における新興・日和見感染症問題は続いているようである。最近ヨーロッパで蔓延している牡蠣のヘルペス感染症もその新顔となっているので、現在フランス語の情報と格闘中である。水産でも畜産の口蹄疫と似たような、ウイルスなどによる感染症問題は少なくない。

下に前の没原稿を出しておくことにし、トピックごとに情報を追跡し、その後のフォローも書き加えたい。

元の原稿は雑誌用に縦書きにしたが、ここでは横書きである。
漢字の数字を書き換え、なるべく読みやすいように段落を再構成している。


海に異変、カビがサンゴを食べている (海洋汚染と日和見感染)

                           山口 正士

熱帯の海を彩るサンゴ礁、そのあくまでも澄み切った
コバルトグリーンに輝く海底からまるでサンゴたちの
もだえる声が響いて聞こえてくるような気がしてならない。

サンゴの大量死が近年になって繰り返されている。
沖縄ではサンゴの敵であるオニヒトデの大発生、
そして海水温度の上昇で起こった白化現象による
サンゴ類の死滅はすでに広く報道され、社会的関心
をかなり集めてきた。

しかし、その陰にかくれて日本ではほとんど報道も
されていないが、大西洋のカリブ海を中心に、何種類
ものサンゴの感染症がしだいに広がりをみせている。
そのため、サンゴの感染症問題についての本格的な
調査研究がアメリカ合衆国政府の海洋大気庁を中心に
一昨年から進められている。

「サンゴの病気」は太平洋のサンゴ礁ではそれほど
目だっているわけではない。しかし、これは大西洋の
サンゴ礁だけの「対岸の火事」ではなさそうである。
これから紹介する海外でのサンゴの異変、そして身近
な海で起こっている様々な異変を眺めわたすと、以前
とは質的に違った環境汚染問題が海の中で起こって
いるようにさえ思われる。

大西洋で起こっているサンゴの病気の病原体の由来
と感染の起こる詳しい背景などが、最近の調査研究で
ようやく明らかになってきているので、まずここでは
もっとも詳細に調べられている二つの代表的な病例を
中心にして話を進めたい。

アスペルギルス症 (ゴルゴニアン・サンゴのコウジカビ感染症) 

アスペルギルス症によるゴルゴニアンの大量死がカリブ海
一帯で十年くらい前から目立っている。これについてはコウ
ジカビの一種がサンゴ群体に付着して病原体となっている
ことが1996年に突き止められた。

ゴルゴニアンの仲間は宝石サンゴと同じ八方サンゴ類に
含まれている。その網目状で、波に揺られている大きな
団扇のような姿は、大西洋のサンゴ礁の水中景観の象徴
となっている。

コウジカビに取り付かれたゴルゴニアンサンゴの群体は
表面が紫色に変色し、組織がボロボロになって崩れ、
ついには全体が死滅することもある。カビの仲間である
水虫菌に取り付かれた人がそのために死んでしまうこと
はまずないだろうが、このケースではサンゴが生きたまま
カビの餌食となってしまっている。

コウジカビの仲間は昔から醤油や日本酒の醸造に
使われている重要なカビであって、鹿児島の焼酎や
沖縄の泡盛ではクロコウジカビが使われている。
この仲間は世界中の土壌中や分解中の植物体に185
種以上見られ、その内約20種が人間に対するいわゆる
「日和見感染症」を引き起こすといわれている。アレルギー
や急性中毒の健康被害を引き起こしている種類もある。

日和見感染症とは、人間の場合、通常の健康体であれば
感染しても発病しないが、免疫力が低下していると様々な
症状を引き起こすことであって、抵抗力の衰えている患者
などに感染した場合に重大な結果を招いている。

カビの胞子を大量に吸い込むと,さまざまなアレルギー病
を起こす恐れがあるが、その症状の重さは、吸い込んだ
側の「免疫反応」、つまり抗体の出来具合による。そのために
コウジカビは杜氏などの職業アレルギー病の原因ともなる。

人間だけでなく、抵抗力が衰えた鳥たちもコウジカビの仲間に
犯されて苦しむことが多い。動物園や水族館で飼育されている
ペンギンたちやワシ、タカなどの猛禽類が特にアスペルギルス
症を発病しやすく、飼育係を悩ませ続けている。

堆肥工場のコンポスト周辺で調べてみると、堆肥の熟成中に
周辺の空気中にコウジカビの胞子が大量に現れ、熟成が
終わると減少する。これからわかるように、コウジカビの仲間
は枯葉などの有機物を分解しながら大気中に大量の胞子を
出し続けている。

最強の発がん性自然毒、アフラトキシン

カビ毒の一種であるアフラトキシンB1を生産するのはコウジ
カビの仲間では数種だけである。しかし、この毒はラットにわずか
15 ppb(10億分の15の濃度)の投与で肝臓ガンを生じさせる。
それはDNAの働きを狂わせるもので、自然界で生物が生産する
ものでは最強の発ガン性物質とも言われている。

肝がんは高温多湿の地域である東南アジアとアフリカに多い。
幸い、日本産のコウジカビ類には深刻な毒素を生成するものは
発見されていない。輸入食品のナッツやトウモロコシなどの汚染
チェックを徹底すれば健康被害を未然に防ぐことができるはず
である。なお日本では食品中のアフラトキシンの許容量は10ppb
以下とされている。

サンゴに付着したカビの何が病気を引き起こしているのか、その
仕組みはまだ詳しくはわかっていない。同種のカビでも遺伝的な
型が異なっている特定の系統だけが病気を起こすことがわかって
いるが、その背景には、そのような系統のものだけが生産する毒性
物質があるらしい。

砂塵と一緒に運ばれているコウジカビ

ゴルゴニアンにアスペルギルス症を引き起こすコウジカビの由来に
ついては、アフリカの砂漠地帯から飛来した砂塵起源説が最近
提唱されている。

サハラ砂漠から強風で上空に巻き上げられた細かい砂塵がカリブ海
に大量に飛来していることが注目され、実際にその中から感染力の
ある生きた菌が見つかっている。

近年のアフリカ大陸の砂漠化の進行に伴って、飛来している砂塵量の
増加傾向がアスペルギルス症の増加と一致している。また、この説は
陸から離れている広い範囲のサンゴ礁でこの病気が起こっていることを
説明できる。

この砂塵説ではカビ以外にも様々な病原体や汚染物質が飛来し、
相乗効果での発病や他のサンゴの病気を起こしている可能性も疑われ
ている。それを検証するためにアメリカの研究者グループは、飛来して
いる砂塵の詳しい観測調査を精力的に続けている。

日本には季節的に中国大陸から大量の黄砂の飛来があるため、沖縄
沿岸のサンゴ礁でもカリブ海と似たような現象が起こっているかもしれ
ない。これについての調査・研究にはまだおそらく何も手がつけられて
いない。黄砂の影響については酸性雨関連の調査は行われているが、
一緒に飛来しているかもしれない潜在的な病原体、微生物やウイルス
の調査はなされていないようである。

沖縄や奄美のサンゴ礁ではオニヒトデの食害が過去三十年間も続いて
いる上に、1980年に初めて見られ、その後1983、1998、2001年と
いう具合に合計四回も繰り返された白化現象によるサンゴ類の斃死が
著しく、たとえ病気の影響があったとしても目立つはずがない。しかし、
最近では沖縄本島周辺にわずかに残っているサンゴに「腫瘍」らしき
病変が頻繁に見つかっている。

ヘラジカサンゴのセラチア感染症、別名(白痘)

ヘラジカの角に似た形の群体を作るミドリイシ属のサンゴの群体上で
白い斑紋ができ、それが広がりながらサンゴが死ぬ病気が1996年に
フロリダ南部のキーウエスト沖で最初に見つかった。これは「白痘」と
名づけられ、その後フロリダ半島沿岸部で蔓延している。追跡調査に
よって、1998年には調査地周辺でサンゴ群集が壊滅的となっていた
ことが明らかになった。

このサンゴはカリブ海の浅瀬で繁栄している種類であり、大西洋の
サンゴ礁では水中景観の中心となっているため、その死滅がもたらす
影響はとても大きい。

アメリカのジョージア大学の研究チームによって、この病原体の正体が
腸内細菌の一種、セラチア菌であることが一昨年に確認された。水質
汚染の影響が強いと思われる沿岸部でその被害が激しいことと、病原体
の遺伝子解析で陸上のものと一致したので、人間社会から出ている
排水中のセラチア菌による感染が疑われている。

セラチア菌は大腸菌と同様に人間を含む陸上動物の腸内などに普通に
住んでいるバクテリアである。水や土壌中にも広く分布しているが、一般
家庭で洗面台などの湿った場所ではびこると、それが色素を作るために
赤い膜が見えることがある。このバクテリアには塩分耐性があり、
海水中で生存できる。

セラチア菌は一般の健常者に対しては無害であるが、抵抗力が低下して
いる患者には様々な感染症を起こし、時に死因となることもある。

2002年1月、東京都内の病院でセラチア菌による院内感染患者の
集団発生による死亡(12名中7名)事故が発生した。それ以前にも
1999年に墨田区内の病院で発症者10名の内5名が死亡し、2000年に
大阪府の医療機関で15名の内8名が死亡した。

日和見感染症では、もともと身の回りのどこにでもあるようなバクテリア
(細菌)、カビ(菌類)、そして原生生物などが病原体に化け、抵抗力が
衰えている病人や弱者に襲いかかる。健常者は気にする必要は無い
とはいえ、健常者がいつどのように弱者の仲間入りするかはわからない。
また、環境の変化で一般人が事実上の弱者と化す可能性もある。
例えば日本人が熱帯地に旅行するとウイルス性や細菌性の下痢症に
かかりやすい。しかし、現地人の間ではそのような病原体に対する
抵抗力ができていることが普通である。

セラチア感染症でもアスペルギルス症でも、その正体はどこにでも
見られるありふれた微生物であった。ところで、ありふれた微生物と
いってもその遺伝的な系統によっては特定の毒素を生産するか
どうかの差異が見られることがある。

食中毒で有名になった大腸菌の中の一つの系統、O157は赤痢菌が
作るものと同じ毒素を作って激しい症状をもたらすが、それは毒素を
作る遺伝子が微生物間で、いわゆる遺伝子組み換えが起こって水平
伝播した結果ではないかと疑われている。サンゴのセラチア感染症では
何か特別な系統のものが働いているかどうかは不明である。

海水中の微生物集団

海水一リットル中に含まれている微生物の生息密度の値をおおまか
に見ると、菌類が10の6乗、バクテリアが9乗、ウイルスが10乗程度
あると見積もられている。つまり、ごく普通のきれいに見える海水でも、
コップ一杯の中には1億以上のバクテリアと10億ものウイルスが
含まれているものと見込まれる。人間が海水浴を楽しんでいる時に、
それと知らずに微小なプランクトンを多数飲み込んでいるはずだが、
実はそれだけでなく、無数のバクテリアやウイルスも一緒に入っている
はずである。

海の生態系でバクテリアやウイルスなどが非常に高い密度で存在して
いることはごく最近になって判明したことである。ただし、そのウイルスの
多くはバクテリアなどに寄生、共生しているものであり、状況に応じて
宿主の微生物を殺して増えるものでもある。

海水中には多種多様な数多くの微生物がいて、海産動植物は自分を
攻撃する可能性があるもの、つまり潜在的な病原体に常にさらされて
いるはずである。養殖されている海苔などの海藻には海水中の栄養素が
不足したりすると様々な病気が発生しやすい。

自然環境では、病原微生物に対抗する免疫細胞を持っていない海藻が
病気になるような事例は乏しい。その理由を調べた研究で、海藻が
化学的な防御物質を生産し、菌類の感染から身を守っている仕組みが
最近になって解明されている。

大小を問わず、あらゆる生物の間で化学物質を使う攻防、すなわち
「化学戦争」が海の中で絶えず行われているのである。我々人間が
利用している抗生物質とは、もともとカビがバクテリアの繁殖を阻害する
武器であった。

海の中で繰り広げられている微生物たちの間の化学戦争において、
人間が環境に垂れ流している多種多様な化学物質は、いったいどの
ような影響を及ぼしているものだろうか。

バクテリアとウイルスが共生しているところへ汚染化学物質を加えた実験
では、共生関係が崩れ、バクテリアを殺しながら増えたウイルスが海水中
に出てくることが観察されている。海水中に出たウイルス集団は「生存」し
続けるための次なる宿を探して色々な生物に取り付こうとするだろうが、
その間に何が起こっているのかはまだわかっていない。

(つづく)
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by beachmollusc | 2010-08-31 09:14 | 環境保全

北川ホタル博士育成講座 第4回

口蹄疫の勃発で「北川やっちみろ会」主催のホタル博士育成講座を延期していました。
終息宣言に合わせたわけではありませんが、講座を再開するので今回の話のアウトラインです。

横須賀市の博物館は、大学院生の時に、三浦三崎の臨海実験所暮らしの合間に、発光生物の大御所の羽根田弥太館長(当時)を表敬訪問したり、天神島臨海自然教育園でタコノマクラとスカシカシパンの集団を潜水調査した結果を博物館報告で出したご縁があります。

下関市の豊田ホタルの里では2006年全国ホタル研究大会に参加しました。
http://beachmollu.exblog.jp/3659519

明日の午後、受講生の皆さんに差し上げるメモ原稿です:

ホタルの里づくり事例紹介 2010年8月28日(土) ホタルの宿にて

ゲンジボタルは関東地方の各県のレッドリスト(絶滅危惧種)に含まれている:
  茨城県(危急種), 栃木県(要注目), 群馬県(絶滅危惧Ⅱ類),
  埼玉県(絶滅危惧Ⅱ類), 千葉県(重要保護生物), 東京都(Aランク)

神奈川県でゲンジボタルが上のリストに含まれていない理由は、ホタルの保全活動が盛んで、横須賀市の博物館(特に、大場信義博士)がその活動を長年支えてきたからである。

馬堀自然教育園 (神奈川県、横須賀市) 
三浦半島の東京湾に面した山林で、面積は約3.8 ha(約1万坪)で、小原台台地、観音崎公園につながる緑地となっており、走水・観音崎地区を含めた自然観察ルートとしても利用できます。
http://www.museum.yokosuka.kanagawa.jp/mabori/frame_mabori.html
 
だれでもできるホタル復活大作戦―ぼくらの町にホタルがもどってきた
大場信義 (著)  199頁 合同出版 (2004) 
学校と子どもたち、地域住民と行政の協働型で行われている「ホタル復活」実践の現場から、長年の保全・復活活動の中で会得したコツ、ポイントを紹介。

豊田ホタルの里ミュージアム (山口県下関市) 
http://www.hotaru-museum.jp/

2006年に新装オープンした博物館、開館を記念して「第39回全国ホタル研究大会」が開催された。
主催者が作成したDVD資料「豊田のホタルと歴史」を紹介する。
(ミュージアム・サイト内に詳しい記述がある)

大分発のホタル情報 
http://www.coara.or.jp/~ynakamra/index.html
ゲンジボタルの生態と飼育を写真入りでとても詳しく、分かりやすく紹介。
 ● ホタルのからだ探検: 成虫ホタルの複眼、くち、産卵管、発光器など拡大して観察
 ● ホタルの生態と観賞: ホタル観賞の時期・時間帯、ゲンジボタルの生態・生活史等
 ● ホタルの産卵・孵化: 親ホタルを採集して、容器の中で産卵、幼虫を孵化させます
 ● ホタル幼虫の生態: 水中でカワニナ等をえさとして、幼虫は大きく成長します
 ● さなぎから成虫へ: 水中生活後、上陸して土まゆの中でさなぎに変態・成虫へ
 ● 幼虫のえさ・カワニナ: ホタルのえさとなるカワニナの生態や稚貝についての紹介
 ● ホタルの殖やし方: 容器とミズゴケで種ボタル→産卵→幼虫孵化→放流の方法
 ● ホタルの飼育: ホタル幼虫を、家庭で、容器中で人工飼育する方法
 ● ホタルの飼育(小規模): 飼育容器を使って室内で小規模人工飼育ができます
 ● ホタルの動画映像
大分県ホタルの里58選・・大分県内の58市町村に少なくとも1市町村1箇所以上になるようにしようとの願いから。(1998年ホタルサミット開催を期に、大分県ホタル連絡協議会が提案)
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by beachmollusc | 2010-08-27 19:58 | ホタル

アテモヤ

児湯郡の応援ショッピング第2弾です。前に買った宮崎県(新富?)産パッションフルーツが良かったので、同じショップで続けて購入し、埼玉在住の妹もパッションフルーツが好きなので送ってあげました。アイスクリームに入れて食べ過ぎ田結果、夏太りで困ると文句を言われました。贈り物に文句を言うのは兄も妹も同じ血が流れている証拠です。私は先だって送ってもらった「神戸牛100%角切入り、ビーフカレーとビーフシチューセット」に文句をつけています(普通のレトルトもののビーフカレー、ビーフシチュウの数倍以上の販売価格なので、お金の使い方がバカらしいから)。業者の勧めでお付き合いで買ったものを送ったと言っていました。

さて、オンラインの新富のフルーツ販売サイトから、マンゴーの売れ残りセールと並んで、アテモヤはいかがというメールが先週から毎日きています。案内が1日2回来ることもあるので、よほど良いお客と思われたのでしょう。余りしつこいと受信オフにしたくなるのですが、口蹄疫被災地からなので、むげに扱えません。

パッションフルーツの宮崎県での知名度の低さは実感していますが、アテモヤを知っている人は宮崎県で何人くらいでしょうか。熱帯果実でほぼ誰でも知っているバナナやマンゴーの知名度に比べれば1万分の1くらいでしょうか。

植物学的にはバンレイシ科に属するアテスとチェリモヤの交配で作出された園芸種です。

これバンレイシ科にはトゲバンレイシ(サワーサップ)という巨大な美味しい果実ができるもの、世界的に最も美味な果物の一つである熱帯の乾燥地でできるチェリモヤ、甘ったるいアテス(シャカトウ:釈迦頭、別名シュガーアップル)、誰も食べないギュウシンリ(牛の心臓のような形の実:牛心梨、接木の台木になる)、そして温帯種のポポー(インディアンバナナ)です。

沖縄在住の間、自宅の庭でシャカトウとアテモヤ、サワーサップは栽培して実を食べていました。しかし、チェリモヤは花に人工授粉をして結実させる準備ができた時点で移住となりました。果樹は実を食べるまでの成育期間が長いので困ります。その他の熱帯果樹で自宅栽培していたのはライチー、パッション・フルーツ、アセロラなどです。
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新富から配送されたアテモヤはチェリモヤに近い姿をしています。追熟してから食べますので、まだカットしていません。沖縄で栽培したアテモヤは赤っぽい実でシャカトウに近いものでした。

熱帯産バンレイシ類の果実は完熟すると地上に落下するので、トゲバンレイシの場合は落果の音が家の中まで響き、木の下ではぺちゃんこになった実が落ちています(実をつぶしたくないときは、あらかじめネットをかけてキャッチします:完熟マンゴーと同じ)。

今年はポポーの実ができなかったので、アテモヤを食しておいて、来年を待ちます。
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by beachmollusc | 2010-08-26 19:39 | ポポー pawpaw

テダカンカン

カンカン照りの毎日ですが、日の出の時刻が次第に遅れだしています。

今朝も太陽が登るのを追いかけながら(家から海岸は真っ直ぐ東になっているので車の運転中がまぶしい)小倉ヶ浜の南部に着きました。

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満潮で波が小さいながら、サーファーはそこそこいて、次々に海に向かってゆきます。
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朝日が入道雲の向こう側に登り、空を照らす光線がとても綺麗です。

浜辺を歩いてから駐車場に戻ると、朝日に照らされたヒマワリがお帰りなさいを言ってくれました。
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by beachmollusc | 2010-08-25 08:30 | 海岸

オレンジ色の百合

今朝も快晴で早朝散歩はGIビーチ、サーファーが数名と犬の散歩の常連と出会いました。
ビーチに出る場所に見慣れぬ百合の花が咲いていました。
オレンジ色だけで模様がないものですが、これは園芸品種でしょうか。
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家に戻ったら白いアサガオの花が咲いていたのでついでに撮影しました。
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ミッキーはほてった体をアルミの放熱プレートで冷やしています。
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夏の間は虫除けと暑さ対策で屋内の玄関が休息の場所です。

読者の皆さんのご指摘で、ユリの一種かと思ったら科は正解ながら属が違っていたようです。
浜肝臓さんのようですね。花だけアップしていたのを全体の様子を追加しておきます。
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頻繁に通っている場所で、いつも通る場所にあるものなのに、今までこの植物のあること気がつかなかったのが不思議です。

中里屋さんの食欲はなんだろう^と調べたら根茎が生薬になるとのこと。

古本屋さんサイト見つけて購入した参考書です。ネット検索もよいが本も役に立ちます。
1991年出版の本で、日本に自生する山菜には3百種以上あり、その半分以上が海岸で採取できるそうです。海辺の自然を守ることは、貝と魚と海藻にプラスで山菜が利用できるなら、いざと言うときの食料自給にも役に立つというお話です。土建化された海岸の自然復元をどげんかせんとイカン。
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by beachmollusc | 2010-08-22 08:12 | 植物

イカリモンとハラビロ、砂浜のハンミョウ

日向市が2006年に刊行した「日向市史、自然編」の第6章、昆虫類の甲虫類の4番目にハンミョウ類が記載されています。(181-182頁)

先日、イカリモンハンミョウを撮影した際にこの本をチェックしたら、もう一種のハラビロハンミョウが小倉ヶ浜に生息している(河口付近にハラビロがいて、波打ち際にイカリモンが住み分けている)と書いてあったので、昨日も今日も探してみましたが、ハラビロは結局見つかりませんでした。

今朝のGIビーチで撮影したイカリモンです。
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塩見川から流れ出てきて波打ち際に打上げられたコアマモの周囲にいました。
波打ち際だけでなく、砂浜の全域に広く生息しています。
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宮崎県のレッドデータによると、

イカリモンハンミョウ Cicindela anchoralis ハンミョウ科
準絶滅危惧(NT-g)
県内では、過去に広く分布、あるいは個体数が多かったと考えられるものが、分布域の一部において生息条件の悪化により絶滅したか、若しくは生息面積の減少や個体数の顕著な減少が見られるもの

ハラビロハンミョウ Cicindela sumatrensis niponensis ハンミョウ科
準絶滅危惧(NT-r)
県内では、もともと希であったものが、分布域の一部において個体数が顕著に減少しているもの    
 
両種とも県として「準絶滅危惧種」の認定を受けています。

宮崎県の総合博物館サイト:デジタルミュージアムのイカリモンハンミョウの説明:
http://www.miyazaki-archive.jp/d-museum/search/search/detail/?id=329
<かつて県内のほとんどの砂浜海岸に生息していましたが、護岸・堤防工事、港湾整備で砂浜が減ってきたため、現在は生息域が限定されています>

ハラビロは宮崎県では昔からレアものだったのが減った種ですが、イカリモンは普通にいたものが極端に減った種という違いがあります。どちらも珍種となっていて、昆虫マニア相手に標本を販売しているサイトがあります。

環境省のレッドデータではイカリモンが: 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 、ハラビロが:絶滅危惧Ⅱ類(VU)とされていて、イカリモンがより絶滅の危機に近いとされています。

イカリモンがレッドデータに載っている県は:石川、大分、宮崎、鹿児島の4県のみです。

大分では蒲江町波当津に唯一の生息地がみられます。(大分県レッドデータ) 
http://www.pref.oita.jp/10550/reddata/data/text/371.pdf

鹿児島では志布志湾に生息している砂浜があり、さらに種子島でも見つかっているようです。
http://homepage3.nifty.com/trechinae/A_achoralis.htm
週末がさがさ団さんが写真をビシバシ撮っています。
http://gasagasa.dameda.net/shucho/2009/090912-1.htm

宮崎県では串間でも見られます。
くしまnコラム イカリモンハンミョウ 交尾中の写真があります。
http://www.kushiman.net/column/column10.htm

にらむしのすみか
http://homepage2.nifty.com/hanmyou/anchoralis.htm
ハンミョウ類の飼育をやっているハンミョウ類の専門サイト:幼虫の写真があります。

ハラビロは:新潟、石川、福井、鳥取、島根、長崎、(熊本、情報不足)、宮崎、鹿児島の9県ですから日本海沿岸に広く見られる希少種ということでしょう。

どちらも太平洋沿岸で高知より東に記載がないのは分布していないのか、あるいは沢山いるのでレッドデータに入っていないのか判別できませんが、砂浜海岸の環境破壊の「指標」種となりそうな昆虫ですので、生息・分布範囲が限られているのかもしれません。南方系の昆虫ですが、沖縄からの記録はなさそうです。

イカリモンハンミョウは分布北限地で、石川県の「天然記念物」に指定されています。

●石川県文化財保護審議会の審議結果について●
史跡名勝天然記念物(天然記念物)  平成15年12月22日 文化財課
   ・「イカリモンハンミョウ生息地」
http://www.pref.ishikawa.jp/kisya/h15kyoui/bunkazai/17-2.html

イカリモンハンミョウ生息地

所在地
 羽咋郡志賀町大島から羽咋市柴垣町
  (菱根川から柴垣(須田地区)までの海岸)
概要 
 イカリモンハンミョウは、昆虫綱 甲虫目 ハンミョウ科に属する昆虫で、インドシナ半島から中国南部・台湾を経て日本にまで分布する南方系の昆虫である。
 日本では、本州の石川県の能登半島、九州の宮崎・鹿児島(種子島を含む)の両県に隔離分布し、県のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅰ類に分類されている。
 石川県では、かつては、内灘町から羽咋市にかけての海岸砂丘地帯に生息していたが、近年、海岸線に沿って構築される護岸堤防や海岸への自動車乗り入れ等による環境変化により姿を消し、一時は絶滅したのではないかと危惧されていた。
  それが、現在では柴垣海岸から大島・甘田海岸までのごく限られた範囲で確認され、その後の調査により大島・甘田海岸にはかなりの数が生息していることが判明し、1998年(平成10年)に「大島・甘田海岸のイカリモンハンミョウ」として石川県の天然記念物に指定された。
 その後、羽咋市の柴垣海岸でも1999年(平成11年)から2003年(平成15年)にかけて調査が行われ、その結果、個体数の確認や生息環境が良好であることが確認された。
 この地域に生息するイカリモンハンミョウは、生物地理学的に南方系要素の北限分布としての意義が大きく、極めて貴重な種であることから、保存する価値を認め、指定地の追加及び指定名称の変更を行い、その保護を図るものである。

その他
  志賀町指定天然記念物(平成9年5月7日)→県指定(平成10年2月27日)
  羽咋市指定天然記念物(平成15年8月29日)→今回県指定


石川県の柴垣海岸から千里浜にかけての砂浜海岸にはチョウセンハマグリが生息しているので、数回現地訪問してサンプリングしています。
http://beachmollu.exblog.jp/1495388

<追記>

琉球大学理学部海洋自然科学科生物系の佐藤綾さんは海岸のハンミョウ類について分子系統地理学の研究成果を発表しています。
A. SATOH, T. SOTA, T. UÉDA, Y. ENOKIDO, J. C. PAIK, M. HORI  (2004)
Evolutionary history of coastal tiger beetles in Japan based on a comparative
phylogeography of four species.
Molecular Ecology, 13, 3057-3069

Aya Satoh and Michio Hori (2005)
Microhabitat segregation in larvae of six species of coastal tiger beetles in Japan
Ecological Research Volume 20, Number 2, 143-149

中国産のイカリモンハンミョウの記載があります。
A list of the tiger beetles of China (Coleóptera: Cicindelidae)
G SHOOK, J Wiesner - Fauna of China, 2006
http://www.asiabeetles.com/files/Shook_Wiesner2006.pdf

沖縄の砂浜にイカリモンがいたかどうか、佐藤さんに問い合わせてみましょう。
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by beachmollusc | 2010-08-19 10:16 | その他の昆虫

早朝でも暑い砂浜

朝日が出てすぐに小倉ヶ浜に向かいましたが、昨日に続いて今朝は直射日光に当たったミッキーがすぐにダウンしました。用意した冷たい水を飲ませても30分くらいしか持ちこたえません。帰り道が松林の中なのでなんとかなりますが、40キロもある熊同様な犬を抱っこして運ぶのは不可能です。

小倉ヶ浜の中央部、赤岩川の河口部の干潮時間の潮間帯をチェックして、チョウセンハマグリの稚貝に異状がないことを確認してきました。今朝も遠く北の方で密漁しているらしい人影を見かけました。
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河口部にあるコンクリートの防波堤もどきに砂が堆積していて、ほとんど埋没しています。
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以前は腰をかけるくらいの高さでしたが、これでは何の役にも立ちません。
小倉ヶ浜に不要な、有害無益な土建化構造物です。

同じく何の役にも立っていない、ウミガメの産卵妨害、海浜植物の成育地、生態系破壊の構造物:真夏の怪談誤岸ですが、これも次第に砂丘に飲み込まれつつあります。
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階段の隙間から伸びだしているハマゴウが頑張っています。
その手前にはコウボウムギもカラカラの砂のなかで元気です。昼間の猛烈な暑さに耐える草です。
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さらにもっとカラカラな海側の砂の中に生えている草はオカヒジキでしょうか。
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砂浜生態系の保全について地域住民の認識を改めてもらうようにしないといけません。
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by beachmollusc | 2010-08-18 08:18 | 海岸

精霊流しの行方

昨日の朝のGIビーチで砂浜に打ち上げられた精霊流しの小船がありました。
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積み込まれていたホオヅキなどが一緒に打上げられています。
塩見川で流したのかどうか分かりませんが、南の耳川で流され、風に吹かれて北上したものかもしれません。

今朝の平岩サーフィン・ビーチにもそれらしきものが転がっていました。
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ところで、砂浜海岸の河川流路直線化の日向市の公狂事業の行方も気になります。
工事期間は終了していて、看板は撤去されていました。

直線化された部分ですが、波が当たらない場所ではまだ直線を維持しています。
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今朝は干潮だったので流路が潮の引いた潮間帯で屈曲する様子がはっきり見えます。
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満潮線付近では流路の屈曲が激しくなっていて、曲がりながら砂の壁を削り取り、さらに曲がり続けます。

この屈曲部が次第に上流側に移動すると予想されるので、観察を続けて行政のアホさ加減の記録としましょう。
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by beachmollusc | 2010-08-17 08:54 | 海岸

新潟県柏崎で発見されたハマグリ(報告)

新潟県柏崎で発見されたハマグリについて 
-柏崎産ハマグリは、どこからやってきたのか-
佐藤俊男・山口正士
柏崎市立博物館 館報 第24号 (2010年) 111-136
(クリックで画像を拡大)
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by beachmollusc | 2010-08-16 03:15 | Meretrix ハマグリ