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beachmollusc ひむかのハマグリ


海辺の浅瀬は水産動物のこども達のゆりかごです
by beachmollusc
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海辺の自然を取り戻そう
 自然の恵みを後世に残すためには、その生態と環境を深く、よく知ることが基本です。

 海岸の浅瀬、干潟や砂浜は資源生物のゆりかごです。
しかし、それにおかまいなしに埋立てや海岸構造物の建設、水質汚染も加わって、日本中の水辺、海辺の環境は撹乱され、破壊されてしまいました。その結果、ハマグリなど干潟の動植物の多くが絶滅危惧種となっています。

 このブログでは、主に砂浜環境の保全を念頭において、日本各地の山、川、海の姿を調べて見てまわったこと、
そして2006年5月に移住した日向市の海辺と里山の様子や生き物などを紹介します。

このブログにリンクを張ることはご自由にどうぞ。

    - 自己紹介 -

大学院博士課程修了後7年間の海外での研究と28年余り大学教員をしていました。

海の無脊椎動物(貝、ヒトデ、サンゴ、クラゲなど)が専門、自称の学位は Doctor of
Underwater Marine Biology
(DUMB:バカセ)

楽観的な悲観論者または悲観的な楽観論者:生態的に無理をしている人類の滅亡は近いだろうが、それも自然の摂理じゃないのかな

せっかちな慎重派:ゆっくり
見極めて急いで集中的に
お仕事します

好きなもの:日本蕎麦が一番、パスタ・スパゲッティ、うどんもよし、つまりメンクイです

嫌いなもの:人混み、投棄ゴミ、マスゴミ、脳衰官僚

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<   2011年 09月 ( 30 )   > この月の画像一覧


アメリカに移入した淡水シジミ

アメリカ、フロリダ州のジャクソンビル貝類同好会(http://www.jacksonvilleshells.org/)の副会長であるDr. H. G. Leeにお願いしたシジミ類の貝殻標本が郵送されてきました。

全部で18ロットあり、1970年代の古い採集品が含まれています。
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Lake Oklawaha, Florida circa 1975 (45 mm.)
http://www.jacksonvilleshells.org/ascl.htm
この標本の実物も含まれていました。45mmの殻長で、とにかく大きくて立派です。

1988年にニューメキシコで採集された下の写真の標本も同じ形態と色彩です。
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1984年にアリゾナで採集された下の貝は形態がかなり異なっています。
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これまでに見た日本各地の淡水シジミ類と比べて、アメリカで頑張っているシジミどもはかなり違うような印象を受けています。
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by beachmollusc | 2011-09-30 21:19 | シジミの仲間 Corbicula

沖縄のタイワンシジミはマシジミだった

沖縄本島の石川川で採取されたタイワンシジミの軟体部をアルコール固定し、貝殻を乾燥標本にする作業が終わっていましたが、取り込んで収納する段になって、アレアレ、よく見たらマシジミではありませんか!
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殻の内側の色彩が図鑑どおりでした。

上のアルコール固定したものは生きていた貝ですが、固定する前に死んでいた殻の内側の色は白くなっていました。
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アメリカで実験的に殻の内側の色を変化させた報告を前に紹介しましたが、まさにその通りになっていて、死ぬ前に内側表面の結晶構造が変化して白くなっています。

淡水シジミ類の内側の殻の色を分類の目安にすると、素人は間違えるでしょう。
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by beachmollusc | 2011-09-28 12:04 | シジミの仲間 Corbicula

GIビーチから砂浜が消えた

今朝は大潮で朝が満潮です。

以前は大潮の満潮でもドライ・ビーチ、つまり海水が寄せてこない砂浜のゾーンがあったGIビーチが、今年の台風の波で岸よりの砂が厚さ1mくらい沖に運ばれてしまって、満潮の波が直接岩礁にぶつかっています。

ワンコを浜辺で散歩させることができない状態です。
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しかたなく、アクセス道路を散歩しました。

岩礁の上にはハマゴウが美しい花を咲かせていました。
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ビーチ・サイクルで沖に行った砂が次第に戻ってくるでしょうが、乾いた砂のゾーンがないまま飛砂が起こらなくなり、岸辺に砂が堆積して前の状態に戻るのは当分の間は難しいかもしれません。

岩礁の周りに堆積した砂が消えて現在は満潮の波がぶつかるところには(砂の下に埋もれていた)フジツボやカキの殻がありますから、この状態が長期間安定していた時期が過去にもあったわけです。昔の空中写真を見ても、そのような時代があったことが確認できました。

数十年の単位で大きな変化が起こって、ある時期の動的な安定状態が突然別の状態にシフトしてしばらくそのままになる、というのがこのビーチの特性のようです。
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by beachmollusc | 2011-09-28 08:58 | 海岸

吉井川(岡山市)水系のマシジミが発生中の胚を放出

岡山県の吉井川水系の浅川用水で16日に採集された淡水シジミは3つの型に分けて飼育していましたが、今朝4時ごろマシジミ型が胚を大量に放出していることに気がつきました。
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顕微鏡で観察すると、すでに嚢胚の段階に発生が進んでいました。
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これは、発生段階から考えると、昨日の夕方頃産卵して体内受精してから夜間に放出されたものと思われました。

さきほど、午後9時に見たら、トロコフォラに発生が進んでいて、早いものは孵化して泳いでいました。
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上の写真は透明な卵膜の中で回転運動しているトロコフォラです。

不思議なことに、同じ条件で飼育を続けている別の2つの型の連中は胚を放出していません。

愛媛県松山市からきている2つの型でもマシジミ型は以前に胚を放出したのに、タイワンシジミ型は出していません。

マシジミ型がこらえ性が無いのか、あるいは型が違うと繁殖サイクルが違っているのかもしれません。

体内産卵で受精卵が親の殻の中でD型の仔貝になって放出されるまでは4~5日でしょうから、松山のタイワンシジミ型はすでにその時間が経過したので、放卵された受精卵が保持されていなかった(マシジミ型と違って産卵しなかった)ものと考えられます。マシジミ型の稚貝は、とっくの昔に砂の入ったガラス皿に移って生育中です。

岡山のシジミでも型が異なれば繁殖サイクルが違っている可能性が考えられます。同じ場所で混ざって成育していても、貝殻の色や形が異なるものが繁殖のタイミングをずらしているならば、同居している別々のクローンの系統が独自に維持されている可能性があるかもしれません。そして、自家受精するクローンのくせに同じ型の個体が一斉に産卵する、シンクロしていることに意味があるのでしょうか。不思議な貝です。
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by beachmollusc | 2011-09-27 21:38 | シジミの仲間 Corbicula

筑後川のシジミ

九州で最大の川、福岡県と佐賀県の境界にある筑後川のシジミは昔は有名だったようです。それが大堰の建設で漁業が崩壊したことは、利根川や長良川、そして高梁川と同様でしょう。

筑後川感潮域におけるシジミ漁場評価. 内藤 剛・中本 崇. (有明海研究所・内水面研究所). http://www.sea-net.pref.fukuoka.jp/gaiyo/kenkyuu/Vol16/k16-17.pdf

筑後川の大堰の威容が写真で紹介されています。

黄砂に霞む筑後川大堰
http://www.panoramio.com/photo/52604476

ネット検索して筑後川産のシジミが販売されているショップを見つけました。早速注文を出したものが先ほど到着です。トロ箱に1キロで2500円プラス送料、けっこうなお値段でした。
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筑後川の河口で採れるヤマトシジミを注文したつもりだったのですが、川で採取された淡水シジミがやってきました。これはラッキーです。現地に出かけて調べる手間と時間が省けます。

やってきたシジミは大まかに濃い色と明るい色の二色に分かれました。
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さらに貝殻の表面に帯あるいは筋模様が見られるものが目立ちました。
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数は少ないながら、他の個体とは輪郭が違っている貝もいました。
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とにかく、このシジミ集団は一風変わっています。

有明海に生息する海産生物が中国の大陸部とのつながりが深いこと、つまり氷期に九州西岸が大陸と(ほぼ)陸続きだった時代があったことの関係で、類縁関係が深い様々な生物が生息していること、から類推すると、河川の淡水生物でも大陸との類縁関係が見られるのかもしれません。

有明海の生きものたち 干潟・河口域の生物多様性 (佐藤正典 編、海遊舎、2000年)
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by beachmollusc | 2011-09-26 14:21 | シジミの仲間 Corbicula

タイ国の淡水シジミ

Kijviriya, V., E.S. Upatham, V. Viyanant and D.S. Woodruff.
Genetic studies of Asian clams, Corbicula, in Thailand: allozymes of 21 nominal
species are identical.
American Malacological Bulletin 8(2):97-106. (1991).

この論文はタイ国内の全域から淡水シジミ類のサンプルを集め、その酵素多型(アロザイム分析)で遺伝集団を調べたものです(第一著者の博士論文となったもの)。
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上の要約を簡単に言えば:タイ国内で過去に分類され、記載された淡水シジミ類は全部で28種類あり、そのうち21種類の形態や色彩が異なる貝を全国的に集めて集団遺伝学的、そして解剖学的に調べた結果として全てが同一種であり、(Corbicula fluminea、和名:タイワンシジミ)しか認められない、という恐ろしい話です。

研究試料はタイの40箇所から集められました:下がその地図です。
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対象となった種類の学名リストです(タイワンシジミを除いた20種の種名です)。
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アロザイム分析に使われた酵素のリストを下の表に示します。
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次は分析結果の一覧表です。
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この研究が行われた当時は淡水シジミ(タイワンシジミとマシジミ)がクローン繁殖をしていることは解明されていませんでしたが、前に紹介したアメリカに移入したシジミの場合と同様に、タイ国のシジミも遺伝的多様性が極めて低いことから自家受精による繁殖が想定されました。

殻の色や形が異なっていたことから、過去に10名の分類学者が貝殻だけの識別で21種に分けていたのですが、集団遺伝学的には識別できなかった、という話です。同じ著者による軟体部の比較検査でも、これら21種が別種であると認識できるような差異は見つかりませんでした。9名の学者が記載した20種の「新種」が消滅ということです。

アロザイムを使った研究手法でアメリカで調べられたアジア各地(フィリピン、ホンコン、日本)のシジミの遺伝的な多様性の結果と比較して論議している部分で、日本のサンプルが特にかけ離れていることに著者達は注目してコメントしています。その部分の文章を紹介します。
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この研究でタイのシジミの結果と比べた日本産シジミの異様な差異から、その繁殖生態が異なるのではないか、という推測をしています。アメリカで比較研究した結果を報告したSmithは、日本のシジミは別種ではないかと疑っていました。

私の推測は、日本からアメリカに運ばれ、分析試料に使われたのは淡水シジミではなく、汽水域に分布し、雌雄異体で通常の有性生殖をするヤマトシジミだったのではないか、と考えればつじつまが合います。この点を日本のマシジミとヤマトシジミを使って追試して検証すると面白いでしょう。
............................................................................................
初見真知子 外 (1995)
シジミ類 3 種の系統とヤマトシジミ個体群のアイソザイム多型
貝類学雑誌 (Venus) 54 (3), 185-193
<論文要旨>
シジミ類3種, ヤマトシジミ, セタシジミ, マシジミの系統関係と, 種内集団間の遺伝的分化を解明するためにアイソザイム多型を分析した。ヤマトシジミは多型的で地理的分化も進んでいたが, 亜種として区別するほどの分化ではなかった。琵琶湖内に固有のセタシジミより単型的なマシジミには地理的分化が見られなかった。根井の遺伝的距離をもとに系統樹を作成した結果, ヤマトシジミの祖先種が分岐した後にセタシジミとマシジミそれぞれの祖先種が分岐したことが示された。
................................................................................................
酒井 治己 外 (1994)
日本産シジミ属3種の遺伝的類縁関係
日本水産学会誌 Vol.60 (5), 605-610
<論文要旨>
Seven populations from 3 species of corbiculid freshwater bivalves in Japan,
Corbicula leana (triploid), C. sandai (diploid) and C. japonica (diploid) were
electrophoretically analyzed at 12 isozyme coding loci. C. leana populations
had monomorphically the same allele as the most (11 loci) or the second most
(one loci) frequently observed allele of C. sandai at all loci analyized. The allelic
displacement was seen at 6 loci between C. japonica and the other two species.
It was supposed from the dendrogram of Nei's D value that the lacustrine C.
sandai had first speciated from the brackish C. japonica and then the fluvial
C. leana had derived from C. sandai through triploidization.
......................................................................................................
(注) 同じ機能を持ちながら,構造にちがいのある酵素をアイソザイム ,アイソザイムのうち,同一遺伝子座によって支配される酵素群をアロザイムとよぶ.
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by beachmollusc | 2011-09-24 17:15 | シジミの仲間 Corbicula

島根県、高津川水系と周辺の淡水シジミ

沖縄を含む南日本各地の淡水シジミ集団のサンプルが集まり続けています。

本日の午後、島根県益田市のNPO法人アンダンテ21の皆さんに採集をお願いした(ダムがない日本唯一の一級河川、清流日本一の)高津川水系の支流・用水と周辺4箇所で集められた淡水シジミのサンプルが届きました。

アンダンテ21は高津川河口の外に広がる益田海岸でチョウセンハマグリの資源を守る運動を続けています。その中心人物であるSさんがシジミの問題にも強い興味を示してくれています。

サンプルと一緒に届いたメッセージによると、採集地点の一つ、高津川の上流にある吉賀町(GOOGLE MAPで見ると中国山地の中央に近い山中)では、今度の日曜、25日に藤原次男さんが養殖の指導の件で訪問予定だそうです。世の中の狭いことには驚くばかりです。

その吉賀町朝倉産の淡水シジミは横長で押しつぶされたような殻です。左右が非対称であることも特徴的で、マシジミが地域集団ごとにそれぞれ独特の形態を分化させていることを強く印象付けました。

サンプルが生きているので殻の内面の色は確認していませんが、外側の色は淡水シジミに共通な黄緑色です。

この集団からは、大きい(2センチ余り)個体が100個以上送られてきましたが、その中で5個体だけ殻頂部分の色(外側の層が剥げ落ちて内部の色が見える部分)がピンクでした。
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残りは濃い紫色です。
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色の差異をもとにして種が異なるから「外来種である」と言うような理解に苦しむ話が広がっていますが、同じ集団内で色が異なる型が共存することは貝類では珍しいことではありません。いずれ分子遺伝的な検討を進めて、この点を明確にするつもりです。

高津川の支流である白上川、益田市の桂ヶ平町から採集されたシジミは形態的に上流集団と同様ですが殻の表面の色は黒ずんでいます。
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高津川を上る 白上川編、というサイトに現地の画像がたっぷり出ていました。
http://sports.geocities.jp/cyclehama/sirakamigawa/07-2-4sirakamigawa.htm

< 自宅からスタートしたので、少しほど本流沿いの土手を走る。やはり高津川の流れはいつ見ても美しい。白上川に入ったとたんにその表情は一変する。それまでの緩やかな豊かな流れではなく、どことなく湿地帯のような雰囲気の表情になる。草の中に川が細く何本も流れている、そんな風景だ。

 益田バイパスの建設をしている。もう少ししたら完成か?湿地帯のような部分から少し進むと川幅が再び広くなる。そこを抜けると、とても悲しい光景が・・・。悪名高い三面張り工法による、私の最も嫌いな川の表情が見えてくる。川には責任がない、全て人間が作り上げた悲しい川なのだ。どうして、こういう工法を採用するのか、どんな利点があるのか疑問に思う。川ではなく、水路になってしまう。そんな悲しい川に限って、その横に「川をきれいにしましょう」という看板があったりする。川を元に戻すのが一番きれいにすることになると思うのは私だけだろうか?>


2004.1.31 六日市町(七日市)~水源(一本杉)
http://f28.aaa.livedoor.jp/~cyclebox/cycling/takatugawa/takatugawanoboru5.htm
<河口から水源まで述べ5日をかけて自転車で上ってきた。多少汚れているところもあったが、ほとんど全てが清流でとても気持ちのよい川だった。
 結論『高津川は日本一の清流と言ってもいい、誇れる川である。』>

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by beachmollusc | 2011-09-23 19:29 | シジミの仲間 Corbicula

第2回国際シジミ・シンポジウム(1983年)

第1回のシンポジウムの論文集に続いて第2回のシンポジウム論文集が届きました。
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開催後3年の1986年に出版されました。

この中にMcLeodによるアメリカ国内のシジミ集団(15箇所)の酵素多型による集団遺伝解析があります。

前のシンポジウムでSmith外が行った解析では、アメリカ国内の5集団(東西の全域から選ばれたもの)は全て(調べられた酵素の遺伝子座に関して)遺伝的に均一であったのですが、新しい研究では地理的に遺伝的分化がわずかながら検出されています。この時点までに、アメリカに移入したシジミは自家受精するクローン集団であることが推定されていて、それが遺伝的に分化しつつある(あるいは複数の系統から移入した)ことが注目されました。

論文の中核をなすデータと図を引用しておきます。
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地域的に多型を見せたカタラーゼ(catalase)は、過酸化水素を不均化して酸素と水に変える反応を触媒する酵素です。Smithたちはこの酵素を調べませんでした。

Smithたちの報告では、アメリカ集団の由来を推定するためにフィリピンから2集団、ホンコンと日本(東京近郊)から各1集団ずつが比較検討されていました。しかし、この研究では、残念ながら、供給元の候補地を調べるためのサンプルをアジアから集めて比較していません。

論文集の中に水路障害対策関連の報告が多数を占めていて、シンポジウムのスポンサーが火力発電所や原子力発電所だったことを反映させています。移入種がアジアのどこから来たかは学術的な問題であって、障害の対策技術にはあまり貢献しないと思われていたのでしょう。しかし、単一の移入から各地に伝播したのか、あるいは複数の経路で移入したのかという問題は学術上の興味だけでなく、望ましくない移入種を水際で止めるための基本情報です。
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by beachmollusc | 2011-09-23 09:09 | シジミの仲間 Corbicula

第1回(1977年)のシジミの国際シンポジウム

シジミの仲間は世界的に広く見られる二枚貝類です。南北アメリカ(と西ヨーロッパ)では化石が見つかっていましたが、現生種はいませんでした。ところが淡水シジミが侵入して急速に生息範囲を拡大し、大発生して特に発電所などで水路障害トラブルをもたらしました。さらに侵略的外来種として在来の淡水産貝類に悪影響を及ぼすことも懸念されました。特に北アメリカは淡水の二枚貝類の多様性が極めて高いことが知られています。

カナダのバンクーバーで1920年代に死殻が見つかった(当時から半世紀以上の間、カナダでは生きている貝は確認されずにいたが、最近になって生きているシジミの集団が見つかっている)のを皮切りに、西海岸の北部で1940年代(実際に移入したのは1930年代と想定されている)に定着し、それから数十年で南部諸州を中心に東海岸まで広がった淡水シジミは、形態・色彩が単一ではなかったことから分類が混乱し、どこからやって来たのかわからない事態となっていました。

1977年にアメリカのテキサスで開催された国際シンポジウム(と言ってもアメリカとホンコンの研究者だけ:西ヨーロッパに淡水シジミが進出したのは1980年代から)では、分類の混乱を整理することが主題の一つでした。その主役を演じたのがホンコン大学のBrian Mortonです。彼はアジアの淡水シジミは単一種であるという極端論を主張しました。つまり、(汽水種を除いた)マシジミやタイワンシジミなど当時までに記載された数百種の淡水シジミはすべて同種であって、一番古く(1774年に)中国から記載されたタイワンシジミCorbicula fluminea (このラテン語の意味は「川」)を当てることを提案しました。

このシンポジウムが開催された当時は、まだPCR(DNA増幅)の技術が実用化されておらず、簡便に遺伝子の塩基配列を読み取ることはできなかった時代です。そして、分子集団遺伝解析としては酵素多型を調べる技術が発展していました。アメリカに現れたシジミのルーツを追うために、この技術が使われた研究報告がシンポジウムの発表論文の一つになっています。

論文集は1979年に出版されました。一般の学術雑誌であれば国内の大学図書館などで見つけることができますが、単行本となっている論文集を見るためには現物を見る必要があります。日本では見つからず、海外の古書検索サイトで運よく1冊販売されていたものが、昨日配送されてきました。

その表紙です。
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論文報告の著者とタイトルは

M. H. SMITH 外 1979年
Genetic variability in Corbicula, an invading species, p. 244-248.
In. J. C. Britton (ed.). Proc. First International Corbicula Symposium.

以下、本文の画像です。
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下の表はクリックすれば拡大して細部が読めます。
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アメリカの5集団はカリフォルニア、テキサス、アーカンサス、テネシー、南カロライナの諸州で採取されたサンプルです。これらの集団間にはこの研究で調べられた酵素について、すべて均一であり、ヘテロ接合が検出されませんでした。このようなことはクローンであって、地域的に未分化の集団でなければ見られないはずです。これをもとに、アメリカへ移入した集団は単一の集団が起源であったのではないかと推測されました。

アメリカでは地域的に殻の形態と色彩が異なるので、複数種が移入していると想像されていましたが、この結果はその想定を覆したわけです。

日本集団は東京近郊、フィリピンの2集団は共にマニラ近郊からで、ホンコン集団の場所は記述がありません。上のデータから、マニラとホンコン集団はアメリカ集団にもっとも近く、日本集団は遺伝的にかけ離れている結果が出ています。さらに、集団内の遺伝的多様性は日本集団で高い値が得られました。(もしかしたら日本の別種である汽水のヤマトシジミが比較対象に使われたかのかも知れません:検体の殻の標本が博物館などに残されていたら確認できますが、なにしろ古い仕事ですからサンプルの発掘はあまり期待できません。)
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by beachmollusc | 2011-09-22 01:29 | シジミの仲間 Corbicula

アゲハモドキ再来

今回の15号台風は雨だけでしたが、雨宿りに来たのか、キッチンの窓の外側(日よけで風も陰になっている)にアゲハモドキが止まっていました。腹側の写真は少ないだろうと思って、記録しておきます。
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2009年5月に出会っていました。
アゲハの偽者
http://beachmollu.exblog.jp/10251430/
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by beachmollusc | 2011-09-21 16:59 | 蛾と蝶